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最終章:最強騎士に愛されて
16話:十年後の君へ(帝国・恋人編2)
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アーヴィング達との時間外訓練を終えて自室に戻ってくると、クラウルは既に部屋着に着替えて寛いでいた。視線がこちらを向いて、穏やかに微笑みかけてくる。これを見るとホッとして、一日の終わりを感じるのだ。
「遅かったな」
「少し癖のある一年目と遊んでいたんだ」
「あぁ、聞いている。なんとかなりそうか?」
腕を差し伸べられ、それを軽く無視して着替えると少し寂しそうにされる。でも流石に汗臭いから着替えだけでもしたいんだ。
「傷つく」
「汗臭いのは俺としても許しがたい。本当は風呂に入りたかったんだが、流石に火が落ちていたから拭くしかできなかった」
まだ春先、水浴びには少し早い。
そうして手早く着替えてようやく、ゼロスはクラウルの手を取って隣に座る。これでも鍛えて体つきはより逞しくなったはずなのに、抱き寄せられるとまだこの人の方が厚い気がする。年齢的なものもあるだろうに、解せぬ。
「クラウルはいつ衰えるんだろうな」
「ん?」
「俺の方が若くて鍛えているのに、追いつかないのは何故だ」
思わず恨み言のように出てしまった言葉に、クラウルは目を丸くして驚いて、次には楽しそうに笑った。
「お前がいるんだ、老け込んではいられないだろ?」
「え?」
「若い伴侶に老いを見せるなんて無様な事はできない。これでも俺は努力家なんだぞ」
確かにそれは知っている。この人はとにかく努力の人だ。持って生まれたセンスや才能以上に、本人が毎日の努力を欠かさないからこそ今もこの地位にいる。
いや、この人ばかりではない。ファウストだって若い頃の肉体を今も維持している。シウスやオスカルだって立派に仕事をしているし、エリオットもその指先の技巧は神業と言われている。
団長が団長である理由だ。
「俺、もっと努力する」
「十分頑張っている。それに、これは俺の意地だ。お前と並んで見劣りするのは嫌だしな」
柔らかく笑い、頭を撫でる手の大きさは昔も今もあまり変わらない。強いて言えば手に少し皺があるか。でも他はそれほど変化はしていないように思う。
「何にしてもお疲れ。寝るか?」
「そう、だな」
就寝前にしては少し激しい運動だったが、心地よい疲労感があるのも事実。立ち上がるクラウルにつられてベッドへと向かうと、当然の様に一緒に横になる。逞しい腕の中が今でもゼロスの居場所だ。
結婚して、十年くらいになる。今も昔も変わらない人との生活は、立場や呼ばれ方は変わっても変化したとは思えない。相変わらず甘やかすし、たまにやらかすし、自制が利かない夜もある。結婚した当時はもっと変化があると考えていたが。
でも、それがいいのだろう。夫婦となって突然何かを改めたり、変えたりする必要はない。二人が居心地良く、そして安らげるならなんでもいいのだ。
目を閉じれば二人分の心音が重なる。二人分の体温は心地よく馴染む。まどろみ、眠りに落ちるまでの何気ない時間が何より安らげる大切な時間なのだと、ゼロスは思えるようになっていた。
◆◇◆
アーヴィング達の時間外訓練は案外楽しかった。足取りも軽く部屋に戻ってくると、リカルドは部屋着のままウィスキーのグラスを傾けていた。
「ただ今、リカルド」
「おかえり、チェスター」
ふわりと柔らかく微笑むリカルドが立ち上がり、近づいてお帰りのキスをする。少しだけ上からされるキスは好きだ。近くで見る薄い赤い瞳が好きだ。
「一年目の訓練、終わったんですか?」
「うん。なかなか骨のある奴らだったよ」
「虐めていませんよね?」
「んなことしないって。疲れて今頃修練場で伸びてると思うけれど」
「……は?」
なんか、青筋たってませんかねリカルドさんや。
「この季節はまだ寒いのに、修練場に寝転んで?」
「あ、いや……」
「様子見てらっしゃい。ちゃんと温かくして寝るように!」
「はい!」
厳命を受けてはどうしようもない。チェスターは未だにリカルドには勝てないのだ。
慌てて修練場に戻ってくると、そこには既にランバートとファウスト、そしてトレヴァーがいて全員を立たせて部屋に戻るよう手を貸している。
「あれ? チェスター戻ったんじゃないのか?」
「いや、リカルドにちゃんと後輩戻しておけって」
「あいつも医者だからな。問題ない、怪我も擦り傷と打撲程度だ。全員戻しておく」
「いや、手伝います。流石にこれで帰ったら余計に怒られるんで」
「相変わらずだよな、チェスターの所も」
トレヴァーにまで言われて、ちょっと恥ずかしい。が、この関係を変えようとかは思わないんだ。
リカルドと結婚したのは、ランバート達の結婚式から半年後くらいだった。
あの頃チェスターは最悪だった。面倒を見てくれていた叔父が亡くなったんだ。そのことで家族とも揉めて、仕事でミスもして、すごく孤独だと思ってしまった。
心配してくれたリカルドにも辛く当ったし、そんな自分が許せないのもあって自己嫌悪で更に落ち込んで。
でもそんなチェスターの側にいてくれたのは、リカルドだった。
家族にと言われて、自分もそれを求めている事に気づいて結婚したのだ。
それ以来、なんだかんだと上手くやっている。相変わらずチェスターは犬みたいだと言われるけれど、リカルドには「旦那様」と呼ばれたりもして嬉しいやら恥ずかしいやら。でも主導権はリカルドである。
「ほらお前達もちゃんと部屋戻れよ」
ファウストにもどやされ、しんどそうなアーヴィングにランバートが肩を貸し、デールにはトレヴァーが。その後ろをちょこちょこと、少し足を引っ張って歩くコーディを見て、咄嗟にチェスターは肩を叩いた。
「足、捻ったんじゃないのか?」
「え? あぁ、えっと……」
