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15章:獅子と子リスの恋愛譚

5話:子リスは獅子を、獅子は子リスを

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 日常が少し形を変えて戻って来た。
 ディーンはますますドゥーガルドの側にいるようになった。最近ではゼロス達と食べる昼食の時間も隣にいるようになり、人懐っこい弟のような様子から皆に可愛がられている。
 そして、ドゥーガルドはディーンを遠ざける事はしなくなった。くっつかれると赤くなり、「大好きです」の爆弾に未だ爆死しそうになっているが、それでも穏やかにディーンを受け入れるようになった。
 その様子に一度はキレたボリスも嬉しそうな笑顔を浮かべて「良かったね」とディーンの頭を撫でている。それが少し、ドゥーガルドをもやもやさせた。

◆◇◆

「先輩、騎士団抜けるっすか?」

 三月も残すところ二週間。ドゥーガルドは同室の先輩から騎士団を離れるという話を聞いていた。

「あぁ、俺も年だからな。ボチボチ隠居だ」
「年ったって、五五だろ? まだいけるでしょ」

 同室の先輩は「面倒だ」といいながらもなんだかんだで面倒を見てくれた、かなり年上の人物だった。現騎士団の前身からいた人物で、隊でもまとめ役や相談役をしていた。

「ばーか、最近じゃ敵がかなり強い。おっさんの出る幕じゃねぇよ」
「でも」
「それに、町にいる妻と息子と娘も心配してるんだ」
「先輩町に家庭があったっすか!」

 驚いて声を上げるが、そんなに珍しい事では無い。年齢が上の隊員などは町に家庭を持つ人間もいる。事実婚だが、当人達がそれで良く、隊員本人は安息日や有給時にしか会えないのを覚悟していれば咎められる事もない。
 だが初めて知ったドゥーガルドは、色々と目を丸くしていた。

「俺もそこそこいい年だからな。んなもんで、とりあえず撤退だ」
「とりあえず?」
「来年からは通いで、ここの事務をする事になった」
「事務?」

 そんな話は初めて聞いた。ドゥーガルドが首を傾げると、先輩はただ頷いた。

「これまでは城の人間や宰相府なんかがしてくれてたんだが、最近は忙しくなったし人数が増えた。ってなことで、事務を新設する事になったらしい。部屋割りや雑務、手紙や荷物の受け取り、外泊外出届の受理、他にも諸々だ」

 確かに隊員が増えてきて大変そうにはしていた。それに城の人間がここに入ると少し困惑している。内部の人間じゃないと分からない事もあるらしかった。
 だからこそ、そうした部署が新設されるのは願ったり叶ったりだ。

「料理府、医療府と同じく通いだからな。これからは家族といられる。それに一応は退職扱いだから、ようやく妻と籍を入れてやれるよ」
「お疲れっす」
「おうよ」

 ほっとした様子で先輩は笑う。

 料理府、医療府は団長、副長以外の隊員は外からの通いが許されている。宿舎の部屋にも限りがある事もあってだ。それに、緊急時に即刻出なければならない騎兵府や宰相府、近衛府以外はわりと緩い。暗府など、一年の半分を地方暮らしという隊員すらいるわけだ。

「ってなことだから、部屋が空く。他にも他府へ移る予定の奴もいるし、俺みたいなおっさんは早期退職して事務に移る奴もいる。部屋、新しい奴の希望があれば団長にいいな」
「え?」

 不意に言われて目を丸くしていれば、先輩はニッと下卑た笑みを浮かべた。

「何でも、一年目にひっつかれてるらしいじゃねぇか。野獣も可愛い子リスにかかっちゃ牙を抜かれるのかねぇ」
「そんな!」
「まぁ、その気があれば申請だしな。俺は一週間くらいでいなくなるからよぉ」

 突然降って湧いたこの出来事に、ドゥーガルドはどうしたらいいものかと頭を悩ませた。

◆◇◆

 翌日、安息日前日。
 ドゥーガルドはディーンを誘って外に出た。一応付き合いはじめて初めての安息日になる。
 お高い店に行こうかと考えてやめた。どうにも肩が凝るし、似合わないだろうと思った。だから何度か行った賑やかな店に誘ってみた。

「こんなんでいいのか? 俺は肩の凝るような洒落た店は知らなくてよぉ」
「楽しいですよ。僕、ほとんど宿舎の食堂で食べてるので新鮮です」
「そうなのか? 外で食べたり、飲みに出たりしないのか?」
「してませんよ」

