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【アフターストーリー】スキル安産 おかわり!

おまけ13 ロアールの初恋

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 初めてシエルに会った時、俺は本当に天使が降りて来たんだと思った。柔らかい金色の髪に大きな金色の瞳をした白い肌の小さなシエルは恥ずかしそうにハロルド様の影にかくれて、それでもニッコリと微笑んでいた。
 母上に「天使みたいで可愛い」と言ったら、母上は笑って「そうだね」と返してくれた。
 この時から俺は、この天使が大好きだった。

 シエルから告白を受けた夜、俺は父上と母上の私室へ行った。言うべき事を言わなければ、そう思っても少し足が重い。バカ弟のエッツェルが昨日、ガロン様に対して失礼をしたばかりだ。
 反対されたらどうしよう。思いながら、ドアをノックした。

 母上と父上が少し驚いた顔をしていたけれど、俺の事を迎えてくれた。俺はなんて言い出して良いか分からないまま、しばらく無言だった。けれど、このままじゃいけない。意を決して、挑むような気持ちで声を発した。

「俺、お付き合いをしたい人がいます。相手は、シエルベートです」

 震えそうになる声を張り上げて、俺は宣言した。どうにか出てきた言葉にほっとしている。そんな俺を見る母上はとても驚いた顔をしていた。綺麗な黒い目をまん丸にして、きょとんとした顔だった。
 反対なんだろうか。俺は真剣で、シエルも多分真剣で、両思いなんだけれど。

「あの!」
「え、今更なの?」
「え?」

 母上の言葉に俺の方が驚いてマジマジと見てしまった。そんな俺に、母上はとても穏やかに笑っていた。

「だって、ロアールは初めて会った時からシエルくんの事が好きだったでしょ? それにシエルくんもロアールの事とても慕っていたし。俺はてっきり、二人はもうそういう気持ちで一致してるって思ってたけれど」
「あ、のぉ……」
「うん、良かった。俺もなんだかホッとしたよ。二人が幸せならね、俺は何にも文句ない。あっ、でも向こうの親御さんにはちゃんと挨拶して、よろしくお願いしますって言ってね」

 ピシッと指を立てられて「約束」と言われる。優しくて柔らかいのに、とっても強い俺の母上はさすがだ。俺は緊張が解けて力なく笑ってしまった。

「俺もマコトの意見に同意する。式はいつにする?」
「あぁ、そこまでは! まずはじっくり、二人の時間を楽しみたいと思って。その、デートとかもしてみたいし。だからまだ子作りも考えてない」
「そうか。いや、焦らなくていいんだ。出生率も上がっているから二人のタイミングで行えば良い。ただ、王族の輿入れだ、時間がかかる。その点を考えて、決断したら早いうちに知らせてくれ」

 そっか、そういう面倒もあるんだな。なんて、俺はぼんやり考えてしまう。そしてそこで、もう一つ言わなければいけない事を思いだした。

「あの、父上!」
「どうした?」
「あの、俺は将来的にはシエルの子を産むことになるから、あちらの家に嫁ぐ事になる。だから、その……父上の跡を継いだりとかは、出来ないと思う。ごめん」

 少しだけ寂しい気持ちがこみ上げる。大事に育ててもらって、一応次男なのに無責任な事を言ってると思ってる。ションボリしていたら、父上は楽しそうに笑った。

「気にするな。俺もまだ若いし、シーグルもいる。そんな事を気にしなくてもいいから、お前はシエルを幸せにしてやれ」
「そうだよ。それに……俺もまだ若いから、これからだって子供産めるしね」

 なんて照れたように顔を赤くして母上が言うものだから、父上がすっかりその気になっている。ちょっと急いで子供作りすぎたって自重してたけれど、一番下のエッツェルもそこそこの年になった。そして母上は本当にまだ若いから、産もうと思えば産める。