なんだか言いづらそうなのは、怪我を隠そうとしているからだ。分かったら黙ってもいない。抱き上げる体は小柄だから楽に持ち上がる。そしてそのまま医務室へと足を向けた。
「俺、コーディ医務室に連れて行って送っていく」
「悪い、頼んだ!」
「任せろ-」
腕の中のコーディは少し恥ずかしそうにしていたが、正直動くのがしんどかったんだろう。大人しくされている。チェスターはそのまま医務室へと彼を運んだ。
診察の結果、本当に軽い捻挫と打ち身だった。今夜はテーピングをして、明日の訓練は軽いもので様子見。違和感なくなればそれでいいそうだ。
「よかったな、たいしたことなくて」
「お手数おかけします、チェスター様」
「うっ、ん」
この、チェスター様が馴染まない。いや、師団長と呼ばれるのもそうなんだが。
四年前にウェインが師団長を辞めて、チェスターが引き継いだ。正直、しんどいのが見えていた。
ジェームダルの戦争で受けた傷が深かった証拠だ。訓練中に倒れて呼吸困難になったその場にチェスターもいて大急ぎで医務室に担ぎ込んだ。そして原因が、激しい運動だと分かった。
落ち込んだのも、泣いていたのも知っている。そういうのを見たからこそ、チェスターは引き継ぐときに誓った。ウェインが作り上げた第二師団を絶対に、強くしてみせると。
まぁ、今はまだその自信がない。ランバートも手伝ってくれてなんとかだ。そんな人間が様なんてつけられて、ちょっと恥ずかしかったりする。
「んじゃ、自室まで送ってくわ。自分で歩くか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃ、付き添いで」
立ち上がったコーディは違和感こそあるが痛がる様子もなくゆっくりと歩いていく。その隣を歩きながら、どこか元上官を重ねて見てしまう。この笑顔を、守っていかなきゃな。なんて、ふと思ってしまっていた。
無事に送り届けて再度自室に戻れば、リカルドが今度こそ温かく迎えてくれる。苦笑する人は手を広げていて、チェスターはそこに素直に飛び込んだ。
「おかえり、チェスター」
「今度こそただいま、リカルド」
「お勤め、ご苦労様です」
「リカルドも、一日お疲れ様」
ふわりと温かい胸に顔を寄せると安らげる。このままこの腕の中で寝たいくらいだ。
「みんな、怪我などありませんでしたか?」
「一人、軽く足を捻ったみたいで医務室連れていったよ。部屋にも送ってきた」
「お疲れさまです。いい上官ですね」
「まだまだだよ」
そう、こんなのまだまだ。もっと出来るようになりたい。もっとしっかりしてやりたい。今は平和だけれど、いつどこから崩れるか分からない。平和だからって犯罪がなくなるわけじゃない。天災だって考えられるんだ。
そんなチェスターの気持ちを読んだみたいに、リカルドは苦笑してちょんと鼻先にキスをする。これは少しくすぐったい。
「貴方はちゃんと出来ていますよ。それに、一人ではありません」
「……うん!」
にっこり微笑まれて、そうしたら妙な力も抜ける。ぬくぬくと優しい匂いのする腕の中で甘える事が許される。一応はチェスターが旦那だけれど、関係は逆な気がする。
「さて、寝ますか?」
「だね」
リカルドに手を引かれてベッドに。お休みのキスはもう少し濃厚に。でも今日は舌は入らないから本当にこのまま寝るんだ。明日も普通の仕事だから、無理も言えないしな。
そんな事を思っていたら悪戯っぽい笑みが返ってきて、ちょんと額を突かれた。
「明日は安息日前日ですから、それまで待ってくださいね」
「うん! あっ、えっと……分かりやすかった?」
「私は貴方の事をよく見ていますからね」
……曰く、顔は笑っていてもへにょんとした犬耳犬尻尾が見えるそうだ。
「明日は沢山、触らせてくださいね」
「俺にも触らせてよ」
「勿論ですよ、旦那様」
だから今日はお預けです。でも、一緒に穏やかに眠る夜も好きだから何の問題もなかったりするんだよね。
◆◇◆
疲れ果てたデールを部屋に担ぎ入れてベッドに転がしてきたが、流石に体格がよくて重かった。せっかく一度汗を拭ったのに元の木阿弥だ。
トレヴァーは自分の腕をクンクンする。やっぱり少し汗臭い気がする。同棲相手がどうにも匂いに敏感だから、汗臭いと嫌な顔をされる。
「もう一度軽く体拭こうかな……」
とはいえ、もうそろそろ寝る時間だ。あの人はこの時間だと起きているかギリギリだ。眠いのを我慢して、それでも待っていてくれるのだから急ぎたい。
考えて、トレヴァーはそのままキアランの部屋に向かう事に決めた。
キアランの部屋に、今はトレヴァーも住んでいる。だがまだ結婚はしていない。それというのもキアランが踏ん切り付かないようなのだ。元々慎重な人だから、いざとなると色々考えてしまうのだろう。だからって無理矢理迫ってもいい事はない。追い詰めると胃にくる人だから。
ドアを開けるとキアランはソファーに座って船をこいでいたのだろう。驚いてビクッとして、心臓を抑えてしばらく言葉がなかった。
「あっ、ごめん。驚かせましたか」
「心臓止める気か!」
「ごめん! あの、急いでたから」
申し訳なく謝って部屋に入ると、相変わらず神経質そうな視線が明らかな不機嫌を伝えてくる。眠いと余計にこうなるんだよな。
「遅いぞ」
「後輩を部屋に送り届けていたんだ。少し熱がはいっちゃって、動けなかったみたいでさ」
「珍しいな、お前がそこまでするのは」
「骨があってなかなかいいよ」
苦笑すると、キアランはブスッとしながらも「それなら仕方がない」と小さく呟く。ソファーの上で膝を抱えているのは、寂しい時の訴えだと思う。
「お前、汗臭い」
「ごめん、拭いてきたんだけどその後で転がってる奴ら見つけて、抱えて部屋に放り込んできたからさ。また汗かいちゃって」
やっぱり眉根に皺が寄る。でもこの日は余程眠いのか、深々とした溜息の後は小言無しだった。
「そこにぬるま湯があるから、拭いてから着替えろ」
「え?」
どうしてぬるま湯?