 苦笑したディーンが大きな木製ジョッキに注がれた酒を前に「大きい!」と驚いてはしゃぐ。その様子にドゥーガルドは笑い、グビグビと喉に流し込んだ。

「あっ、乾杯してないのに!」
「おっ、おう、そうか。悪かった」

 仲間内だと乾杯なんて改めてしないもんだから、いつもの癖で飲んでしまった。ディーンはぷんすと頬を膨らませて怒っていて、そんな部分もなんだかくすぐったくてドゥーガルドは笑った。

「じゃあ、改めて」
「はい」
「今後もよろしくな」
「僕の方こそ、よろしくお願いします」

 重たいジョッキを両手で持って乾杯をしたディーンが、飲み慣れない酒に咽せている。その背をバンバン叩くと、逆にケホケホされてしまう。力加減が難しい。

「悪い、痛かったか?」
「平気です。先輩の力強い所も僕、好きですから」

 無邪気とも言えるくらいの笑みで「好き」と言われるのはやっぱり照れる。照れ隠しに飲もうとして、ふと手を止めた。
 これ一杯で酔ってしまうだろう。動けなくなるわけじゃないが、その前に言わなければいけない事を言っておかなければ。

「なぁ、ディーン」
「なんですか?」
「俺の同室の先輩な、あと一週間もすれば退職するんだってよ」
「そういえば、事務が出来て早期退職する方がいると、アシュレー様から伺いました。その方もそうですか?」
「あぁ、らしい。でっ、部屋が半分空くんだが……お前、来るか?」
「え?」

 しばらく沈黙が流れた。ドゥーガルドはドキドキしていた。今更部屋を移るということは、対外的に二人の関係を明かすようなものだ。ドゥーガルドは恥ずかしいが、嫌なわけじゃない。だからもし、ディーンが希望するなら申請を出そうと思っていた。
 ディーンの頬が見る間に赤くなっていく。酒のせいではないだろう。

「あの、いいんですか?」
「俺はいいが、ディーンはいいのか?」
「勿論です! あの、本当に……夢みたいです」

 言いながら、ディーンは薄らと目に涙を浮かべている。うれし涙だと分かっていて、胸の奥が熱くなってくる。
 ドゥーガルドは一気に酒を飲み干し、料理を食う。そうしてほろ酔いのまま、ディーンの腕を掴んで宿舎へと足早に戻った。

「あの、先輩?」
「悪い、何か俺……俺はお前の事が好きだ」

 口にする度に気持ちが落ちていく。確信していく。ドゥーガルドはそのままディーンを連れて自室へと入った。今日は先輩は町に泊まっているから、誰もいない。
 暗い部屋の中、ドゥーガルドは性急にディーンをベッドに乗せて覆い被さるようにキスをした。
 柔らかくて小さな唇から、遠慮がちに舌が触れてくる。ドゥーガルドもそれに怖々と応じた。触れる度、深い部分が疼いてくる。こみ上げるような衝動に、徐々にキスは荒々しく奪うような物になっていった。

「はぁ……」

 互いに息が苦しくなるほど貪って、トロンとした視線を交わしている。ディーンは幼く妖艶で、嬉しそうに微笑んでいた。

「先輩、好きです」
「俺もだ」
「ちゃんと言葉にして下さい」
「……好きだ」

 拗ねた次にはニコニコ笑って、幸せそうに首に抱きついてくる。これが可愛いと感じるのは、やっぱり好きだからだ。

「ねぇ、もっと触って下さい」
「あぁ、分かった」

 言いながら、ドゥーガルドはドキドキしている。それというのも、どうしていいか分からないのだ。何せ経験はない。ここに来て大人な本は読んだことがあるが、所詮は本。しかも最後まで読む前に茹だって閉じてしまうという体たらくだ。
 それでもぎこちなくディーンの服を脱がせ、自分も脱いでしまう。現れた白く滑らかな肌は薄らと汗をかいていて、お酒のせいもあってか薄く色づいていた。

「あっ、あのな、ディーン」
「どうしました?」

 不安そうな青い瞳が見上げてくる。服を脱がせたタイミングで躊躇ったからだとは、ドゥーガルドは思っていない。恥ずかしく赤くなりながら、ドゥーガルドは正直な事を明かした。

