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13章:冬に咲く芸術の花

2話:ハドナの闇

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 やがて、自警団詰所が見えてくる。
 ここハドナは軍事的重要拠点ではないので、騎士団の人間はいない。その分町の勇士が自警団を作り、町の治安を守っている。だが、犯罪が起こった時には騎士団とも連携するらしく、そのツテでファウストは顔見知りだった。

 通された一室に、程なくして一人の男が入ってきた。年齢は三十後半から、四十代だろうか。白に青ラインの上着を着た、少し気の抜けた男だった。

「ファウスト様、お久しぶりですな」
「ウォルシュ、久しぶりだ」

 立ち上がったファウストに、この自警団の責任者だというウォルシュは挨拶をしているが、やはり言葉よりも怠惰に聞こえる声音だ。声音だけだろうが。
 その視線が、ランバートと少年に注がれる。特に少年を見て、気怠げな青い瞳が一瞬鋭くなった。

「ミック、どうした?」
「あの……」

 少年は俯いて口をつぐむ。言えない事を悔しく思っているのか、プルプル震えている。その様子に、ウォルシュは溜息をつき、きつくウェーブのかかった焦げ茶の髪をクシャリとした。

「あのなぁ」
「彼の持っていた絵を、何者かが強引に奪い取って逃げました。馬車の番号はH841です」

 言えなくなっている少年に代わって、ランバートが伝える。それに、ウォルシュは僅かに眉を上げ、少年に近づいてアイスブロンドの前髪をクシャリと撫で上げた。

「あのなぁ、そういう事は言えっていってるだろ」
「ご……めんなざぃ」
「責めちゃいなが、お前の為にもならないだろ」

 呆れたような、だが見守る穏やかなウォルシュの視線に、少年は声を震わせて泣いてしまう。悔しさや悲しさが溢れるようなその姿に、何か見過ごせない事が起こっているのを感じた。

「悪いなぁ、兄ちゃん。こいつは内にため込む癖があって話したがらなかったろ。それでも気にかけて連れてきてくれて、助かったわ」
「あぁ、いいえ」

 何が起こっているのだろう。それに、奪われた絵は。第一この子の絵をどうして奪う必要があったのか。コンクールの品を狙うなら、もっと有名どころを狙うだろうし。

「犯人はなぁ、分かっちゃいるんだが手がだせねぇ。手の悪いこった」
「分かってるなら何故手が出せない」
「犯人がこいつの工房の師匠。つまり、責任者のロナードだからだ」

 その言葉に、ランバートの中で静かな炎が起こった。この子が必死に守ろうとしたなら、あの絵はこの子が描いたものだろう。それをどうして、師匠が潰しにかかるのか。
 卑怯だ。そして、理不尽だ。こんな事を許していいはずがない。どうしていつも傷つくのは力のない人達ばかりなんだ。
 下町でも感じた。エルの一族の時にも感じた。ラン・カレイユの盗賊少年達にも感じた。この国は、いつからこんなに腐っていたのか。

 ポンと、肩に手が置かれる。見上げた先の黒い瞳は、同じく怒っているのが分かった。けれど、冷静だ。
 冷静に、一呼吸置く。一度目を閉じ、深く息をする。そうすると、胸の中の熱も少し下がった気がした。

「詳しく話を聞こう」
「騎士団が手を貸してくれるので?」
「必要ならそうする。だが、この少年の事はそれでは間に合わないんじゃないのか?」

 ミックと呼ばれた少年は肩を震わせる。それだけで、余裕の無さが感じられた。
 ウォルシュは少し考えて頷いた。

「こいつはロナード工房の見習いなんだが、才能があってな。それを見抜いたロナードがこいつに絵を描かせて、それを自分の名前で画廊に卸してる」
「な!」

 ゴーストライター。しかも、この様子ではミックの了承を得ていないし、この痩せようはまっとうな扱いも受けていない。売ったお金も払っていないのだろう。
 胸くそが悪い。思わず拳を握ってしまい、それをウォルシュが見て苦笑された。

「こいつがそれに気づいたのが、半年前。偶然画廊の前を通って、自分の描いた絵が師匠の名前で出されているのを見つけたんだ」
「それで、どうした?」
「当然師匠に訴えたえ、工房を出る事まで話は行ったらしいが、ロナードがそれを許さず工房の二階に閉じ込めて、無理矢理絵を描かせていたらしい」
「そんな!」

