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順風満帆からの地獄

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「ふぁあぁ~」

日の出と共に目が覚め大きな欠伸をする。
清々しい朝だ。最低限の衣食住が確保された事による安心感か、はたまた精神耐性のおかげかはわからないが京の心に多少の余裕が生まれていた。

「気分がいい……昨日とは大違いだ」

そう言って布団がわりにしていた葉っぱを重ね片付ける。

「昨日の時点で半分は回ったから、今日で結界内の探索は終えられる筈だ……」

朝食にバルナの実を齧りながら今日の予定を確認する。

「とりあえず水飲んで昨日続きだな」

腰のベルト穴に拾ったツタでバルナ弁当をくくりつけ、軽い足取りで丘を降りていく。


探索しながら食べられるものを採取して、結界内の4分の3ほど回ったところには竹林が見えていた。


「おぉ! これ竹じゃねか?」

「しかし、ジャングルに丘に竹林って……へんな土地柄だな……まぁ色々あっていいけど」


―――――――――――――――――――――――

《ケケの草木》
地下茎から芽が出て、それが伸びてきた草木。
その幹は柔軟で加工しやすい。
新芽のみ食用可

―――――――――――――――――――――――


「おぉ……やっぱり竹だな。これが加工できれば色々役立つぞ!」

竹細工も一時期ハマってたし、水筒なんかも作れそうだ。いちいち飲みに行くの面倒だし。

「しかし切り倒すにも刃物がないしなぁ……石斧でも作るか?」

作れるかはわからんが採取する時もそろそろ刃物は欲しいと思ってたところだ。

休憩がてら川に戻りバルナを食べながら良さげな石を探してみた。

「おっ? これなんかいいんじゃね?」

―――――――――――――――――――――――

《マルナ石》
重く衝撃に強い石。武器などに加工できる。

―――――――――――――――――――――――


マルナ石を持ち上げ勢いよく大きめの岩にぶつけてみた。欠けた石の中で薄くいい形の物を選びザラザラな石に水をかけて磨いてみる。

「そういや包丁研ぎも一時期ハマったな」

なんでかわからんが良く研げた包丁で雑誌を切りまくった記憶がある。

「ふっ俺も若かったな……」

過去の若気の至りを思い返しながら石を磨いていく。
 ある程度磨け、そこら辺にある草を切ってみると思いの外よく切れた。

「おぉ! まぁまぁいいんじゃないか?」

気分を良くして先が二股に分かれた太めの枝に石をツタでくくりつけていく。石斧の完成だ。

「磨製石器ってか? 原始人にでもなった気分だ」

石斧を持ち上げ、空を見上げると日が軽く天辺を過ぎていた。

「やべ! 思いの外時間がかかった! 早く探索に戻ろう」

そう言って探索の続きを開始する。


ザクザクと邪魔な葉を切りながらもうほぼ一周を探索しかけた場所にバルナの群生地を見つけた。

「おぉ! バルナだ! 食い放題じゃねぇか!」

結界内には軽く数十本の木がある。喜び勇んで良く熟れてるものをもいでいく。とり過ぎないように何本か慎重にもいでいたら頭の中で音が聞こえた。


ピンポーン

《スキル:『採取』を獲得しました。》


「お! やった! 初めてまともにスキルを獲得したな」

―――――――――――――――――――――――

『採取』
採取する時に補正がかかる。採取速度上昇、質上昇

―――――――――――――――――――――――

何とも嬉しいスキルだ! まさか質まで上がるとは……これで何か作るときの材料にも困らなさそうだな。

水も食べる物もある、とりあえずは眠るところもある。これから先の見通しが少し明るくなってニヤニヤしていると、視界の端に何かが入り込んだ。



種族:バルナゴリラ

生命力 : 2480/2480
体力:3269/3670
魔素量:450/450
筋力:1209
技量 : 890
知力:670
魔力:240
速度:658
幸運:126


スキル:『筋力増強』『激怒』『咆哮』



「……………ひぃっ」


この世界で初めて他の生物を目撃した京であった。
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