太陽と月みたいな友達ふたりとモブの俺(オメガバース)

さや

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アウティング

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 放課後、各クラスの級長を集めた連絡会を終え、成瀬達樹は急いで寮に帰ろうとすっかり人のいなくなった廊下を歩いていた。
 月に一度の連絡会だが、年度末ということもあり、春休み前の伝達でやや時間が押したのだ。
 まだ日は短い。外はすでに薄暗く、思わず早足になる。

 以前ならこんなことはなかった。少しくらい遅れたって、多少暗くなっていたって、平然としていただろう。
 だけど、今はこの暗さに、人気のなさに、少し怯えてしまう。
 自意識過剰だと恥ずかしくなりながらも、足はどんどん速くなる。

「あ……」

 廊下の先の見知った姿に、足を止めた。
 相手は携帯電話を操作していたが、視線を感じたのかふと顔を上げる。

 柚木諒介。

 達樹に次ぐ学年次席の成績を誇る、隣のクラスの級長だ。達樹の幼なじみでもある。
 この学校に入ってからは、疎遠になっているのだが。
 目が合って、やや気まずい空気が流れた。

「りょ……」

 声をかけようとしたが、諒介はふいと顔をそらしてしまう。
 いつも感情表現に乏しく、なにを考えているかわからないと言われている諒介だが、その態度に明確な拒絶を感じてしまい、言葉がなくなった。

「あ……」

 そのまま諒介が何事もなかったかのように自分の教室に入っていこうとしたとき、達樹のクラスから複数の大きな声が聞こえた。

「うっそ、マジ⁉」
「マジだって。沢井の机漁ったら出てきた」
「いいのかよ、それ」
「バレねーって」

 まだ残っている生徒がいるのかと達樹は思わず顔をしかめた。
 それも、声からしてクラスでもあまり素行のよくないグループの者たちだ。

 達樹たちが通う馳倉中学校は私立の進学校だが、3年間のうちカリキュラムについていけず落ちこぼれてしまう者も少なくなかった。

 やけに興奮しているし、担任教師の机を漁ったという会話の内容も穏やかではない。
 大きな厄介ごとにならなければいいがと達樹は身構えた。
 だが、彼らの話題は達樹の想像の範疇を超えていた。

「いや、でも、佐々岡は納得だけど、柚木と成瀬は……」
「柚木はアルファじゃねえの?」
「それが、オメガなんだって。柚木と成瀬も!」

(え……?)

 全身が凍り付いたように動かなくなった。
 視界の先で、諒介が足を止めて達樹を振り返る。

(アウティング)

 そんな言葉が頭を掠めた。
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