「まぁ、そういうことだ。ロアール、お前の思うように生きていい。ただし、相手を大切にしてやれ」
「うん、勿論だよ」

 これだけは俺、自信がある。シエルを大事にする。あいつを守るのはいつも俺の役目だって思ってきたんだから。

◆◇◆

 それから数日たって、俺達は最初のデートをすることにした。黒龍の王都で待ち合わせると、シエルはとても心細そうな顔をして立っていた。
 シエルは綺麗だ。金色の柔らかい髪は背中くらいまで伸びている。大きな金色の瞳はそのまま、お日様みたいな優しい色をしている。色が白くて、線が細くて、俺みたいな奴が力を加えたら折れるんじゃないかと思って心配になる。並べば俺よりも頭一つ分は小さい。

「シエル」
「ロアール」

 不安そうな瞳が俺を見て、パッと花を咲かせたみたいに輝いて綻ぶのはもの凄く危ない。一瞬クラッとする。

「待たせてごめん」
「ううん、平気だよ」

 嬉しそうに頬を上気させるシエルが可愛い。俺は凄くドキドキしながら隣に並んだ。

「今日は何をするの?」
「えっと……まず、ご飯食べようか。それで……なんだっけ?」

 お付き合いなんて経験がない俺は一生懸命リサーチをしてきた。まずは食事が大事らしい。でも、高い店とか俺は苦手でどうしたら良いか分からない。シーグル兄上なら、きっと素敵にエスコートとか出来るんだろうに。

「あの、ロアール」
「え! あぁ、なに?」
「黒龍の王都を抜けた先にね、気持ちのいい湖があるんだ。良かったら、行かない?」

 遠慮がちな提案に俺は乗った。というか、大歓迎だ。結局そういう事の方が俺はむいている。恥ずかしく笑って了承したら、シエルも嬉しそうに笑っていた。
 それならと、俺はランチをテイクアウトの店にした。美味しいサンドイッチの店でサラダも一緒に籠に詰めてもらって、それに飲み物を添えて。
 そうして来た湖は光を反射してキラキラしていて、気持ちの良い風が吹いている。

「気持ちいぃ!」

 大きく伸びをした俺の少し後ろで、シエルが可笑しそうに笑っている。そんなシエルに向き合って、俺は周囲を少し確かめた。周りに人がいないか、それを気にして。

「あの、さぁ。えっと……まず座ろう!」
「え? あぁ、うん」

 俺がエスコートしないと。思って力んで、結局上手くいっていない。そんなのが恥ずかしくてたまらない。俯くと、シエルがそっと俺の手に触れた。

「あの、緊張してるの?」
「あ……。うん」
「僕もね、とても緊張してる。お付き合いなんて初めてだから、良く分からなくて」

 そう言ったシエルが申し訳なさそうにしているのは、なんか嫌だ。俺は情けない俺を叱責して笑った。

「俺も、わかんないんだ」
「そうなの?」
「あぁ。俺もさ、誰かと付き合うなんて初めてだ。だから、どうしたら良いのか分からない。つまんなかったらごめんな」

 言ってシエルの柔らかい髪に手を梳き入れる。やっぱりサラサラとして柔らかくて、とても気持ちが良い。
 シエルは俺に甘えて小さく笑った。

「つまんないなんて、そんな事ないよ。僕ね、ロアールと一緒にいられるだけで嬉しい」

 そんな事を警戒心ゼロの満面笑顔で言ってくる。俺の天使は無自覚に欲望を駆り立てている。
 でもまさか、昔から遊んでた相手だったとしても一応は初デートだ。清い関係で終わるのがセオリーだと思う。

「ねぇ、ロアール」
「どうした?」
「マコト様やユーリス様に言った? 僕たちの事」
「あぁ、うん」

 少し落ち込むシエルに俺が焦る。もしかして、反対でもされたんだろうか。だとしたら不安だ。俺はシエルの事が好きだし、両親も認めてくれた。でも、ガロン様やハロルド様が難色を示すなら簡単じゃなくなってくる。
 ドキドキしながらシエルの言葉を待っていると、シエルは俯いたままに続けた。

