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21章:主なき騎士団

2話:ルース・エイプルトン

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 不安そうなファウストの様子から数日、ランバートは難しい顔をしたシウスに呼ばれていた。全団長が揃う中、ランバートとルイーズの二人は並んで少し頼りない顔をしている。

「二人に特別任務を与える」
「「はっ!」」
「此度、デイジー嬢が聖ユーミル祭に出席する事となった。二人には彼女を迎えに行き、無事に王都まで連れてくるように」

 思わずルイーズと顔を見合わせた。それは第二師団のランバートが受けるには少し特殊な任務でもある。護衛任務は通常、暗府と第三師団が専門として受ける。それに第四師団も同行する。だが、斥候の第二師団はあまり護衛にはつかない。
 また、近衛府のルイーズも普通は屋内での警護や警備が専門で、護衛となるとまた違ってくるはずだ。
 それでも相手はデイジーだから頷ける。おそらく慣れている二人にも来て欲しかったのだろう。

「今回は第三、第四、第一師団から少人数ずつ出す。そこにルイーズ、ランバートの両名もついてくれ。これは先方からの要請じゃ」
「はい」
「指揮はファウストが執る」
「え?」

 ルイーズは戸惑うようにファウストを見たが、ランバートは慌てなかった。主なき騎士団という新たな脅威が現れた。それについて、全員が警戒しているのだろう。

「二人には主に、デイジー嬢の護衛と周辺の世話を頼む。第四は何かあったときの後方支援と宿などの手配。第一、第三は純粋な護衛業務じゃ。先方からの要請により、我々はルーフェンから王都までの行程を護衛する。日程は五日じゃ」

 シウスはそれだけで終わろうとした。だがルイーズだけは慌ててそこに食い下がった。

「お待ち下さいシウス様! 今回の護衛任務は確かに陛下の婚約者ということで厳重なのは分かります。私とランバートが指名されたのも頷けます。ですがどうして、ファウスト様までもが出られるのですか? 何か、懸念される事があるのですか?」

 その問いかけに、シウスは僅かに表情を沈める。だが伝えなければならない事なのは確かで、溜息をついてルイーズを見た。

「西の混乱が収まった。勝ち残ったのは、ルース・エイプルトンじゃ」
「な……っ!」

 途端、ルイーズが表情を無くす。それを隣で見ていて、ランバートも表情を厳しくした。ファウストといい、シウスといい、どうにもそのルースという人物に対する警戒心が異常に強いように思えた。

「分かりました、十分に備えておきます。他のメンバーが決まりましたら改めてお知らせください」
「わかった。ルイーズ、この事は他には隠せ。まだ言うておらぬでな」
「……分かりました」

 一礼して下がるルイーズと共に、ランバートも一礼してその場を出て行く。
 外に出たルイーズは明らかに顔色が悪かった。

「そんなに、手強い相手なのですか?」

 問いかければ、ビクリと肩を震わせるルイーズがいる。無様を誰よりも嫌う人がこんなにも格好にならない様子を見せるのは初めてだ。

「聞いているのか?」
「ファウスト様から」
「……なるほど、警告を発したわけか。当然だろうが」

 しばし思案するような顔をしたルイーズは、ふと思い立ったようにランバートを見て「付き合え」と先を歩いていった。

 そうして案内されたのは、ルイーズの私室だった。彼も近衛府の副長として一室与えられている。広さとしては一般隊員と同じだが、一人分の家具しかないので広く見えた。
 席を勧められ、テーブルセットに腰を落ち着ける。直ぐに紅茶の香りがたち、落ち着いた気持ちにしてくれた。

「悪いな、他に聞かれると厄介な事案だ、外で軽々しく口にできない」
「そんなにですか」
「団長達の反応を見れば分かることだろ」

 確かに異様な緊張感がある。ファウストの心配性だけなら分からないではないが、シウスやオスカル、クラウルまでもがあの様子ではよほどだ。

「さて、ルース殿の話か。私も一緒に所属していたのは二年程度だったのだが、あの人は強烈だった」
「どのように?」
「仲間を、道具のように扱う」

 低く告げられた言葉の異常さに、ランバートは言葉を無くす。それはおおよそ、騎士団では考えられない言葉だ。
 ルイーズは腕を組み、思案している。いや、口にすることを躊躇っているのだろうか。珍しく口ごもる様子があった。

