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【チェスター×リカルド】家族になりたい
8話:甘えさせて(リカルド)
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ラルフの所でリカルドとチェスターは一泊し、他の騎士団メンバーは片付けを終えてその日のうちに単騎で帰っていった。仮眠程度は各自取ったらしいがほぼ休み無し。改めて騎士という者達の逞しさを見た気がした。
今は幌馬車に揺られて帰る途中。行きにも立ち寄った長閑な町の宿についた。
「リカルド、疲れてない?」
「平気ですよ」
荷物を持ってくれるチェスターが此方を振り向いて問いかけてくる。それににっこりと笑みを見せたリカルドを見て、チェスターはほんのりと頬を染めた。
おや?
「あの、リカルド」
「続きはとりあえず宿の部屋で。ね?」
彼はとても分かりやすい。頬も、耳も赤くなっている。そのくせ視線は熱を帯びていて精悍に見える。そんな顔で問われる事など多くはない。
頷いたチェスターはそそくさと宿を取り、二人でとりあえず部屋へと入った。
簡素なツインの部屋は清潔で気持ちがいい。行きにも思ったが良い宿だ。風も通してあるし、寝具も洗い立てのお日様の匂いがする。
「あの、リカルド」
「夕飯、どうしましょうか?」
「え! あっ、どうしよう。どこか食べに行く?」
「そんなに時間を使っていいのですか?」
「あ! えっと……え?」
キョトッとして動きを止めるチェスターを見て、リカルドは堪えきれず声を出して笑った。くすくすっと口元に手をやって笑うのを見て、チェスターは顔を真っ赤にした。
「もぉ、先生俺をからかわないでよ」
「おや、先生ですか?」
「……リカルドの意地悪」
「ふふっ、ごめんなさい」
だって、可愛いから。全身から『好きだ』と感じるチェスターを、もっと見ていたいと思ってしまうからついつい。
笑いを収めたリカルドが向き直る。そしてちゃんとチェスターの言葉を待った。
「言っていただけませんか?」
「分かってるくせに」
「聞きたいのです。いけませんか?」
改めて。そうなると少しハードルが上がる。何度か口を開きかけては閉ざし、手を止めて、ようやく口を開いた。
「今夜、リカルドとしたい」
「初夜がまだ、ですからね」
式を挙げた日は流石に遠慮した。あそこはラルフの家だし、案外声が通る。そこで堂々イチャつく気にはなれなかった。
チェスターとしては我慢しただろう。そしてリカルドもいつ言ってくれるかとドキドキしていた。
「いいかな?」
「構いませんよ」
「よかった!」
途端、ぱっと表情を明るくするチェスターは本当に嬉しそうな、ある種無邪気な笑みを浮かべた。
時間を惜しんで宿で早々に食事をすませ、お風呂も済ませてきた。身体も綺麗さっぱりだ。
そうして部屋に戻ると、先にお風呂を済ませていたチェスターが緊張した様子でベッドに座っている。
今更、そんなに緊張なんてしなくてもいいだろうに。思いはするが、やはり今日は特別なのだろうと察する。
随分と精悍な顔をするようになった。そんな彼が愛おしい。時々、本当にどうしようもない迷走をすることもあるけれど結局はこの結論だ。
彼が愛しい。彼で無ければいけないのだと。
「チェスター」
にっこりと微笑み、リカルドは両腕を広げる。それを見て立ち上がり、飛び込んでくるのだから愛しさも可愛さも増すばかりだ。
「緊張など無用ですよ。いつも通りでいいのです」
「でも、特別な夜だよ?」
「おや、私にとっては貴方と抱き合う日はいつも特別ですが?」
「先生、ずるい事言うようになったよね」