「なんて、言ってた?」
「応援するって。家を継がない事も、嫁に出る事も言った。父上も母上も喜んでくれたし、家の事は気にしなくていいって」
「本当!」

 途端、キラキラの目が俺を見て嬉しそうにする。この変わり身の早さに俺は気圧されて頷いた。

「あのね、僕も話したの。母様は喜んでくれたんだけど、父様が相手の家の事もあるから当人だけじゃ決められないって。ユーリス様とマコト様が反対したら、喜んで受ける訳にはいかないって言われて」
「そっか」

 それで不安そうだったんだ。俺は納得して笑った。

「歓迎してたよ。それどころか、式はいつ挙げるとか、子供の予定はあるのかとか、色々言われた」
「えぇ!」
「まだ早いよな」

 なんて笑っていたら、シエルは少し恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋める。思わぬ反応に俺の方がドキドキしてしまう。

「式は、早いと思う。でも……僕はロアールとずっといたいから」
「シエル?」
「あのね、この湖を少し行ったら、小屋があるんだ。この辺は僕のお気に入りで、その小屋も綺麗に使ってる。それで、ね」

 耳まで真っ赤になったシエルが何を言いたいのか、それは俺にも伝わった。
 心臓がドキドキ音を立てている。照れる様なシエルから、とても良い匂いがしてくる。誘ってるんだって分かって、俺だって反応する。

「ごめん、僕こんな。あの、嫌いになるかな? いやらしい子って、思って軽蔑する?」

 モジモジと恥ずかしそうにしているシエルを前にして、誰がそんな事思えるんだ。俺は首をブンブン振って否定して、ガバッとシエルを抱きしめた。

「拒まれるよりずっといい!」
「あの……うん」

 顔を真っ赤にして、蕩けるように笑ったシエルに、俺は優しくキスをした。


 でもやっぱり日が高い内からってのもレベル高くて、その小屋まで歩いて行く事にした。テイクアウトのサンドイッチを頬張って、サラダも食べて。笑ったり何なりしながら湖の周りを散歩しながらいる時間はとても楽しい。
 そうして夕方少し前に、俺達は小屋に辿り着いた。

「結構大きくて綺麗だな」
「うん。見つけた時は荒れてたんだけど、少しずつ直したんだ」
「直したって、シエルが?」

 驚いて言えば、シエルは恥ずかしそうに頷いた。

「好きなんだ、こういうの。それにね、直したら綺麗になったんだよ。それに温泉も出てるの」

 そう言って中に招かれたそこは、とても温かい感じのする部屋だった。
 入って直ぐにリビングになっていて、ラグとテーブルがある。キッチンも小さいながらついているし、奥には大きめのベッドがある。

「どうしてベッドあんなに大きいんだ?」
「あの、僕寝相悪くて……小さいと落ちちゃうの」

 恥ずかしそうにモジモジして言うのに俺は笑う。そういえばそうだった。俺の家に泊まって、一緒に寝ると俺は蹴り出される事があったっけ。

「お前、まだ直ってなかったんだな」
「直らないよ」
「んじゃ、俺に子供できたらしばらく寝室別な」
「え!」
「だって、寝てる間に腹蹴られたら大変だろ?」

 言えば顔を真っ赤にして、そして小さく「直す」と呟いた。そんなにしてまで俺と一緒に寝たいのかと、俺は嬉しいやら恥ずかしいやらでムズムズした。
 まずは風呂に入って、ローブに着替えた。良いお湯が出ていて気持ちが良くて、ついつい長湯をしてしまった。シエルは直ぐに顔を赤くしたけれどそこからが長い。のぼせるんじゃないかと思って俺が焦ってシエルを上げさせたくらいだ。
 互いに今日は泊まる事を手紙で送って、食事はマジックバッグの中に入れてあるご飯にした。母上がこっそりとカップケーキを入れておいたみたいで、二人して笑って食べた。
 ラグの上でまったりと時間を送っている。天井の窓から星空が見えて綺麗だ。

