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1章 もうこの先不安なのですけど…

すごい野球を目の前で観ているのですが…ゴールデンウィーク初日

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 よく晴れた朝だ。
 今日は高校で数少ない男友達、林ジローが出る(とは限らない)野球の試合を観に来ている。

 会場となる西湊球場は俺ん家から歩いて数分。体育館や芝生広場もある大きな公園の1つの施設だ。
 昔は野外プールだったらしく、更に昔は海水浴場だったらしい。工業地帯の一角でもある西湊の海はお世辞でもキレイとは言えない海である。そんな海だが昔はマシだっのか、毎年観光客で賑わっていたみたい。
 その名残か、芝生広場の隅には人工川が流れており、夏になると小さな子供が水着姿ではしゃいでいる。

 快晴だがまだまだ水遊びをする季節は早いのか、川に入る子はいないものの、川が綺麗に見えるところにビニールシートを敷き、親子連れがピクニック気分で楽しんでいる。

 さてさてなぜ隣の市である愛浜高校と高城東高校の試合が関係ない西湊で行われるのか?
 答えは簡単、お互い近くにいい施設がないからだ。
 元々1年交代で各学校のグランドを使っていたが、まぁいくら弱小校でも高校生のパワーはすざましいものである。伝統でも球場で試合した方がいいという議論が出たものの、愛浜市は規模小さい自治体なのでそもそも球場がない。高城市はないことはないが、距離が遠いので愛浜高校には不利になる。なので使えない。
 よって両校からそこそこな距離にあった地元の西湊球場を使うことになったらしい。

 「お~キタキタ。こっちや恵一!」

 一郎がスタンドの入り口で呼んでいた。

 「早いね。場所取りでもしてくれたのか?」

 「毎年混むらしいからね~早く行っていい席取りたかったのさ。」

 愛浜高校は一塁側のベンチだった。これも1年ごとに替えて先攻後攻を決めているらしい。今年は愛浜高校は後攻だ。

 「そんなに人気なんだこの伝統試合。」

 階段を上がればグランドが広がる。客は…ベンチから外れた野球部員と吹奏楽部。反対の3塁側も似たような人数だ。そのほかは…俺たちぐらい。

 「どこが混んでいるだよ!?」

 「あっれ~おかしいな。」

 「ガラガラやん!」

 この2人もこの状況には予想外みたい。

 「あんたら場所取りしたからそんな反応おかしいだろ。」

 「いや、ワシら会場2時間前から来て並んで入って一旦出たんや。その時にいっぱいになると思ってん……」

 「そんな前から並んでいたの!?」

 「確かに並んでいたのは僕らだけだったな~」

 「その時にそんなに来ないなとなぜ悟れなかった!」

 彼らの努力でいい席が取れたからいいとしようか。別に俺が来たタイミングでもその席取れたけどさぁ…

 さてスタメンはもう発表されたみたい。

 「えーっと……4番ファースト林  痔?」

 なんだ痔って!どんなキラキラネームだよ!?いやキラキラすらしてないけど…

 とりあえずジローでは無さそう……

 「「えーー!!ジロー試合出てんの!?」」

 ジローなのかい!

 「なんで2人がビックリしてんの!」

 「いやだってあいつそんな実力あるとは思えへんし。」

 「昔からの付き合いなら知っていると思ったけど?」

 「俺たちは中3から友達だよ~」

 意外と短かった!
 勝手に幼なじみだと思ってましたよ。友達歴短いわりには仲がいいな全く!

 「ま、まぁジローがスタメンなのはいいよ。いいけどさあ……あの間違いはないんじゃないの?」

 痔は酷いだろ。スポーツの世界では基本名字でオーダー組むが、チーム内に同じ名字がいたら名前の1文字を加えることで区別している。
 けど普通は林 ジと表記するのが当たり前でしょ?

 「いや、確かあいつの登録名だから問題ないわ。」

 「高校野球って登録名に自由度あったか?」

 プロではアルファベットつけたり、本名とは違う名前で出場している選手はわんさかいる。高校野球は初耳だが、仮に認められてるならいいや。だけど…

 「痔はダサいよダサすぎ!他にカッコイイ漢字あるでしょ!?」

 「けど本人は気に入っているみたいだよ~」

 外国人が着るTシャツかよ!

