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この生徒会はヤバい!
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「須田先生、授業の例文でpenisは使っちゃダメだって言ったじゃないですか!」
英語の授業を終えて、職員室に入ろうとした僕に先輩教諭が立ちはだかる。
「penisを使うって……先生それセクハラですよ?」
「penisって英単語を使うなって意味です!」
「でも、僕の代名詞的な単語ですし」
「そんな卑猥な単語を代名詞にしないでください」
Mr.ペニスである僕に、こともあろうにpenisを使うなだなんて。
まったく。
日本の教師も楽じゃないな。
僕が日本に戻って3か月が過ぎていた。
今僕は母校の亜保那高校の英語教諭として働いている。
アメリカで英語を習得したことで可能となった職業だ。
必要な資格は何故か知らないが全て免除された。それで良いのか日本。
僕は先輩教諭の股下を『ヨイショ』とハイハイでくぐって、職員室に入った。
自分のデスクにつき、勝手に机上に設置したテレビの電源をオンにして、デスクに置きっぱなしにしていたみかんを手に取り、皮を剥き始める。
ニュース番組で、真剣な表情で答弁を行う自慢の彼女が映しだされた。
普段のへにゃへにゃな会長も可愛いけど、真剣な会長もグッとくるものがある。
みかんをもぐもぐしながら、僕は録画ボタンを押した。
会長との交際は続いていた。
会長は日本のトップ。多忙の身である。
会えるのは月に1回程度。
それでもデートを重ねて、『ラブラブ』といえるくらいには会長との仲は良好だった。
一方で他の元生徒会メンバーとの仲は全く進展していない。
それどころか、会長との関係も秘密にしていた。
もちろんこのままでは良くない。
時期をみて僕から彼女たちにも交際を申し込むつもりだ。
でも、物事にはタイミングというものがある。
今はそれを見計らっているところ。見失っているのではない。見計らっているのだ。
え? 再会の瞬間という最高のタイミングがあっただろうって?
違う違う! 違うんだ! 再会の瞬間はそんなことを言い出せる空気ではなかったんだ。
皆に再会して、僕はまず誠心誠意、謝ろうと思った。
そして、それを実行に移そうとした。
――が、
「皆…………勝手にいなくなって本当に――
「――慎ちゃん。監禁されるか、拘束されるか、どっちがいい?」桃山が良い笑顔で問う。
「えっと、あの――
「――あ、慎ちゃん先輩っ。これ言うこときかないと爆発するブレスレットですっ❤︎」美咲ちゃんがカチリと僕の右腕に装置をつける。
「えぇ?! いや、その――
「――慎一のお尻を打つように、鞭を新調したんだ。喜べ」薫先輩がピシャンと床を鞭打つ。
「………………」
「次同じことしたら、社会的に抹殺いたしますよ?」ドリちゃん先輩は笑顔でそう言うが、目が笑っていない。目がぐるぐるドリルである。
僕はその後、土下座で謝り倒して、なんとか許してもらったのだ。
あんなに怒っている生徒会メンバーは初めて見た。トラウマものである。
あの場で全員にまとめて告白でもしようものなら、僕は今頃彼女らの怒りをかい、監禁生活を送っていたことだろう。
とにかく彼女達は下手に刺激してはいけない。
だから、僕はことを慎重に進めている。
今はまだその時ではない。
今はまだ絶対に僕と会長との関係を知られてはいけないのだ。
ニュースは今、会長とは無関係のことを報道していた。
しかし、唐突に聞き慣れない電子音が鳴り、画面が切り替わる。
『緊急記者会見』とテロップが表示され、会長が再びテレビに映し出された。それはライブ映像ではなく、録画された映像であった。
記者会見? 何か大変なことでも起きているのだろうか? 僕は会長から何も聞かされていない。
『えー……まず直接お話しできないことをはじめにお詫びいたしみゃす』
噛んだ。可愛い。
『えー……私は長い校長先生の話が嫌いだったので、今回の記者会見は単刀直入に申し上げることとしたいと思います」
やめろ。あの頃の校長先生が悲しむから余計なことを言うな。
僕はそんなことを思いながらみかんを口に放り込む。
『えー……皆様。須田慎一をご存知でしょォか?』
ぶふォ!
口に含んだ半月形のみかんが回転しながら口から噴射された。
知ってるわけねェだろ! 一般人だぞ僕は! てか何言うつもりだ、あのちびっ子!