「シエルは、夜の空中散歩ってしたことあるか?」
「ううん、ないよ」
「今度さ、しようか。気持ちいいんだぜ、星の中を飛ぶの」

 誘えば嬉しそうに笑う。上気したその顔を見ると俺はたまらなくて、抱き寄せてそっとキスをした。

「あの、さぁ」
「なに?」
「……いいのか、シエル?」

 俺の言いたい事、分かるよな。顔を見れば真っ赤にしているから伝わっている。そのままシエルはコクンと頷いた。

 俺はシエルをお姫様抱っこしてベッドに連れて行った。沈み込む布団の中で、沢山思いだしている。一応、色々聞いてきたんだ。兄上や、屋敷の使用人、軍の仲間に。色々沢山言われて混乱してしまった。その一つずつを思いだしているけれど……正直正解かどうかも分からない情報もある。
 例えば縛るとか、目隠しとか、勝手にイかないようにあれの根元を戒めるとか。張り型使うなんて奴もいたけれど、どこで手に入れるんだよそんなの!
 ってか、そんな事俺はシエルにできない。シエルだってきっと出来ないと思う。だから、一番オーソドックスだって教えてもらったことを試してみることにした。

「あの、ロアール。僕その、経験ないんだ。だからどうしたら良いか分からないんだけれど」
「俺も初めてだから、ちゃんとは知らなくて」
「えぇ! あの、どうしよう……」

 オロオロするシエルはベッドの上に座ったままであたふたしている。俺は笑って、とりあえず俺の上に乗るようにシエルの腕を引いた。

「とりあえずさ、俺の上に乗れよ」
「でも、重たいし痛いよ」
「シエル一人乗せたって重くないし痛くないよ。それに、俺が上に乗ったらそれこそシエルに怪我させそうだ」

 言えば恥ずかしそうに、少し悔しそうにしている。仕方がないだろ、俺の方がガタイがいいんだし、自分で言うのもなんだけどがさつだからさ。
 シエルはおずおずと俺の上に乗った。ペタンとローブの前を開けた裸の肌に、シエルの柔らかな尻が触れている。こんな所まで柔らかいんだって、俺は妙にドキドキしていた。

「あの、ここからどうしたらいいの?」
「確か……キスからって言ってた」
「言ってた?」
「あぁ、いや!」

 疑問そうにするシエルに俺はあたふたする。でも直ぐにシエルはニッコリと笑って、俺に覆い被さるようにキスをした。
 柔らかい唇が触れて、チュッと音を立てる。その音にも凄く疼く。俺は夢中でそれに応えたけれど、足りない。もっと、何か欲しい。
 こんな時、どうするって言ってたっけ。確か兄上は舌を使って相手の口の中に差し入れてって言ってたような。
 ボーッとしながら情報を頼りにその通りにしてみる。シエルの唇を舌でなぞったら、驚いたように金色の瞳が俺を見た。

「唇、開けて」

 頷いて、シエルは無防備に口を開ける。その中に見える小さな赤い舌を見て、俺は妙に興奮した。唇を塞いで舌を差し入れると、驚いたみたいに舌が引っ込んでしまう。縮こまるそこに触れて、促して、絡めた瞬間の腰に響く疼きに俺の熱はカッと上がった。

「やば、これ気持ちいい」

 浮かされたみたいに何度も絡めて吸ってしまう。シエルは切ない声でずっと鳴いていて、時々ビクンと震える。そういう時に、俺もビクンとなる。心臓の音が凄く大きく聞こえた。

