男爵令嬢と結婚するから婚約破棄?二代続けてふざけるな!この低脳がっ!!

三条桜子

文字の大きさ
上 下
18 / 20

番外 私の薔薇

しおりを挟む
 父である王が亡くなって半年。
 泣き暮らす日がなくなり、ぼんやりとする日が少しずつ減り、日常に戻りつつある。

 早朝の走り込みと素振り。朝食後、午前は勉強。午後は、遠乗りと視察。毎日のルーティン。

 夕方ふっと父を思う。黄昏れ症候群かよ…特に堪え難いのが夕食後。一人の夜に泣きそうになる。お話をせがむ子供ではない我慢しろ、精一杯自分を叱る。

 このままではいかんと父自慢の薔薇の離宮へ引っ越す事に決めた。

 父の部屋に婢に産ませた兄が住む…本来生まれの低さ故に即位出来ぬ人。何処までも隣国は、嫌がらせをしてくる…シツコイ。蛇女!

 無意識に父の部屋へ行こうとする自分に愕然とした事もあった。


 
 薔薇の離宮へ引越し、数ヶ月。
少し落ち着いた。

 気晴らしに剣の先生を尋ねる。今は、騎士団で管理職をしている彼。予め、約束していたからか沢山の騎士が稽古をしていた。フフフ。壮観。先生なりに慰めてくれている。
 上手い騎士に目が行く。いいなー。腕の力があればあんな無茶な剣の角度から攻撃出来るのか~。
 そのうち全体にも目が行く。
 先生に挨拶した後は、私も稽古に参加させて貰える事になった。
 ニヤリ。

 ガッチガチに騎士団の魔法師が身体強化をかけてくれる。怪我させないよう彼も必死だ。怪我くらい気にしないよ?治癒かけてくれるんでしょー?

 先生の弟子と肩慣らしをする。彼は互いが10歳から週2回、私の稽古の相手役を勤める。気心も実力も知れた仲だ。体が温まればお互い容赦ない。
 遠慮の欠片もなく剣を振るい合う。彼の喉仏を真っすぐに狙い突く。剣を弾かれ、私の剣が飛んだ。武器がなくなり先手必勝と素早く彼の腹に拳を繰り出す。当たった。
 然し接近戦の欠点、彼の拳を腹に受ける。お互いに腹に一撃かぁ。やれやれと剣を拾う。
 お互いにニヤリと笑い合い再び剣を構える。身体強化で痛くない。
 それまで遠巻きにされていたが程々の実力を認められ騎士が集まる。次の手合わせも買って出てくれる。よーし!遊ぶぞー。

 その中に一際目を引く男がいた。

 大輪の薔薇。彼を初めて見た感想だった。

 一目で気に入った。でも一目惚れとは少し違う。正に気に入ったのだ…
 騎士道の理想像の様な姿。騎士は、薔薇に例えられる。なんて理想的と思った。名を尋ねるとアーサーと名乗った。とても綺麗な構え。いい人かも…
 私の薔薇を見つけた。


 お父様の薔薇の咲き誇る離宮。ご自慢の薔薇は、庭師の努力できっと来年も綺麗に咲き誇る。
 私も自分の薔薇を見つけた。父の死後ちょうど一年経った頃。なんて綺麗…


 
 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 王女様、愛だの恋だのでは有りません。
 ただただ気に入ったので薔薇を手折った次第です。王族の放漫さ。


 
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

わたくしが悪役令嬢だった理由

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、マリアンナ=ラ・トゥール公爵令嬢。悪役令嬢に転生しました。 どうやら前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したようだけど、知識を使っても死亡フラグは折れたり、折れなかったり……。 だから令嬢として真面目に真摯に生きていきますわ。 シリアスです。コメディーではありません。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花
恋愛
 公爵令嬢のカミラ・リンディ・ベネット。  彼女は階段から降ってきた誰かとぶつかってしまう。  その『誰か』とはマーセルという少女だ。  マーセルはカミラの婚約者である第一王子のマティスと、とても仲の良い男爵家の令嬢。  いつに間にか二人は入れ替わっていた!  空いている教室で互いのことを確認し合うことに。 「貴女、マーセルね?」 「はい。……では、あなたはカミラさま? これはどういうことですか? 私が憎いから……マティスさまを奪ったから、こんな嫌がらせを⁉︎」  婚約者の恋人と入れ替わった公爵令嬢、カミラの決断とは……?  そしてなぜ二人が入れ替わったのか?  公爵家の令嬢として生きていたカミラと、男爵家の令嬢として生きていたマーセルの物語。 ※いじめ描写有り

処理中です...