 なんて横暴な。自分の欲の為に若い才能を殺すばかりか、無理矢理言うことを聞かせて描かせるなんて。こうして、力のない者は潰れていってしまうのか。
 ランバートの体に力が入る。項垂れて震えるミックが不憫でならない。力を貸したい。でも……。

「俺が保護した時には、雪の中に埋もれててな。どうやら雪が降り積もったのをいい事に二階から飛び降りたらしい」
「無茶をする」
「まったくですよ。で、事情を聞いたらこれなんだが……こいつの絵をロナードが横取りした証明ができない。今は俺の知り合いの所に預けてあるんだが、このざまだ」

 頭をポリポリとかくウォルシュに、ミックはすまなそうな視線を送っている。
 こうして、気を使って生きてきた事がよく伝わるものだった。

「冬のコンクールの絵を、描いていたのか?」

 ファウストの問いに僅かに視線を上げたミックが、静かに頷く。そして、震えながらも口を開いた。

「コンクールなら、僕の絵がちゃんと評価されると思って」

 そう言ったミックはそれ以上は口を開けなかった。また、大粒の涙が溢れてきている。悔しそうに唇を噛みしめる姿はあまりに痛々しかった。

 それに、もしかしたら彼の思いは甘かったのかもしれない。例えあの絵をコンクールに出展したとしても、後でロナードが「これは私の絵だ。ミックが勝手に持ち出したんだ」と言えば覆りかねない。彼の画風はこれまでロナードの名で出回ってしまったのだから。
 言いようのない悔しさがこみ上げてくる。どうにかしてやりたい気持ちになる。この誤解を解かなければ、この子はずっと日陰だ。

「盗まれた絵に関しては、馬車を辿れば行き着くでしょう。人の多い場所で起こった窃盗事件ですし、目撃者もいますからね」
「分かった。必要があれば騎士団を派遣する。要請してくれ」
「助かります、ファウスト様。こちらはなんせ自警団で、捕まえても罪を償わせる事はできませんからね」

 そう言ったウォルシュもまた、どこか悔しげだった。



 結局この日、ミックはウォルシュが預かると言う。ウォルシュが夜勤で、ミックをそのまま自警団詰め所に寝泊まりさせるそうだ。ある意味目が多いぶん、安心だろう。

 それでも気持ちは晴れない。せっかくの旅行なのに、水を差されてしまった。
 外で夕食を食べて、宿に戻ってきてもどこか憂いが残るままだ。

「ランバート」

 不意に名を呼ばれ、ランバートは顔を上げる。困ったように苦笑したファウストが近づいてきて、そっと頬に触れた。

「随分と大人しかったな」
「え?」
「日中の」
「あぁ……」

 言えば困らせるだろう。何より誓ったばかりだ。一人でカッカして飛び出してはいけない。この人の負担になりたくない。心配をさせたくない。
 だが、温かな手が甘やかす様に動くのに気が緩む。せっかく硬くした心が蕩けていく。

「確かに俺は、単独で動くなとは言った。だが、必要な時に動けないようなら動いていい」
「え?」
「あの少年を助けたいんだろ?」

 困ったような苦笑が見下ろしてくる。バレている。でも、躊躇ってしまう。

「旅行に来てるのに、仕事しちゃ何の為の休暇か分からないし。それに、騎士団の仕事じゃ……」
「ランバート」

 不意に抱き込まれて、気持ちが緩む。背中に腕を回して、ギュッとローブを握った。

「憂い顔のお前とでは、楽しめないだろ」
「ごめん!」
「違う。ダメだなんて言わない。弱い者を放っておけないお前の性格は分かっているし、それでこそだと思っている。だから、躊躇わず手を伸ばせ」
「え?」

 髪を梳かれながら甘い声が許しを口にする。怒られたばかりなのに、良いのだろうか。見上げれば、頷かれた。

「騎士の根底には、弱い者を守る気持ちが必要だ。使命も誇りも大事だが、その底には他者への優しさがなければいけない。俺は確かにお前を叱ったが、その根底を捨てて欲しくはない」
「でも、旅行が潰れる」
「また来ればいいことだ。それに、思い出深い旅行になる」