「はぁ、あの、ここからは?」
「確か、手とか唇とか舌を使って体中の気持ち良いところを刺激するんだって」
「気持ちいいところ?」

 って、言われても俺も分からない。悩んでいたらシエルはグッと力の入った顔をして、そろそろと俺の体に触れてきた。

「うっ、なんかくすぐったいような、気持ちいいような」

 手がなぞる脇腹はくすぐったい。でも、そうじゃない場所もある。シエルはあれこれ触っていて、掠めるように肌に触れている。その指先が、俺の乳首を転がした。

「んぅ!」
「ごめん! あの、痛かった?」

 突然大きな声を出したからシエルは驚いて手を引っ込めてしまう。でも違うんだ、痛いとかじゃない。気持ちよかった。鋭く走った痺れるような気持ちよさが腰や頭に響いた。今も少しムズムズして、もっと触って欲しいと思ってる。

「ちが、痛いんじゃ無くて気持ちいい。そこ、もっとして」

 ねだるように言えば、シエルはキョトンとしてもう一度恐る恐る指先で先端を捏ねる。押し込まれるその感覚に奥がゾワゾワしてくる。それに、さっきよりもずっと気持ちいい。

「いいの?」
「気持ちいい。はっ、癖になりそう」

 ジワジワと広がっていくような疼きが体を跳ねさせる。身を捩りながら、それでも俺は同じように刺激を求めている。
 シエルは少し心得たのか、そっと唇を寄せて、ロリと舌先で舐め上げた。ビクンと体が跳ねてしまう。シーツを強く握りしめ、俺は声を上げている。
 舌が触れ、唇が覆って吸い上げてくる。その度に俺は腰が浮き上がっている。もどかしい、ジワジワした快楽に炙られていく。でも、もっと強く欲しい。もっと……口で言えないけれど強くして欲しい!
 俺の上にいるシエルの腰を支えて体を離した俺は、そのまま上体を少しだけ起こしてシエルの乳首に吸い付いた。

「ふあぁ!」

 赤い部分を塗り込むように舌で押し潰して、硬くなった部分を引っかけるように舐めて、強く吸い付いてみる。シエルはブルブル震えて声を上げていて、時々気持ちよさそうに腰を揺らしていた。

「おねが……こういう風にしてくれ、もっと強くていいから」
「うっ、うん」

 顔どころか全身を染め上げたシエルが、そろりと俺の乳首に触れて同じように強く吸い付く。途端に走った電流が俺の背を弓なりに反らせる。気持ちよくて、俺は甘ったるい声で喘いでいる。コリコリと押し潰すようにされるのも、強く吸われるのも、周囲を舐められるのも好きだ。
 彷徨っていた手がもう片方の乳首をこねくり回し、少し強く捻るとそれにも反応する。俺は自分の濡れた強張りを知らず知らずにシエルの腹に擦りつけ、快楽を得ようと必死になっている。

「ロアール、いいの?」
「いい!」
「あの、これ」
「!!」

 いつの間にか俺はちゃっかり出していた。穴があったら入りたい。シエルに乳首攻められながら自分で腰振ってシエルに擦りつけてさっさと果てるなんて、みっともない淫乱じゃないか。
 カッと熱くなると、シエルはニッコリ笑って俺の強張りのてっぺんにキスをする。呆然とそれを見ていると、とても小さく「ロアール可愛い」と言われてしまった。

「シエル、あのさ……」
「なに?」
「もっと奥、欲しいんだけど。その……入れてくれないか?」

 さっきまで男の強張りにキスしてた奴が途端に体を朱色に染めるんだ、何だよ可愛い。
 俺はマジックバッグを引き寄せて、中から赤い実をいくつか取り出した。小さな木の実を手にしたシエルはマジマジと俺を見ている。