「あぁ、えっと。俺はその……経験がないんだ、その……こっちの。女性経験も、男も」
「え?」
「だから、その! 多分、下手くそだと……思う。満足させてやれねぇかもしれない。知識ってか、同僚や先輩の話聞いたかぎりの事しかわかんないし、実践なんて初めてだから、痛いかも……」

 どうにも歯切れが悪いのは勘弁してほしい。これでもけっこう必死だ。なにせ付き合った経験すらないのだから、体の関係なんて有るはずも無い。娼館に誘われた事もあったが、気後れして行かなかったし。

 けれどディーンは青い大きな目をパチクリとして、次には可笑しそうに笑った。

「なっ! 笑うなって」
「だって」
「あのなぁ!」
「平気です、先輩。いえ、むしろ光栄です。僕が、先輩の初めてになるんですね」
「あ……」

 途端に気恥ずかしさがこみ上げて体が熱くなる。
 ディーンは艶っぽい笑みを浮かべ、頬に手を添えて啄むようにキスをした。

「僕も初めてです。貰ってくれませんか?」
「ぉ、おうよ!」

 ここまで来たら尻込みなんざ男じゃねぇ!

 ドゥーガルドは気合いを入れて、ディーンにお返しのキスをした。

 ソロソロとおっかなびっくり首筋に唇で触れる。柔らかな肌が心地よく手に吸い付き、甘えた様な声が耳に届く。それだけで疼くような気がして、少しずつ興奮してくる。
 思うままに肌を貪り、やがて愛らしい胸にキスをしてみる。ヒクンと跳ねたディーンを抱いて、思いきって吸い付いてみた。

「はぁ!」
「っ!」

 驚いて唇を離してしまった。強い声は痛みを訴えたのかと思ってビクビクしたのだ。潤んだ瞳が突如快楽を止められてパチパチッと瞬きしている。だらしなく緩んだ唇は濡れていた。

「あの、大丈夫か? 痛くないか?」
「え? はい、平気ですよ?」
「うっ、そう……なのか?」

 どうにもオドオドしてしまう。自分の力が強い事は自覚しているし、握力のみでリンゴくらいは潰せるから、壊してしまいそうで怖いのだ。
 しょぼくれたドゥーガルドを見上げて、ディーンはにっこりと笑う。そして伸び上がり、キスをしてドゥーガルドの下から這い出した。

「僕にもさせてください」
「え?」
「ドゥー先輩を、気持ち良くさせたいです」

 どこか熱を帯びた瞳をして見上げられ、ドゥーガルドは強く拒む事はできなかった。
 そうするうちにディーンは体を屈め、ドゥーガルドの強張りを握り、そこに舌を寄せる。ぴちゃりと濡れた小さな舌が大きな剛直を舐めるのは、もの凄く淫靡な光景だった。

「うわぁ、ドゥー先輩の大きいです。口に入るかな?」
「ちょっ! 口ぃ! おい、ディーン! んおぉ!」

 小さな口が大きすぎる剛直を咥え込む。その衝撃は凄まじい。なにせ自慰以上の事を知らないんだ、フェラなんてものは知識でしかない。
 艶めかしい柔らかな口腔がやわやわと刺激し、舌が先端や筋を舐める。ゾクゾクっと背中を走る快楽に、ドゥーガルドは完全に陥落している。

「ひもひいいんへふね?(気持ちいいんですね?)」
「うぉ、その、モゴモゴするの止め……!」

 口に含んだままディーンが喋ると、先端がむぎゅむぎゅと締められて気持ち良くなる。腰が重く痺れ、ドゥーガルドはたまらず後ろに倒れた。ベッドが軋み、ディーンは足の間に体を入れてしまう。

「ドゥー先輩、可愛い」

 唇を離したディーンが熱に浮いた赤い顔でドゥーガルドをみて、たまらずという様子で激しいキスをする。容赦なく絡まる舌に翻弄され、吸い上げられて下肢が熱くなる。ディーンの体に前が擦られているのもあって、先端からトロトロと先走りが溢れて腹を汚している。

「気持ちいいですか、先輩?」
「あぅうっ」
「気持ちいいんですね」

 確信を持ったディーンの笑みはどこか迫力がある。
 体をずらしたディーンはそのままちゅぱちゅぱと乳首を吸った。
 快楽に火のついているドゥーガルドは、そんな事にも感じてしまう。乳輪の辺りを舌が舐めるのにじんわりと痺れ、乳首が硬く尖って張りつめるのを感じる。その状態で吸われるのだ、たまらず仰け反ってしまった。