ほんの少しジトリ。でもそれもまた可愛い。くすくす笑い、そっと頬にキスをする。なにも嘘を言っているわけじゃない。本当に毎回が特別な日だ。
「本当の気持ちです。貴方と愛し合う日はいつも嬉しくて特別です」
「俺、ちゃんと気持ち良くできてる?」
「勿論。貴方に触れられると私はいつも幸せで、とても気持ちいいですよ」
これにも嘘はない。案外飲み込みが早く反復練習もするのだ。だからドンドン余裕がなくなっていく。元より性への目覚めが遅すぎたのもあって、最近のリカルドは翻弄されっぱなしだ。
「優しく、して下さいね?」
「勿論!」
口にしなくても顔を見れば分かる「頑張る!」の意気込み。これがとても可愛いなんて、どれだけ彼が好きなのだろう。ほんの少し、恥ずかしいくらいだった。
明かりを落とした室内で互いの唇を吸う音が響く。ベッドに押し倒され、受け入れるキスの甘さは格別だった。
最初から全てを脱ぎ捨てて触れあう肌の熱さを知る。逞しく引き締まった身体に、男の強さを見るようだった。
「リカルド」
「んっ」
見下ろしてくる瞳が切なげに揺れている。互いの唾液に濡れた唇の淫靡さはチェスターを雄々しく見せた。
手を伸ばし、自ら身体を上げて頬に触れてもう一度キスを。口腔に舌を差し込み、彼の唇を貪りながらリカルドも気持ち良くなっていく。
「リカルド、気持ちいい?」
「はい」
「今日、凄くエロい顔してる……なんか、理性切れそう」
「ふふっ、いいですね。たまにはそんな野獣の貴方に襲われてみたいですよ」
「またそういう事言う。……辛かったら、言ってね?」
「はい」
真っ赤になったチェスターの可愛い顔。それを見つめ、リカルドはにっこりと微笑んだ。
手が胸元を触り、ふにふにと揉み込んでくる。すぐに奥がじわりと疼いて、リカルドはふっと息を吐いた。
初めての時は感じなかった胸も、今では敏感な性感帯の一つになった。優しく全体を包み込むように揉まれると少しずつ頂きが勃ちあがってくる。まだそこには触れていないのに。
「あっ、あぁ……」
切ない声が漏れてしまう。期待した身体が反応する。浅ましく変化していく自身の身体を見て、リカルドは羞恥心を募らせている。
「いつもより感じてる」
「はい……特別な夜に浮かれているのは、私も同じなんです」
赤く、少し目のやり場に困った顔のチェスターの手もまた熱い。そんな熱い手が身体に触れて目覚めさせていく。官能を教え込んでいく。
「あはぁ! あっ、ふぅ」
爪がカリカリっと乳首の先端を引っ掻く刺激に、私は仰け反ってしまった。ビリッと痺れた感じが腰骨にも頭にも響いた。
ちゃんと分かっている動きで、硬くなったそこを摘ままれる。少し強めに潰されると僅かな痛みの奥底に快楽がある。角度を変え、時には潰したままコリコリと捻られて更に深く溺れてしまいそうだ。
指でされていない方は唇で。硬い乳首を押し込まれ、吸い付かれてまたビリビリ痺れる。下肢も重く疼き、腰が自然と揺れている。あまりに気持ちがよくて意識がふわふわ浮いていた。
「リカルド凄い」
「はぁ……え?」
言われ、チェスターの視線を辿りリカルドは絶句した。先走りで腹の上がドロドロになっている。ヌチッと透明な糸を引く淫靡さにまた身体が熱くなっていく。
チェスターが空いている手を伸ばし、昂ぶりに優しく触れて上下に扱いた。瞬間、駆け上がった電撃がリカルドを串刺しにする。思わず高く泣いて震えた。そしてとっぷりと、彼の手の中に先走りを出していた。
「もしかして、イッてる?」
「はぁ……はひぃ……」
茫然自失だった。あまりに刺激が強くて今も意識がちょっとお留守だ。腰骨が痺れる、勝手に腰が動く。何より腹の中がキュンキュンと蠢いている。僅かにヒクヒクと痙攣しながら、リカルド自身が驚いた。
射精していないのに、イッた感覚が凄い。腹の中がイッている?