思うも、ほんの少し顔を赤くするから察した。用意してくれたんだ。それが嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「有り難う、キア」
「……別に、このくらい何でもない」
背を向けるけれど、その顔が赤いことは分かる。色が白いから耳が真っ赤になっている。そういう所が嬉しいし、好きだし可愛いのだけれど、これを素直に「可愛い」というとこの人は怒るから、トレヴァーは何も言わずに体を拭いて夜着に着替えてベッドに寝転んだ。
隣にキアランが眠る夜を、もう幾日も過ごしてきた。周囲が既婚者だらけになって、とうとうトレヴァーとトビーだけだ。第三は行き遅れるのかと苦笑が漏れる。
「トレヴァー」
呼ばれ、視線が合う。真っ直ぐな目がこちらをジッと見ている。でも時々眠いのか、瞼が落ちそうだ。
「腕」
「うん」
腕を伸ばすと、そこに頭を乗せてくる。ツンとした表情だけれど甘えたい、そんな感じがする。自分から触れるのはいいのに、此方から触れると怒る猫みたいだ。
腕枕のまま近づいて、今はぴったりと胸元に収まる人を大切に抱いていると気持ちが休まる。また明日も頑張ろうと思えてくる。
「トレヴァーの匂いがする」
「え?」
汗臭いだろうか。思って鼻をヒクヒクさせると、胸元でキアランがクスクス笑い、大胆にも夜着の前を握って胸元に鼻を近づけてきた。
「!」
「緑と、僅かに潮の匂い。お前と寝ると気持ちのいい夢を見る。昨日は潮風の気持ちいい港を散歩した」
「いいですね」
「草原で寝転ぶ夢も見たな」
「やりますか?」
「……虫が嫌いだ」
ぶすくれる人を見て笑いながらも、散歩は実行できると密かに思う。港を二人手を繋いで散歩するのはきっと気持ちがいいだろう。想像だけで楽しい。
ふと、枕にしていない方の手にキアランが触れる。静かな、寝入り端の表情で。
「指輪、欲しいか?」
「え?」
「待たせて悪い」
ポツポツと呟かれる言葉にトレヴァーは驚いて、でも次にはふわりと微笑んで、背に手を回した。
「欲しいけれど、無理はして欲しくない」
「それじゃいつまでもこのままだ」
「それでも俺はいいと思ってるよ。書類上は違うけれど、事実婚だし」
「……寂しくないか? 無理、させてないか? 俺が根性無しで、嫌じゃないか?」
「嫌じゃないし、寂しくないよ。こうして一緒に寝てる。愛情も感じる。眠いのに、俺の事待っててくれるキアがとても愛しく思える」
取れかけていたボタンが、いつの間にかついている。自分は飲まないのにトレヴァーの好みのワインをストックしてくれている。身だしなみだと衿を直したりタイを直したりしながら、ほんの少し赤くなる人が愛しくて仕方がない。
「少しでいいから、話したい。一緒に寝るのは、心地よい」
「俺もだよ」
「すまない、ちゃんとするからもう少しだけ、時間をくれ」
「うん、平気。キアが笑っていてくれるなら俺は、何も問題ないんだよ」
限界だろう。腕の中ですよすよと眠る人を愛しく抱きしめて、トレヴァーも目を閉じる。一日の疲れを癒やす、今が一番の幸せな時間。
◆◇◆
「う……ん~、疲れた~!」
部屋に帰ってきて早々に、ハリーはベッドにどっかりと腰を下ろす。うーんと伸びをして、そのまま後ろに倒れた。
「お疲れ、ハリー。悪いなうちの所の面倒に付き合わせて」
苦笑するコンラッドが律儀に部屋着に着替えているのを見ながら、ハリーは軽く笑った。
「そんなの、持ちつ持たれつでしょ。なんにしても最終的にはいい感じだったじゃん。ランバートとレイバンと俺を相手になかなかの奮戦だったよ」
「この面子を選んで挑んだあいつらが凄いよな」
何せオールラウンダーのランバートに軽業師のレイバンとハリーだ。もうどこから足や拳が飛んでくるか分かりもしなかっただろう。それでも長年の関係で、ランバートやレイバンとぶつかったりしない。お互い目線だけでなんとなく次が読めていたりする。
それにしても、なかなか見所のある一年目が入ってきた。このまま上手く育ってくれる事を願っている。
それにしてもコンラッドはいい背中をしている。細身のくせに脱ぐと引き締まっていて凄い。ゼロスの補佐についてからは益々だ。
コンラッドもランバートと同じオールラウンダータイプ。攻めも守りもバランスがいい。しかも剣に癖がない。だからか、全体的にいい筋肉がついている。
正直、美味しそうだ。
戦うと興奮する。ハリーはその興奮を引きずりやすいみたいで、今もまだ落ち着かない。この興奮はちょっとだけ性欲にも結びついていて、こういうのを見るとムラムラしてくる。
ならば行動は早いほうがいい! 着ていた服を脱いで夜着を手にする前に、ハリーはサッと移動して背中にはりついた。
「ハリー!」
「もう、いい背中してて美味しそう。コンラッド、益々逞しくなった?」
「普段の鍛錬しかしていないよ。こらハリー、悪戯はダメだぞ」
「いいじゃん、旦那様に欲情したって。俺、戦った後はムラムラするんだもん。この背中、凄く美味しそう」
肩甲骨の辺りとか凄いな。思って、思わずキス。汗の匂いもまだ残ってて余計に好きだ。
でも基本、安息日の前日しかさせてくれない。明日も仕事だ。でも、少しくらいいいのに。
「ハリー」
「しゃぶらせて」
「ダメだ!」
「ちょっとだけ!」
「ちょっとで止まるのか?」
「……てへ!」
「はぁ……」
困ったように溜息をつかれるけれど、ハリーは知っている。多少誘惑されていることを。
もうひと煽り! 後ろからコンラッドの股間を撫でてみると、やっぱり少し反応している。途端、バツの悪い顔をする人を見てニヤリと笑った。
「勃ってますね」
「…………」
「抜きましょうか?」
ニヤリ。笑ったハリーはだが次に言葉を飲み込んだ。意外にもコンラッドの目が飢えた男の目をしていたからだ。
くるりと向き直り、腕を引かれてよろける。抱き留められて、その後は本気のキスだ。頭の中がクラクラする。
そういえば、先週の安息日前日はお互い疲れていてしていなかった。これは、だから?
「ハリー、おいたの責任は取るのかい?」
「あ……コンラッドが優しくしてくれるなら取ろうかな?」
「心外だな、俺はいつも優しい男だよ」
たまにちょっと雑ですけれどね。
着替えも半分しか終わっていない、上半身裸のコンラッドの前に膝をついたハリーは丁寧にズボンをおろして前を寛げる。そうすると半分くらい勃ったご立派なものが目の前だ。
少し、汗の匂いとかもする。あれだけ動いた後だ、体を拭いたってやっぱり。でも、これが好きだったりする。コンラッドの匂いが濃いから。
ドキドキしながら先端を舐めてみると、少ししょっぱい。でも、何にも抵抗はない。口を開けて先の方を飲み込んで。するとコンラッドが優しく頭を撫でてくれる。
「ハリー」
気持ちいい事に耐える顔が男らしくて色っぽくて好き。この男前が優男の仮面を脱いだ時の生々しい表情がなんとも言えない。ゾクゾクする。
最初から全力で射精を誘うように動いた。体ごと全部で動くフェラは疲れるけれど、コンラッドが好きなのは知っている。だからしたい。口の中でドンドン質量も熱も増していくのを感じる。まだかまだかとその瞬間を待っているのは興奮する。いつ弾けてもいいように気持ちだけは作っておく。