「先輩、とても可愛い。乳首、こんなに尖らせて……顔も真っ赤です」
「いや、だってそれは、んぁあ!」
「ここも、こんなに張りつめてます」

 いきなり前を握られ、緩い力で扱かれる。辿々しく、それでも張ったカリに指がひっかかるのはもどかしく気持ちいい。ゾワゾワっと肌が粟立ち、クラクラしてきた。

「可愛いです……」

 うっとりと微笑んだディーンが尚も剛直を撫で回し、竿を握り上下にゆっくりと扱く動きに力が抜ける。逆らえない快楽に体を立てていられずにされるがままになっている。
 それをいい事に、ディーンは玉を口に含み転がし、あろう事か後孔にまで舌を這わせた。

「ちょ! おま、そこわぁぁっ」

 反論しようとしても力が入らない。どんどん抜けて行く。内股がプルプル震え始めて腰骨の奥が痺れていく。心臓が早鐘を打っていて、熱くなっていくのが分かる。

「いけませんか?」
「いけないって、それは、ぬぉ!」

 突然後孔に僅かな痛みと強い異物感を感じて、ドゥーガルドは仰け反った。途端、キュッと内壁が締まっていく。けれど、引っ掻くように中の物が動くからそれに更に仰け反った。

「凄い締まります。こんな風に……」
「ディ……ディーン?」

 嫌な予感がする。嫌な予感しかしない。ドゥーガルドの後孔に埋まっているのは間違いなくディーンの指で、その締め付けにディーンはどこか恍惚とした表情をしている。
 青い瞳が熱っぽくドゥーガルドを見つめ、色のある微笑みを浮かべた。

「あの、先輩」
「あのって……んぁあ!」

 中の指が広げるようにグニグニと押して、その指先が硬い部分を僅かに掠める。他とは違う重く疼く感覚に驚いて声が出てしまう。ディーンは心得たように、そこを重点的に撫でるようになった。

「先輩、とっても可愛いですよ」

 にっこり笑ったディーンの目に、どこか男らしさが宿っていた。


 ぬぽっ、くちゅっ、という卑猥な感覚があらぬ所かが感じられる。ディーンの指が三本、ドゥーガルドの中を犯している。涙目のまま体に力が入らず震えながらそれを受け入れるしかないドゥーガルドは、さっきから喘ぎっぱなしだ。
 重点的に攻められている硬い部分に指が触れ、押し込むように抉られるとそれだけで震える。しかも前からは盛大に溢してヌチャヌチャした体液が腹を汚している。
 そんな状態なのにディーンは嬉しそうに「先輩、可愛い」と言って前を握り、先走りを塗り込むように上下に緩く扱いてくる。これが気持ち良くて頭の中が真っ白になり、低い声で喘ぎながら腰を浮き上がらせている。中が締まっていくのに、ディーンの指はそれを許さず指を広げるから余計に圧迫して苦しい。

「はっ、ぬぁ! あぁ、やめ……ぬぉお!」
「先輩の中、熱くて狭くて吸い付くようですよ。とても、気持ち良さそうです」
「なっ! おい、ディーンやっ、はあぁ!」

 指が抜けて、妙にそこが寂しくなっている。キュムキュムと入り口が口寂しくしている部分に、ディーンの切っ先が当たった。

 ドキドキしている。これが、気持ちのいい部分に触れて……。

 考えただけで鋭い刺激が脳みそを揺らす。欲しいと疼いてたまらなくなる。羨望の眼差しを向けてしまう。その先で、ディーンはにっこり笑った。

 ゆっくりと力がかかって、後孔を広げていく。サイズとしては普通だが、いきり立つ杭はそれでも痛む。引き裂かれるような痛みに涙目になっていると、その眦に唇が落ちた。

「ごめんなさい、先輩」
「ディーン?」
「痛い、ですよね?」

 痛い。でも、こんな顔を見たらそれを口にはできない。何よりこの痛みをディーンに強いるとなると気が引ける。ドゥーガルドのものはディーンよりも太さも長さもある。きっとこれ以上の痛みがあるだろう。
 息を吐いて、痛みを逃がした。ディーンも無理にこじ開けるような事はしなかった。少しずつ入っていく熱い肉杭に穿たれながら、知らない部分まで満たされていく熱に腰は知らず震えていた。

「先輩……」

 全てを収めたディーンが、倒れ込むように胸に落ちてくる。互いに汗ばんだ体で触れるのは心地いい。大きな手で背中を撫でていると、ディーンはくすぐったそうにモゾモゾと動いた。