「可愛い……」
「え?」
「今日のリカルド、凄く可愛い」
顔を真っ赤にしながらもチェスターがそんな事を言う。そして彼の下肢もまた、一気に力を付けて雄々しくなろうとしていた。
「私も、触りたい……」
「え! あの、でも俺……出ちゃうかも」
「飲ませてくれますか?」
「うぇえ!」
動揺するチェスターの下から抜け出し、リカルドはベッドの上に四つん這いになる。そして躊躇いもなくチェスターの昂ぶりを口腔へと収めた。
男の匂いと味がする。少し塩っぱくて、どこか青臭いような匂い。でも知っているもので嫌悪はない。むしろ、興奮している。
根元に手を添え、上下に身体ごと動かして扱いて行けば口の中で大きく硬く育っていく。こんな事がとても嬉しく、そして興奮する。
チェスターの手が背に触れ、ツ……っと背骨をなぞる。それだけでもリカルドは気持ち良くなってしまう。
手はそのまま尻を柔らかく揉み、割れ目をゆっくり割り開く。そして窄まりに指を添えると、ほんの少し潜り込ませてきた。
「んぅぅ」
「痛かった? ごめん!」
「んぅぅ」
違うと、彼のものを咥えたまま首を横に振った。驚いたけれど痛くない。むしろ、気持ちいい……。
指が遠慮がちに入口をゆっくり出入りしている。第一関節入っているかという浅さが逆に辛い。身体は期待しきっている。
そしてリカルドの口の中でチェスターはすっかり育ち筋を浮かせ、傘を張っている。先走りが喉奥に絡みついて、それを唾液と混ぜて飲み込んでいくと余計に淫靡な気持ちになっていく。
「リカルド、も……離して! 出ちゃうから!」
「やです」
それを聞いてどうして離す奴がいる。心臓がとても煩い。全身に血が巡る。恍惚とした表情でリカルドは丁寧にチェスターの昂ぶりを舐め、含む。形を変え育ち、今にも達してしまいそうなのを待ち受ける気分だ。
「リカルド!」
「っ! げほっ、んっ」
グイグイ頭を押して離そうとしたチェスターに逆らい、リカルドは更に深く喉に届きそうな程咥えこんだ。喉奥に触れほんの僅か涙が浮かぶそのタイミングで、チェスターは堪えきれず流し込む勢いで達した。弱い部分に突然起こった刺激にむせてしまうが、リカルドは口を閉じて唾液に混ぜて飲み込んでしまう。あまり得意な行為ではないが、何故か興奮もするのだ。
「うわぁ! リカルドダメだよ!」
「んぅ、チェスター」
頭の中もふわふわする。全身発情したみたいに敏感だ。トロッとした表情でチェスターを見上げるリカルドに、彼の方が真っ赤だ。
「リカルド、凄く色っぽい……」
「では、もっと飲ませて」
「……何処に?」
おずおずと聞かれ、リカルドはくるりと向きを変えた。
「こちらに」
「……理性、切れるかも」
「構いませんよ」
むしろ今日はそれを望んでいるのかもしれない。
香油に濡れた指がゆっくりと、でも確かに身体を開いていく。これも最初は慣れなかった。でも今では望んだ刺激となっている。
事前準備もしたからそう難しくなく指が二本入り込み、解すように開かれていく。駆け上がるのはピリッと響く快楽。四つん這いになる足や腕が僅かに震えた。
「リカルドの中、凄く熱くなってる」
「望んでいるからですよ」
ここに欲しいのだと明確に分かってしまう。一人で生きると決めていた頃の自分なら、きっと想像もできなかっただろう。
「もぅ、リカルドのエッチ」
「チェスターは違うのですか?」
「もの凄くムラムラする!」
「ふふっ」
素直な所が可愛い。笑うリカルドだったが、その声は突如触れた弱い部分の刺激に喘ぎに変わった。
「ここだよね」
「あっ、やっ……あぁ!」
硬くなる部分を優しく押し込まれ、撫でられる。それだけで背がビリビリして上体が倒れていってしまう。胸がシーツに擦れてこれも刺激だ。トロトロとした先走りが、シーツにツ……っと糸を引く。
「ごめん……本当に駄目かも」
「あ……」
背に触れた唇の熱さに震える。興奮した息づかいと舌の感触も響いてくる。あっあっ……と短く声が漏れてしまうリカルドは後ろを振り向き、求めて唇を開ける。そこに、望むキスが与えられた。
「もっ、欲しいです」
「痛いかも」
「いいから、お願い」
後ろから指が抜け、身体を返される。天井とチェスターを見上げたリカルドは腕を広げた。
「リカルド」
「ぁん! あっ、はぁぁんぅぅ!」