けれど不意に肩に手をかけられて離された。口から抜けてしまったのに驚いて目をキョトンとさせていると、汗を拭いいい顔をしたコンラッドが見下ろしている。完全にスイッチの入った顔だ。
「ハリー、楽しい?」
「楽しい……です」
「俺も、いいかい?」
「えっと……ふにゃん!」
「ハリーも前が窮屈そうだよ?」
不意打ちでコンラッドの足が前をグッと刺激した。それだけで体が一瞬痺れてちょっとまずかった。
連れ去られるようにベッド際につれてこられ、ベッドに両手をついて尻をコンラッドに向ける姿勢にさせられる。当然ズボンはあっという間に剥ぎ取られ、下着も以下同文。ひやりと夜の空気に尻が晒されて冷たい。
その割れ目に、コンラッドは躊躇いなく指を滑り込ませ、トロトロと香油を垂らして窄まりに指を二本入れた。
「んあぁ!」
「ごめん、余裕ないから少し急ぐ」
「優しくないじゃん旦那様ぁ」
「俺の余裕までそぎ落とすお前が悪い!」
「だって、お口に出してもらってゴックンする予定だったんだもん」
「俺一人が気持ち良くても嫌なんだって言ってるだろ、まったく」
だって、気持ちいい時のコンラッドの顔が凄く好きなんだからしかたないだろ。色っぽくて、飢えてて。一緒に気持ち良くなっちゃうとこっちに観察する余裕がなくなるからもったいないんだ。
「んあぁ! もっ、コンラッドのエッチ~」
「俺が心得るほど誘ってくるのは誰だ」
「俺です。でも、んっ! こんなに上手くなるなんて想定外だったんだよ」
努力の人コンラッド。それは夜の生活にも言えた。ハリーが誘えば誘うほどに上手くなる。コツを掴んだら後は地道に少しずつ開拓された。昔に比べて感度が増したのは絶対コンラッドのせいだ。
指が三本、性急に解していく。そうして良くなってくるとあっという間に抜かれ、代わりに肉杭が当てられる。ゆっくり香油を足しながら飲み込んで行く、そこにもう抵抗はなかった。
「んっ、はぁぁ……あぁ、ダメだこれ、痺れるぅ」
「俺も今日は余裕ない」
こっちだって余裕ないっての。
ベッドに上半身を預けるようにして後ろから貫かれながら、ハリーはせり上がるような快楽に飲まれてシーツを握る。気持ち良すぎて飛ぶ。声は全部ベッドに吸ってもらった。気持ち良すぎて抑えが利かない。
「くっ!」
「んっ! あっ、あぁ……」
腹の中でコンラッドが更に大きくなっていくのが分かる。それくらい、ハリーも締め付けている。不意に前を握り困れ、先端を指が優しく包み込むその刺激でハリーは達した。抑えていてくれたからシーツを汚さず、コンラッドの手の中。それがポタポタと床に落ちていく。
そしてコンラッドもハリーの中に出している。背に心地よい重みが加わって、立っているのも辛くてズルズルと床にへたり込んでしまう。その途中で抜けてしまって、床にぺたんと座ったら後孔からゆっくり、放たれたばかりの熱が落ちていった。
「もう、コンラッド激しいし」
「ごめんって。それに、最初に盛ったのはハリーだからな」
「分かってる。でも、久しぶりで気持ち良かったよ」
本当はもう少し時間をかけて前戯とかされたかったけれど、なんだか欲求不満も解消された。スッキリだ。
テキパキとコンラッドが支度を調えてくれて、お姫様抱っこでベッドの中。隣にはコンラッドがいる。ここに甘えてくっつくのが好きだ。
「疲れたな。ぐっすり眠れそうだ」
「寝坊したりして」
「それを言うならハリーの方が危ないぞ」
「じゃあ、二人で寝坊してみる?」
冗談みたいに言ったけれど、コンラッドは思案顔。次には困ったように笑った。
「その場合は、致し方ないな」
「あはは、だね」
怒られるかもしれないけれど、そんな日も悪くないよ。なんて、流石に言えないけれど。朝寝坊する休日の朝が特別なのも知っている。次の休みはそんな日になるといいな。
◆◇◆
アーヴィングを部屋に送り届けて自室に戻ると就寝時間が迫っていた。一度体を拭いて戻ってみたらやっぱり転がっていたのだが、人数が多かった。そこにトレヴァーと偶然にもファウストが通りかかり、チェスターがきてくれた。おかげで運ぶ人数が少なくて済んだ。
「ギデオンとエイペルが自力で動けて助かったけど、アーヴィングは明日筋肉痛だろうな」
「一年目にはよくあることだ」
「少し楽しくなって」
個々の動きは悪くないが、今の所バラバラだ。だから味方同士でぶつかったりもしている。ギデオンがそこを上手くやろうとしているが、彼はサポート。指揮系統を目端の利くエイペルが取れればまた変わるのだが、同時に彼に全幅の信頼がなければならない。自己主張の激しいデール辺りは反発があるだろう。
「アーヴィング、どうだった?」
ファウストが仕事の顔で問いかけるのに、ランバートは考えてしまった。
食堂で話したときには心配があった。だが今夜の彼を見ると、大丈夫な気もする。大事なものは案外近くにあった、ということだ。
「様子見かな」
「平気そうか?」
「今日、何か掴んだみたいなんだ。仲間が出来て変わればいいと思ってる」
かつての自分がそうであったように。
ふと、ふわりと頭を撫でられて見上げる。包むように柔らかい眼差しを向けられている事にドキリとして、自然と頬が熱くなるのを感じてしまう。もう、甘やかす旦那の顔だ。
「突然そんな顔すると困るよ、ファウスト。不意打ちは心臓に悪い」
「そうか?」
「……甘やかされるとダメになるし」
結婚して十年、色々とあったけれど大きな変化はない。相変わらずこの人は際限なく甘やかすし、性欲お化けでもある。そしてランバートは甘やかされる事に素直になり、夜の関係は少し引き締めた。つられて相手していたら腰がおかしくなる。
まぁ、逆に甘えられると弱いんだが。
「ダメにしたいんだがな」
「明日も仕事だからダーメ」
ここはツンとして、はっきり言っておかなければ。側を離れて着替えていると、大きな体が後ろから腰に腕を回してもたれ掛かってくる。正直重い。
「ファウスト!」
「触りたい。撫でたい。キスしたい」
「甘えても今日はしないからな」
「抱いて寝るのはありだろ」
「……悪戯したら蹴る」
「んっ、分かった」
項の辺りにチュッと音をさせてキスをして、離れてしまう熱を追ってしまうのは秘密。ちょっと、切なくなるから。
手早く着替えてベッドに潜り込むと、当然のように腕を広げて待っている。そこに恥ずかしながらも落ち着くと気持ちが柔らかくなる。居場所に戻ってきた、そんな安堵感だ。
ファウストに背中を向けると当然のように抱き込まれ、首筋にもキスをして。この姿勢が何気に二人ともお気に入りだったりする。包み込まれるのがとにかく好きだ。安心する。
「明日は解禁日でいいんだな?」
「いいよ。ファウスト我慢してたしね」
「無理矢理したら怒るだろ」
「俺はファウストみたいに体力お化けじゃないの。業務に支障をきたすのはダメだって」
「分かってる。だから今日はここまでだ」
「……うん」
温かい腕の中、直ぐ側にある心音、少し甘いような柔らかな匂い。全部がファウストで、守られていて、心地よくて幸せだ。