 「どこに気に入る要素があるんだ?」

 「さぁ。多分意味知らんやろ。」

 「ちょっと待て、日本人の高校生なら絶対意味知ってるはずだぞ!?」

 ケツのデキモノを名乗っていいのか!?
 痔にはボラギ〇ールか!?ボラギ〇ール林と呼ぶぞこら。
 語呂がいいからやめて欲しい……

 「それにしてもファーストかぁ…」

 「まだまだ目標には遠いかな?」

 「適任だと思うのは俺だけか?」

 確かにウォーミングアップをしているジローはどこか不服そうな顔をしている。一年でもうスタメンに出してもらえるだけでありがたく思えよまったく…

 「それにしてもファーストってどこや?」

 「!?」

 「さあ?一塁の近くじゃない~」

 「!!?」

 ちょっと待って。この2人もしかして…

 「野球のルール知らないパターン?」

 「「うん全く!」」

 揃って言うんじゃねぇ!

 そして友達歴が短いと考えると…

 「野球観るの…初めてか?」

 「「そうだよ(肯定)」」

 やったぁ予測当たった!パジェロ貰ってもいいかな?………じゃない!

 勝手に野球のルールを知っていると俺が勘違いしていたのは謝るわ。そりゃファーストが適任だとは思えないわけだ。ただ知らないのによく観に行こうとしたな。これが厚い友情かぁ!まだ一年しか経ってないけど!友達のために時間を作ってここに来たのか。本当に厚い友情だなぁ!まだ一年しか経ってないけど!!

 とはいえ、ルールを知らないんじゃ野球は面白くない。他のスポーツは何となくで点数の入り方を察しできるが、野球はなかなか入らないうえに複雑な点の取り方なので、予め予習不可避なスポーツだ。

 「まずは攻撃と守備に別れるるんだけど…」

 野球はある程度知ってから、あとは1つのプレーごとに説明したほうが効率が良い。
 複雑なルールを一気に聞いても頭がパンクするだけ。実際見た方が覚えやすいというのもあるからね。

 『おまたせしました。まもなく試合開始です。1回の表、高城東高校の攻撃は。1番、ショート……』 

 ウグイス嬢いるんだ。練習試合なのに。

 「プレイボール!」

 ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙~ケホッケホッア゙ア゙ア゙ア゙ア゙……

 多分人力だと思うサイレンが鳴り響いて試合が始まる。このワクワクドキドキ感はいい意味で慣れることができない。

 ちなみにサイレンについては本当に疑問に思ってないよ、ホントだよ?

 「そ~れ、愛浜倒せ!ひ、が、し!!」

 うわぁ、応援もガチってるよ……

 「なんや喧嘩売ってんのか!」

 「ちょっとイラッときたね~」

 「この2人に煽りの耐性なかったんか…」

 高校野球にしては過激だが、暴言がないだけでまだマシな世界。いちいち反応してたらキリがないからね。腹ただしいなら、それ相応な応援をこっちもするだけ。

 さて試合のほうは……

 「デッドボール!!」

 「はっや!」

 初球から当てたぞうちのピッチャー……
 大丈夫かなぁ。

 「恵一くん。今のはなに?」

 そうだった説明しないと…

 「今のはデッドボール。ピッチャーの投げたボールがバッターに当たると、塁に出ることができるんだ。もしバッターがバットを振ったらダメだけど。」

 相手は少々痛そうな顔をしながら一塁に向かう。
 もちろん相手のスタンドからはブーイングが起こる。

 「なんやわれ!?塁に進めたあげたのにその態度はなんや!?感謝の言葉もねぇのか?」

 「今度そんな態度取ったら乗り込むよ~」

 「やめてくれ恥ずかしい。」

 当てたのはこっちだから怒られるのも当然。怪我に繋がる恐ろしいことだからね。いくら無知でも観客同士争うのはやめてよまったく…

 さてノーアウト一塁。ここからあまりピンチを作りたくないな。

 ピッチャーは正面を少し睨むと、すぐに一塁に球を投げる。牽制だ。

 バシッ!

 「「「あれは痛いな~」」」

 たまたま塁から大きく出ていたランナーは、ジローに刺されてアウトになった。
 ここは喜ぶところだが、ジローが球を捕ってからのスピードと、遠くからでもわかるすざましい威力でランナーにさらなるダメージが追加されたのだ。

 最初の最初から痛い目ばっかりあって、さすがの敵側の俺も同情してしまったぐらいだ。

 そしてすかさず2人に今のプレーを説明する。

 最初の最初から期待と不安が入り交じった野球が開幕したのだった。


 2

 「ジローは打つと思うな~」

 「どうして?」

 「ん~友達の勘ってやつ?」

 「………」

 三朗が期待するのはいいことだが、この人野球のルールを知らないのと、ジローと知り合ってからそんなに経ってないことから、きっとジローの実力も知らないだろう。
 ジローはどうせ打てないとか思っているわけじゃない。ただどこまで通用するかわからないこの世界に過度な期待をするもんじゃない。

