37 / 63
【アフターストーリー】スキル安産 おかわり!
おまけ3 ランセルの奥様
しおりを挟む
私の奥様グラースさんは、それは美しい狐族です。背中の中程まである銀の髪に、耳の先端だけがほんの少し黒い毛の見える耳、ふさふさの大きな尻尾が素敵です。
一目惚れでした。もう、しばらく放心したくらいには理想的でした。
「理想的です! こんなに……こんなに素敵な人に私は未だ出会った事がありません! 結婚してください! そして私の子を産んでください!」
出会って数分後には愛を囁きました。その時の蔑むような視線、たまりません。まるでゴミかチリをみるような目で見られ、なんだか違う扉が開いた感じでした。
勿論奥様限定です。他の奴が同じような事をしたら塵にします。躊躇いません。
一緒に仕事をして、プライドが高い人かと思えばそうではなくて、使命感が強くて責任感が強くて……ちょっと不器用なんだと知りました。
獣人の国は少し複雑です。種族による職業の縛りはない、というのは表面的なもの。特に軍部などの閉鎖的な階級社会においては肉食系種族が上に立つのが当然。そこに若いグラースさんは異端で、それ故に苦しんでいるようでした。
だからこそ攫いました。様々な権力やコネを使ってでも欲しいと思っていたので、これ幸いと攫ったのです。そして、めくるめく素敵な同棲生活(拉致監禁ともいう)が始まったのです。
幸せでしたが、嫌われているのも分かっていました。でも少しずつ打ち解けてくれて……私の身の上を話さない事はいけなかったのだと思い、改めました。
事件があって、何故かもの凄く積極的に受け入れてくれて、たまらない気持ちでした。今でもあの熱烈な愛の言葉を覚えています。
「お前の子供産んでやる。そのかわり、孕むまでやれ」
なんて熱い言葉でしょう! なんて胸躍る言葉でしょう! そして、拒まれていたはずが何故こうなったかこの時は分からなくて、呆けてしまった私自身を殴り倒したいです。
何にしてもこうして結ばれ、可愛い息子が生まれました。
息子のアンテロはグラースさんの特性を引き継いで銀の髪ですが、竜人です。
グラースさんの特殊な血を受け継いでいる息子は、きっと将来的に私よりも魔力の高い竜人となるでしょう。期待できます。そして天使です。
グラースさんは「お前はもう少し父親らしくしろ」と言いますが、これでも父親のつもりです。表に現れづらいのと、それ以上に奥様ラブなだけです。
今は幼馴染みのユーリスの息子、シーグルと共にスクスクと成長しています。
「おい、ランセル」
それにしても、新しく産まれた息子も少し大きくなってきました。本当に可愛いものです。そして2人も産んでくれると思わなかったので、嬉しいかぎりです。何だかんだで私は愛されているのですね。
「おい、ランセル!」
下の息子がもう少し育ったら、もう一人くらい欲しいですね。ユーリスの所はすでに3人。あちらの奥方のマコトさんに特殊なスキルがあるからですが、こちらも根性で2人です。まるで奇跡ですから、このままなら。
ボッ!
