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第9夜 洗濯

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変な夢を見た。

  私は、女と一緒に生活していた。
  結婚生活なのか、同棲生活なのかはわからない。
 
  女の名前は、『九麗寺くれいじ 菜音なのん』というらしい。
  顔のつくりは・・・私好みとだけ言っておこう。
  詳細を伝えたところで、伝わらないだろう。
  それ以外に関しては、説明できない。
  なにせ、一夜の夢の出来事だから・・・。

  私達は、あることについて、話し合いをしていた。
  彼女が詰問する立場、私が詰問される立場だ。

 菜音「さあ、白状しなさい! あんたでしょう。」

 私 「イヤ、ボクじゃない、ボクじゃない。ボクはそんなことしない。」

 菜音「あのねえ・・・。この家には、わたし達、ふたりしか住んでいないの!
    わたしじゃなかったら、あんたしかっ・・・いないじゃない!」

 私 「イヤ、ボクじゃないって。
    きっとほら、えーと、そう、幽霊っ! 幽霊が食べたんだよ。」

 菜音「お・め・え・は・・・アホかッ!。
    幽霊がなッ、いちご大福、食えるわけないだろがッ!
    いい加減・・・白状しなさい!」

 私 「ボ、ボクじゃ、ボクじゃ・・・」

 菜音「まだ、言い訳ぇ?
    アァ、もうっ! アタマにきた! こうしてやるッ! エイッ」

 私 「ギャア~!」

  なんと、菜音は、私の胸の中に手を突っ込み、ごそごそとまさぐり始めたのだ。
  痛みはないが、くすぐったい感覚が、胸の中を襲う。
  菜音は、手を引っこ抜く。
  何やら・・・黒く染まったものを手にしている。

 菜音「ほらァッ! この嘘つきィッ! 
    あんたの心、思った通り、真っ黒じゃない!」

 私 「ごめんなさい。つい。美味うまそうだと思って・・・。
    ・・・あっ・・・そうそう・・・。
    ほら・・・食べた後に気づいたんけど、賞味期限切れてたし・・・。
    ボク、菜音が、おなか壊したらいけないと思って、代わりに食べてあげたん
    だよ! そう、そうなんだ!」

 菜音「あんたっ! あんたのそのどす黒い心、今すぐ、洗濯してやる!」

  そう言うなり、菜音は、手にした私の心を洗濯機に入れると、漂白剤を大量に入
 れ、回し始めた。数十分後、洗濯機が止まり、菜音は、私の心を取り出した。

  それは、きれいだった。
  あんなに真っ黒に汚れていた心。
  今では、純真無垢を表すかのように真っ白だ・・・。

  菜音が、私の胸の中に心を戻した。
  私は、一瞬、何かがおかしいと感じた。
  菜音にそのことを伝える。

 私 「ホギャッ、ホギャァ、ブぅー・・・」

 菜音「あら、まあ、どうちたの? ボクちゃん・・・。
    ・・・ちょっと、洗いすぎたかしら? ウフッ・・・。」

そこで目が覚めた。
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