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20章:サバルド王子暗殺未遂事件
4話:先王の遺児(グリフィス)
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リッツの報告から数日後、グリフィスは立派な送迎の馬車に乗り込んでベルギウス本邸へと向かった。
そうして出迎えてくれた車椅子姿の青年を、グリフィスは多少複雑な心境で見た。
リッツの兄フランクリンが起こした事件は、未だグリフィスの中では燻っている。最悪、この人物のせいで恋人が他国に売られそうになったのだ。到底ただで許す気にはなれないが、その時に己の過ちに気づいて庇い、結果車椅子生活を強いられている。十分に報いを受けたのだと思う。
そして彼とこうして真正面から顔を合わせるのは、あの事件以来なかった。
「ようこそ、おいで下さいました」
「おう」
「……一発、殴りますか?」
「はぁ?」
苦笑するフランクリンに思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。その後は舌打ちだ。
「しねーよ」
「貴方とリッツには、どのような扱いを受けても仕方の無い事をしましたから」
「弱い人間を痛めつけるような趣味はないんだよ」
本当に調子が狂う。どうやらフランクリンはあの事件以降ふっきれたようで、まるで人間が変わったように豪胆になった。まぁ、人生の転機としては十分な事件だったのも確かだが。
「ラティーフ様は奥の家族用の談話室におります。軽食を用意しておりますので、ご歓談を」
「ご歓談、なんて楽しい感じになるかね?」
「まぁ、無理でしょう。ですがスッキリとさせておくほうがよろしいかと。彼の国はこれから更に荒れるでしょうし、これが最初で最後かもしれません」
付き添いの女性に車椅子を押してもらいながら、フランクリンはとても真面目な顔でそんな事を言う。それにも少し驚いてしまった。
「ラティーフ様に待っているのは、おそらく辛い人生です。祖国に戻っても味方は少ないでしょう。現王は子作りに勤しんでいるとも聞きますし、立場を追われかねません。いっそこの国に居着いてしまえば穏やかなのでしょうが、現状唯一の王子となればそれも難しい。策謀の只中に放り込まれる事でしょう」
「だから俺がなんとかしろとか言うなよ」
「貴方は既に帝国の人間ですし、可愛い弟の大事な伴侶ですから。でも、知るべきかと思いまして。今から会う相手は、そのような運命の中にあるのだと」
つまり、気合いを入れてやれって事なんだろう。もしくは思い残す事のないように話してやれだ。
まったく、いい性格になったものだ。グリフィスはひっそりと溜息をついた。
案内された談話室の前に、遠目で見た事のある男が立っていた。サバルドの男らしい屈強な体躯、癖の強い長い黒髪を片方編み込み後ろに纏めて束ねている。彫りが深く褐色で、青い瞳をしていた。
「……本当に、アリー王子なのですね」
「その名で呼ぶな。俺はグリフィス・ハッセだ」
「そうですか。では、グリフィス殿。どうか我が主をお願い致します」
馬鹿正直に頭を下げた男に一つ頷いて、グリフィスはドアを押し開けた。
家族の談話室というだけあって、思ったよりも物が多く使い込まれている。長椅子の木材は磨き上げられた紅茶色をしているし、猫足のローテーブルも同じ色。暖炉にはまだ火が入り、棚には本が置いてある。
対面する形に置かれた長椅子の一つに彼はいた。小さな頭を縁取るようなさらさらの黒髪に、色の白い肌。瞳は大きく、翡翠と金。小柄で、線も細い。確かにあの国の基準で行けば女のようだ。
彼、ラティーフはグリフィスを見てハッとし、俯いたり顔を上げたりを数度繰り返している。それでも言葉は出ない。おそらく、何て声をかけていいかが分からないのだろう。
戸を閉め、そっと近づいたグリフィスは前に立って、軽く一礼した。
「帝国騎士団騎兵府第五師団師団長、グリフィス・ハッセです。ラティーフ殿下」
「! あっ、はい。サバルド王国第三王子、ラティーフ・カッハール・アッサバード・アル=アミールです」
わざわざ長いフルネームを名乗り、丁寧にお辞儀までするラティーフにグリフィスは軽く頭をかいた。こちらとしては所属と立ち位置を明確にしたつもりなのだが、どうやらそれが通用していないようだった。