「私達が騎士団に入って間もない頃は、先王の時代だった。帝国として戦は常にあり、新人と言えど戦場に出ていった。当時、ファウスト様達は現場で活躍していらして、認められていないながらも他の仲間達からの信頼は厚かった。ただ一人、ルース殿を除いて」

 ランバートの知らない騎士団の歴史。今の形態になる以前の騎士団は序列が厳しくコネと金が物を言う時代だったと聞いた。戦場でどれほど活躍しようと、処世術が上手くなければ上に行くことはできない。今の騎士団からは考えられない状態だ。

「ルース殿は確かにとても強かった。ファウスト様と渡る合うほどに腕がたったんだ」
「そんなに!」
「あぁ。ファウスト様の剛の剣に対し、ルース殿は急所を突く戦い方をした。人間観察がお得意な人だった」

 流石にそれは予想していない言葉だ。ファウストと同等の強さを持つ相手が敵だなんて、かなり厄介だ。
 だがルイーズはそればかりではないのだと、更に話を続けた。

「それに加えて、あの人は手を選ばない。仲間を犠牲にして自分一人が生き残っても平然としている。部下を囮にしたことも幾度もある。俺は、あの人が近くの味方を盾にして敵の攻撃をやり過ごすのを見た。そのくらい、何でもする人だ」
「最低ですね」
「あぁ。その為、ファウスト様達とは相容れなかった」

 それは当然だ、今の騎士団は仲間を大切にする。それはそのままファウスト達団長の考え方であり、あり方だ。そこにこんな人間が入る事はまずありえない。

「そんな事をして、咎めは無かったのですか? 仲間を犠牲にするようなやり方なんて今では絶対に許されませんが」
「無いな。当時の騎士団長はルース殿の父親だ。当時は各府に別れていなかった。騎士団長が一人、その下に副団長が数人いたが、どれも実力で上がってきたとは言いがたい人達だった」

 冷静に、辟易とルイーズは明かして紅茶を飲み込む。視線は冴え冴えとして、口調は疲れ切っている。当時、本当にこの人達は合わなかったんだと分かった。

「だが、あの人はそんな父親とも少し違ったな」
「え?」
「なんと言うか……歪んでいたし、外道ではあったが、騎士ではあったんだ。剣を持たない一般人には何を言われても平然としていた。国を支える民を守るのが騎士であるから、その騎士が民を殺める事はあってはならない。例え罵られ、石を投げられてもあの人は一般人に手を上げる事はなかった」
「確かに、妙な正義がありますね」

 その心があって、どうして仲間を道具のように扱えたんだ。どうにもちぐはぐに思えてならない。何が、そんな妙な状態にしたんだ。

「金を求めるでも、権力を求めるでもない。だから余計に不気味だった」
「その人は結局、騎士団を追われたのですよね?」
「陛下即位の際に父親が謀反人となり、当人も疑われて姿を消した」
「判決は出ていないのですか?」
「出ていない。だが本人としては、疑われた事が既に見限るに十分な事だったのだろう。裏切られたと感じたのかもしれない。その時に同じく父親が謀反を起こした騎士団の人間を連れて居なくなってしまった」

 思い込みが激しいのか、それとも小さな事でも許せない潔癖症なのか。なんにしても、相当ややこしい人である事は十分に分かった。

「なんにしても、厄介で面倒な人である事は分かりました」
「蟻一匹を全力でひねり潰して、かつその死体まで丁寧に焼却するような人だ」
「……時間外訓練、増やします」
「装備もしっかり確認してくれ。多少非合法な方法も使用可能だ」

 この人がここまで言うのならよほどなのだと思いランバートは頷いた。とりあえず装備の点検の他に、痺れ薬くらいはナイフに塗っておいてもいいかもしれない。そのくらいには警戒することにした。


