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無駄なイケメン
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丘まで戻って芋を焼く準備をする。用意していた種芋は全て植えた。まだまだ収穫できないので、帰りに新しい芋を引っこ抜いてきたのである。
くそう……明日もう一回探してみるか?
渾身の力で棒を擦り。10分ほどかけてようやく火を起こした。
「ふぅ……火魔法なんてあればどれだけ便利なんだろう……」
さっきの戦いが脳裏を過る。
あのゴブリン悔しそうだったな……魔物といえど、この世界に来て初めて出会ったヒト型だ。
ゴリラはカウントしない。
「仇は俺がとってやる!……たぶん……いつの日か……100年後ぐらいに……」
なんともヘタレである。
しかしあの土魔法は驚いたな……土がモコモコ! ってなってズバって土の棘が生えてきたんだ。
陳腐な感想だが、これしか表現できるすべを思いつかない。
『万物視』でゴブリンを見ていたら、額のツノがじわっと光り出して、それが右腕に流れ込んで行き、地面を叩いた瞬間弾けて魔法が発動したのだ。もちろん土槍も光っていた。
たぶんあれが魔素なんだろう……
ツノが魔結晶なんだとしたら、魔素を持っている俺の体にも魔結晶があるんじゃないか?
あの光景を思い浮かべて、自分の体を見る。
……何もない。
手足を見る……
……何も見えない。
ん? どういうことだ? 後は頭ぐらいのもんだが、流石に鏡も無いし見れねぇな……
水鏡でも作るか? 川では流れもあるし、濁ったりしてあやふやな見え方しかしなかった。
これを機にタライでも作ろうか……
そう考え、火で熱した小石の中に芋を2個突っ込むと木材置き場まで移動した。
先日伐採した直径30センチ程の木をタライの深さ程度になるように石斧を打ち付けていく。
「ふぅ、以外にしんどいなこりゃ」
時間をかけようやく輪切りにできた。後はこれをくり抜くだけである。
石ナイフでショリシャリ木を削っていく。
そしてくり抜き終えて、ザラザラな木の皮でヤスリがけしていくとタライが完成した。
「重いけど十分使えるな」
辺りはもう薄暗くなっており、水鏡は明日にしようと気持ちを切り替え、大きな伸びをする。
「うー、今日はもう寝るかぁ…腹減ったなぁ」
あっ!!
急いで焚き火まで戻ると石の中から炭になった何かが出てきた。悲しみに暮れ、何かくれと催促する腹の声を無視しながらふて寝をする京であった。
翌日、出来たばかりのタライを引っさげ、川まで来た。
川はあまり深さはないので水筒に水を汲んでからタライに移す。ある程度溜まってきたら濁りが落ち着くまで待ち中を覗き込んでみた。
「…………誰だお前?」
静止して日に照らされた水面には、目にはかからない程度に伸びた銀髪に深い緑の瞳をした精悍な顔立ちの男が映し出されていた。
「これが……俺?」
目鼻立ちはくっきりしていて、まるでどこかの映画俳優みたいだ……前の俺の面影なんてホクロの位置ぐらいじゃねえか。
何……してくれちゃってんの神さま?
このイケメンをどこでどう使えと?
こんなゲームクリエイトでこだわって作ったみたいな顔くれても使い道ないじゃん……
こんな事に時間を使う暇があるならどこか人里にでも飛ばしてくれた方がよっぽどマシだったわ!
銀髪って何よ!? 何故か体毛が全くなくなってたからわからんかったわ! そう、下の毛もないのだ!
プルプルと震えながら神様への恨みを呟いては飲み込む。
ひとしきり悪態をついて落ち着くと、仕方ないので本来の目的を遂行する事にする。
もう一度タライを覗き込むと『万物視』を発動し、魔素を意識してみる。
すると額が光り出し、銀色の髪に広がっていった。
「!! これだ!」
意識してないとすぐに光が収まりそうだ……
俺はゴブリンがやってた様にその光を右腕に集めようとする。
なかなか難しい……出来そうになっては戻りを繰り返して、やがて俺の集中力が先に切れた。
すると光っていた俺の頭も元に戻り、辺りを静寂が包む。
……練習すればいける! ニヤケそうになる顔を引き締め、明日からのトレーニングに加えようと決めた。
それでも魔法が使えるかもしれないと考えると笑みは抑え切れず、タライを太鼓の様に叩きながらスキップで家まで帰るのであった。
くそう……明日もう一回探してみるか?