 「ワイも打つと思うで!勘やけど。」

 もう1人いたわ勘を働かせておるやつ。

 試合は高城東高校の1回表の攻撃が終わったところ。ジローは4番なので、誰か塁に出ればまわってくる。

 「愛浜高校を応援されているかたですよね?」

 「そうですけど…」

 突然応援団らしき人に声をかけられた。

 「ならこれを使って応援してください。熱い応援お願いしますよ!」

 「はぁ…どうも……」

 渡されたのはプラスチック製の棒が二本だ。色はスクールカラーの薄ピンク1色に塗られている。

 「これはもしかして……」

 棒同士を叩くとカチカチと音が鳴る。先が太くて、持ち手の部分が細い。間違いない……

 「応援バットだ……」

 野球独自の応援グッズである応援バット。応援バットとは、太鼓のリズムに合わせて叩いたり、拍手の代わりとして使うもの。
 近年減ってきているグッズを高校野球で使うなんて珍しい。

 一郎も三朗も貰っていて、一塁スタンドで観ている観客で持っていない人はいなさそうだ。

 ピピーッ!

 「本日は!ここ、西湊球場にお越しくださいまして、ありがとう~ございます!!」

 応援団長らしき人が指揮を取ると、周囲からカチカチ音と歓声があがる。

 結構本格的だな!

 「今日は練習試合とはいえ、長年のライバルでもあり!永遠の敵とも言える高城東高校が相手です!!」

 マジで過去に何があったん?

 「あっちに負けない応援を、見せつけてやろうではありませんかぁ~!!」

 ワーッとまた歓声があがる。本当に盛り上がっているなおい。全国の練習試合でここまで盛り上がるのは多分ここだけだぞ!

 「それでは、いつものあれから始めましょう!」

 応援団長が笛を咥え、吹奏楽部の方に向く。
 合図をすると、吹奏楽部はすぐに演奏を始める。

 『く〇たばれ東!そ~れいけいけー!!』

 「アウトアウト!それは完全にダメでしょ!」

 「なんでや?まだ誰も打席立ってないやん?」

 「あーごめん。そっちの意味のアウトじゃない。」

 応援スタイルがアウトなんですよ一郎くん。

 応援ではある程度の暴言は許されるものの、く〇たばれはさすがにダメ。
 しかもいつものだと考えられるのは、少なくとも高城東高校との試合では使っていると推測される。

 「そこー!しっかり応援しろ!!!」

 「す、すみません!」

 誰か彼らを注意してくれ。僕らはやってませんと言い逃れするので、誰か応援を禁止してやってくださいお願いします。

 「プレイボール!!」

 コンプライアンス的にアウトを右から左に受け流しながら、我ら愛浜高校の攻撃が始まる。

 「さすがにほとんど先輩が出てるなぁ。」

 「やっぱり野球も基本経験積んでる人が使われやすいの~?」

 「そりゃそうさ。ジローが特例なだけで、一年は雑用でベンチに入れるだけでもいいほうだよ。」

 逆にこの監督さんは実力重視で選手を使っているのがわかる。先輩だからという甘い考えは一切ない。強いチームを作るからにはその考えが当たり前だが、必死に努力してもベンチすら入れなかった先輩も少し同情してしまう。

 先輩バッターはヒットで出たものの、あとの2人はあっさり三振を取られてしまった。

 「ぬぬぬ!あっちのピッチャーは強いですね~」

 「うん。すごいいいピッチャーだよ。」

 「ジローとどっちが強いん?」

 「………それは知らん。」

 『4番、ファースト。林 痔!!』

 気のせいかな?あのウグイス嬢、痔のところだけ強調しなかったか?