「先輩の中、熱いです……溶けちゃいそう」
「俺も熱いが」

 腹の奥の圧迫感が苦しく、触れる熱はどこまでも熱い。時折脈打つように動くのが不意打ちで、気持ちいい。
 それがゆっくりと抜けて、同じだけ中を擦り上げていく。ゾクゾクと走る刺激はより強くなっている。しかもその切っ先は容赦なく硬い部分を擦り抉っていくのだ。

「あぁ! あっ、それは……いっ」

 頭の中が真っ白なのに、チカチカ星が飛んでいる。突き上げられ、走る快楽に声を上げているしかない。一つ突かれるだけで中も内股も痙攣し、中のディーンを締め付けてしまう。そこを分け入るように侵入してくる肉杭の感覚がたまらないのだ。

「先輩、気持ちいい?」
「気持ちいい! んぁ! あぁ、いぃ!」
「可愛い、先輩。僕のでもっと、気持ち良くなって下さい」

 嬉しそうに青い瞳が輝いて笑う。濡れた舌が乳首を含み吸い上げられる。同時にディーンの腹に反り返った強張りが擦れていく。

「あぅっ、先輩そんな、締め付けたら我慢出来ません」

 そんな事を言われても困る。乳首、強張り、中と三点を攻め立てられてグチャグチャになっているんだ。しかも微妙に中の角度が変わって、より突き上げて抉るようになってしまった。

「ぬぉぁ! もっ、ディーンこれ以上は!」

 おかしくなる。いや、もうおかしい。ずっとブルブル震えて空腰を振り、前からは漏らしっぱなしでヌルヌルでグチャグチャだ。心臓が壊れたみたいに強く鼓動を打っている。頭の中はディーンの与えてくれる快楽を追いかけるだけで精一杯で、自分の事など何も分かっていない。
 ドゥーガルドはもうずっと、中でイッている。それも分かっていないままだ。

「先輩、僕も限界ですっ」

 ブルッと震えたディーンがより深く腰を進めてくる。同時にパンパンに腫れた前を握り容赦なく扱き上げた。それだけで、ドゥーガルドは果てた。心臓の音と同じテンポで熱を吐き出しながら、「あっ、あっ」と掠れた声で喘ぎ、腹筋の辺りがヒクヒクと痙攣を繰り返している。
 ディーンも息を詰めて、深い部分に熱を吐き出した。膨れては吐き出す長い射精を受け止めながら、ドゥーガルドはされるがまま、なすがままに弛緩していった。


 穿っていた楔が抜け落ち、後を追うように放たれた熱がトロトロとこぼれ落ちても動けない。それでも後孔は物欲しげに口をパクパクさせている。妙に恥ずかしくて、さっきからずっと枕に顔を埋めて上げられない状態だ。

「先輩、ごめんなさい。あの、顔を見せて下さい」
「うぅ、恥ずかしすぎる。こんな……嫁に行けない」
「あの、嫁には行かないと思いますよ? 男ですから」

 ディーンにツッコまれるくらい混乱している。そして、「突っ込む」という単語に過剰反応してしまうくらいに乙女だ。
 尚もエグエグとしていると、不意にディーンが抱きついて覆っている枕を取り上げ唇に触れるだけのキスをしてきた。愛らしいそれに、ドゥーガルドはキョトンとしてしまった。

「ごめんなさい、僕がいけなかったです。その……ドゥー先輩がとても可愛くて、それで我慢が出来なくて……僕の事、嫌いになりましたか?」

 とても悲しそうに聞いてくる。だが、ドゥーガルドの中にそんな気持ちは一欠片もない。恥ずかしくて顔を見られないだけで、嫌いになったりするものか。
 首を横に振れば安心したようにディーンが笑い、擦り寄ってくる。その背中を撫でながら、なんとなく「これでいいのか」という気持ちが浮かんでくる。
 ディーンにドゥーガルドのモノは大きすぎて入らないのは分かったし、気持ちいい事も分かった。それなら羞恥を無視すれば、何ら問題はないはずだ。

「まぁ、これが俺達の形だな」

 納得して、笑って、ドゥーガルドはキスをする。滑らかな額と、愛らしい小さな唇に。

「これからよろしくな、ルームメイト」
「! はい!」

 はにかんだ笑顔がやっぱり可愛い。何をされても腹が立たない程度には愛らしく可愛く許せてしまう。だから、これでいいんだろう。
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