「あの、まずは座ってください。今、お茶を」
「あー、いい! 俺がやる」
側にある茶器を持つ手がどうにも危なっかしくて、グリフィスは言葉で制して自分の分のお茶を手早く淹れ、更には少なくなっていたラティーフの茶器にも注いだ。その手つきを、ラティーフはなんだか驚きと悲しさを含んだ目で見ていた。
「とても、慣れてらっしゃるのですね」
「あ? まぁ、飲みたければ自分で淹れるからな」
「……ご苦労、なさったのですね」
肩をがっくりと落とした相手を見て、グリフィスは溜息をつく。多少大人しくしていようと思っていたが、どうにも無理だ。長椅子にどっかりと座ったグリフィスは盛大に溜息をついた。
「辛気くさい顔するなよ、王子様」
「ですが」
「別に、苦労なんざしてねぇ。うちの大将に比べりゃ俺のなんて屁でもねぇよ。その辺聞きもしないで不幸押しつけてくるな。俺は、けっこう充実した人生送ってるんだぞ」
そこまで言えば分かったんだろう。慌てて顔を上げて、またぺこりと頭を下げて「すみません、失礼な事を!」とか言ってくる。本当にこれで大丈夫かよ。
リッツの話では、民を考えるいい王子なのだという。だが、自分の容姿に劣等感があると。だがそれだけではないだろう。もっと、気概が欲しいものだが。
「あの、グリフィス様」
「おいおい、たかが騎士に王子様が様なんてつけるな。グリフィスでいい」
「ですが……。いえ、分かりました。グリフィス、お話を聞きたいのです。アスィーム王は、どうなったのですか?」
気弱な発言と視線。だが、グッと力を入れたラティーフが顔を上げた時にはもう、毅然とした目をしていた。それを見て、グリフィスはニヤリと笑う。完全な腑抜けではないと思えた一瞬だった。
「死んだよ」
「逃れてきたのですよね?」
「あぁ。俺と親父、そしてお袋の三人で密航船に乗って帝国の近海まで来たが、限界でな。座礁して流れ着いたのが、ハッセ家の領地だった。どうやら潮の流れでそうなるらしくてな。俺達は運良く屋敷の直ぐ真ん前の砂浜に辿り着いていた」
懐かしい話だが、これを誰かに話すのは始めてかもしれない。母は他言を好まなかったし、グリフィス自身言うつもりのないことだった。そしてリッツは気を遣って、聞こうとはしなかった。
「俺とお袋は無傷だったが、親父は逃げる間に傷を負っていた。幸いハッセの親父がいい人でな、俺達親子を直ぐに屋敷に招き入れて部屋を貸してくれて、治療もしてくれた。お陰で半年くらいは親父も生きていた」
「そう、だったんですか」
「……穏やかだったよ」
「え?」
「親父の死に目さ。恨んじゃいなかっただろうな。目も見えなくなっていたが、ハッセの親父にとても感謝していたし、医者先生にも感謝してた。そして俺には、恨むなと言って逝った。カッハールにはカッハールの苦しみがあったのだろうと」
本当に、穏やかだった。殆ど苦しみもしなかった。父は母を心配し、母に再婚を望んだ。不義ではないし、子に父は必要だと。そしてハッセの親父には母とグリフィスの事をお願いして逝った。
「恨まなかった日が無かったなんて、言わないだろうけれどな。最後には許したんだろうよ、親父は。ただ残していく者の心配だけはしてたけれど、それもハッセの親父が引き受けたから安心したみたいだ」
「やはり、出来た方だったのですね」
「それはどうだかな。俺から言わせれば、執着がなさ過ぎる。恨みも執着も時には生き残る糧だぜ。そういうのはあったほうがいい。じゃないと、簡単に諦めちまう」
ある意味で、ほっとした。グリフィスの記憶にも、実父は穏やかな人だった。暗い影など見当たらない人だった。そしてその印象のまま、逝ったのだ。
でも思う。もしも多少でも誰かを恨んだり、執着したら。もしかしたら生きていたんじゃないかと。
どちらがいいかなんて分からないけれど、少なくともグリフィスは後者でいようと思う。清廉君主なんて柄にもないんだから。
「マラーク妃はその後」
「あぁ、生きてるぜ。俺とお袋はその後もハッセの家で世話になってな。そのうちにハッセの親父がお袋に惚れて、お袋もまんざらじゃないみたいだったから」
「ご結婚されたと?」
「帰化してな。ハッセの親父との間に子供もいて、今じゃぽっちゃりだ」
「え! そう、なんですか?」
「帝国のご飯が美味しいらしくてな。ハッセの親父も食べてるお袋が可愛いからって与えすぎだしよ」
義父曰く、「ハムスターの餌付け」らしい。分からないではないが。