渾身の力で棒を擦り。10分ほどかけてようやく火を起こした。
「ふぅ……火魔法なんてあればどれだけ便利なんだろう……」
さっきの戦いが脳裏を過る。
あのゴブリン悔しそうだったな……魔物といえど、この世界に来て初めて出会ったヒト型だ。
ゴリラはカウントしない。
「仇は俺がとってやる!……たぶん……いつの日か……100年後ぐらいに……」
なんともヘタレである。
しかしあの土魔法は驚いたな……土がモコモコ! ってなってズバって土の棘が生えてきたんだ。
陳腐な感想だが、これしか表現できるすべを思いつかない。
『万物視』でゴブリンを見ていたら、額のツノがじわっと光り出して、それが右腕に流れ込んで行き、地面を叩いた瞬間弾けて魔法が発動したのだ。もちろん土槍も光っていた。
たぶんあれが魔素なんだろう……
ツノが魔結晶なんだとしたら、魔素を持っている俺の体にも魔結晶があるんじゃないか?
あの光景を思い浮かべて、自分の体を見る。
……何もない。
手足を見る……
……何も見えない。
ん? どういうことだ? 後は頭ぐらいのもんだが、流石に鏡も無いし見れねぇな……
水鏡でも作るか? 川では流れもあるし、濁ったりしてあやふやな見え方しかしなかった。
これを機にタライでも作ろうか……
そう考え、火で熱した小石の中に芋を2個突っ込むと木材置き場まで移動した。
先日伐採した直径30センチ程の木をタライの深さ程度になるように石斧を打ち付けていく。
「ふぅ、以外にしんどいなこりゃ」
時間をかけようやく輪切りにできた。後はこれをくり抜くだけである。
石ナイフでショリシャリ木を削っていく。
そしてくり抜き終えて、ザラザラな木の皮でヤスリがけしていくとタライが完成した。
「重いけど十分使えるな」
辺りはもう薄暗くなっており、水鏡は明日にしようと気持ちを切り替え、大きな伸びをする。
「うー、今日はもう寝るかぁ…腹減ったなぁ」
あっ!!
急いで焚き火まで戻ると石の中から炭になった何かが出てきた。悲しみに暮れ、何かくれと催促する腹の声を無視しながらふて寝をする京であった。
翌日、出来たばかりのタライを引っさげ、川まで来た。
川はあまり深さはないので水筒に水を汲んでからタライに移す。ある程度溜まってきたら濁りが落ち着くまで待ち中を覗き込んでみた。
「…………誰だお前?」
静止して日に照らされた水面には、目にはかからない程度に伸びた銀髪に深い緑の瞳をした精悍な顔立ちの男が映し出されていた。
「これが……俺?」
目鼻立ちはくっきりしていて、まるでどこかの映画俳優みたいだ……前の俺の面影なんてホクロの位置ぐらいじゃねえか。
何……してくれちゃってんの神さま?
このイケメンをどこでどう使えと?
こんなゲームクリエイトでこだわって作ったみたいな顔くれても使い道ないじゃん……
こんな事に時間を使う暇があるならどこか人里にでも飛ばしてくれた方がよっぽどマシだったわ!
銀髪って何よ!? 何故か体毛が全くなくなってたからわからんかったわ! そう、下の毛もないのだ!
プルプルと震えながら神様への恨みを呟いては飲み込む。
ひとしきり悪態をついて落ち着くと、仕方ないので本来の目的を遂行する事にする。
もう一度タライを覗き込むと『万物視』を発動し、魔素を意識してみる。
すると額が光り出し、銀色の髪に広がっていった。
「!! これだ!」
意識してないとすぐに光が収まりそうだ……
俺はゴブリンがやってた様にその光を右腕に集めようとする。
なかなか難しい……出来そうになっては戻りを繰り返して、やがて俺の集中力が先に切れた。
すると光っていた俺の頭も元に戻り、辺りを静寂が包む。
……練習すればいける! ニヤケそうになる顔を引き締め、明日からのトレーニングに加えようと決めた。
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