トロトロと眠気に引きずられていく。瞼が落ちそうだけれどもう少しだけ起きていたい。僅かな抵抗をしていると、不意に後ろから伸びた手が目を隠すように塞いでしまった。
「無理に起きていなくていいだろ。寝て、ちゃんと疲れを取れ」
「……この時間、好きなんだ。もう少し起きていたくて」
小さな声で呟いたら、ファウストの体温が僅かに上がった気がした。多分、照れてるんだと思う。
「あまり可愛い事を言うと我慢できないぞ」
「でも、本当の事だし」
「……俺も、この時間が好きだ。お前を抱いて寝る時間が、俺にとって何よりの癒やしの時間なんだ」
低く耳元に囁きかけられる言葉に、ランバートもドキドキする。未だにこんな会話で意識してしまうんだ。もうずっと、そんな感じだ。
「俺も、一番安らげるよ」
「それは良かった」
「……俺達、恥ずかしいくらい昔と変わらないよな」
ちょっと、恥ずかしいかも。
でも背後の人は小さく笑って耳殻にチュッとキスをする。そしてそこに囁きかけてくる。
「誰もみていないから、いいだろ?」
「だね」
飾り立てるもののない、とてもシンプルで真っ直ぐな気持ちを繋ぐ事ができる幸せ。その相手がファウストでよかった。この人の相手が俺で嬉しい。
心地よい疲れを癒やすように心が優しく温かいもので満たされていって、ランバートは今日も幸せな笑みを浮かべて眠りに落ちていった。
「遅かったな」
「少し癖のある一年目と遊んでいたんだ」
「あぁ、聞いている。なんとかなりそうか?」
腕を差し伸べられ、それを軽く無視して着替えると少し寂しそうにされる。でも流石に汗臭いから着替えだけでもしたいんだ。
「傷つく」
「汗臭いのは俺としても許しがたい。本当は風呂に入りたかったんだが、流石に火が落ちていたから拭くしかできなかった」
まだ春先、水浴びには少し早い。
そうして手早く着替えてようやく、ゼロスはクラウルの手を取って隣に座る。これでも鍛えて体つきはより逞しくなったはずなのに、抱き寄せられるとまだこの人の方が厚い気がする。年齢的なものもあるだろうに、解せぬ。
「クラウルはいつ衰えるんだろうな」
「ん?」
「俺の方が若くて鍛えているのに、追いつかないのは何故だ」
思わず恨み言のように出てしまった言葉に、クラウルは目を丸くして驚いて、次には楽しそうに笑った。
「お前がいるんだ、老け込んではいられないだろ?」
「え?」
「若い伴侶に老いを見せるなんて無様な事はできない。これでも俺は努力家なんだぞ」
確かにそれは知っている。この人はとにかく努力の人だ。持って生まれたセンスや才能以上に、本人が毎日の努力を欠かさないからこそ今もこの地位にいる。
いや、この人ばかりではない。ファウストだって若い頃の肉体を今も維持している。シウスやオスカルだって立派に仕事をしているし、エリオットもその指先の技巧は神業と言われている。
団長が団長である理由だ。
「俺、もっと努力する」
「十分頑張っている。それに、これは俺の意地だ。お前と並んで見劣りするのは嫌だしな」
柔らかく笑い、頭を撫でる手の大きさは昔も今もあまり変わらない。強いて言えば手に少し皺があるか。でも他はそれほど変化はしていないように思う。
「何にしてもお疲れ。寝るか?」
「そう、だな」
就寝前にしては少し激しい運動だったが、心地よい疲労感があるのも事実。立ち上がるクラウルにつられてベッドへと向かうと、当然の様に一緒に横になる。逞しい腕の中が今でもゼロスの居場所だ。
結婚して、十年くらいになる。今も昔も変わらない人との生活は、立場や呼ばれ方は変わっても変化したとは思えない。相変わらず甘やかすし、たまにやらかすし、自制が利かない夜もある。結婚した当時はもっと変化があると考えていたが。
でも、それがいいのだろう。夫婦となって突然何かを改めたり、変えたりする必要はない。二人が居心地良く、そして安らげるならなんでもいいのだ。
目を閉じれば二人分の心音が重なる。二人分の体温は心地よく馴染む。まどろみ、眠りに落ちるまでの何気ない時間が何より安らげる大切な時間なのだと、ゼロスは思えるようになっていた。
◆◇◆
アーヴィング達の時間外訓練は案外楽しかった。足取りも軽く部屋に戻ってくると、リカルドは部屋着のままウィスキーのグラスを傾けていた。
「ただ今、リカルド」
「おかえり、チェスター」
ふわりと柔らかく微笑むリカルドが立ち上がり、近づいてお帰りのキスをする。少しだけ上からされるキスは好きだ。近くで見る薄い赤い瞳が好きだ。
「一年目の訓練、終わったんですか?」
「うん。なかなか骨のある奴らだったよ」
「虐めていませんよね?」
「んなことしないって。疲れて今頃修練場で伸びてると思うけれど」
「……は?」
なんか、青筋たってませんかねリカルドさんや。
「この季節はまだ寒いのに、修練場に寝転んで?」
「あ、いや……」
「様子見てらっしゃい。ちゃんと温かくして寝るように!」
「はい!」
厳命を受けてはどうしようもない。チェスターは未だにリカルドには勝てないのだ。
慌てて修練場に戻ってくると、そこには既にランバートとファウスト、そしてトレヴァーがいて全員を立たせて部屋に戻るよう手を貸している。
「あれ? チェスター戻ったんじゃないのか?」
「いや、リカルドにちゃんと後輩戻しておけって」
「あいつも医者だからな。問題ない、怪我も擦り傷と打撲程度だ。全員戻しておく」
「いや、手伝います。流石にこれで帰ったら余計に怒られるんで」
「相変わらずだよな、チェスターの所も」
トレヴァーにまで言われて、ちょっと恥ずかしい。が、この関係を変えようとかは思わないんだ。
リカルドと結婚したのは、ランバート達の結婚式から半年後くらいだった。
あの頃チェスターは最悪だった。面倒を見てくれていた叔父が亡くなったんだ。そのことで家族とも揉めて、仕事でミスもして、すごく孤独だと思ってしまった。
心配してくれたリカルドにも辛く当ったし、そんな自分が許せないのもあって自己嫌悪で更に落ち込んで。
でもそんなチェスターの側にいてくれたのは、リカルドだった。
家族にと言われて、自分もそれを求めている事に気づいて結婚したのだ。
それ以来、なんだかんだと上手くやっている。相変わらずチェスターは犬みたいだと言われるけれど、リカルドには「旦那様」と呼ばれたりもして嬉しいやら恥ずかしいやら。でも主導権はリカルドである。
「ほらお前達もちゃんと部屋戻れよ」
ファウストにもどやされ、しんどそうなアーヴィングにランバートが肩を貸し、デールにはトレヴァーが。その後ろをちょこちょこと、少し足を引っ張って歩くコーディを見て、咄嗟にチェスターは肩を叩いた。
「足、捻ったんじゃないのか?」
「え? あぁ、えっと……」
なんだか言いづらそうなのは、怪我を隠そうとしているからだ。分かったら黙ってもいない。抱き上げる体は小柄だから楽に持ち上がる。そしてそのまま医務室へと足を向けた。
「俺、コーディ医務室に連れて行って送っていく」
「悪い、頼んだ!」
「任せろ-」