でも、母が必要以上に落ち込んだり、逆に空元気で体を壊さなかったのは義父のお陰だと思う。二人ともまだ若かったし、義父は母を大切にしてグリフィスも大事にした。泣く母に黙って寄り添う姿を見ていると、似合いだろうと思えたのだ。
「今でも夫婦揃って親父の墓参りに行くんだぜ」
「それは、よかった」
心底ほっとしたのか、ラティーフの体から力が抜けていく。それを見て、グリフィスは笑った。
「なんだ、恨んでると思ってたのか?」
「おかしくはないですよ」
「俺は全然不幸じゃなかったからな。ハッセの親父に鍛えられてすっかりゴリラみたいになったし。あの人は今でも俺を息子だと思ってくれてる。たまには帰れと言われてるくらいでな」
「帰らないんですか?」
「あぁ。あそこにはもう弟がいる。領地は弟に任せようと思ってな。そう言ったら、ハッセの親父は凄く寂しそうな顔をするんだが……まぁ、ケジメだな」
『お前も俺の息子なんだぞ!』と言って抱きしめてくれるのは有り難いが、これはグリフィスが決めた事だ。領地を継ぐのはハッセの血がいい。ちゃんと息子のつもりではいるが、血は繋がらないんだ。
「騎士団での仕事もやりがいある。戦うのも好きだし、仲間も気のいい連中だ。今の生活に何一つ文句はねぇ」
「……よかったです」
「だからお前も、これに関しちゃ背負うなよ」
「!」
驚いたようにラティーフの顔が上がる。その後で、少し泣きそうな顔をした。
「第一、お前が生まれる前の話じゃないのか? 親父の不始末を背負う必要はないっての」
「ですが」
「気にしすぎるんだよ。あと、気持ちしっかり持て。お前、次の王様になるんだろうが」
「……自信が、ないんです」
「じゃ、ここに骨埋めるか? あの親父なら今頃子供こさえてるだろうよ。お前が背負ってやる必要は」
「ダメです! 少なくとも私の領地の民達を放置するような事はできません!」
パッと顔を上げたラティーフの目はとても真剣で、とても強いものだ。それを見てグリフィスは笑い、グリグリと頭を撫でた。
「そうかそうか、その顔忘れるなよ」
「? あの、本日はお時間を頂きました。貴方の生存に関しては本国に伝えるつもりはありません。どうかリッツを、幸せにしてあげてください」
「言われなくても、あいつは俺が幸せにするつもりだ。お前も、頑張れよ」
「はい」
ラティーフが微笑んで手を差し伸べてくる。それにグリフィスも返した。しっかりと交わされた握手は悪くないものだ。ここにくる時は少し憂鬱だったが、話し終わった今となっては晴れているように思う。
思えばこんな話を外で出来る相手は限られる。下手に知られれば争いの種になるのだから。それでも、知って欲しかったのかもしれない。家族以外の誰かに。
「もう少し休みます」というラティーフを長椅子に残し立ち上がったグリフィスが談話室を出ると、忠犬のようにジャミルは戸口に立ったままこちらを見て、僅かに頭を下げた。
青い瞳とぶつかると意外にも敵意を持っているのを感じる。今にも噛みつかれそうな気配に、グリフィスは苦笑した。
「何もしちゃいねーよ」
「それに関しては分かっている」
「本当かい? 手放した王位欲しさに俺がお前のご主人様をグサリ! なんてのを警戒しているのかと思ってたが?」
「……欲しければくれてやる」
そんな事を言うのに、ジャミルの表情は憎らしげなままで歪む。奥歯を強く噛み、今にも襲いかかってきそうな表情をしているというのに鎖に繋がれて唸るしかできない。そんなもどかしく、歯がゆいような感じがした。
「お前、あの王子さんに王位を継いで欲しいと思っているんじゃないのかい?」
「……っ! それが、あの方の未来だ」
「……ちと、離れようか。なに、この家は安心だ。お前も分かるだろ?」
「だが」
「じゃあ、この部屋が見える場所でにしよう。なに、護衛はこっそりついているみたいだしな」
僅かだが視線を感じる。それは中で話している時も感じた。おそらくヒッテルスバッハがつけた護衛だろう。
黙ったジャミルの様子は凪いだ砂漠の夜のように静かだ。少し冷たくもあり、感情が見えなくなる。そうして歩き出したのは、この談話室のドアが見える廊下の隅だった。
「お前、あの王子さんに王位を継いで欲しいと思っていないのか?」
声を潜めて同じ質問をしたグリフィスに、ジャミルは腕を組んでドアを見つめたまま、重い息を吐き出した。