 その夜、走り込みと筋トレをしたランバートは遅れて浴場へと来た。もう湯が落ちる寸前で、誰もいないと思っていた。ランバートも軽く汗を流す程度と思っていたのだ。
 だがそこにはゼロスがいて、丁度今から風呂という感じだった。

「どうしたんだゼロス、こんな時間に珍しいな」
「お前もだろ、ランバート」

 苦笑して衣服を脱いだゼロスの体は、意外な事に痣が目立った。顔や腕といった部分は平気だが、胴や太股の辺り、背中には内出血の痕跡がちらほらだ。

「どうしたんだお前!」
「ん? あぁ」

 驚いていえば、ゼロスは気の無い様子で自分の体を見回し苦笑した。

「時間外の訓練を付けてもらっているんだが、案外大変なんだ」

 ゼロスの表情から、その相手がクラウルではという予想はできた。そして、そうなった理由もなんとなく。

「とにかく早く風呂に入らないと火が落ちるぞ」
「あぁ」

 ランバートも慌てて脱ぎ、風呂場へと向かっていった。

 髪や体を洗い、少し温くなった浴槽に浸かる。隣にはゼロスもいて、気の抜けた息をついた。

「聞いたのか?」
「あぁ」
「クラウル様の反応は、どうだった?」
「……別れようと言われた。一般人に戻れば、俺に手は伸びないからと」

 随分と飛躍した考えに行ったものだが、どうにもタイプが似ている。ランバートが苦笑すると、ゼロスは視線を向けて「お前は?」と問い返した。

「逃げろと言われたよ」
「どっちの相手もヘタレか。まったく、最強が腑抜けてどうするんだ」
「まぁ、その通りだな」

 苦笑したランバートは、それでもファウストをあまり責めてはいない。よほど相手が苦手と見えるし、知っているからこその恐怖もあるのだろう。そうした様子を昨日感じ取った。

「自分の事ならどうとでもするんだろう。けれど相手に累が及ぶと感じれば、それが何よりの恐怖になる」
「勝手に俺を捕まえて弱点扱いとはいい度胸だ。あの人もいつか目に物を見せてやる」
「ゼロス、よほど怒ってるな」
「お前は怒らないのか」
「怒ってなかったら時間外訓練なんてしないだろ?」

 ニヤリと笑うランバートに、ゼロスは目を丸くして次に笑った。

 ランバートとしては、ずっと焦りと怒りはあった。どうしたってあの人に敵わないのはもうこの際仕方がないとしても、庇われるほど腑抜けてはいない。だからこそ訓練も続けてきた。バロッサの事件以降焦る事はしないようにしているが、その分色んな人に訓練を付けてもらう事にした。毎日時間外の走り込みと筋トレは欠かしていない。

「それにしても、クラウル様に手ほどきをお願いしたのか? あの人だって強いだろ」
「動きが読めない。目の前に居たと思ったらいつの間にか消えて、直ぐ側に接近している。弾き返そうにも距離が縮まり過ぎてもらうんだ」
「大きいのに、早いよな」
「ファウスト様もか?」
「あの長身でどうしてあの動きができるのか、疑問ばかりだよ」

 ファウストもかなり動きが俊敏だ。最近は受け手に回る事も少なくなり、実戦に近い訓練をしている。ランバートも俊敏だが、油断すれば姿を見失う事もある。防御からの切り返し、攻撃からの反転。回避の素早さ。どれも隙が無くて困る。

「クラウル様は騎士だけど、それ以上に暗府の長なんだろ。多分暗殺術なんてのも身につけているから、俺達が通常やっている訓練の相手とひと味違うんだ」
「上等だ。あの人から一本取るまでは続ける。俺が苦手な相手だから、丁度いいのかもしれない」