『えー……彼は………………私のダーリンですっ❤︎』
ザワザワザワと会見場が騒がしくなる。
あんのちびっ子ォオオオ!
やりやがった! やりやがったよ!
ヤバい! これはヤバい!
僕は動揺して意味もなく立ち上がる。
『えー……オーラルも既に致しております』
何言っちゃってんの?! やめて! お願いだからやめて! 僕の性生活を暴露しないで!
『えー……皆様に――というか…………生徒会メンバーに! これだけは言っておきたいと思います!」
「おいバカやめろ!……何を! 何を言うつもりだ?!」
僕は無意識のうちにテレビを両手で掴み、叫んでいた。
『慎ちゃんは――』
おい……あのちびっ子…………マジかよ……。
テレビを掴んでいた手は脱力し、だらんと垂れ下がる。
『――慎ちゃんは! 私のものだァァアアァァアア!』
会見場の記者達が一斉に立ち上がり、会長の代理人にやんややんやと質問もとい詰問を投げつける。
僕はデスクから転げ落ちるようにして、飛び出し、職員室を出た。
早くここから逃げないと!
もたもたしていては、激怒した元生徒会メンバーに捕まってしまう。
奴らは僕がこの時間、亜保那高校で勤務中だと知っている。
当然、真っ先に職員室を襲撃するだろう。
ここにいては僕は終わる。
今はとりあえず安全な場所に逃げないと!
僕は這う這うの体で廊下を駆け、生徒会室の扉を勢いよく開け放った。
今は現生徒会は活動していない。
僕は生徒会室に立て籠った。
ここに来ると気持ちが落ち着く。
思えばアメリカから戻ってから、この生徒会室に来たことは一度もなかった。
懐かしい。
無駄に立派な机。
会長が勝手に改築した防音壁。
コンドームの収納された金庫。
慌てていたことすら忘れて、懐かしさに口元が緩む。
そして、僕は自然と自分の『いつもの席』に腰を下ろしていた。
しばらくすると、ガチャっと生徒会室の扉が開いた。
「慎一。やはりここにいたか」薫先輩がこめかみに青筋を作って入室する。
また扉が開く。
「慎ちゃん。そんなに監禁されたいんだ? いいよ? 下の世話も全部やってあげるから安心して?」目がイッちゃってる桃山が入室する。
また。
「慎ちゃん先輩見ィーつけたっ❤︎」謎の装置を手に持ったマッドサイエンティスト、美咲ちゃんが入室する。
当然まだ扉は開く。
「慎様の穴にねじ込みに来ましたわ」大人のおもちゃのようなドリルをドドドドと回転させたドリちゃん先輩が入室する。
あ。僕死んだわ。
ダークソ◯ルでもしているかのように僕は自分の死を他人事のように確信した。
だが、彼女達は僕を襲撃するより前に、皆一様に生徒会室を懐かしそうに眺めていた。
そして、それぞれが『いつもの席』に座る。
僕は命をかけた弁明を試みる。
「み、みんな! これには! これには近年のコンビニ弁当の容器より深い訳があるんだ!」
「慎ちゃん先輩っ❤︎ お仕置きしてから、近年のコンビニ弁当の容器並みに浅い訳を聞きますね?」
しまったァァアア! ついコンビニ弁当への怒りが言葉に出てしまったァァアア!
「とりあえず縛るか?」
「薫先輩、その前にズボン脱がさないと」
「まだですのォオオオ? ドリルが! ドリルが疼きますわァァアア!」
怖ェェエエエ!