「……状況は、それが望ましいだろう。あの方が王位を継げばおそらくあの国は救われる。そしてこれは王家に生まれたあの方の責務であり、それを助け側近くで守るのが俺の役目だ。……だが」
「だが?」
「…………時々、そんな煩わしいものなど全て捨てて、自由に生きてもらいたいと思う時がある。あの方の力を、優しさを否定するあの国の為に、どうしてお優しいラティーフ様が思い悩み、更には命まで狙われねばならないのか。いっそ亡命でもして思うまま伸び伸びと生きていただけたら。そんな、従者にあるまじき事を思う事がある」
そう呟くジャミルの表情は酷く色んな感情が入り乱れて複雑だ。従者という身分と立場でこんな思いを抱く事の不敬を憎みつつも、個人としての思いもまた強く持っている。両立できない二つの事柄を、ジャミルは己を殺して立場を優先して動いている。
どちらがラティーフにとっての幸せかを考えながら。
「俺は、元は奴隷だ。本来なら労働力として売られ、使い捨てにされたはずだ。そんな俺に、ラティーフ様は身に余るご温情をかけて下さった。学と武を授け、従者としてくださった。こんな……たかが使い捨てを大事にしてくださる。その御恩に報いるなら、俺はあの方に王位を用意すべきだろう」
「それがあの王子様の幸せかどうか。おそらく、苦しく辛い道を歩ませる事になると分かっていてもか?」
「……だから、悩むのだ。あの方の幸せを願えば、俺はこのままでもいいと思っている。いっそアンタのように死んだ事にして、違う人生を歩んだって構わないと思っている。どうせあのろくでなしの王は子供を産ませるだろう。無理にあの方が継がなくとも、とりあえず王家は存続する。……いや、もはや滅んだって構わない」
不穏な言葉が苦々しく噛みしめた歯の隙間から漏れ出てくる。苦悩する男のそれは、正直な彼の思いなのだろう。
「あの国は腐っている。今では無くてもいずれ、誰かがあの王に耐えかねて剣を向けるだろう。今回の内乱はその口火でしかない。いずれ不満は膨れ上がり、爆発する。そんな国、見限ったって構わない」
「不穏な事だが、あり得るからな」
暗府の話では国内はかなり荒れているとの事。戦を好む王の目は外に向きがちで中はザルになる。そこに付け込む人間もいて、貧しい所から搾取を始める。帝国の一昔前がそれに近かった。幸い帝国はヒッテルスバッハという強い手綱が利いて持ちこたえた部分があるが、普通はそう上手くはいかない。ジェームダルがいい例だ。そしてサバルドも今、そういう状態なんだろう。
「だが……」
「……」
「だが、祖国なんだ。あの方は捨てられないんだ」
がっくりと肩を落とすジャミルの、それが全てだったのだろう。
一言「このまま逃げたい」とラティーフが漏らせば、ジャミルは喜んで生涯を共にするのだろう。彼が彼らしく生きられるように力を尽くすのだろう。そんな事を、ジャミルは願っているに違いない。
そしてラティーフも、そんな未来を一瞬でも見ただろう。だが、それは出来ない。責務という言葉が重く彼の足にはまって枷となっている。無責任に放り出した後、自分を頼ってきた領民の不幸を思わないわけがない。自分一人の勝手で多くの人が理不尽な状況に追い込まれる事を、ラティーフは危惧しているのだ。
「……ままならねぇなぁ」
何かを押し進めればどちらかが成り立たない。理想としては祖国に戻り、父王を廃して自身が王に就いて改革を進める。だが、口に出すほど簡単ではないし、命の危険は常につきまとう事となる。あの優しい王子様に、それが可能かわからない。
「それでも、俺はラティーフ様を支える。剣にも盾にもなって厄災を断つのみだ。私情は……挟まない」
結局はそこに落ち着くのだろう。ジャミルの表情は再び凪いだ。冴え冴えとした砂漠の月光、その蒼を称えるような瞳が真っ直ぐに見据える。それを見て、グリフィスは難儀さを感じてしまった。
「自由に、己の幸せを求めてもいいだろう」とは、帝国に染まりきった自分の思い。そういう意味でもグリフィスはもう帝国人だ。だが、あの国は違う。そんな自由は許されない。
「……腹決まってるなら、ブレるなよ」
「承知している」
せめて何か力を託したくて、グリフィスはポンと肩を叩いた。既に断ったはずの糸が奇妙な形で繋がってしまったから、多少のいたたまれなさは感じている。グリフィスにとっても祖国ではあったはずなのだ。本来なら、無責任に放り投げてはいけなかったのだろう。
だが既に道は分かれてしまっている。今更半端に首を突っ込んでも混乱を呼ぶだけだ。