 そう言うと、ゼロスは立ち上がって浴槽を出て行ってしまう。その背を追ってランバートも出た。湯はすっかり火が落ちて、大分温くなってしまっていたのだ。

「ゼロス、一度医務室行った方がいいぞ」
「面倒だ」
「エリオット様に俺が伝えておこうか?」
「……」

 部屋着に着替える間、改めてゼロスの体を見たランバートからの提案だった。何せ本当に酷い所は青を通り越して赤黒くなっている。背中の一部、太股の部分。大分痛むはずなのにゼロスは平然としていた。

「何度ももらう場所なんだ。俺にとって苦手な位置で、把握ができていないと」
「案外容赦がないよな」
「そういうお前も、生傷が結構あるな」

 指摘されたのはもう痛みもないような傷だ。ファウストだけじゃなく、アシュレーやウェイン、グリフィスと手合わせをした時の傷だった。

「このままエリオット様の所に行って、薬もらってこよう。俺も少し用事があるんだ」
「そういう事なら付き合うか」

 きっちりと着込んで風呂場を出たランバート達は、その足で一階診察室へと向かっていった。


 医務室へと向かうと、そこには意外な人が座っていた。

「ラウル?」
「ランバート!」

 エリオットの対面、診察用の椅子に座っているラウルを見つけてランバートは声をかけた。見れば腕を包帯で巻いている。幸い血が滲んでいるような感じはしないが、何かしらの怪我をしたのは明らかだ。

「どうしたんだよ」
「時間外の訓練をしていて、ちょっと枝で引っかけちゃってさ。大きかったのと、少ししても血が止まらなくて」
「大丈夫なのか?」
「心配ありませんよ。直ぐに傷も洗ってありましたし、今は出血も止まっていますから」

 ラウルに代わり、包帯を巻き終えたエリオットが穏やかな笑みで返してくる。そして、ふとランバートの後ろに立つゼロスへと視線を向けた。

「それよりも、二人とも怪我か何かですか?」
「ゼロスが」

 途端、僅かに眉根を寄せたエリオットが側まで来てゼロスを診察椅子へと連れていく。処置の終わったラウルはそこを譲り、ランバートの隣りに立った。

「どうした、ゼロス」
「打ち身と内出血で」
「診せてみて」

 着ていた部屋着を脱いだゼロスを見て、エリオットもラウルも驚いた顔をする。エリオットは直ぐに薬品棚へと近づき、軟膏壺を持って戻ってきた。

「一体何をやったらこんな痣になるんだ」
「時間外訓練をここ数日受けていまして。俺の対処の出来ない範囲は回数をもらうんです」
「時間外訓練って」

 エリオットは驚いた顔をしてラウルとランバートを見る。ラウルも驚いていて、ランバートを見ていた。

「ゼロス、誰かから何かを聞いたのか?」
「クラウル様よりお話を聞きましたので、訓練を付けてもらっていますが」
「これはクラウルがやったのか!」

 今度こそ綺麗な緑色の瞳を見開いたエリオットに、ゼロスは苦笑して頷いた。これにはラウルも驚いたようだった。

「あいつ、もう少し手加減というものを」
「いえ、加減はしないで欲しいと俺が頼みましたので」
「ちょっと待って。ゼロス、どうしてクラウル様はゼロスに大事な話をして、個人訓練なんてしてるの? クラウル様って、時間外訓練は付けないので有名なんだけど」

 ラウルは戸惑いあれこれ考えている様子だ。そしてエリオットもその事に気付いて仕事の顔から日常の顔に戻ってしまった。
 一方ゼロスはしくじったという顔をする。おそらく、既に知られていると思っていたのだろう。だが残念な事に二人の関係を知っているのは同期の一部とファウスト、シウス、オスカルくらいでこの両名は知らないのだ。