ドリちゃん先輩に至っては怒りでモンスターみたいになっている。ダー◯ソウルでダンジョン攻略中に急に襲撃してきてもおかしくないモンスターみである。
その時だった。
再び生徒会室の扉が開かれる。
そこにはライトブラウンのミディアムヘアにアホ毛がピョコッと跳ねたシルエットがあった。
何故か腕組みをして偉そうにしている。
「待たせたねっ!」
元気よく会長が言う。
スタスタと歩いてきて、当然のように会長席に着席した。
いろいろ言いたいことはあるが、とりあえずコレだけは言っておこう。
「会長。なんで学生服着てんですか? 会長の脳みそはスクールウォーズですか?」
会長は女子高生のコスプレをしていた。コスプレと言っても5年前に来ていた自分の制服である。
「どう? 似合う?」会長がくるりと一回転して、可愛さを存分に見せつける。
「若過ぎて逆に似合わないです。ランドセルの方が似合います」
「誰が小学生だ!」
どこからどう見ても小学生である。
実際はこれで総理大臣なのだから笑えない。
「智美。当然説明してもらえるんだろうな?」薫先輩がすごむ。会長とは長い付き合いだから、余計に今回のことを怒っているのかもしれない。
しかし、会長は全く動じない。
そして、闘志や敵意も全く感じない。
それどころか、ニコッと可愛らしい笑みを見せてホワイトボードの前に立った。
今分かった。
会長は僕を独占したくて今回の件を起こしたのではない、と。
キュッキュッとホワイトボードに丸っこい文字を書いて、こちらに振り向く。
自信と愛情に満ち溢れた笑み。
会長はバンっとホワイトボードを叩いて言った。
「今回の議題は――――――」
話し合いが進む中で、次第にいつもの生徒会に戻っていく。
温かくて、バカバカしくて、ちょっとエッチな生徒会。
僕はやっぱりこの生徒会が好きだ。
この人たちとなら、この先何があったとしても大丈夫。
この人たちとなら、必ず幸せになれる。
そして、彼女たちも必ず幸せにすると、僕はここに宣言する。
「では、慎ちゃんの4日間の監禁法案は賛成多数で可決とする!」
僕が心の中で宣言するのと同時に、会長も高らかに宣言した。
「え待って。……マジで? いや嘘だよね?」
「マジです」会長が真顔で告げる。というか会長は僕を助けに来てくれたのではないのか……。
「まず一日目が薫の家でしょォ? で、次がドリちゃんでー」
会長が監禁スケジュールをつらつらと説明しだす。
薫先輩、桃山、美咲ちゃん、ドリちゃん先輩の目が全てを物語っていた。
あ。この人たちマジで監禁する気だわ。
僕はゆっくりと目を閉じて、全てを諦めた。
そして、心の中で最後のあがきとばかりになじる。
この生徒会はヤバい!
―――――――――――――
【後書き】
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!楽しんでいただけたのなら幸いです。
感想等いただけると嬉しいです。
英語の授業を終えて、職員室に入ろうとした僕に先輩教諭が立ちはだかる。
「penisを使うって……先生それセクハラですよ?」
「penisって英単語を使うなって意味です!」
「でも、僕の代名詞的な単語ですし」
「そんな卑猥な単語を代名詞にしないでください」
Mr.ペニスである僕に、こともあろうにpenisを使うなだなんて。
まったく。
日本の教師も楽じゃないな。
僕が日本に戻って3か月が過ぎていた。
今僕は母校の亜保那高校の英語教諭として働いている。
アメリカで英語を習得したことで可能となった職業だ。
必要な資格は何故か知らないが全て免除された。それで良いのか日本。
僕は先輩教諭の股下を『ヨイショ』とハイハイでくぐって、職員室に入った。
自分のデスクにつき、勝手に机上に設置したテレビの電源をオンにして、デスクに置きっぱなしにしていたみかんを手に取り、皮を剥き始める。
ニュース番組で、真剣な表情で答弁を行う自慢の彼女が映しだされた。
普段のへにゃへにゃな会長も可愛いけど、真剣な会長もグッとくるものがある。
みかんをもぐもぐしながら、僕は録画ボタンを押した。
会長との交際は続いていた。
会長は日本のトップ。多忙の身である。
会えるのは月に1回程度。
それでもデートを重ねて、『ラブラブ』といえるくらいには会長との仲は良好だった。
一方で他の元生徒会メンバーとの仲は全く進展していない。
それどころか、会長との関係も秘密にしていた。
もちろんこのままでは良くない。
時期をみて僕から彼女たちにも交際を申し込むつもりだ。
でも、物事にはタイミングというものがある。
今はそれを見計らっているところ。見失っているのではない。見計らっているのだ。
え? 再会の瞬間という最高のタイミングがあっただろうって?
