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閃き

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「ふん! ふん! ふん!」

 腹筋をしながら今日の予定を考える。
 朝の日課として筋トレとランニングを始めて1週間が経とうとしていた。

 竹モドキで水筒や籠なんかも作り、ここのところは穏やかな日々を過ごしている。

 しかし昨日、この世界に来て初めての雨が降った。
 ちょうど洗濯をして乾かしていたところだったのに……

そろそろ屋根が欲しい……
 幸いこの場所は気温が安定していて、丘の上ならば風通しも良く、過ごすには快適だったのだ。

 そもそも四季はあるのか?今まで考えたことなかった……冬が来るなら尚更備えなければならないだろう。

ということで家を作ろうと思う。

 ただ家といっても今の俺に出来るのは木に葉っぱを被した程度のものだろうが……

「ふんっ!……っはぁ~しんど」

 筋トレを終え、準備をして木や葉っぱなどの材料を取りに行くことにする。


「っていっても太い木は流石に無理だなぁ」

 あれから新たに石斧や石ナイフなど作ってみたが、流石に太い木を切り倒せる程の強度はないだろう。

 仕方がないので腕くらいの太さの木を見つけ石斧を打ちつけていく。

「ふぅ……結構きついなぁ……こりゃ一日じゃ終わらんぞ」

 適度に休憩しつつ、一日かけて必死に集めた木は5本であった。
 それから3日かけて大量の資材を集めた。



「これ、で、最後だぁ!」 スカーン

 最後の木を切り倒し、俺はその場にへたり込んだ。

「はぁ、はぁ、これだけあれば足りるだろ」

 ピンポーン

 《スキル『伐採』を獲得しました》

 ―――――――――――――――――――――――

『伐採』: 木竹を伐り倒す際、補正がかかる。

―――――――――――――――――――――――


「はぁはぁ、おぉ『伐採』か……先にくれ」

 理屈はわかるが、ついつい本音が漏れてしまった
 次回からは楽できそうなので、ここは納得しておく。

 木材を丘まで運び、しばし休憩する。

「ふぅ、さて、問題はどうやって建てるかだな」

 とか言いながら大体の構想は固まってる。

 まず等間隔に3×3の穴を掘る、それぞれの穴に柱を建て、天辺に梁をツタで結ぶ、この時真ん中の列だけ長めの柱にしておく、そして細めの木を格子状に組み天井に括り付け、上から重ねた葉っぱを取り付ければ、はい完成。

 あまりにも杜撰な脳内設計図だが、とりあえずは雨を凌げればいいのだ。

 実際に2日後に完成した時には何とも言えない達成感があった。
 ついでに竹を交互に編んで壁を作り出来上がった小屋モドキの中で寝転んでみる。

「はははっ秘密基地みたいだな」

 子供の頃近所の公園で、木と木の間に布を結んで隠れ家とか言って遊んでたな……
 やってる事は昔と今で全く変わってねぇじゃねぇか……
 まぁ補強やら増築やらは追い追いする事にして、今はこれで満足するか……

 少しセンチメンタルな気持ちになり寝返りをうち、ステータス画面を開く。

 ―――――――――――――――――――――――
 名前:西村 京
 年齢:27

 生命力 : ∞
 体力:98/180
 魔素量:100/100
 筋力 : 28
 技量 : 45
 知力 : 20
 魔力 : 10
 速度 : 18
 幸運 : 11


 《スキル》
『精神耐性(中)』『毒耐性(小)』『採取』『伐採』

 《ゴットスキル》
『全適性』『万物視』『不老不死』

 ―――――――――――――――――――――――

 増えてはいる……微々たるものだが……
 続けていればいずれあのゴリラを追い越せるのか?
 それとも頭打ちになって伸びなくなるのか?

 やっぱり魔物を倒してみるか……
 一昨日資材集めに結界の壁際に行った時、サッカーボール程のネズミを見かけたのだ。
 気になってよく見てみるとそのネズミは魔物だった。

 ステータスも軒並み50前後で、スキルには『隠形』というのがあった。
 俺には『万物視』があったから見えたが、ゴリラには見向きもされてなかった。
 恐らくスキルの効果で何とか生き抜いている魔物だろう……

 アイツなら今の俺でも倒せるかもしれない。見える俺にはむしろおあつらえ向きだ。
 明日武器を作って探してみるか……結界の外に出るのは初めだ、どうしても緊張する。


 …………結界内から攻撃できんじゃね?

 バルナの皮は結界を通過して俺の顔面にぶち当たった。
【不可侵】の聖域なのに……
 つまりはお互い攻撃は通るのである。しかも相手は魔物だからこっちの存在は認知出来ない。

 もしかして、気づかれずに一方的に攻撃出来るんじゃないか……?


「俺は天才か……」

 なんて事に気づいてしまったんだ! これは頑張ればあのクソゴリラも倒せるかもしれない理論だぞ!

「シャァ! やってみるか!」

 勢い勇んで立ち上がる京。
 すると天井を結んでいたツタが解け屋根が落ちてくる。


 ガタンガタンと落ちてくる屋根に下敷きになり、気を失う天才の夜は更けて行く。
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