 甘やかすみたいに額に唇が触れる。くすぐったいその感覚に僅かに震えれば、ファウストは「くくっ」と楽しそうに笑った。

「後味悪くなるよりは、気持ち良く終わろう」
「ごめ……有り難う」

 ファウストは穏やかに微笑み、チュッと啄むようにキスをする。ランバートは優しいキスに甘えていた。大きなこの人の腕の中で甘えていられた。久しぶりな気がして、あまりに心地よかった。

「その代わり、どこに行くか、何をするか、誰といるかを俺に伝えてくれ。それなら何かあっても、俺は対応できる」
「なんかそれ、子供の言いつけみたいだ」
「それが出来なかったから叱られたんだ。あと、無理そうなら手を引け」
「んっ、分かってる」

 そうだ、この線引きだ。無理を通そうとしないこと。ダメなら周囲に助けを求める事。それが大事だ。
 スッキリと笑うランバートに、ファウストも微笑みキスをする。唇を吸われ、舌を絡められる熱いものだ。背にゾクゾクとした気持ちよさが走る。自然と息が上がる。

「ファウスト」
「ん?」
「今だけ、深く欲しい」

 グチャグチャに乱れるようなセックスは、最近していなかった。スノーネルの一件ではとても優しかったし、その後もわりと穏やかなものだった。
 でも今だけは、たっぷりと愛されたい気持ちだった。求められたくて、求められる自分を想像するだけで腰に響いた。

 黒い瞳が濡れる。穏やかな男の顔に欲望が浮かぶ。この人も大概、自分を押し込んでいる。だから時々爆発するんだ。

「腰が立たなくなるぞ」
「んっ、それでもいいよ。それに最近、ファウストの大きさ慣れてきたし」

 緩んだ訳じゃないけれど、体がファウストを覚えている。与えられるものを覚えているから、従順に体を開いていくんだ。
 ふわりと体が浮いて、横抱きにされる。首に腕を回して運ばれるベッドに、体が沈んだ。

「流石に少し狭いな」
「ははっ、本当だ」

 ファウストの部屋のベッドはキングサイズよりもやや小さいくらいで、男二人でも余裕だ。それがセミダブル程度のベッドで抱き合っているんだから、狭いだろう。
 でも、この狭さもどこか新鮮だ。より体が触れている。

 首に腕を回したまま、引き寄せるようにキスを強請った。角度を変えて深く絡まる舌が、舌の付根や歯の裏側をくすぐる。くすぐったく、でも疼くキスに甘い吐息が溢れ出る。
 離れて濡れた唇が、そのままローブの前を開き、キスを落としていく。見える所に所有の印を付けられるのは、ゾクゾクと心地良い。
 ランバートも負けず、ファウストの首に顔を埋め強く吸った。赤くついた印は「この人は俺の」というランバートだけの印。そこを舌でくすぐれば、低い笑い声がする。

「もっと付けたければ、付けていいんだぞ」

 言われて、少しだけ恥ずかしくなる。でも、そう言われれば欲も疼いた。

 ファウストが胸の突起を指で捏ねくり、周囲を刺激する間。ランバートは髪を梳いて耳や首の後ろを撫でた。案外これが気持ちいいらしいのだ。

「はぁ……んっ」

 昔はそれほど敏感ではなかった性感帯も、今ではすっかり感じる様になった。硬く尖った部分を含まれ、転がされると甘く痺れる。空いている方は指が執拗に摘まみ、捏ねる。痛いくらいなのに、それが気持ちよくなってきた。

「すっかりここで感じる様になったな。張りつめている」
「はぁん……開発したの、ファウストだろ? 俺の胸はそんなに魅力的?」

 喘ぎながらも悪態をつけば、ピンッと指先で先端を弾かれた。それだけで、ランバートは鋭く走った刺激に声を高くする。

「魅力的だ。なかなかの媚態だからな」
「変態」

 恥ずかしい。そんな事を今更と思うが、改めて言葉にされると羞恥心が刺激される。
 ファウストはくくっと笑い、大きく熱い手の平で体を撫で、尚も子猫のように乳首ばかりを舐め上げる。赤く腫れた周囲がより立ち上がり、張りつめていく。

「んぅ! もっ、そんな乳首ばかりっ」
「吸えば出そうだと思って」
「出ないから!」

 何を言ってるんだまったく!