立ち去る時、もうこれ以上関わるのはよそうと決めた。それが互いの為になるのだと。
この時グリフィスは知らなかったのだ。この後に起る悲劇を。
そうして出迎えてくれた車椅子姿の青年を、グリフィスは多少複雑な心境で見た。
リッツの兄フランクリンが起こした事件は、未だグリフィスの中では燻っている。最悪、この人物のせいで恋人が他国に売られそうになったのだ。到底ただで許す気にはなれないが、その時に己の過ちに気づいて庇い、結果車椅子生活を強いられている。十分に報いを受けたのだと思う。
そして彼とこうして真正面から顔を合わせるのは、あの事件以来なかった。
「ようこそ、おいで下さいました」
「おう」
「……一発、殴りますか?」
「はぁ?」
苦笑するフランクリンに思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。その後は舌打ちだ。
「しねーよ」
「貴方とリッツには、どのような扱いを受けても仕方の無い事をしましたから」
「弱い人間を痛めつけるような趣味はないんだよ」
本当に調子が狂う。どうやらフランクリンはあの事件以降ふっきれたようで、まるで人間が変わったように豪胆になった。まぁ、人生の転機としては十分な事件だったのも確かだが。
「ラティーフ様は奥の家族用の談話室におります。軽食を用意しておりますので、ご歓談を」
「ご歓談、なんて楽しい感じになるかね?」
「まぁ、無理でしょう。ですがスッキリとさせておくほうがよろしいかと。彼の国はこれから更に荒れるでしょうし、これが最初で最後かもしれません」
付き添いの女性に車椅子を押してもらいながら、フランクリンはとても真面目な顔でそんな事を言う。それにも少し驚いてしまった。
「ラティーフ様に待っているのは、おそらく辛い人生です。祖国に戻っても味方は少ないでしょう。現王は子作りに勤しんでいるとも聞きますし、立場を追われかねません。いっそこの国に居着いてしまえば穏やかなのでしょうが、現状唯一の王子となればそれも難しい。策謀の只中に放り込まれる事でしょう」
「だから俺がなんとかしろとか言うなよ」
「貴方は既に帝国の人間ですし、可愛い弟の大事な伴侶ですから。でも、知るべきかと思いまして。今から会う相手は、そのような運命の中にあるのだと」
つまり、気合いを入れてやれって事なんだろう。もしくは思い残す事のないように話してやれだ。
まったく、いい性格になったものだ。グリフィスはひっそりと溜息をついた。
案内された談話室の前に、遠目で見た事のある男が立っていた。サバルドの男らしい屈強な体躯、癖の強い長い黒髪を片方編み込み後ろに纏めて束ねている。彫りが深く褐色で、青い瞳をしていた。
「……本当に、アリー王子なのですね」
「その名で呼ぶな。俺はグリフィス・ハッセだ」
「そうですか。では、グリフィス殿。どうか我が主をお願い致します」
馬鹿正直に頭を下げた男に一つ頷いて、グリフィスはドアを押し開けた。
家族の談話室というだけあって、思ったよりも物が多く使い込まれている。長椅子の木材は磨き上げられた紅茶色をしているし、猫足のローテーブルも同じ色。暖炉にはまだ火が入り、棚には本が置いてある。
対面する形に置かれた長椅子の一つに彼はいた。小さな頭を縁取るようなさらさらの黒髪に、色の白い肌。瞳は大きく、翡翠と金。小柄で、線も細い。確かにあの国の基準で行けば女のようだ。
彼、ラティーフはグリフィスを見てハッとし、俯いたり顔を上げたりを数度繰り返している。それでも言葉は出ない。おそらく、何て声をかけていいかが分からないのだろう。
戸を閉め、そっと近づいたグリフィスは前に立って、軽く一礼した。
「帝国騎士団騎兵府第五師団師団長、グリフィス・ハッセです。ラティーフ殿下」
「! あっ、はい。サバルド王国第三王子、ラティーフ・カッハール・アッサバード・アル=アミールです」
わざわざ長いフルネームを名乗り、丁寧にお辞儀までするラティーフにグリフィスは軽く頭をかいた。こちらとしては所属と立ち位置を明確にしたつもりなのだが、どうやらそれが通用していないようだった。
「あの、まずは座ってください。今、お茶を」
「あー、いい! 俺がやる」
側にある茶器を持つ手がどうにも危なっかしくて、グリフィスは言葉で制して自分の分のお茶を手早く淹れ、更には少なくなっていたラティーフの茶器にも注いだ。その手つきを、ラティーフはなんだか驚きと悲しさを含んだ目で見ていた。