腕の中のコーディは少し恥ずかしそうにしていたが、正直動くのがしんどかったんだろう。大人しくされている。チェスターはそのまま医務室へと彼を運んだ。
診察の結果、本当に軽い捻挫と打ち身だった。今夜はテーピングをして、明日の訓練は軽いもので様子見。違和感なくなればそれでいいそうだ。
「よかったな、たいしたことなくて」
「お手数おかけします、チェスター様」
「うっ、ん」
この、チェスター様が馴染まない。いや、師団長と呼ばれるのもそうなんだが。
四年前にウェインが師団長を辞めて、チェスターが引き継いだ。正直、しんどいのが見えていた。
ジェームダルの戦争で受けた傷が深かった証拠だ。訓練中に倒れて呼吸困難になったその場にチェスターもいて大急ぎで医務室に担ぎ込んだ。そして原因が、激しい運動だと分かった。
落ち込んだのも、泣いていたのも知っている。そういうのを見たからこそ、チェスターは引き継ぐときに誓った。ウェインが作り上げた第二師団を絶対に、強くしてみせると。
まぁ、今はまだその自信がない。ランバートも手伝ってくれてなんとかだ。そんな人間が様なんてつけられて、ちょっと恥ずかしかったりする。
「んじゃ、自室まで送ってくわ。自分で歩くか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃ、付き添いで」
立ち上がったコーディは違和感こそあるが痛がる様子もなくゆっくりと歩いていく。その隣を歩きながら、どこか元上官を重ねて見てしまう。この笑顔を、守っていかなきゃな。なんて、ふと思ってしまっていた。
無事に送り届けて再度自室に戻れば、リカルドが今度こそ温かく迎えてくれる。苦笑する人は手を広げていて、チェスターはそこに素直に飛び込んだ。
「おかえり、チェスター」
「今度こそただいま、リカルド」
「お勤め、ご苦労様です」
「リカルドも、一日お疲れ様」
ふわりと温かい胸に顔を寄せると安らげる。このままこの腕の中で寝たいくらいだ。
「みんな、怪我などありませんでしたか?」
「一人、軽く足を捻ったみたいで医務室連れていったよ。部屋にも送ってきた」
「お疲れさまです。いい上官ですね」
「まだまだだよ」
そう、こんなのまだまだ。もっと出来るようになりたい。もっとしっかりしてやりたい。今は平和だけれど、いつどこから崩れるか分からない。平和だからって犯罪がなくなるわけじゃない。天災だって考えられるんだ。
そんなチェスターの気持ちを読んだみたいに、リカルドは苦笑してちょんと鼻先にキスをする。これは少しくすぐったい。
「貴方はちゃんと出来ていますよ。それに、一人ではありません」
「……うん!」
にっこり微笑まれて、そうしたら妙な力も抜ける。ぬくぬくと優しい匂いのする腕の中で甘える事が許される。一応はチェスターが旦那だけれど、関係は逆な気がする。
「さて、寝ますか?」
「だね」
リカルドに手を引かれてベッドに。お休みのキスはもう少し濃厚に。でも今日は舌は入らないから本当にこのまま寝るんだ。明日も普通の仕事だから、無理も言えないしな。
そんな事を思っていたら悪戯っぽい笑みが返ってきて、ちょんと額を突かれた。
「明日は安息日前日ですから、それまで待ってくださいね」
「うん! あっ、えっと……分かりやすかった?」
「私は貴方の事をよく見ていますからね」
……曰く、顔は笑っていてもへにょんとした犬耳犬尻尾が見えるそうだ。
「明日は沢山、触らせてくださいね」
「俺にも触らせてよ」
「勿論ですよ、旦那様」
だから今日はお預けです。でも、一緒に穏やかに眠る夜も好きだから何の問題もなかったりするんだよね。
◆◇◆
疲れ果てたデールを部屋に担ぎ入れてベッドに転がしてきたが、流石に体格がよくて重かった。せっかく一度汗を拭ったのに元の木阿弥だ。
トレヴァーは自分の腕をクンクンする。やっぱり少し汗臭い気がする。同棲相手がどうにも匂いに敏感だから、汗臭いと嫌な顔をされる。
「もう一度軽く体拭こうかな……」
とはいえ、もうそろそろ寝る時間だ。あの人はこの時間だと起きているかギリギリだ。眠いのを我慢して、それでも待っていてくれるのだから急ぎたい。
考えて、トレヴァーはそのままキアランの部屋に向かう事に決めた。
キアランの部屋に、今はトレヴァーも住んでいる。だがまだ結婚はしていない。それというのもキアランが踏ん切り付かないようなのだ。元々慎重な人だから、いざとなると色々考えてしまうのだろう。だからって無理矢理迫ってもいい事はない。追い詰めると胃にくる人だから。
ドアを開けるとキアランはソファーに座って船をこいでいたのだろう。驚いてビクッとして、心臓を抑えてしばらく言葉がなかった。
「あっ、ごめん。驚かせましたか」
「心臓止める気か!」
「ごめん! あの、急いでたから」
申し訳なく謝って部屋に入ると、相変わらず神経質そうな視線が明らかな不機嫌を伝えてくる。眠いと余計にこうなるんだよな。
「遅いぞ」
「後輩を部屋に送り届けていたんだ。少し熱がはいっちゃって、動けなかったみたいでさ」
「珍しいな、お前がそこまでするのは」
「骨があってなかなかいいよ」
苦笑すると、キアランはブスッとしながらも「それなら仕方がない」と小さく呟く。ソファーの上で膝を抱えているのは、寂しい時の訴えだと思う。
「お前、汗臭い」
「ごめん、拭いてきたんだけどその後で転がってる奴ら見つけて、抱えて部屋に放り込んできたからさ。また汗かいちゃって」
やっぱり眉根に皺が寄る。でもこの日は余程眠いのか、深々とした溜息の後は小言無しだった。
「そこにぬるま湯があるから、拭いてから着替えろ」
「え?」
どうしてぬるま湯?
思うも、ほんの少し顔を赤くするから察した。用意してくれたんだ。それが嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「有り難う、キア」
「……別に、このくらい何でもない」
背を向けるけれど、その顔が赤いことは分かる。色が白いから耳が真っ赤になっている。そういう所が嬉しいし、好きだし可愛いのだけれど、これを素直に「可愛い」というとこの人は怒るから、トレヴァーは何も言わずに体を拭いて夜着に着替えてベッドに寝転んだ。
隣にキアランが眠る夜を、もう幾日も過ごしてきた。周囲が既婚者だらけになって、とうとうトレヴァーとトビーだけだ。第三は行き遅れるのかと苦笑が漏れる。
「トレヴァー」
呼ばれ、視線が合う。真っ直ぐな目がこちらをジッと見ている。でも時々眠いのか、瞼が落ちそうだ。
「腕」
「うん」
腕を伸ばすと、そこに頭を乗せてくる。ツンとした表情だけれど甘えたい、そんな感じがする。自分から触れるのはいいのに、此方から触れると怒る猫みたいだ。
腕枕のまま近づいて、今はぴったりと胸元に収まる人を大切に抱いていると気持ちが休まる。また明日も頑張ろうと思えてくる。
「トレヴァーの匂いがする」
「え?」
汗臭いだろうか。思って鼻をヒクヒクさせると、胸元でキアランがクスクス笑い、大胆にも夜着の前を握って胸元に鼻を近づけてきた。
「!」
「緑と、僅かに潮の匂い。お前と寝ると気持ちのいい夢を見る。昨日は潮風の気持ちいい港を散歩した」