後孔へと触れた熱い切っ先がゆっくり丁寧に押し入ってくる。慣しが不足していた分は痛んだが、ここは既に彼の大きさも形も知っている。上手に飲み込めている。
「っ! リカルドの中、凄く熱い……んぅぅ!」
「チェスター」
「すご……あっ、食べられそう」
茶色の瞳が色気を溢れさせて歪む。腕を回した背に汗をかいている。普段は可愛くも見えるチェスターが男らしく見えて胸が震えた。
自慢の旦那様だ。こんなにも可愛くて、こんなにも雄々しくて……幸せだ。
ゆっくり馴染ませながら抽送を繰り返したチェスターがしっかりと奥まで入るまでややかかった。その間に彼もリカルドも汗だくになっている。
腹の奥まで硬く熱い楔が打ち込まれているのを感じる。薄い腹を撫でるとよりしっかりと感じた。
「ここまで、きてる?」
「……エロいよ、リカルド」
切なく困った顔をしたチェスターが腰を揺する。途端、中の楔が緩やかな力で底を打ち押し上げてくる。激しい動きではない。でもだからこそ、優しく追い上げられていく。
「あっ、それダメ……ぁあ!」
「気持ちいい?」
「いい、です」
凄くゆっくりと波が押し寄せてくる。奥の行き止まりを擦りつけられると意識が揺れる。心地よく背を這い上がる疼きと痺れが全身に回って犯されていく感覚にリカルドは震えた。
緩く引いては緩く突き込まれる。腹の中全部を擦り上げられる度に甘い毒が回る。激しい快楽はないのに、ずっと意識が浮いていた。
「チェスター、もっと欲しい。もっともっと、奥を突いて」
「大丈夫?」
「お願い」
だって、我慢してこちらを気遣っているでしょ?
寄った眉根を見るとそう感じる。本当は求めたいでしょ? そう思わせる表情だ。
包み込むようにぴったりと抱きしめるチェスターに甘え、リカルドも抱きつく。内壁を抜けていく熱い楔が深く強めに奥を突いた。
「んぅぅ!」
ビリビリとした痺れに串刺しにされ、リカルドの昂ぶりからとぷりと白濁が押し出される。チェスターの腹筋にも擦られて余計に止まらない。一回の量は少ないが、ずっと全身でイッている感じがある。
何度もそうして奥をえぐり出され、リカルドは縋るようにかき抱いた。もう直ぐ側まで大きな波がきている。足の指まで力が入っておかしくなりそう。ブルブル震え、求めてキスをしてグチャグチャに舌を絡めたリカルドに、チェスターは嬉しそうに笑った。
「リカルド、愛してるよ」
「っ! あっ、やぁぁ! あぁぁぁぁっ!」
こんな所で、狡い。不意打ちなんかに耐えられない。
深く、一際強く最奥を突き上げられ、リカルドは激しい波に飲まれて達した。腰骨を中心に足先も頭の天辺も痺れていく。腹の奥がギュッと締まって、そこにチェスターも吐き出すのを感じた。奥に押しつけながら放たれるものに犯され、染められていく。これを幸福と感じるリカルドは幸せな笑みを浮かべながら甘い刺激に犯されていった。
◆◇◆
翌朝、昼過ぎになってようやく二人は町を出発した。到底起きられなかった。
結局あのあと二人で求め合ってバックで一回。抱き合って眠ろうとしたけれどおやすみのキスが本気になって擦り合わせて更に一回してしまい、落ちるように眠った。こんなに求めたのは初めてで、流石に少し恥ずかしかった。
遅い時間だからか乗り合い馬車には二人しかいない。何となく恥ずかしくて、リカルドは黙ったままになっている。
「あの、リカルド?」
「はい!」
「あっ! えっと……昨日、無理させてごめんね?」
あちらも恥ずかしそうに言ってくる。でもごめんねは違うと思う。すぐ隣にあるチェスターの肩に凭れ、指輪のはまる左手で彼の手を握った。
「二人で求めたんですよ」
「でも」
「気持ち良かったです。愛していますよ、チェスター」
「! 俺も、愛してるよリカルド」
「ふふっ」
今も少し腰が重怠いし、違和感もある。けれど気持ちはこんなにも軽く幸せだ。だから全然辛くない。
幸せな二人を連れて、馬車はゆっくりと王都へ向かっていった。
今は幌馬車に揺られて帰る途中。行きにも立ち寄った長閑な町の宿についた。
「リカルド、疲れてない?」
「平気ですよ」
荷物を持ってくれるチェスターが此方を振り向いて問いかけてくる。それににっこりと笑みを見せたリカルドを見て、チェスターはほんのりと頬を染めた。
おや?