違う違う! 違うんだ! 再会の瞬間はそんなことを言い出せる空気ではなかったんだ。
皆に再会して、僕はまず誠心誠意、謝ろうと思った。
そして、それを実行に移そうとした。
――が、
「皆…………勝手にいなくなって本当に――
「――慎ちゃん。監禁されるか、拘束されるか、どっちがいい?」桃山が良い笑顔で問う。
「えっと、あの――
「――あ、慎ちゃん先輩っ。これ言うこときかないと爆発するブレスレットですっ❤︎」美咲ちゃんがカチリと僕の右腕に装置をつける。
「えぇ?! いや、その――
「――慎一のお尻を打つように、鞭を新調したんだ。喜べ」薫先輩がピシャンと床を鞭打つ。
「………………」
「次同じことしたら、社会的に抹殺いたしますよ?」ドリちゃん先輩は笑顔でそう言うが、目が笑っていない。目がぐるぐるドリルである。
僕はその後、土下座で謝り倒して、なんとか許してもらったのだ。
あんなに怒っている生徒会メンバーは初めて見た。トラウマものである。
あの場で全員にまとめて告白でもしようものなら、僕は今頃彼女らの怒りをかい、監禁生活を送っていたことだろう。
とにかく彼女達は下手に刺激してはいけない。
だから、僕はことを慎重に進めている。
今はまだその時ではない。
今はまだ絶対に僕と会長との関係を知られてはいけないのだ。
ニュースは今、会長とは無関係のことを報道していた。
しかし、唐突に聞き慣れない電子音が鳴り、画面が切り替わる。
『緊急記者会見』とテロップが表示され、会長が再びテレビに映し出された。それはライブ映像ではなく、録画された映像であった。
記者会見? 何か大変なことでも起きているのだろうか? 僕は会長から何も聞かされていない。
『えー……まず直接お話しできないことをはじめにお詫びいたしみゃす』
噛んだ。可愛い。
『えー……私は長い校長先生の話が嫌いだったので、今回の記者会見は単刀直入に申し上げることとしたいと思います」
やめろ。あの頃の校長先生が悲しむから余計なことを言うな。
僕はそんなことを思いながらみかんを口に放り込む。
『えー……皆様。須田慎一をご存知でしょォか?』
ぶふォ!
口に含んだ半月形のみかんが回転しながら口から噴射された。
知ってるわけねェだろ! 一般人だぞ僕は! てか何言うつもりだ、あのちびっ子!
『えー……彼は………………私のダーリンですっ❤︎』
ザワザワザワと会見場が騒がしくなる。
あんのちびっ子ォオオオ!
やりやがった! やりやがったよ!
ヤバい! これはヤバい!
僕は動揺して意味もなく立ち上がる。
『えー……オーラルも既に致しております』
何言っちゃってんの?! やめて! お願いだからやめて! 僕の性生活を暴露しないで!
『えー……皆様に――というか…………生徒会メンバーに! これだけは言っておきたいと思います!」
「おいバカやめろ!……何を! 何を言うつもりだ?!」
僕は無意識のうちにテレビを両手で掴み、叫んでいた。
『慎ちゃんは――』
おい……あのちびっ子…………マジかよ……。
テレビを掴んでいた手は脱力し、だらんと垂れ下がる。
『――慎ちゃんは! 私のものだァァアアァァアア!』
会見場の記者達が一斉に立ち上がり、会長の代理人にやんややんやと質問もとい詰問を投げつける。
僕はデスクから転げ落ちるようにして、飛び出し、職員室を出た。
早くここから逃げないと!
もたもたしていては、激怒した元生徒会メンバーに捕まってしまう。
奴らは僕がこの時間、亜保那高校で勤務中だと知っている。
当然、真っ先に職員室を襲撃するだろう。
ここにいては僕は終わる。
今はとりあえず安全な場所に逃げないと!