「いいですね」
「草原で寝転ぶ夢も見たな」
「やりますか?」
「……虫が嫌いだ」
ぶすくれる人を見て笑いながらも、散歩は実行できると密かに思う。港を二人手を繋いで散歩するのはきっと気持ちがいいだろう。想像だけで楽しい。
ふと、枕にしていない方の手にキアランが触れる。静かな、寝入り端の表情で。
「指輪、欲しいか?」
「え?」
「待たせて悪い」
ポツポツと呟かれる言葉にトレヴァーは驚いて、でも次にはふわりと微笑んで、背に手を回した。
「欲しいけれど、無理はして欲しくない」
「それじゃいつまでもこのままだ」
「それでも俺はいいと思ってるよ。書類上は違うけれど、事実婚だし」
「……寂しくないか? 無理、させてないか? 俺が根性無しで、嫌じゃないか?」
「嫌じゃないし、寂しくないよ。こうして一緒に寝てる。愛情も感じる。眠いのに、俺の事待っててくれるキアがとても愛しく思える」
取れかけていたボタンが、いつの間にかついている。自分は飲まないのにトレヴァーの好みのワインをストックしてくれている。身だしなみだと衿を直したりタイを直したりしながら、ほんの少し赤くなる人が愛しくて仕方がない。
「少しでいいから、話したい。一緒に寝るのは、心地よい」
「俺もだよ」
「すまない、ちゃんとするからもう少しだけ、時間をくれ」
「うん、平気。キアが笑っていてくれるなら俺は、何も問題ないんだよ」
限界だろう。腕の中ですよすよと眠る人を愛しく抱きしめて、トレヴァーも目を閉じる。一日の疲れを癒やす、今が一番の幸せな時間。
◆◇◆
「う……ん~、疲れた~!」
部屋に帰ってきて早々に、ハリーはベッドにどっかりと腰を下ろす。うーんと伸びをして、そのまま後ろに倒れた。
「お疲れ、ハリー。悪いなうちの所の面倒に付き合わせて」
苦笑するコンラッドが律儀に部屋着に着替えているのを見ながら、ハリーは軽く笑った。
「そんなの、持ちつ持たれつでしょ。なんにしても最終的にはいい感じだったじゃん。ランバートとレイバンと俺を相手になかなかの奮戦だったよ」
「この面子を選んで挑んだあいつらが凄いよな」
何せオールラウンダーのランバートに軽業師のレイバンとハリーだ。もうどこから足や拳が飛んでくるか分かりもしなかっただろう。それでも長年の関係で、ランバートやレイバンとぶつかったりしない。お互い目線だけでなんとなく次が読めていたりする。
それにしても、なかなか見所のある一年目が入ってきた。このまま上手く育ってくれる事を願っている。
それにしてもコンラッドはいい背中をしている。細身のくせに脱ぐと引き締まっていて凄い。ゼロスの補佐についてからは益々だ。
コンラッドもランバートと同じオールラウンダータイプ。攻めも守りもバランスがいい。しかも剣に癖がない。だからか、全体的にいい筋肉がついている。
正直、美味しそうだ。
戦うと興奮する。ハリーはその興奮を引きずりやすいみたいで、今もまだ落ち着かない。この興奮はちょっとだけ性欲にも結びついていて、こういうのを見るとムラムラしてくる。
ならば行動は早いほうがいい! 着ていた服を脱いで夜着を手にする前に、ハリーはサッと移動して背中にはりついた。
「ハリー!」
「もう、いい背中してて美味しそう。コンラッド、益々逞しくなった?」
「普段の鍛錬しかしていないよ。こらハリー、悪戯はダメだぞ」
「いいじゃん、旦那様に欲情したって。俺、戦った後はムラムラするんだもん。この背中、凄く美味しそう」
肩甲骨の辺りとか凄いな。思って、思わずキス。汗の匂いもまだ残ってて余計に好きだ。
でも基本、安息日の前日しかさせてくれない。明日も仕事だ。でも、少しくらいいいのに。
「ハリー」
「しゃぶらせて」
「ダメだ!」
「ちょっとだけ!」
「ちょっとで止まるのか?」
「……てへ!」
「はぁ……」
困ったように溜息をつかれるけれど、ハリーは知っている。多少誘惑されていることを。
もうひと煽り! 後ろからコンラッドの股間を撫でてみると、やっぱり少し反応している。途端、バツの悪い顔をする人を見てニヤリと笑った。
「勃ってますね」
「…………」
「抜きましょうか?」
ニヤリ。笑ったハリーはだが次に言葉を飲み込んだ。意外にもコンラッドの目が飢えた男の目をしていたからだ。
くるりと向き直り、腕を引かれてよろける。抱き留められて、その後は本気のキスだ。頭の中がクラクラする。
そういえば、先週の安息日前日はお互い疲れていてしていなかった。これは、だから?
「ハリー、おいたの責任は取るのかい?」
「あ……コンラッドが優しくしてくれるなら取ろうかな?」
「心外だな、俺はいつも優しい男だよ」
たまにちょっと雑ですけれどね。
着替えも半分しか終わっていない、上半身裸のコンラッドの前に膝をついたハリーは丁寧にズボンをおろして前を寛げる。そうすると半分くらい勃ったご立派なものが目の前だ。
少し、汗の匂いとかもする。あれだけ動いた後だ、体を拭いたってやっぱり。でも、これが好きだったりする。コンラッドの匂いが濃いから。
ドキドキしながら先端を舐めてみると、少ししょっぱい。でも、何にも抵抗はない。口を開けて先の方を飲み込んで。するとコンラッドが優しく頭を撫でてくれる。
「ハリー」
気持ちいい事に耐える顔が男らしくて色っぽくて好き。この男前が優男の仮面を脱いだ時の生々しい表情がなんとも言えない。ゾクゾクする。
最初から全力で射精を誘うように動いた。体ごと全部で動くフェラは疲れるけれど、コンラッドが好きなのは知っている。だからしたい。口の中でドンドン質量も熱も増していくのを感じる。まだかまだかとその瞬間を待っているのは興奮する。いつ弾けてもいいように気持ちだけは作っておく。
けれど不意に肩に手をかけられて離された。口から抜けてしまったのに驚いて目をキョトンとさせていると、汗を拭いいい顔をしたコンラッドが見下ろしている。完全にスイッチの入った顔だ。
「ハリー、楽しい?」
「楽しい……です」
「俺も、いいかい?」
「えっと……ふにゃん!」
「ハリーも前が窮屈そうだよ?」
不意打ちでコンラッドの足が前をグッと刺激した。それだけで体が一瞬痺れてちょっとまずかった。
連れ去られるようにベッド際につれてこられ、ベッドに両手をついて尻をコンラッドに向ける姿勢にさせられる。当然ズボンはあっという間に剥ぎ取られ、下着も以下同文。ひやりと夜の空気に尻が晒されて冷たい。
その割れ目に、コンラッドは躊躇いなく指を滑り込ませ、トロトロと香油を垂らして窄まりに指を二本入れた。
「んあぁ!」
「ごめん、余裕ないから少し急ぐ」
「優しくないじゃん旦那様ぁ」
「俺の余裕までそぎ落とすお前が悪い!」
「だって、お口に出してもらってゴックンする予定だったんだもん」
「俺一人が気持ち良くても嫌なんだって言ってるだろ、まったく」
だって、気持ちいい時のコンラッドの顔が凄く好きなんだからしかたないだろ。色っぽくて、飢えてて。一緒に気持ち良くなっちゃうとこっちに観察する余裕がなくなるからもったいないんだ。
「んあぁ! もっ、コンラッドのエッチ~」
「俺が心得るほど誘ってくるのは誰だ」