 からかわれながら、手は体を撫で回す。腹筋の辺りを撫でられるとくすぐったいような気持ちよさがある事を最近知った。
 太股の内側を撫でられると、従順に股を開くようになった。
 乳首やキス、この人の言葉だけで強張りが半分くらい勃つようになった。

 これら全てを、ファウストは「可愛い奴だ」と言って笑う。

 唇が腹筋の割れ目に触れ、足を撫でていく。熱くなった肌をなぞられるとゾクゾクと体が震える。息が乱れ、その行動を追っている。唇が内股の薄い皮膚を吸い、跡を残して行くのに高い声が溢れていく。

「敏感だ」
「んっ、気持ちいい」
「あぁ、分かっている。お前の体はとても素直だからな」

 くつくつと笑われ、知っていると言われると少し反発心もある。そしてふと思いいたり、そろそろとファウストの体から這い出した。

「どうした?」

 とても疑問そうなファウストの様子に、ランバートは笑ってキスをする。その瞳には、ギラリと光るものがある。

「俺もやる」
「ん?」
「俺もファウストにしたい」

 言えばファウストは少し驚いた顔をした。
 別にファウストに突っ込みたいという意味ではない。ただ、ふと考えるとランバートはいつもされるがままに溺れてファウストに奉仕した事がない気がする。
 ファウストは少し考えているが、やがてニヤリと笑った。何か、嫌な予感がするのはどうしてだろう。

「俺の顔に尻を向けて跨がるなら、いいぞ」
「え……」

 それは……恥ずかしすぎる!

 だが、完全に期待する目だ。そして言い出したのはランバートだ。そしてこういう時、引き下がれないのもランバートだ。

「……分かった!」

 全身快楽ではない熱を発しながらも、ランバートは開き直った。
 ファウストは大人しくベッドに寝転がる。ランバートはファウストの顔にお尻を向ける形で胸の上に跨がり、体を伸ばした。
 目の前に逞しいものがある。こうして改めて見るとかなり立派なものをお持ちだ。カリはしっかりと張り、硬くなっている。長さもあって、筋が浮く。これが自分の体の中に入り、犯しているのだと思えば妙な羞恥があった。

「どうした?」

 意地悪に笑う声に、ランバートはドキリとしたが、そんな事はおくびにも出さず「何でもありません」と言うと、手で支えて先端を口に咥えた。
 口を大きく開けて飲み込んでも、半分も入らない。それでも唇を窄め、喉も遣って扱いた。カリを引っかけるように角度を変えると、半勃ちだったものが大きさも硬さも増していく。
 根元は手を使って扱き、いつもされているように足の付け根を撫でたりもした。
 逞しい体に、妙な興奮がある。細く引き締まった足にも無駄なものはない。触れてみた尻たぶも、形良く締まっている。

「なんだ、挿れてみたいのか?」
「ちが……」

 考えた事がないと言えば嘘だが、ファウスト相手ではもうその欲求は薄い。身に受ける快楽を知っているから、満足できないだろう。今目の前にそそり立つこの肉棒で中をかき回され、抉られる気持ちよさを教え込まれてしまってはもう。

「普段されて気持ちいいから、どうかと思っただけだよ」
「そうか」

 くつくつと余裕の笑みだ。悔しいが……体はかなり正直だ。
 ファウストのものを舐め、口に含みながら体はどんどん熱くなる。中が疼き始めてジクジクと痺れる。気を許せば腰が揺れてしまいそうだ。

「なんだ、俺のをしゃぶって気持ち良くなってるのか?」
「ちが! んぁぁ!」

 ツプリと節の立つ指が後孔を簡単に通過する。それがクルリと円を描いて中に触れるのに、背がブルブルと震えた。

「指一本は簡単に飲み込むな。どうした、口が留守だぞ」
「わか、んぅ! はっ、もぉ!」

 意地悪に指が深くに入り込み、奥に触れる。前立腺をクッと軽く押し込まれると、震えた体が倒れ込む。上半身が崩れ、支える腕に力が入らない。
 そんなランバートをいい事に、ファウストは尻を上げさせ尚も後ろを解すように指を弄る。一本が二本に、三本にとなっていく。中を広げるように指を広げられ、クリクリと前立腺を撫でられている。