「とても、慣れてらっしゃるのですね」
「あ? まぁ、飲みたければ自分で淹れるからな」
「……ご苦労、なさったのですね」
肩をがっくりと落とした相手を見て、グリフィスは溜息をつく。多少大人しくしていようと思っていたが、どうにも無理だ。長椅子にどっかりと座ったグリフィスは盛大に溜息をついた。
「辛気くさい顔するなよ、王子様」
「ですが」
「別に、苦労なんざしてねぇ。うちの大将に比べりゃ俺のなんて屁でもねぇよ。その辺聞きもしないで不幸押しつけてくるな。俺は、けっこう充実した人生送ってるんだぞ」
そこまで言えば分かったんだろう。慌てて顔を上げて、またぺこりと頭を下げて「すみません、失礼な事を!」とか言ってくる。本当にこれで大丈夫かよ。
リッツの話では、民を考えるいい王子なのだという。だが、自分の容姿に劣等感があると。だがそれだけではないだろう。もっと、気概が欲しいものだが。
「あの、グリフィス様」
「おいおい、たかが騎士に王子様が様なんてつけるな。グリフィスでいい」
「ですが……。いえ、分かりました。グリフィス、お話を聞きたいのです。アスィーム王は、どうなったのですか?」
気弱な発言と視線。だが、グッと力を入れたラティーフが顔を上げた時にはもう、毅然とした目をしていた。それを見て、グリフィスはニヤリと笑う。完全な腑抜けではないと思えた一瞬だった。
「死んだよ」
「逃れてきたのですよね?」
「あぁ。俺と親父、そしてお袋の三人で密航船に乗って帝国の近海まで来たが、限界でな。座礁して流れ着いたのが、ハッセ家の領地だった。どうやら潮の流れでそうなるらしくてな。俺達は運良く屋敷の直ぐ真ん前の砂浜に辿り着いていた」
懐かしい話だが、これを誰かに話すのは始めてかもしれない。母は他言を好まなかったし、グリフィス自身言うつもりのないことだった。そしてリッツは気を遣って、聞こうとはしなかった。
「俺とお袋は無傷だったが、親父は逃げる間に傷を負っていた。幸いハッセの親父がいい人でな、俺達親子を直ぐに屋敷に招き入れて部屋を貸してくれて、治療もしてくれた。お陰で半年くらいは親父も生きていた」
「そう、だったんですか」
「……穏やかだったよ」
「え?」
「親父の死に目さ。恨んじゃいなかっただろうな。目も見えなくなっていたが、ハッセの親父にとても感謝していたし、医者先生にも感謝してた。そして俺には、恨むなと言って逝った。カッハールにはカッハールの苦しみがあったのだろうと」
本当に、穏やかだった。殆ど苦しみもしなかった。父は母を心配し、母に再婚を望んだ。不義ではないし、子に父は必要だと。そしてハッセの親父には母とグリフィスの事をお願いして逝った。
「恨まなかった日が無かったなんて、言わないだろうけれどな。最後には許したんだろうよ、親父は。ただ残していく者の心配だけはしてたけれど、それもハッセの親父が引き受けたから安心したみたいだ」
「やはり、出来た方だったのですね」
「それはどうだかな。俺から言わせれば、執着がなさ過ぎる。恨みも執着も時には生き残る糧だぜ。そういうのはあったほうがいい。じゃないと、簡単に諦めちまう」
ある意味で、ほっとした。グリフィスの記憶にも、実父は穏やかな人だった。暗い影など見当たらない人だった。そしてその印象のまま、逝ったのだ。
でも思う。もしも多少でも誰かを恨んだり、執着したら。もしかしたら生きていたんじゃないかと。
どちらがいいかなんて分からないけれど、少なくともグリフィスは後者でいようと思う。清廉君主なんて柄にもないんだから。
「マラーク妃はその後」
「あぁ、生きてるぜ。俺とお袋はその後もハッセの家で世話になってな。そのうちにハッセの親父がお袋に惚れて、お袋もまんざらじゃないみたいだったから」
「ご結婚されたと?」
「帰化してな。ハッセの親父との間に子供もいて、今じゃぽっちゃりだ」
「え! そう、なんですか?」
「帝国のご飯が美味しいらしくてな。ハッセの親父も食べてるお袋が可愛いからって与えすぎだしよ」
義父曰く、「ハムスターの餌付け」らしい。分からないではないが。
でも、母が必要以上に落ち込んだり、逆に空元気で体を壊さなかったのは義父のお陰だと思う。二人ともまだ若かったし、義父は母を大切にしてグリフィスも大事にした。泣く母に黙って寄り添う姿を見ていると、似合いだろうと思えたのだ。
「今でも夫婦揃って親父の墓参りに行くんだぜ」