突然軍服の裾が焼けて、私は顔を上げた。そこには同じ軍服を着た鬼の形相の奥様、グラースさんが腕を組んでいます。とりあえず炎は消火。
「おい、トカゲ」
ゴミ屑を見るような蔑みの視線が私を見ています。そして、竜人族にとって最も侮辱的な『トカゲ』という言葉を容赦なく浴びせるのです。うん、素敵。
「すみません、少し考え事をしていて」
「仕事の考え事じゃないだろ」
「おや、どうしてそのような事を思うのですか? ちゃんと真面目にお仕事しておりますよ?」
「てめぇの顔見てれば分かるんだよ」
流石です。側近のハリスですら私の考えまでは読めません。この方はそこを読むのです。
「何かご用でしたか?」
「あぁ。アンテロが今度シーグルの家に泊まり込みで行きたいと言っていた。だが、なんだか様子がおかしい。丁度お前の知り合いのロシュとリュミエールが国外に行くタイミングだ」
「おや?」
これは何やら秘密の予感。
知り合い……というか、弟分のような赤竜族のロシュと青竜族のリュミエールは、最近冒険者を始めたらしい。ユーリスのロマンを追い求めたのでしょうが、あれは幸運としか言えない出会いです。そこらに転がっているような類いの話ではありません。
「どうする?」
「そうですね。行かせても良いとは思いますが」
息子アンテロは14歳、ユーリスの息子も12歳。そろそろ外の世界に興味が出てくる頃でしょう。好奇心を殺すのも今後を考えると適切とは思えません。
グラースさんは少し心配そうです。言葉はきついけれど、とても優しいのです。
「心配ですか?」
「べつに、いいんじゃないのか?」
言いながら、尻尾が下がったままです。素直ではありません。
「ロシュはおっちょこちょいですが、強いですよ。それにロシュのフォローをするように、リュミエールは冷静です。あまり長い旅でないなら、許可してもいいと思いますが」
「……そうか」
何だかんだで母親です、息子が可愛くて仕方がないのです。
私は少し考えて、ちょっと笑いました。
「心配なら、貴方が鍛えてはいかがですか?」
「ん?」
「アンテロに体術を教えてはいかがでしょう?」
「俺がか!」
驚いた顔をして、グラースさんが身を乗り出してくるその唇にキスをしたらまた服が燃えました。再生魔法を覚えておいて本当によかった。
「何する」
「え? 愛情表現ですよ?」
「いらん」
「もぉ、素直じゃないんですから」
言うと、すっごく嫌な顔をされます。ふふっ、素敵。慌てるんじゃなくて一段低い声で脅すように言うんですから、心得てますね。
「アンテロが心配なら、鍛えるのも親の役目ですよ。グラースさんの体術は我が軍でもトップクラスですから、きっと役立ちますよ」
「加減が分からない。それに、一度スイッチが入ると軍人相手と同じにやってしまう」
あっ、耳がペタンとしました。息子に嫌われるのが怖いんですね。これで子煩悩なグラースさんですから。
でも、そんなの平気でしょう。アンテロは母様命の可愛い息子です。それに、理解があります。厳しい事も自分の為を思っているのだと分かれば、嫌ったりはしないのに。
「大丈夫ですよ、貴方の息子です。根性ありますから、教えてあげるといいですよ。不安なら、時間を短く区切るといいんですよ。無理のない程度にね。そして終わったら、一緒にお茶でもすれば平気です」
「短い時間じゃ訓練にならないだろ。数時間はいる」
「それ、間違いなく軍部の訓練レベルでやる気じゃないですか」
厳しくするのが怖いと言いながらこれです。本当に面白い。
「一時間程度にしてあげればきっと平気です。それで、外出の許可を出してあげましょう」
「……わかった」
どうやら折れたらしいグラースさんを見て、私は笑う。本当に、いつまでたっても魅力的で困ります。
「ねぇ、奥様」
「ん?」
「3人目、頑張れば出来ると思いませんか?」
「はぁ?!」
素っ頓狂な声を上げたグラースさんが少し引いている。私は立ち上がって迫っていって……炎出してもダメですよ。ふふっ。
「ん! んっ、ふっ」
顎を捕らえて深く口づけていけば、鋭い瞳が熱を帯びて薄らと潤んでいく。なんて色っぽい。この顔がたまらないのです。欲情する。
「お前!」
