婚約破棄？貴方程度がわたくしと結婚出来ると本気で思ったの？

2

   婚約破棄を叫んだモーリスは、顔色が悪い。それでも腕の中のマーガレットを抱きしめ言い募る。
「だが、マーガレットが俺の婚約者にイジメられていると言っているんだ！」
クスクス。
叔父上と笑い合う。
「マーガレットとやら、嘘つきだなぁ？」
彼女は、叔父上を見上げ、美貌に頬を染めている。馬鹿だな。今キッツーイ断罪があったけれど聞いていない。
　彼女は、可愛らしい。だが、15、6歳の若さそれだけ、すぐに色あせる。
　百戦錬磨の叔父上には、つまらない小娘だ。
　全く食指がのびない子供。
クスクス。
「わたくしが王都にいると？しかも庶民の学校に通う？」
ああ。可笑しい。

　周りを見渡す。
　貴族達は、もはや失笑。
「エレノール様。宜しければ私と踊りましょう？」
王都の隣の領地を治める伯爵自身が誘う。
　さすが。わたくしの価値を良く分かっている。
　アリエノールと言うのは南の言葉なの。方言かしら。北では、エレノール。

　「待て、アリエノール!」
わたくしの腕を掴もうモーリスが手を伸ばす。

　パァン

「汚らわしい！」
伯爵が叩き落とす。
　叩かれたモーリスが訳が分からないという顔をする。
　マーガレットも真っ青である。
　分からないながら、大人の本気の怒りにたじろぐ。一言も発することができない。

　馬鹿だなあ。

　ヒントをあげようか？
「モーリス君、君の父親か有力者がポワティエ家（アキテーヌ公の家名）に求婚の申入れをしたことが有ったかしら？この申入れは古式ゆかしく厳かになされるのよ。申入れが認められたなら、両家の代理人達が集まり結納金、花嫁代、持参金と話合いが行われるわ。結婚において、この話合いが最も重要でしょうね」

　クスクス。
　モーリスの父親が騒ぎを聞き付け走っている。舞踏会で走るって、面白い珍事ね。でもそのくらい大変な不祥事だもの。

　「ご機嫌よう!」

　逃げるなんて許さない。

　モーリスの勘違いは、お前のせいでしょう！