「俺です。でも、んっ! こんなに上手くなるなんて想定外だったんだよ」
努力の人コンラッド。それは夜の生活にも言えた。ハリーが誘えば誘うほどに上手くなる。コツを掴んだら後は地道に少しずつ開拓された。昔に比べて感度が増したのは絶対コンラッドのせいだ。
指が三本、性急に解していく。そうして良くなってくるとあっという間に抜かれ、代わりに肉杭が当てられる。ゆっくり香油を足しながら飲み込んで行く、そこにもう抵抗はなかった。
「んっ、はぁぁ……あぁ、ダメだこれ、痺れるぅ」
「俺も今日は余裕ない」
こっちだって余裕ないっての。
ベッドに上半身を預けるようにして後ろから貫かれながら、ハリーはせり上がるような快楽に飲まれてシーツを握る。気持ち良すぎて飛ぶ。声は全部ベッドに吸ってもらった。気持ち良すぎて抑えが利かない。
「くっ!」
「んっ! あっ、あぁ……」
腹の中でコンラッドが更に大きくなっていくのが分かる。それくらい、ハリーも締め付けている。不意に前を握り困れ、先端を指が優しく包み込むその刺激でハリーは達した。抑えていてくれたからシーツを汚さず、コンラッドの手の中。それがポタポタと床に落ちていく。
そしてコンラッドもハリーの中に出している。背に心地よい重みが加わって、立っているのも辛くてズルズルと床にへたり込んでしまう。その途中で抜けてしまって、床にぺたんと座ったら後孔からゆっくり、放たれたばかりの熱が落ちていった。
「もう、コンラッド激しいし」
「ごめんって。それに、最初に盛ったのはハリーだからな」
「分かってる。でも、久しぶりで気持ち良かったよ」
本当はもう少し時間をかけて前戯とかされたかったけれど、なんだか欲求不満も解消された。スッキリだ。
テキパキとコンラッドが支度を調えてくれて、お姫様抱っこでベッドの中。隣にはコンラッドがいる。ここに甘えてくっつくのが好きだ。
「疲れたな。ぐっすり眠れそうだ」
「寝坊したりして」
「それを言うならハリーの方が危ないぞ」
「じゃあ、二人で寝坊してみる?」
冗談みたいに言ったけれど、コンラッドは思案顔。次には困ったように笑った。
「その場合は、致し方ないな」
「あはは、だね」
怒られるかもしれないけれど、そんな日も悪くないよ。なんて、流石に言えないけれど。朝寝坊する休日の朝が特別なのも知っている。次の休みはそんな日になるといいな。
◆◇◆
アーヴィングを部屋に送り届けて自室に戻ると就寝時間が迫っていた。一度体を拭いて戻ってみたらやっぱり転がっていたのだが、人数が多かった。そこにトレヴァーと偶然にもファウストが通りかかり、チェスターがきてくれた。おかげで運ぶ人数が少なくて済んだ。
「ギデオンとエイペルが自力で動けて助かったけど、アーヴィングは明日筋肉痛だろうな」
「一年目にはよくあることだ」
「少し楽しくなって」
個々の動きは悪くないが、今の所バラバラだ。だから味方同士でぶつかったりもしている。ギデオンがそこを上手くやろうとしているが、彼はサポート。指揮系統を目端の利くエイペルが取れればまた変わるのだが、同時に彼に全幅の信頼がなければならない。自己主張の激しいデール辺りは反発があるだろう。
「アーヴィング、どうだった?」
ファウストが仕事の顔で問いかけるのに、ランバートは考えてしまった。
食堂で話したときには心配があった。だが今夜の彼を見ると、大丈夫な気もする。大事なものは案外近くにあった、ということだ。
「様子見かな」
「平気そうか?」
「今日、何か掴んだみたいなんだ。仲間が出来て変わればいいと思ってる」
かつての自分がそうであったように。
ふと、ふわりと頭を撫でられて見上げる。包むように柔らかい眼差しを向けられている事にドキリとして、自然と頬が熱くなるのを感じてしまう。もう、甘やかす旦那の顔だ。
「突然そんな顔すると困るよ、ファウスト。不意打ちは心臓に悪い」
「そうか?」
「……甘やかされるとダメになるし」
結婚して十年、色々とあったけれど大きな変化はない。相変わらずこの人は際限なく甘やかすし、性欲お化けでもある。そしてランバートは甘やかされる事に素直になり、夜の関係は少し引き締めた。つられて相手していたら腰がおかしくなる。
まぁ、逆に甘えられると弱いんだが。
「ダメにしたいんだがな」
「明日も仕事だからダーメ」
ここはツンとして、はっきり言っておかなければ。側を離れて着替えていると、大きな体が後ろから腰に腕を回してもたれ掛かってくる。正直重い。
「ファウスト!」
「触りたい。撫でたい。キスしたい」
「甘えても今日はしないからな」
「抱いて寝るのはありだろ」
「……悪戯したら蹴る」
「んっ、分かった」
項の辺りにチュッと音をさせてキスをして、離れてしまう熱を追ってしまうのは秘密。ちょっと、切なくなるから。
手早く着替えてベッドに潜り込むと、当然のように腕を広げて待っている。そこに恥ずかしながらも落ち着くと気持ちが柔らかくなる。居場所に戻ってきた、そんな安堵感だ。
ファウストに背中を向けると当然のように抱き込まれ、首筋にもキスをして。この姿勢が何気に二人ともお気に入りだったりする。包み込まれるのがとにかく好きだ。安心する。
「明日は解禁日でいいんだな?」
「いいよ。ファウスト我慢してたしね」
「無理矢理したら怒るだろ」
「俺はファウストみたいに体力お化けじゃないの。業務に支障をきたすのはダメだって」
「分かってる。だから今日はここまでだ」
「……うん」
温かい腕の中、直ぐ側にある心音、少し甘いような柔らかな匂い。全部がファウストで、守られていて、心地よくて幸せだ。
トロトロと眠気に引きずられていく。瞼が落ちそうだけれどもう少しだけ起きていたい。僅かな抵抗をしていると、不意に後ろから伸びた手が目を隠すように塞いでしまった。
「無理に起きていなくていいだろ。寝て、ちゃんと疲れを取れ」
「……この時間、好きなんだ。もう少し起きていたくて」
小さな声で呟いたら、ファウストの体温が僅かに上がった気がした。多分、照れてるんだと思う。
「あまり可愛い事を言うと我慢できないぞ」
「でも、本当の事だし」
「……俺も、この時間が好きだ。お前を抱いて寝る時間が、俺にとって何よりの癒やしの時間なんだ」
低く耳元に囁きかけられる言葉に、ランバートもドキドキする。未だにこんな会話で意識してしまうんだ。もうずっと、そんな感じだ。
「俺も、一番安らげるよ」
「それは良かった」
「……俺達、恥ずかしいくらい昔と変わらないよな」
ちょっと、恥ずかしいかも。
でも背後の人は小さく笑って耳殻にチュッとキスをする。そしてそこに囁きかけてくる。
「誰もみていないから、いいだろ?」
「だね」
飾り立てるもののない、とてもシンプルで真っ直ぐな気持ちを繋ぐ事ができる幸せ。その相手がファウストでよかった。この人の相手が俺で嬉しい。
心地よい疲れを癒やすように心が優しく温かいもので満たされていって、ランバートは今日も幸せな笑みを浮かべて眠りに落ちていった。
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