「ゼロス、別に隠さなくてもいいだろ?」
「まぁ、そうだが」

 改めて口にするのは多少恥ずかしいのか、困った顔をする。だが直ぐにエリオットへと向き直り、苦笑交じりに口を開いた。

「クラウル様と、お付き合いをさせてもらっています。その関係で話を聞きました」
「「……えぇぇ!!」」

 ラウルとエリオット、息の合った叫びはいっそ面白くて、ランバートとゼロスは顔を見合わせて笑った。

 一通り話すと、エリオットもラウルも顔を僅かに赤くした。現在は治療も終わりソファーセット。温かな紅茶と小さなクッキーを目の前にしている。

「それにしても、クラウルが恋人を作ったなんて……意外です」
「僕もそう思います。しかもゼロスというのが」

 正直な感想に、ゼロスは僅かに視線を上げる。まったくもって平然とした感じだ。

「まぁ、そのような経緯で今回の事も聞きました。これから生傷が絶えないと思うので、エリオット様、よろしくお願いします」
「あまり『分かりました』とは言いたくないのですが。それにしても、クラウルが本気で訓練を付けているとなると、よほど脅威に思っているのでしょうね」

 苦笑したエリオットが頷きそんな事を言う。それを見計らって、ランバートは口を開いた。

「エリオット様は、ルースという人の事を良く知っていますか?」

 その問いかけは多少この人を困らせる。けれどエリオットは直ぐに頷いて、紅茶のカップを置いた。

「おおよそ、皆が聞いている通りの人物ですよ」
「手を選ばない、卑怯上等、仲間意識ゼロ?」
「ゼロスは案外、言う事に容赦がないのですね」

 驚いたようなエリオットは、だが次には苦笑して頷く。全面的な肯定だ。

「私やオスカル、シウスにくらべファウストやクラウルが苦手と思うのは、その矛先が誰に向かうのかを考えるからでしょうね」
「と、言いますと?」
「私やオスカル、シウスには弱点があります。私は目の前の事に気を取られると視野が狭くなってしまう事。オスカルは挑発に乗りやすく、そうした場合の攻撃が雑になる事。シウスは複数を相手にすると途端に劣勢に追い込まれ、スタミナの無さも手伝って戦闘時間が極端に短くなる事です」

 実に冷静な分析をしている。エリオットも十分敵に回したくない相手だ。

「ですので、私達にはきっとそうした苦手な相手や状況で挑むでしょう。無駄に策を弄さなくても個人攻撃で十分に撃破出来ると」
「では、ファウストやクラウル様にはどういった方法でくると?」
「間違いなく、ジワジワと周囲を落とし込み、弱らせてから攻撃をするでしょうね」

 冷たい声音は確信を持っているようだった。カップを手にし、紅茶を飲むその音だけが一瞬静まった場に響いていく。

「二人は欠点を補うだけの力を持っています。どれだけ多人数をぶつけようが、集中を切ろうが即座に対処する、根っからの戦士です。だからこそ、目はその周辺へと向かいます。嫌な事ですが、二人とも情があるので外周を攻める事が一番ダメージがいくので」
「真っ先に狙われるのが、俺達だと?」

 ゼロスの問いかけに、エリオットは静かに頷いた。

「特にファウストは仲間へ手を出される事を一番嫌う。これは奴が一番知っています。奴が仲間を犠牲にする度、取っ組み合いの喧嘩になっていましたから」
「あの人と取っ組み合いの喧嘩が出来るというのも、また凄い話ですが」

 思わず苦笑が漏れる。だがエリオットは穏やかに笑って頷いた。

「それだけ、奴自身も強いのですよ」
「お話は分かりました。ですが俺は、逃げも隠れもしません。今はまだ弱点でも、むざと殺されたりはしないつもりです。必ず、生き残る」

 ゼロスの決意の言葉にエリオットも静かに、そして満足そうに頷いた。

「当然です。どいつもこいつも守ろうとして、私達の力を過小評価しています。私達とて騎士の端くれ、戦う為の力は持っているのですから」
「僕もそう思います。精一杯、力を出し尽くして戦う。それが、僕の目指す誇りある騎士の姿です」
「俺があの人の背を守る。その目標は捨てちゃいない。守る守ると言うあの人が俺に守られる時の顔を想像するだけで楽しみだ」

 全員がニヤリと笑い、互いに手を握り合う。四つの手が重なるように握られて、全員がいい顔をして頷きあった。
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