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【アフターストーリー】スキル安産 おかわり!
おまけ5 ふと気づいた事
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長男のシーグルが産まれて13年。その下にロアール、エヴァ、そして数日前に末の娘フランシェが産まれた。
シーグルがしっかり者のお兄ちゃんになって、ロアールも8歳、エヴァは5歳になった。シーグルが産まれた後はこんな予定ではなかっただけにちょっと恥ずかしい。でも、それ以上に幸せで嬉しいのも確かだ。
今は子育てが大変だろうとお妃様がいてくれる。俺の事を実の……多分娘のように大事にしてくれる素敵なお妃様と、今俺はお茶を楽しんでいる。
「それにしても賑やかだわ。こんなに沢山の孫に囲まれる幸せなお婆ちゃんになれるなんて、嬉しいわ」
「そんな! お妃様はまだお婆ちゃんなんて年じゃないじゃないですか」
目の前の人は見た目40代。とても若々しい人だ。
そんなお妃様は鈴を転がすように笑って、少し恥ずかしそうにしている。
「私だって450歳を超えたわ。十分お婆ちゃんじゃない」
「そのような年齢だったんですか!」
とても若い。俺は呆気にとられて……ふと考えたくない事に思い至って、言葉を無くした。
俺は人族で、ユーリスも子供達も竜人族。その間にはもの凄い寿命の落差がある。俺は今、35歳だ。人間の寿命で考えても、健康でいられるのは20年と少しくらい? え、子供産めるのって、後どのくらいなの?
考えたら青くなった。俺、シーグルの成人すら見られない。年老いて、若いままのユーリスや幼い子供を残して死ぬんだ。
「マコト?」
青くなって震えている俺を見て、お妃様は立ち上がって側に来てくれる。そして、俺の手をギュッと握った。
「少し休みましょう。まだ子供を産んで間がないわ。体調を崩しては大変」
「お妃様」
「貴方は私の大事な息子よ。そして、子供達にとっては大好きなお母様なのよ。無理をしてはいけない」
立たせてくれて、側にいてくれて、部屋に連れて行ってくれた。香のいいお茶を飲ませてくれて、俺はベッドに入り込んだ。
でも、不安が消えたわけじゃない。どうしてそんな大事な事を失念していたんだ。
自然、泣いていた。相変わらず弱っちくて、辛いと泣いてしまう。涙腺崩壊未だ健在って、全然いらない。
俺は布団の中で蹲って、ただただ泣いていた。
どのくらい時間がたったのだろう。眠っていたらしくて、気づいたら部屋の中には柔らかな明かりが灯っていた。そして側でユーリスが、ずっと俺の頭を撫でてくれていた。
「大丈夫か、マコト」
「ユーリス」
「体調を崩したと聞いたが……違う事だね」
俺の顔を見て、ユーリスは気づいたみたいだった。俺が悩んでいる事に。
「マコト」
「ユーリス」
抱きついて、抱きしめられて少しだけ落ち着く。いや、奥の方ではズキズキしてる。でも、考えたんだ。俺、産める間に沢山産まないと。俺のスキルを子供達も継いでいる。この子達が将来、竜人族をきっと救ってくれる。それなら俺に残せる事は沢山子供産んで、より沢山の希望を繋ぐ事なんだ。
俺は抱きついて、キスをした。驚いた顔のユーリスはそれでも受け入れてくれる。泣きながらキスなんて、本当に迷惑だと思うけれど。
「ユーリス、俺、もっと子供欲しい」
「マコト?」
「もっと産むから、だから」
「マコト!」
ユーリスの手が俺を引き留めて、次に強く抱きしめてくれる。俺、やっぱりこの腕が好きだ。この人が好きだ。家族が好きだ。