「あの、リカルド」
「続きはとりあえず宿の部屋で。ね?」
彼はとても分かりやすい。頬も、耳も赤くなっている。そのくせ視線は熱を帯びていて精悍に見える。そんな顔で問われる事など多くはない。
頷いたチェスターはそそくさと宿を取り、二人でとりあえず部屋へと入った。
簡素なツインの部屋は清潔で気持ちがいい。行きにも思ったが良い宿だ。風も通してあるし、寝具も洗い立てのお日様の匂いがする。
「あの、リカルド」
「夕飯、どうしましょうか?」
「え! あっ、どうしよう。どこか食べに行く?」
「そんなに時間を使っていいのですか?」
「あ! えっと……え?」
キョトッとして動きを止めるチェスターを見て、リカルドは堪えきれず声を出して笑った。くすくすっと口元に手をやって笑うのを見て、チェスターは顔を真っ赤にした。
「もぉ、先生俺をからかわないでよ」
「おや、先生ですか?」
「……リカルドの意地悪」
「ふふっ、ごめんなさい」
だって、可愛いから。全身から『好きだ』と感じるチェスターを、もっと見ていたいと思ってしまうからついつい。
笑いを収めたリカルドが向き直る。そしてちゃんとチェスターの言葉を待った。
「言っていただけませんか?」
「分かってるくせに」
「聞きたいのです。いけませんか?」
改めて。そうなると少しハードルが上がる。何度か口を開きかけては閉ざし、手を止めて、ようやく口を開いた。
「今夜、リカルドとしたい」
「初夜がまだ、ですからね」
式を挙げた日は流石に遠慮した。あそこはラルフの家だし、案外声が通る。そこで堂々イチャつく気にはなれなかった。
チェスターとしては我慢しただろう。そしてリカルドもいつ言ってくれるかとドキドキしていた。
「いいかな?」
「構いませんよ」
「よかった!」
途端、ぱっと表情を明るくするチェスターは本当に嬉しそうな、ある種無邪気な笑みを浮かべた。
時間を惜しんで宿で早々に食事をすませ、お風呂も済ませてきた。身体も綺麗さっぱりだ。
そうして部屋に戻ると、先にお風呂を済ませていたチェスターが緊張した様子でベッドに座っている。
今更、そんなに緊張なんてしなくてもいいだろうに。思いはするが、やはり今日は特別なのだろうと察する。
随分と精悍な顔をするようになった。そんな彼が愛おしい。時々、本当にどうしようもない迷走をすることもあるけれど結局はこの結論だ。
彼が愛しい。彼で無ければいけないのだと。
「チェスター」
にっこりと微笑み、リカルドは両腕を広げる。それを見て立ち上がり、飛び込んでくるのだから愛しさも可愛さも増すばかりだ。
「緊張など無用ですよ。いつも通りでいいのです」
「でも、特別な夜だよ?」
「おや、私にとっては貴方と抱き合う日はいつも特別ですが?」
「先生、ずるい事言うようになったよね」
ほんの少しジトリ。でもそれもまた可愛い。くすくす笑い、そっと頬にキスをする。なにも嘘を言っているわけじゃない。本当に毎回が特別な日だ。
「本当の気持ちです。貴方と愛し合う日はいつも嬉しくて特別です」
「俺、ちゃんと気持ち良くできてる?」
「勿論。貴方に触れられると私はいつも幸せで、とても気持ちいいですよ」
これにも嘘はない。案外飲み込みが早く反復練習もするのだ。だからドンドン余裕がなくなっていく。元より性への目覚めが遅すぎたのもあって、最近のリカルドは翻弄されっぱなしだ。