「ねぇ、欲しいです。また、産んでもらえませんかね?」
耳元で囁きかけて、強い反発は帰ってこない。これで子供が好きだから、マコトさんを少し羨んでいるのは知っています。
これは3人目、出来る日もそう遠くない。お約束通り孕むまで。何回でも何十回でも抱きますから。
そんな事を思って、私はもう一度愛しい奥様に口づけをした。
一目惚れでした。もう、しばらく放心したくらいには理想的でした。
「理想的です! こんなに……こんなに素敵な人に私は未だ出会った事がありません! 結婚してください! そして私の子を産んでください!」
出会って数分後には愛を囁きました。その時の蔑むような視線、たまりません。まるでゴミかチリをみるような目で見られ、なんだか違う扉が開いた感じでした。
勿論奥様限定です。他の奴が同じような事をしたら塵にします。躊躇いません。
一緒に仕事をして、プライドが高い人かと思えばそうではなくて、使命感が強くて責任感が強くて……ちょっと不器用なんだと知りました。
獣人の国は少し複雑です。種族による職業の縛りはない、というのは表面的なもの。特に軍部などの閉鎖的な階級社会においては肉食系種族が上に立つのが当然。そこに若いグラースさんは異端で、それ故に苦しんでいるようでした。
だからこそ攫いました。様々な権力やコネを使ってでも欲しいと思っていたので、これ幸いと攫ったのです。そして、めくるめく素敵な同棲生活(拉致監禁ともいう)が始まったのです。
幸せでしたが、嫌われているのも分かっていました。でも少しずつ打ち解けてくれて……私の身の上を話さない事はいけなかったのだと思い、改めました。
事件があって、何故かもの凄く積極的に受け入れてくれて、たまらない気持ちでした。今でもあの熱烈な愛の言葉を覚えています。
「お前の子供産んでやる。そのかわり、孕むまでやれ」
なんて熱い言葉でしょう! なんて胸躍る言葉でしょう! そして、拒まれていたはずが何故こうなったかこの時は分からなくて、呆けてしまった私自身を殴り倒したいです。
何にしてもこうして結ばれ、可愛い息子が生まれました。
息子のアンテロはグラースさんの特性を引き継いで銀の髪ですが、竜人です。
グラースさんの特殊な血を受け継いでいる息子は、きっと将来的に私よりも魔力の高い竜人となるでしょう。期待できます。そして天使です。
グラースさんは「お前はもう少し父親らしくしろ」と言いますが、これでも父親のつもりです。表に現れづらいのと、それ以上に奥様ラブなだけです。
今は幼馴染みのユーリスの息子、シーグルと共にスクスクと成長しています。
「おい、ランセル」
それにしても、新しく産まれた息子も少し大きくなってきました。本当に可愛いものです。そして2人も産んでくれると思わなかったので、嬉しいかぎりです。何だかんだで私は愛されているのですね。
「おい、ランセル!」
下の息子がもう少し育ったら、もう一人くらい欲しいですね。ユーリスの所はすでに3人。あちらの奥方のマコトさんに特殊なスキルがあるからですが、こちらも根性で2人です。まるで奇跡ですから、このままなら。
ボッ!
突然軍服の裾が焼けて、私は顔を上げた。そこには同じ軍服を着た鬼の形相の奥様、グラースさんが腕を組んでいます。とりあえず炎は消火。
「おい、トカゲ」
ゴミ屑を見るような蔑みの視線が私を見ています。そして、竜人族にとって最も侮辱的な『トカゲ』という言葉を容赦なく浴びせるのです。うん、素敵。
「すみません、少し考え事をしていて」
「仕事の考え事じゃないだろ」
「おや、どうしてそのような事を思うのですか? ちゃんと真面目にお仕事しておりますよ?」
「てめぇの顔見てれば分かるんだよ」
流石です。側近のハリスですら私の考えまでは読めません。この方はそこを読むのです。
「何かご用でしたか?」
「あぁ。アンテロが今度シーグルの家に泊まり込みで行きたいと言っていた。だが、なんだか様子がおかしい。丁度お前の知り合いのロシュとリュミエールが国外に行くタイミングだ」
「おや?」
これは何やら秘密の予感。
知り合い……というか、弟分のような赤竜族のロシュと青竜族のリュミエールは、最近冒険者を始めたらしい。ユーリスのロマンを追い求めたのでしょうが、あれは幸運としか言えない出会いです。そこらに転がっているような類いの話ではありません。