「何が不安なんだ。言って貰わないと分からない。それは、沢山子供がいるのは俺も嬉しい。でも、それはマコトの負担でもある。スキルが高いのはあるだろうが、それだってまたく負担にならないわけじゃない。それに俺は、君を子供を産むための道具にしたくはない」
強く確かに言ってくれる言葉が、俺をどんどん弱くする。思った事も全部決壊して、俺は子供みたいに声を上げて泣いた。
厚い胸が俺の全部を受け止めてくれる。逞しい腕が俺を離さないようにしてくれる。俺は、この人の前では沢山弱くなれる。泣いてもいいんだ、ユーリスの前では。
「マコト、話してくれ」
「俺、ユーリスや子供達を置いて先に死ぬから、だからその前に沢山産んで……それどころかいつまで健康でいられるかも」
「? 何の話をしているんだ?」
「寿命の話だよぉ!」
首を傾げたユーリスに訴えるように言った。わかんない顔をしてるから、もう訴えるしかなかった。
きょとんとしたユーリスは、次には俺を抱き上げて鏡の前につれていく。鏡の前に立たされた俺は、ユーリスが何を言いたいか分からなかった。
「老いて見えるか?」
「え?」
「俺と出会った時と、マコトは変わらないだろ?」
……そういえば、そんな気もする。でも、22と35だ。そんなに変わって……見えるはずだ。
「え! え!! なんで!」
「結婚式を挙げて、神の前で祈って、祝福を貰っただろ?」
俺はコクコクと頷いた。確かに司祭さんに結婚式をしてもらった。神の祝福を受けた。
「あれはただのお披露目じゃない。ちゃんとした儀式と、神の祝福なんだ」
「どういうこと?」
「結婚した夫婦の寿命は同じになる。神が結ばれる二人に祝福を与えるんだ。指輪、してるだろ?」
俺は左手の薬指を見る。俺の手には指輪があって、今も輝いている。
「神の祝福は指輪に宿り、夫婦は同じ時を生きられるんだ。だから外れない」
「つまり、それって」
俺はユーリスと同じ時間を生きられる?
「老いたりもしない?」
「しない」
「俺、シーグル達の成人した姿とか、見られる?」
「結婚式も、もしかしたら孫も抱けるかもしれないな」
俺の目に、違う涙が伝った。安心した。そして、この世界の神様に死ぬほど感謝した。
ユーリスは俺の体を抱きしめて、ポンポンと背中を叩いてくれる。温かく微笑んで、ずっとそうしてくれている。
「俺、ユーリスとずっと一緒にいたい」
「勿論だ」
「もっと沢山、一緒にいられるんだよね」
「あぁ」
俺は思いきり笑った。満面の笑顔の見本ができるくらい笑っていた。そんな俺に、ユーリスはキスをする。労るように、沢山の好きを詰め込んだみたいなキスに、俺は欲情ではない愛情を感じて微笑んだ。
シーグルがしっかり者のお兄ちゃんになって、ロアールも8歳、エヴァは5歳になった。シーグルが産まれた後はこんな予定ではなかっただけにちょっと恥ずかしい。でも、それ以上に幸せで嬉しいのも確かだ。
今は子育てが大変だろうとお妃様がいてくれる。俺の事を実の……多分娘のように大事にしてくれる素敵なお妃様と、今俺はお茶を楽しんでいる。
「それにしても賑やかだわ。こんなに沢山の孫に囲まれる幸せなお婆ちゃんになれるなんて、嬉しいわ」
「そんな! お妃様はまだお婆ちゃんなんて年じゃないじゃないですか」
目の前の人は見た目40代。とても若々しい人だ。
そんなお妃様は鈴を転がすように笑って、少し恥ずかしそうにしている。
「私だって450歳を超えたわ。十分お婆ちゃんじゃない」
「そのような年齢だったんですか!」
とても若い。俺は呆気にとられて……ふと考えたくない事に思い至って、言葉を無くした。
俺は人族で、ユーリスも子供達も竜人族。その間にはもの凄い寿命の落差がある。俺は今、35歳だ。人間の寿命で考えても、健康でいられるのは20年と少しくらい? え、子供産めるのって、後どのくらいなの?
考えたら青くなった。俺、シーグルの成人すら見られない。年老いて、若いままのユーリスや幼い子供を残して死ぬんだ。
「マコト?」
青くなって震えている俺を見て、お妃様は立ち上がって側に来てくれる。そして、俺の手をギュッと握った。
「少し休みましょう。まだ子供を産んで間がないわ。体調を崩しては大変」
「お妃様」
「貴方は私の大事な息子よ。そして、子供達にとっては大好きなお母様なのよ。無理をしてはいけない」
立たせてくれて、側にいてくれて、部屋に連れて行ってくれた。香のいいお茶を飲ませてくれて、俺はベッドに入り込んだ。
でも、不安が消えたわけじゃない。どうしてそんな大事な事を失念していたんだ。
自然、泣いていた。相変わらず弱っちくて、辛いと泣いてしまう。涙腺崩壊未だ健在って、全然いらない。
俺は布団の中で蹲って、ただただ泣いていた。
どのくらい時間がたったのだろう。眠っていたらしくて、気づいたら部屋の中には柔らかな明かりが灯っていた。そして側でユーリスが、ずっと俺の頭を撫でてくれていた。
「大丈夫か、マコト」
「ユーリス」
「体調を崩したと聞いたが……違う事だね」
俺の顔を見て、ユーリスは気づいたみたいだった。俺が悩んでいる事に。
「マコト」
「ユーリス」
抱きついて、抱きしめられて少しだけ落ち着く。いや、奥の方ではズキズキしてる。でも、考えたんだ。俺、産める間に沢山産まないと。俺のスキルを子供達も継いでいる。この子達が将来、竜人族をきっと救ってくれる。それなら俺に残せる事は沢山子供産んで、より沢山の希望を繋ぐ事なんだ。
俺は抱きついて、キスをした。驚いた顔のユーリスはそれでも受け入れてくれる。泣きながらキスなんて、本当に迷惑だと思うけれど。
「ユーリス、俺、もっと子供欲しい」
「マコト?」
「もっと産むから、だから」
「マコト!」
ユーリスの手が俺を引き留めて、次に強く抱きしめてくれる。俺、やっぱりこの腕が好きだ。この人が好きだ。家族が好きだ。
「何が不安なんだ。言って貰わないと分からない。それは、沢山子供がいるのは俺も嬉しい。でも、それはマコトの負担でもある。スキルが高いのはあるだろうが、それだってまたく負担にならないわけじゃない。それに俺は、君を子供を産むための道具にしたくはない」
強く確かに言ってくれる言葉が、俺をどんどん弱くする。思った事も全部決壊して、俺は子供みたいに声を上げて泣いた。
厚い胸が俺の全部を受け止めてくれる。逞しい腕が俺を離さないようにしてくれる。俺は、この人の前では沢山弱くなれる。泣いてもいいんだ、ユーリスの前では。
「マコト、話してくれ」
「俺、ユーリスや子供達を置いて先に死ぬから、だからその前に沢山産んで……それどころかいつまで健康でいられるかも」
「? 何の話をしているんだ?」
「寿命の話だよぉ!」
首を傾げたユーリスに訴えるように言った。わかんない顔をしてるから、もう訴えるしかなかった。
きょとんとしたユーリスは、次には俺を抱き上げて鏡の前につれていく。鏡の前に立たされた俺は、ユーリスが何を言いたいか分からなかった。
「老いて見えるか?」
「え?」
「俺と出会った時と、マコトは変わらないだろ?」
……そういえば、そんな気もする。でも、22と35だ。そんなに変わって……見えるはずだ。
「え! え!! なんで!」
「結婚式を挙げて、神の前で祈って、祝福を貰っただろ?」
俺はコクコクと頷いた。確かに司祭さんに結婚式をしてもらった。神の祝福を受けた。
「あれはただのお披露目じゃない。ちゃんとした儀式と、神の祝福なんだ」
「どういうこと?」
「結婚した夫婦の寿命は同じになる。神が結ばれる二人に祝福を与えるんだ。指輪、してるだろ?」
俺は左手の薬指を見る。俺の手には指輪があって、今も輝いている。
「神の祝福は指輪に宿り、夫婦は同じ時を生きられるんだ。だから外れない」
「つまり、それって」
俺はユーリスと同じ時間を生きられる?
「老いたりもしない?」
「しない」
「俺、シーグル達の成人した姿とか、見られる?」
「結婚式も、もしかしたら孫も抱けるかもしれないな」
俺の目に、違う涙が伝った。安心した。そして、この世界の神様に死ぬほど感謝した。
ユーリスは俺の体を抱きしめて、ポンポンと背中を叩いてくれる。温かく微笑んで、ずっとそうしてくれている。
「俺、ユーリスとずっと一緒にいたい」
「勿論だ」
「もっと沢山、一緒にいられるんだよね」
「あぁ」
俺は思いきり笑った。満面の笑顔の見本ができるくらい笑っていた。そんな俺に、ユーリスはキスをする。労るように、沢山の好きを詰め込んだみたいなキスに、俺は欲情ではない愛情を感じて微笑んだ。
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