「それは、よかった」
心底ほっとしたのか、ラティーフの体から力が抜けていく。それを見て、グリフィスは笑った。
「なんだ、恨んでると思ってたのか?」
「おかしくはないですよ」
「俺は全然不幸じゃなかったからな。ハッセの親父に鍛えられてすっかりゴリラみたいになったし。あの人は今でも俺を息子だと思ってくれてる。たまには帰れと言われてるくらいでな」
「帰らないんですか?」
「あぁ。あそこにはもう弟がいる。領地は弟に任せようと思ってな。そう言ったら、ハッセの親父は凄く寂しそうな顔をするんだが……まぁ、ケジメだな」
『お前も俺の息子なんだぞ!』と言って抱きしめてくれるのは有り難いが、これはグリフィスが決めた事だ。領地を継ぐのはハッセの血がいい。ちゃんと息子のつもりではいるが、血は繋がらないんだ。
「騎士団での仕事もやりがいある。戦うのも好きだし、仲間も気のいい連中だ。今の生活に何一つ文句はねぇ」
「……よかったです」
「だからお前も、これに関しちゃ背負うなよ」
「!」
驚いたようにラティーフの顔が上がる。その後で、少し泣きそうな顔をした。
「第一、お前が生まれる前の話じゃないのか? 親父の不始末を背負う必要はないっての」
「ですが」
「気にしすぎるんだよ。あと、気持ちしっかり持て。お前、次の王様になるんだろうが」
「……自信が、ないんです」
「じゃ、ここに骨埋めるか? あの親父なら今頃子供こさえてるだろうよ。お前が背負ってやる必要は」
「ダメです! 少なくとも私の領地の民達を放置するような事はできません!」
パッと顔を上げたラティーフの目はとても真剣で、とても強いものだ。それを見てグリフィスは笑い、グリグリと頭を撫でた。
「そうかそうか、その顔忘れるなよ」
「? あの、本日はお時間を頂きました。貴方の生存に関しては本国に伝えるつもりはありません。どうかリッツを、幸せにしてあげてください」
「言われなくても、あいつは俺が幸せにするつもりだ。お前も、頑張れよ」
「はい」
ラティーフが微笑んで手を差し伸べてくる。それにグリフィスも返した。しっかりと交わされた握手は悪くないものだ。ここにくる時は少し憂鬱だったが、話し終わった今となっては晴れているように思う。
思えばこんな話を外で出来る相手は限られる。下手に知られれば争いの種になるのだから。それでも、知って欲しかったのかもしれない。家族以外の誰かに。
「もう少し休みます」というラティーフを長椅子に残し立ち上がったグリフィスが談話室を出ると、忠犬のようにジャミルは戸口に立ったままこちらを見て、僅かに頭を下げた。
青い瞳とぶつかると意外にも敵意を持っているのを感じる。今にも噛みつかれそうな気配に、グリフィスは苦笑した。
「何もしちゃいねーよ」
「それに関しては分かっている」
「本当かい? 手放した王位欲しさに俺がお前のご主人様をグサリ! なんてのを警戒しているのかと思ってたが?」
「……欲しければくれてやる」
そんな事を言うのに、ジャミルの表情は憎らしげなままで歪む。奥歯を強く噛み、今にも襲いかかってきそうな表情をしているというのに鎖に繋がれて唸るしかできない。そんなもどかしく、歯がゆいような感じがした。
「お前、あの王子さんに王位を継いで欲しいと思っているんじゃないのかい?」
「……っ! それが、あの方の未来だ」
「……ちと、離れようか。なに、この家は安心だ。お前も分かるだろ?」
「だが」
「じゃあ、この部屋が見える場所でにしよう。なに、護衛はこっそりついているみたいだしな」
僅かだが視線を感じる。それは中で話している時も感じた。おそらくヒッテルスバッハがつけた護衛だろう。
黙ったジャミルの様子は凪いだ砂漠の夜のように静かだ。少し冷たくもあり、感情が見えなくなる。そうして歩き出したのは、この談話室のドアが見える廊下の隅だった。
「お前、あの王子さんに王位を継いで欲しいと思っていないのか?」
声を潜めて同じ質問をしたグリフィスに、ジャミルは腕を組んでドアを見つめたまま、重い息を吐き出した。
「……状況は、それが望ましいだろう。あの方が王位を継げばおそらくあの国は救われる。そしてこれは王家に生まれたあの方の責務であり、それを助け側近くで守るのが俺の役目だ。……だが」
「だが?」