「なに、これ?」
「油菜の実っていって、少し高い体温で溶ける実だよ。体に影響ないから、潤滑油になるって兄上が……」

 あの人、恋人いないはずなのに何でこんなに知っているんだろう……。

 兄の謎を知った俺の困惑はとりあえず置いておいて、まずは目の前の事。戸惑うシエルの手から実を一つつまみ上げた俺は、それをそっと自分の後ろの穴に押し込んだ。

「んっ」
「ロアール!」
「あっ……大丈夫、入る」

 人差し指で押し込めば、実はゆっくりと俺の中に入っていく。そして1分もしないうちに中で溶けてトロトロと潤して垂れてきた。漏らしたみたいで気持ち悪いけれど、慣らさないと竜人族は特に痛いと聞いている。それは俺も思うから準備は入念にだ。

「あのさ……流石に自分で解すの辛いから、してもらえるかな?」
「え!」
「大丈夫! その、中のクリーンはしておいたから」

 これはエチケットだと教えられた。

 仰向けに寝転がった俺の股の間に陣取ったシエルは、そろそろと指を伸ばして一本差し入れていく。指が中を擦るその僅かな刺激にゾクゾクとこみ上げるような気持ちよさがあって、俺は自然と声が漏れた。
 それにしても痛くない。聞いた話だと指一本でも最初は痛いし、凄く違和感があって辛いって聞いた。でも俺は全然痛くない。それどころかシエルの細い指が辿々しく俺の中をかき混ぜるのが凄く気持ち良い。
 どうしてか考えて、ふと思い当たった。俺は母上の安産スキルを継承している。しかもレベルは70くらいある。その中に付属スキルがあるんだ。拡張耐性スキル。

「はっ、あぁ」

 そろそろと指が増やされて、広げられる。その指先がさっきから気持ち良い場所の直ぐ近くを掠めていく。わざとじゃないのは分かる。シエルの表情からもそんな余裕は全く感じられない。でも、それがもどかしい。
 見ればシエルの強張りは張り詰めていて、トロトロと先走りを溢している。肌の色と同じく色が薄くて、でもほんのりとピンク色のそこは竜人族からすると控え目な大きさだ。しかも下生えも髪と同じ柔らかな金色で、肌の色と相まって生えていないようにも見える。ようするに、凄く艶めかしい。

「ロアール、あの、あのね」
「入れたい?」

 聞けば真っ赤になってコクコクと頷いている。キュッと股を閉じてモジモジしていれば分かる。それに、見るからに辛そうだ。

「いいよ、入れて」
「でも、痛いよね?」
「平気。俺スキル頑張れるよ」

 何せ小さな母上が体躯のいい父上を受け入れられたスキルだ、信頼するには十分。それにシエルのは俺に比べれば全然小さい。それに、少しくらい痛くても多分平気だから。

「シエルが欲しい。俺に、ちょうだい」

 シエルは真っ赤になりながらも頷いて、指を抜き取る。そして濡れた先端を俺の後ろにあてがうと、ほんの少し押し込んだ。

「んぅ!」
「っ!」

 痛くはない。けれど、俺は声を飲み込んだ。気持ちよくて震えが走る。何だよこれ、腰骨の辺り砕けてる。重く痺れて気持ちが良くてたまらない。
 シエルは一番太いカリの部分まで俺に埋めると、そこから動かなくなった。体から汗が溢れてプルプルしている。息を吐いて、とても困っているのだ。

「どうした」
「ごめんね、僕ここから動いたらでそう!」

 必死に耐える姿は小さな動物が震えているみたいで、なんだか可愛い。いや、本人の必死さは伝わるけれど、その必死さすらも可愛いんだ。
 俺は笑って手を伸ばした。そして少し動いて、自分からシエルを中に招き入れた。

「はぁ! ふぁぁ!」
「いいよ、出したって。俺もまだまだ欲しいし、シエルも1回でなんて満足しないだろ?」

 言えば潤んだ瞳を俺に向けて、おずおずと頷く。そして俺の足に手をかけて、ゆっくりと全てを俺の中へと押し込んだ。
 ズル、ズル、ズルと抜けては、ゆっくりとまた押し入ってくる。長く緩いストロークは俺の頭をダメにしていく。這うように全身に快楽が走っていって、それが抜けきらない間にまた全身を犯していく。脳みそ蕩けそう。