 「ふんぬ!!!」ブオン

 風を切る音がもう初々しくないんだよねいい意味で。

 「1年生でスタメンかぁ…こいつはちょっと見物だなぁ。」

 「そうですね!これで当たれば育成も視野に入れてはいいのではないでしょうか?」

 「んだな。さすがチーフ、地区線の練習試合も見どころあるとは私でも思わなかった。」

 もしかしてプロのスカウト来てます?結構すごいゲームなんだなこの練習試合。

 「おりゃ!」パコーン

 ジローが放った打球は軽々と空に舞い、綺麗な放物線を描いて遥か彼方に消える。多分公園に隣接している海まで飛んだかも。

 「ほう。こりゃあすごい。」

 「じょ、場外ホームランだ……」

 いくら市の球場で高校生はいえ、そう簡単に場外を越えることはできない(しかも高校初打席)。

 相手のピッチャーも口を開けたままボールが消えた方向を見つめている。

 「た~まや~!!!」

 「ちょっとここでは違うかな一郎くん。」

 「か~ぎや~」

 「2発目は打ってないよ三朗くん。」

 野球初心者の2人は2人なりの楽しみをしているようで何より。


 3


 試合はその後も愛浜高校がリードしており、ジローの2回目の打席になった。

 「またホームラン打つといいね~」

 「ジローなら打つやろ。」

 ただの推測に過ぎないが、さっきの当たりからみると本当にもう一発打ちそうに感じる。

 相変わらず威圧感あるスイングをしながらバッターボックス(バッターが立つ場所)に入る。

 『かっ飛ばせ~林、痔!』

 応援団も大盛り上がりだ。ただ痔はやっぱりいらないと思う。

 そしてその期待に応えてまたジローは打つ。

 「ホームランか!?」

 しかし惜しくもフェンスに当たりホームランにはならなかった。

 「長打コースだ!」

 ジローは1塁を蹴って2塁に向かう。悠々と間に合いそうだ。それにしても……

 「ジローって体重何キロあるの?」

 「この前100キロある言うてたで。」

 「とても100キロの人が走るスピードとは思えないけど…」

 たまに聞く動けるデブ、走れるデブ、俊敏なデブ。それを何倍も上回るステータスでグランドを駆け抜けたのだ。
 恐らく陸上部といい勝負になる。
 もしかしたら100キロというのはネタで、本来は見た目に反して軽いのかもしれない。

 そうこうしているうちに相手がエラーをしたので、ジローは3塁を狙った。

 「あぁ…間に合うかこれ?」

 セーフかアウトか際どい。ジローもスライディングして3塁に到達する。

 結果的にはセーフだった。セーフだったけど、

 「「「3塁ベースが吹っ飛んだ!?」」」

 恐らく滅多に起きない珍事に球場全体目を丸くしている。
 ジローがスライディングした衝撃?で3塁ベースが取れてしまった。もちろん簡単に取れないようにセッティングはするのだが、ジローのパワーは想定外だったらしく、虚しく隅に転がっていった。

 「実はジローの体重100キロはさすがに嘘だと思ってたんだ。」

 「ワイもさっきまで半信半疑だったんや。」

 「僕も僕も。」

 「でも確信したわ……」

 「「「あいつ100キロマジである。」」」

 係員(多分同じ1年生)が慌ただしくベースを付け直す。付け方が甘いだろと叱責が聞こえるが、多分そういう問題じゃない。
 当の本人は何もなかったような顔でピッチャーの動作を伺っていた。

 「あんな珍プレーをするなんてやっぱりチェックに入れんとなぁ。」

 「これはすぐに会議ですよ!」

 スカウトらしき人はどこか満悦そうな顔をしてその場を去っていった。


 4


 「おつかれジロー!」

 「おつかれさん!」

 「おつかれ~」

 「みんな来てくれてありがとうでゴワっす!」

 結局ジローは4回打席に入り、全て塁に出ている。そのうち2つはホームランだという大暴れっぷりだ。

 「それにしてもここまですごいとは…」

 もしジローがいなかったらどっちか勝つのかわからないぐらい、彼の貢献度はすごい。きっと高城東高校の連中も1人の1年生選手にやられてしまった屈辱な思いで帰路に着いたのだろう。

 「だけど監督にアピールできるところなかったでゴワっす。」

 「いやいや。充分できたでしょ?」

 「肝心のピッチャーはやってないでゴワっす。」

 この期に及んでまだピッチャーにこだわるのか君。きっとレギュラーを目指している人に言ったら間違いなく殴られると思うから、ピッチャーの相談は監督だけにしとけよ。

 「それじゃまだミーティングがあるからおいらは行くでゴワっす。」

 「また学校でな。」

 「ワイも三朗もそろそろ帰るわ。」

 「気をつけてな。」

 「バイバイ。」

 なかなかの珍試合だったけど、友達があそこまで活躍すると、自分のように嬉しくて誇らしい。

 さて、帰ってゴロゴロしますか。

 『明日の約束忘れてないでしょうね!』

 美矢からのLINEだ。

 「しまった。明日の約束すっかり忘れていた。」
 
 普通のゴールデンウィークはまだまだ終わらない。
 
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