「どうする?」
「そうですね。行かせても良いとは思いますが」
息子アンテロは14歳、ユーリスの息子も12歳。そろそろ外の世界に興味が出てくる頃でしょう。好奇心を殺すのも今後を考えると適切とは思えません。
グラースさんは少し心配そうです。言葉はきついけれど、とても優しいのです。
「心配ですか?」
「べつに、いいんじゃないのか?」
言いながら、尻尾が下がったままです。素直ではありません。
「ロシュはおっちょこちょいですが、強いですよ。それにロシュのフォローをするように、リュミエールは冷静です。あまり長い旅でないなら、許可してもいいと思いますが」
「……そうか」
何だかんだで母親です、息子が可愛くて仕方がないのです。
私は少し考えて、ちょっと笑いました。
「心配なら、貴方が鍛えてはいかがですか?」
「ん?」
「アンテロに体術を教えてはいかがでしょう?」
「俺がか!」
驚いた顔をして、グラースさんが身を乗り出してくるその唇にキスをしたらまた服が燃えました。再生魔法を覚えておいて本当によかった。
「何する」
「え? 愛情表現ですよ?」
「いらん」
「もぉ、素直じゃないんですから」
言うと、すっごく嫌な顔をされます。ふふっ、素敵。慌てるんじゃなくて一段低い声で脅すように言うんですから、心得てますね。
「アンテロが心配なら、鍛えるのも親の役目ですよ。グラースさんの体術は我が軍でもトップクラスですから、きっと役立ちますよ」
「加減が分からない。それに、一度スイッチが入ると軍人相手と同じにやってしまう」
あっ、耳がペタンとしました。息子に嫌われるのが怖いんですね。これで子煩悩なグラースさんですから。
でも、そんなの平気でしょう。アンテロは母様命の可愛い息子です。それに、理解があります。厳しい事も自分の為を思っているのだと分かれば、嫌ったりはしないのに。
「大丈夫ですよ、貴方の息子です。根性ありますから、教えてあげるといいですよ。不安なら、時間を短く区切るといいんですよ。無理のない程度にね。そして終わったら、一緒にお茶でもすれば平気です」
「短い時間じゃ訓練にならないだろ。数時間はいる」
「それ、間違いなく軍部の訓練レベルでやる気じゃないですか」
厳しくするのが怖いと言いながらこれです。本当に面白い。
「一時間程度にしてあげればきっと平気です。それで、外出の許可を出してあげましょう」
「……わかった」
どうやら折れたらしいグラースさんを見て、私は笑う。本当に、いつまでたっても魅力的で困ります。
「ねぇ、奥様」
「ん?」
「3人目、頑張れば出来ると思いませんか?」
「はぁ?!」
素っ頓狂な声を上げたグラースさんが少し引いている。私は立ち上がって迫っていって……炎出してもダメですよ。ふふっ。
「ん! んっ、ふっ」
顎を捕らえて深く口づけていけば、鋭い瞳が熱を帯びて薄らと潤んでいく。なんて色っぽい。この顔がたまらないのです。欲情する。
「お前!」
「ねぇ、欲しいです。また、産んでもらえませんかね?」
耳元で囁きかけて、強い反発は帰ってこない。これで子供が好きだから、マコトさんを少し羨んでいるのは知っています。
これは3人目、出来る日もそう遠くない。お約束通り孕むまで。何回でも何十回でも抱きますから。
そんな事を思って、私はもう一度愛しい奥様に口づけをした。
11
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
隷属神官の快楽記録
彩月野生
BL
魔族の集団に捕まり性奴隷にされた神官。
神に仕える者を憎悪する魔族クロヴィスに捕まった神官リアムは、陵辱され快楽漬けの日々を余儀なくされてしまうが、やがてクロヴィスを愛してしまう。敬愛する神官リュカまでも毒牙にかかり、リアムは身も心も蹂躙された。
※流血、残酷描写、男性妊娠、出産描写含まれますので注意。
後味の良いラストを心がけて書いていますので、安心してお読みください。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる