上 下
12 / 55

第12夜 〇〇に乗る

しおりを挟む
変な夢を見た。

  わたしは、〇〇に乗って、草原を駆けていた。
  〇〇は、私の愛〇〇。気分がすぐれない時は、〇〇に乗って、草原を駆ける。
 
 「はいどぉ。はいどぉ」と言って、〇〇の横腹を蹴る。

  突然、〇〇がいななき、後ろ脚だけで立ち上がる。
  わたしは、落ちないよう、〇〇に必死につかまる。
 
 「〇〇のばか。落ちるじゃない!」

  〇〇はいななき、今度は全力で走り始める。

  ママが遠くから、優しい笑みを浮かべながら、わたし達を見守っている。

  突然、〇〇がしゃべり始める。
 「菜音なのん・・・。
  パパ、もう疲れたよ・・・。お馬さんごっこは、終わり・・・終わり。」

  パパは、ゆっくりと減速し、止まってしまった。 
  草原も、いつの間にか、畳張りの和室に変わっている。

  わたしは、不満そうな顔をして、パパから降りる。
  パパは、わたしを抱え上げると、大きい肩にわたしを乗せ、クルクル回りだす。

 「キャハァハハハ、アハハハハ・・・。」

  わたしの笑い声が、部屋中に響き渡る。

そこで目が覚めた。

どうやら、白昼夢を見ていたらしい。

今、わたしの前で、家が取り壊されている。
わたし達、家族が住んでいた古い家が・・・。
わたしの想い出が、ぎっしりと詰まった家。

あの時のパパの背中が懐かしい・・・。
あの時のママの笑顔が懐かしい・・・。

わたしの頬を涙が伝った。
しおりを挟む

処理中です...