「…………時々、そんな煩わしいものなど全て捨てて、自由に生きてもらいたいと思う時がある。あの方の力を、優しさを否定するあの国の為に、どうしてお優しいラティーフ様が思い悩み、更には命まで狙われねばならないのか。いっそ亡命でもして思うまま伸び伸びと生きていただけたら。そんな、従者にあるまじき事を思う事がある」
そう呟くジャミルの表情は酷く色んな感情が入り乱れて複雑だ。従者という身分と立場でこんな思いを抱く事の不敬を憎みつつも、個人としての思いもまた強く持っている。両立できない二つの事柄を、ジャミルは己を殺して立場を優先して動いている。
どちらがラティーフにとっての幸せかを考えながら。
「俺は、元は奴隷だ。本来なら労働力として売られ、使い捨てにされたはずだ。そんな俺に、ラティーフ様は身に余るご温情をかけて下さった。学と武を授け、従者としてくださった。こんな……たかが使い捨てを大事にしてくださる。その御恩に報いるなら、俺はあの方に王位を用意すべきだろう」
「それがあの王子様の幸せかどうか。おそらく、苦しく辛い道を歩ませる事になると分かっていてもか?」
「……だから、悩むのだ。あの方の幸せを願えば、俺はこのままでもいいと思っている。いっそアンタのように死んだ事にして、違う人生を歩んだって構わないと思っている。どうせあのろくでなしの王は子供を産ませるだろう。無理にあの方が継がなくとも、とりあえず王家は存続する。……いや、もはや滅んだって構わない」
不穏な言葉が苦々しく噛みしめた歯の隙間から漏れ出てくる。苦悩する男のそれは、正直な彼の思いなのだろう。
「あの国は腐っている。今では無くてもいずれ、誰かがあの王に耐えかねて剣を向けるだろう。今回の内乱はその口火でしかない。いずれ不満は膨れ上がり、爆発する。そんな国、見限ったって構わない」
「不穏な事だが、あり得るからな」
暗府の話では国内はかなり荒れているとの事。戦を好む王の目は外に向きがちで中はザルになる。そこに付け込む人間もいて、貧しい所から搾取を始める。帝国の一昔前がそれに近かった。幸い帝国はヒッテルスバッハという強い手綱が利いて持ちこたえた部分があるが、普通はそう上手くはいかない。ジェームダルがいい例だ。そしてサバルドも今、そういう状態なんだろう。
「だが……」
「……」
「だが、祖国なんだ。あの方は捨てられないんだ」
がっくりと肩を落とすジャミルの、それが全てだったのだろう。
一言「このまま逃げたい」とラティーフが漏らせば、ジャミルは喜んで生涯を共にするのだろう。彼が彼らしく生きられるように力を尽くすのだろう。そんな事を、ジャミルは願っているに違いない。
そしてラティーフも、そんな未来を一瞬でも見ただろう。だが、それは出来ない。責務という言葉が重く彼の足にはまって枷となっている。無責任に放り出した後、自分を頼ってきた領民の不幸を思わないわけがない。自分一人の勝手で多くの人が理不尽な状況に追い込まれる事を、ラティーフは危惧しているのだ。
「……ままならねぇなぁ」
何かを押し進めればどちらかが成り立たない。理想としては祖国に戻り、父王を廃して自身が王に就いて改革を進める。だが、口に出すほど簡単ではないし、命の危険は常につきまとう事となる。あの優しい王子様に、それが可能かわからない。
「それでも、俺はラティーフ様を支える。剣にも盾にもなって厄災を断つのみだ。私情は……挟まない」
結局はそこに落ち着くのだろう。ジャミルの表情は再び凪いだ。冴え冴えとした砂漠の月光、その蒼を称えるような瞳が真っ直ぐに見据える。それを見て、グリフィスは難儀さを感じてしまった。
「自由に、己の幸せを求めてもいいだろう」とは、帝国に染まりきった自分の思い。そういう意味でもグリフィスはもう帝国人だ。だが、あの国は違う。そんな自由は許されない。
「……腹決まってるなら、ブレるなよ」
「承知している」
せめて何か力を託したくて、グリフィスはポンと肩を叩いた。既に断ったはずの糸が奇妙な形で繋がってしまったから、多少のいたたまれなさは感じている。グリフィスにとっても祖国ではあったはずなのだ。本来なら、無責任に放り投げてはいけなかったのだろう。
だが既に道は分かれてしまっている。今更半端に首を突っ込んでも混乱を呼ぶだけだ。
立ち去る時、もうこれ以上関わるのはよそうと決めた。それが互いの為になるのだと。
この時グリフィスは知らなかったのだ。この後に起る悲劇を。
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