「優しく、して下さいね?」
「勿論!」
口にしなくても顔を見れば分かる「頑張る!」の意気込み。これがとても可愛いなんて、どれだけ彼が好きなのだろう。ほんの少し、恥ずかしいくらいだった。
明かりを落とした室内で互いの唇を吸う音が響く。ベッドに押し倒され、受け入れるキスの甘さは格別だった。
最初から全てを脱ぎ捨てて触れあう肌の熱さを知る。逞しく引き締まった身体に、男の強さを見るようだった。
「リカルド」
「んっ」
見下ろしてくる瞳が切なげに揺れている。互いの唾液に濡れた唇の淫靡さはチェスターを雄々しく見せた。
手を伸ばし、自ら身体を上げて頬に触れてもう一度キスを。口腔に舌を差し込み、彼の唇を貪りながらリカルドも気持ち良くなっていく。
「リカルド、気持ちいい?」
「はい」
「今日、凄くエロい顔してる……なんか、理性切れそう」
「ふふっ、いいですね。たまにはそんな野獣の貴方に襲われてみたいですよ」
「またそういう事言う。……辛かったら、言ってね?」
「はい」
真っ赤になったチェスターの可愛い顔。それを見つめ、リカルドはにっこりと微笑んだ。
手が胸元を触り、ふにふにと揉み込んでくる。すぐに奥がじわりと疼いて、リカルドはふっと息を吐いた。
初めての時は感じなかった胸も、今では敏感な性感帯の一つになった。優しく全体を包み込むように揉まれると少しずつ頂きが勃ちあがってくる。まだそこには触れていないのに。
「あっ、あぁ……」
切ない声が漏れてしまう。期待した身体が反応する。浅ましく変化していく自身の身体を見て、リカルドは羞恥心を募らせている。
「いつもより感じてる」
「はい……特別な夜に浮かれているのは、私も同じなんです」
赤く、少し目のやり場に困った顔のチェスターの手もまた熱い。そんな熱い手が身体に触れて目覚めさせていく。官能を教え込んでいく。
「あはぁ! あっ、ふぅ」
爪がカリカリっと乳首の先端を引っ掻く刺激に、私は仰け反ってしまった。ビリッと痺れた感じが腰骨にも頭にも響いた。
ちゃんと分かっている動きで、硬くなったそこを摘ままれる。少し強めに潰されると僅かな痛みの奥底に快楽がある。角度を変え、時には潰したままコリコリと捻られて更に深く溺れてしまいそうだ。
指でされていない方は唇で。硬い乳首を押し込まれ、吸い付かれてまたビリビリ痺れる。下肢も重く疼き、腰が自然と揺れている。あまりに気持ちがよくて意識がふわふわ浮いていた。
「リカルド凄い」
「はぁ……え?」
言われ、チェスターの視線を辿りリカルドは絶句した。先走りで腹の上がドロドロになっている。ヌチッと透明な糸を引く淫靡さにまた身体が熱くなっていく。
チェスターが空いている手を伸ばし、昂ぶりに優しく触れて上下に扱いた。瞬間、駆け上がった電撃がリカルドを串刺しにする。思わず高く泣いて震えた。そしてとっぷりと、彼の手の中に先走りを出していた。
「もしかして、イッてる?」
「はぁ……はひぃ……」
茫然自失だった。あまりに刺激が強くて今も意識がちょっとお留守だ。腰骨が痺れる、勝手に腰が動く。何より腹の中がキュンキュンと蠢いている。僅かにヒクヒクと痙攣しながら、リカルド自身が驚いた。
射精していないのに、イッた感覚が凄い。腹の中がイッている?