「ロアール、もう!」

 一度出していいって言ったのに、遠慮してる。それでも限界みたいで、シエルは強く腰を入れた。そうして2~3度打ち付けると、俺の中に最初の熱を放った。
 泣き濡れた目を指ではらって俺は笑う。だって、笑えるだろ。俺の中にあるシエルはまだ全然萎えてない。熱くて硬くて、むしろさっきよりも太くなってる。

「僕だけごめん!」
「いいって、俺も一度出してるし。それに、シエルはまだ足りてないだろ?」

 俺が緩く腰を動かせば、中のシエルは震えている。そして可愛い喘ぎ声で俺を興奮させる。何か変だ、抱かれてるのにそんな気がしないなんて。

「もう一度欲しい。シエル、お願い」

 頼み込めばシエルはコクンと可愛く頷いて俺の中に己を穿ち始めた。
 とても長く気持ちがいい。でももう気持ちよくてバカになる。シエルは不慣れで狙いが定まらない。熱いもので擦られるだけで気持ちはいいけれど、それじゃイケない。でも油断しているともの凄く的確にイイ部分を突き上げられて息が止まる。そこだけを攻めてもらえれば達せられそうなのに、そうはならない。

「シエル!」

 訳が分からないまま腰を動かしてしまう。シエルは俺の気持ちを考えてくれた。そして不意に俺の乳首を吸い上げた。

「んぅ!」

 キュッと内側を絞るようにシエルに吸い付いてしまう。シエルはそれに呻いて、それでも動きは止めなかった。熱い口の中で俺の乳首を転がして吸って、俺を気持ちよくしようとしてくれる。
 俺はオズオズと自分の物を握り込んで扱いた。後ろだけじゃいけない、それがわかった。前も刺激して、シエルに気持ちのいい部分を攻められ、後ろに受け入れて。考えると凄い淫乱だけれどシエル限定だからいい。

「はっ、もっ……シエル!」
「んぅ!!」

 数度扱き上げて、俺は腹の上に熱いものを散らした。そして深い部分にシエルの熱を受け入れた。その最後のしたたりはちゃんと俺の最奥に届いていて、俺はそこでもちゃんと感じた。
 息が上がって凄い。心臓が壊れそうな音を立てて鳴っている。体の全部が脈を打っているみたいだ。
 ふと、俺の上に突っ伏したシエルを見て俺はびっくりした。シエルは体中を茹で蛸みたいにしていた。

「うわぁ! シエル大丈夫か!」

 そっと自分でシエルのものを抜いて、シエルを仰向けにした。そしたらシエルは真っ赤になって泣きながら、すっごく幸せそうに笑ってた。

「シエル?」
「僕、とても幸せ。僕、ロアール大好きだよ」

 真っ直ぐに言う言葉の全部が入って来て、俺も幸せで笑った。
 シエルの体を腕に抱いて一緒に眠る。温かい体はやっぱり少し頼りない。俺が守らないと。俺が、シエルの側にいないと。

「ロアール、体平気?」
「ん、平気」
「……また、してくれる?」
「勿論!」

 俺も、はまりそうだ。こんなに気持ちいいなんて知らなかった。
 いや、シエル相手だからかな。そうであればいいし、比較なんてしたくない。俺の体が覚えるのはシエルだけで十分だから。

「シエル、俺こそまた、その……」
「うん、勿論だよ」
「……早めに子作り、してもいいぞ」
「えぇ!」

 素っ頓狂な声で言ったシエルに俺は笑う。俺は何だって出来ると思う、この腕の中の大事なものの為なら、何だって怖くないし辛くないんだ。


―後日談―
 俺が家に帰ってくると母上は何故かとても喜んで、『お赤飯』という赤い色のついたお米を炊いてくれた。俺はこれの意味が分からなかったけれど、ご飯自体は美味しかったから有り難く沢山食べたのだった。
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