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君を愛することはないと言われ白い結婚をしたのに他の男といると怒られるのはなぜ?

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「政略結婚で仕方なく婚姻関係を結ぶだけで、君を愛することはない」

ユリヤルヴィ公爵の次女である私、エレオノーラに向かって、結婚相手である第三王子のクラウス・ネヴァライネン様は初対面でそう釘を刺してきた。

「承知しました、そのつもりでおります」

私は恭しく頭を下げた。
最初の謁見はそれで終わりだった。

結婚後もクラウス様は私の元へ訪れることはなく――二人の関係を一言で表すならば、いわゆる白い結婚ということになりそうだった。

彼がどこで何をしているのかは大体検討が付いている。嫁ぎ先の使用人とは仲良くなったので、皆色々教えてくれるのだ。

「今日はイルマ嬢と湖畔の別荘においででした」

「今日はマルガレータ様とご一緒にお庭を散歩しておいででした。その後見張りを近くに置いて誰も近寄らせずにガゼボでお休みになられたようです」

「今日はテレサ様とクリケットをお楽しみになられて、その後は温室でお楽しみだったようです」

どうやらクラウス殿下は大変な好色家であるらしかった。
それを姉のアイラに話すと彼女はこう言った。

「あら、殿下がお楽しみになってるのなら、あなたも好きに楽しめばいいじゃない」

「え……? 私も?」

「そうよ。白い結婚なんだもの。お互い自由に楽しめばいいと思うわ」

アイラお姉さまは公爵家を継ぐために幼馴染のヤーコブを婿として迎え入れている。

「羨ましいわ~。私は好きでもない相手と結婚して、ユリヤルヴィ家の名誉を守らないといけないから不倫なんてできないし」

「あら、そんなこと言って本当はヤーコブと愛し合ってるのはみんな知っているのよ」

「あら、そうだったわね。オホホ!」

姉夫婦はとても仲が良く、近所でも評判なのだ。私もそんな仲睦まじい二人が羨ましいけれど……

「まぁ、クラウス様のことは残念だけど他に楽しみを見つけることよ」

姉は私を励まして帰っていった。

それから私は姉に言われたことを実践してみることにした。
王宮のあちこちで、若くて美しい男と見れば声を掛けて仲良くなった。
幸い私は異性に好かれる顔立ちをしているため、嫌な顔をする男性はいなかった。

クラウス王子は男ばかりの五人兄弟。王太子には許嫁がいるので避けて、それ以外の兄や弟にもお声掛けしてみた。
第四、第五王子が私の誘いに乗って、ちょっとした火遊びを楽しんだ。

すると、結婚してから今まで私の顔を見に来たこともないクラウス殿下が私の部屋にやって来て言った。

「そなた、私の弟たちと親密にしていると聞いたが本当か?」

「――それが何か? クラウス様もイルマ様やマルガレータ様と仲良くしていらっしゃるのですよね」

私がそう返すと言葉に詰まったクラウス様はそのまま出て行かれた。

なのでその後も美形の宮廷騎士や逞しい庭師などに遊びの誘いをかけてみた。
それほど楽しいものではなかったが、憂さ晴らしにはなる。

するとまたクラウス様が不機嫌そうな顔で私の部屋を訪れた。

「エレオノーラ! 騎士や庭師にまで手を出しているのか!?」

あら。殿下は相当お怒りのようね。

「そうだったらどうなんですの? 離婚でもいたします?」

「離婚などしてたまるか! ……ごほん。まさか、君は離婚したいのか?」

殿下は咳払いをしながら気まずそうに私を見つめた。

「いいえ、とんでもない。私はクラウス様と結婚できて嬉しく思っていますので」

それからクラウス様は不思議と私の元へよく顔を見せてくれるようになり、夜も私の寝所へお越しになるようになった。そして何かと贈り物までしてくれるようになったのだ。

結婚から一年半が経ち、私の元へ姉がまた訪ねて来てくれた。

「おめでとうエレオノーラ、もう何ヶ月になるの?」

「ありがとうお姉様。今七ヶ月目ですのよ」

私は第一子を妊娠中だった。勿論、クラウス様との子だ。

「最近あなたたちが随分仲がいいと街でも評判なのよ。遊び相手だったお嬢さんたちが悔しがっているのですって」

「まあ、そうなの?」

「そうよ。良かったじゃない」

「ええ、お姉様の言う通り好きにしてみて良かったわ」

こうして最初の宣言が嘘のように、私たちは仲良し夫婦になったのであった。



END

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