「可愛い……」
「え?」
「今日のリカルド、凄く可愛い」
顔を真っ赤にしながらもチェスターがそんな事を言う。そして彼の下肢もまた、一気に力を付けて雄々しくなろうとしていた。
「私も、触りたい……」
「え! あの、でも俺……出ちゃうかも」
「飲ませてくれますか?」
「うぇえ!」
動揺するチェスターの下から抜け出し、リカルドはベッドの上に四つん這いになる。そして躊躇いもなくチェスターの昂ぶりを口腔へと収めた。
男の匂いと味がする。少し塩っぱくて、どこか青臭いような匂い。でも知っているもので嫌悪はない。むしろ、興奮している。
根元に手を添え、上下に身体ごと動かして扱いて行けば口の中で大きく硬く育っていく。こんな事がとても嬉しく、そして興奮する。
チェスターの手が背に触れ、ツ……っと背骨をなぞる。それだけでもリカルドは気持ち良くなってしまう。
手はそのまま尻を柔らかく揉み、割れ目をゆっくり割り開く。そして窄まりに指を添えると、ほんの少し潜り込ませてきた。
「んぅぅ」
「痛かった? ごめん!」
「んぅぅ」
違うと、彼のものを咥えたまま首を横に振った。驚いたけれど痛くない。むしろ、気持ちいい……。
指が遠慮がちに入口をゆっくり出入りしている。第一関節入っているかという浅さが逆に辛い。身体は期待しきっている。
そしてリカルドの口の中でチェスターはすっかり育ち筋を浮かせ、傘を張っている。先走りが喉奥に絡みついて、それを唾液と混ぜて飲み込んでいくと余計に淫靡な気持ちになっていく。
「リカルド、も……離して! 出ちゃうから!」
「やです」
それを聞いてどうして離す奴がいる。心臓がとても煩い。全身に血が巡る。恍惚とした表情でリカルドは丁寧にチェスターの昂ぶりを舐め、含む。形を変え育ち、今にも達してしまいそうなのを待ち受ける気分だ。
「リカルド!」
「っ! げほっ、んっ」
グイグイ頭を押して離そうとしたチェスターに逆らい、リカルドは更に深く喉に届きそうな程咥えこんだ。喉奥に触れほんの僅か涙が浮かぶそのタイミングで、チェスターは堪えきれず流し込む勢いで達した。弱い部分に突然起こった刺激にむせてしまうが、リカルドは口を閉じて唾液に混ぜて飲み込んでしまう。あまり得意な行為ではないが、何故か興奮もするのだ。
「うわぁ! リカルドダメだよ!」
「んぅ、チェスター」
頭の中もふわふわする。全身発情したみたいに敏感だ。トロッとした表情でチェスターを見上げるリカルドに、彼の方が真っ赤だ。
「リカルド、凄く色っぽい……」
「では、もっと飲ませて」
「……何処に?」
おずおずと聞かれ、リカルドはくるりと向きを変えた。
「こちらに」
「……理性、切れるかも」
「構いませんよ」
むしろ今日はそれを望んでいるのかもしれない。
香油に濡れた指がゆっくりと、でも確かに身体を開いていく。これも最初は慣れなかった。でも今では望んだ刺激となっている。
事前準備もしたからそう難しくなく指が二本入り込み、解すように開かれていく。駆け上がるのはピリッと響く快楽。四つん這いになる足や腕が僅かに震えた。
「リカルドの中、凄く熱くなってる」
「望んでいるからですよ」
ここに欲しいのだと明確に分かってしまう。一人で生きると決めていた頃の自分なら、きっと想像もできなかっただろう。
「もぅ、リカルドのエッチ」
「チェスターは違うのですか?」
「もの凄くムラムラする!」
「ふふっ」
素直な所が可愛い。笑うリカルドだったが、その声は突如触れた弱い部分の刺激に喘ぎに変わった。
「ここだよね」
「あっ、やっ……あぁ!」
硬くなる部分を優しく押し込まれ、撫でられる。それだけで背がビリビリして上体が倒れていってしまう。胸がシーツに擦れてこれも刺激だ。トロトロとした先走りが、シーツにツ……っと糸を引く。
「ごめん……本当に駄目かも」
「あ……」
背に触れた唇の熱さに震える。興奮した息づかいと舌の感触も響いてくる。あっあっ……と短く声が漏れてしまうリカルドは後ろを振り向き、求めて唇を開ける。そこに、望むキスが与えられた。
「もっ、欲しいです」
「痛いかも」
「いいから、お願い」