「ふぅ……はっ、もう」

 これ以上されたらイク。ランバートは必死に身を捩りながら体をずらして逃れた。そして、振り向いて思いきり睨み付けた。

「ファウスト!」
「満足したか?」

 余裕なのが気に入らない。睨み付けたランバートはそのままファウストの上に跨がると、手でファウストの肉棒を支え、その芯の上に体を落とした。

「おい!」
「んぅぅ! ふっ……あぁ!」

 メリメリッと音がしそうだ。大きく張った亀頭を飲み込むのに汗が噴き出る。それでも腰を止める事はない。ゆっくり息を吐き、少し飲み込んでは少し抜き、また飲み込んでいく。
 ファウストの顔が、色に歪む。黒い瞳が僅かに歪み、心地よさそうに低く息を吐く音がする。それが妙に色っぽくて、満足する。
 それが油断だったのか、腕の力が抜けて腰が落ちる。三分の一程度が一気に入り込み乱暴にイイ部分を抉りながら埋まったいく。ペタンと尻が落ち、勢いと自重でより深く抉られて、ランバートはその衝撃で高い悲鳴を上げた。

「ランバート!」
「動かないで!」

 中だけで達したのだ。痙攣しながらも締めるように内壁が絞り上げていくのが分かる。形や熱を感じるくらいだ。

「っ! そんなに締めないでくれ」
「無理……あっ、はぁ……」

 それでも動かなければ、騎乗位なんて体位を取った意味がない。震えながらも腕で体を支えて腰を浮かせる。ズズッという生々しい感触と一緒に、太く熱いものが抜けていく。その上に再び体を落とすと、貪るように求める内壁が掻き分けられて熱くなっている奥を抉る。

「はぁ、あぁっ、んぅぅ! ふっ、ふぁっ」

 夢中になって貪るように腰を落とし、いつの間にかジュプジュプと濡れた音までさせている。膝を使ってよりしっかりと体を浮かせて貫けば、背がしなるほどに気持ちがいい。
 ファウストの手がランバートの腕を掴んで、下から突き上げられる。不意の行為に何度も何度も中イキを繰り返している気がする。訳が分からないほどに熱に侵され、頭が白くなっていく。あられもなく喘ぎながら、ランバートはファウストの上に倒れ込んだ。

「まったく、無茶をする」

 頭を撫でられ、キスをされて。夢中になって絡まる舌を吸った。もう限界で、尚も突き上げられておかしくなりそうだ。

「まず、楽になれ」

 激しく抽挿を繰り返され、押し潰されるように腫れた前を擦りつけ、ランバートはあっけなく一度目の熱を放った。ドロリと汚れた腹の具合の悪さなんて気にもならない。荒い息のまま夢中で舌を絡ませて潤んだ瞳で見つめていると、ぐるんと世界が回った。

「ふあぁ!」

 中でグリグリと不規則に擦れるファウストの肉棒は、まだ熱を放っていない。熱いまま深くを穿ったままだ。
 正常位に戻され、膝を抱え上げられて一気に突き入れられる。容赦も余裕もない抽挿、濡れて光る黒い瞳を見上げ、激しく揺さぶられて声が枯れる程に嬌声を上げた。もう何も見えない、ファウスト以外は。
 背に手を回し、キスを強請って深く口づけたままランバートは深い部分に熱を感じた。吐き出された熱を受け止め、尚もビクビクと震えているのを愛しいと思える。余韻のままに角度を変えて何度も口づけて、ランバートは笑った。

「気持ちいい?」
「たまらない」
「まだ、欲しい?」
「あぁ、いくらでも」

 涙の流れて頬にもキスをされる。その体が、横を向かされ上の足を肩に担がれた。まだ繋がったまま、放った白濁もそのままだ。

「はぁぁぁ!」

 V字に開かれた状態で深くかき回すように挿入を受けながら、ランバートはまだまだ長い夜を声が出なくなるまで濃密に過ごすのだった。
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