僕は這う這うの体で廊下を駆け、生徒会室の扉を勢いよく開け放った。
今は現生徒会は活動していない。
僕は生徒会室に立て籠った。
ここに来ると気持ちが落ち着く。
思えばアメリカから戻ってから、この生徒会室に来たことは一度もなかった。
懐かしい。
無駄に立派な机。
会長が勝手に改築した防音壁。
コンドームの収納された金庫。
慌てていたことすら忘れて、懐かしさに口元が緩む。
そして、僕は自然と自分の『いつもの席』に腰を下ろしていた。
しばらくすると、ガチャっと生徒会室の扉が開いた。
「慎一。やはりここにいたか」薫先輩がこめかみに青筋を作って入室する。
また扉が開く。
「慎ちゃん。そんなに監禁されたいんだ? いいよ? 下の世話も全部やってあげるから安心して?」目がイッちゃってる桃山が入室する。
また。
「慎ちゃん先輩見ィーつけたっ❤︎」謎の装置を手に持ったマッドサイエンティスト、美咲ちゃんが入室する。
当然まだ扉は開く。
「慎様の穴にねじ込みに来ましたわ」大人のおもちゃのようなドリルをドドドドと回転させたドリちゃん先輩が入室する。
あ。僕死んだわ。
ダークソ◯ルでもしているかのように僕は自分の死を他人事のように確信した。
だが、彼女達は僕を襲撃するより前に、皆一様に生徒会室を懐かしそうに眺めていた。
そして、それぞれが『いつもの席』に座る。
僕は命をかけた弁明を試みる。
「み、みんな! これには! これには近年のコンビニ弁当の容器より深い訳があるんだ!」
「慎ちゃん先輩っ❤︎ お仕置きしてから、近年のコンビニ弁当の容器並みに浅い訳を聞きますね?」
しまったァァアア! ついコンビニ弁当への怒りが言葉に出てしまったァァアア!
「とりあえず縛るか?」
「薫先輩、その前にズボン脱がさないと」
「まだですのォオオオ? ドリルが! ドリルが疼きますわァァアア!」
怖ェェエエエ!
ドリちゃん先輩に至っては怒りでモンスターみたいになっている。ダー◯ソウルでダンジョン攻略中に急に襲撃してきてもおかしくないモンスターみである。
その時だった。
再び生徒会室の扉が開かれる。
そこにはライトブラウンのミディアムヘアにアホ毛がピョコッと跳ねたシルエットがあった。
何故か腕組みをして偉そうにしている。
「待たせたねっ!」
元気よく会長が言う。
スタスタと歩いてきて、当然のように会長席に着席した。
いろいろ言いたいことはあるが、とりあえずコレだけは言っておこう。
「会長。なんで学生服着てんですか? 会長の脳みそはスクールウォーズですか?」
会長は女子高生のコスプレをしていた。コスプレと言っても5年前に来ていた自分の制服である。
「どう? 似合う?」会長がくるりと一回転して、可愛さを存分に見せつける。
「若過ぎて逆に似合わないです。ランドセルの方が似合います」
「誰が小学生だ!」
どこからどう見ても小学生である。
実際はこれで総理大臣なのだから笑えない。
「智美。当然説明してもらえるんだろうな?」薫先輩がすごむ。会長とは長い付き合いだから、余計に今回のことを怒っているのかもしれない。
しかし、会長は全く動じない。
そして、闘志や敵意も全く感じない。
それどころか、ニコッと可愛らしい笑みを見せてホワイトボードの前に立った。
今分かった。
会長は僕を独占したくて今回の件を起こしたのではない、と。
キュッキュッとホワイトボードに丸っこい文字を書いて、こちらに振り向く。
自信と愛情に満ち溢れた笑み。
会長はバンっとホワイトボードを叩いて言った。
「今回の議題は――――――」
話し合いが進む中で、次第にいつもの生徒会に戻っていく。
温かくて、バカバカしくて、ちょっとエッチな生徒会。
僕はやっぱりこの生徒会が好きだ。
この人たちとなら、この先何があったとしても大丈夫。
この人たちとなら、必ず幸せになれる。
そして、彼女たちも必ず幸せにすると、僕はここに宣言する。
「では、慎ちゃんの4日間の監禁法案は賛成多数で可決とする!」
僕が心の中で宣言するのと同時に、会長も高らかに宣言した。
「え待って。……マジで? いや嘘だよね?」
「マジです」会長が真顔で告げる。というか会長は僕を助けに来てくれたのではないのか……。
「まず一日目が薫の家でしょォ? で、次がドリちゃんでー」
会長が監禁スケジュールをつらつらと説明しだす。
薫先輩、桃山、美咲ちゃん、ドリちゃん先輩の目が全てを物語っていた。
あ。この人たちマジで監禁する気だわ。
僕はゆっくりと目を閉じて、全てを諦めた。
そして、心の中で最後のあがきとばかりになじる。
この生徒会はヤバい!
―――――――――――――
【後書き】
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!楽しんでいただけたのなら幸いです。
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逆転系だけどギャグとコミカルとちょいムフフなのが良いですね👍️
普通に面白いですww