後ろから指が抜け、身体を返される。天井とチェスターを見上げたリカルドは腕を広げた。
「リカルド」
「ぁん! あっ、はぁぁんぅぅ!」
後孔へと触れた熱い切っ先がゆっくり丁寧に押し入ってくる。慣しが不足していた分は痛んだが、ここは既に彼の大きさも形も知っている。上手に飲み込めている。
「っ! リカルドの中、凄く熱い……んぅぅ!」
「チェスター」
「すご……あっ、食べられそう」
茶色の瞳が色気を溢れさせて歪む。腕を回した背に汗をかいている。普段は可愛くも見えるチェスターが男らしく見えて胸が震えた。
自慢の旦那様だ。こんなにも可愛くて、こんなにも雄々しくて……幸せだ。
ゆっくり馴染ませながら抽送を繰り返したチェスターがしっかりと奥まで入るまでややかかった。その間に彼もリカルドも汗だくになっている。
腹の奥まで硬く熱い楔が打ち込まれているのを感じる。薄い腹を撫でるとよりしっかりと感じた。
「ここまで、きてる?」
「……エロいよ、リカルド」
切なく困った顔をしたチェスターが腰を揺する。途端、中の楔が緩やかな力で底を打ち押し上げてくる。激しい動きではない。でもだからこそ、優しく追い上げられていく。
「あっ、それダメ……ぁあ!」
「気持ちいい?」
「いい、です」
凄くゆっくりと波が押し寄せてくる。奥の行き止まりを擦りつけられると意識が揺れる。心地よく背を這い上がる疼きと痺れが全身に回って犯されていく感覚にリカルドは震えた。
緩く引いては緩く突き込まれる。腹の中全部を擦り上げられる度に甘い毒が回る。激しい快楽はないのに、ずっと意識が浮いていた。
「チェスター、もっと欲しい。もっともっと、奥を突いて」
「大丈夫?」
「お願い」
だって、我慢してこちらを気遣っているでしょ?
寄った眉根を見るとそう感じる。本当は求めたいでしょ? そう思わせる表情だ。
包み込むようにぴったりと抱きしめるチェスターに甘え、リカルドも抱きつく。内壁を抜けていく熱い楔が深く強めに奥を突いた。
「んぅぅ!」
ビリビリとした痺れに串刺しにされ、リカルドの昂ぶりからとぷりと白濁が押し出される。チェスターの腹筋にも擦られて余計に止まらない。一回の量は少ないが、ずっと全身でイッている感じがある。
何度もそうして奥をえぐり出され、リカルドは縋るようにかき抱いた。もう直ぐ側まで大きな波がきている。足の指まで力が入っておかしくなりそう。ブルブル震え、求めてキスをしてグチャグチャに舌を絡めたリカルドに、チェスターは嬉しそうに笑った。
「リカルド、愛してるよ」
「っ! あっ、やぁぁ! あぁぁぁぁっ!」
こんな所で、狡い。不意打ちなんかに耐えられない。
深く、一際強く最奥を突き上げられ、リカルドは激しい波に飲まれて達した。腰骨を中心に足先も頭の天辺も痺れていく。腹の奥がギュッと締まって、そこにチェスターも吐き出すのを感じた。奥に押しつけながら放たれるものに犯され、染められていく。これを幸福と感じるリカルドは幸せな笑みを浮かべながら甘い刺激に犯されていった。
◆◇◆
翌朝、昼過ぎになってようやく二人は町を出発した。到底起きられなかった。
結局あのあと二人で求め合ってバックで一回。抱き合って眠ろうとしたけれどおやすみのキスが本気になって擦り合わせて更に一回してしまい、落ちるように眠った。こんなに求めたのは初めてで、流石に少し恥ずかしかった。
遅い時間だからか乗り合い馬車には二人しかいない。何となく恥ずかしくて、リカルドは黙ったままになっている。
「あの、リカルド?」
「はい!」
「あっ! えっと……昨日、無理させてごめんね?」
あちらも恥ずかしそうに言ってくる。でもごめんねは違うと思う。すぐ隣にあるチェスターの肩に凭れ、指輪のはまる左手で彼の手を握った。
「二人で求めたんですよ」
「でも」
「気持ち良かったです。愛していますよ、チェスター」
「! 俺も、愛してるよリカルド」
「ふふっ」
今も少し腰が重怠いし、違和感もある。けれど気持ちはこんなにも軽く幸せだ。だから全然辛くない。
幸せな二人を連れて、馬車はゆっくりと王都へ向かっていった。
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