男爵令嬢と結婚するから婚約破棄?二代続けてふざけるな!この低脳がっ!!

三条桜子

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番外 私の薔薇

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 父である王が亡くなって半年。
 泣き暮らす日がなくなり、ぼんやりとする日が少しずつ減り、日常に戻りつつある。

 早朝の走り込みと素振り。朝食後、午前は勉強。午後は、遠乗りと視察。毎日のルーティン。

 夕方ふっと父を思う。黄昏れ症候群かよ…特に堪え難いのが夕食後。一人の夜に泣きそうになる。お話をせがむ子供ではない我慢しろ、精一杯自分を叱る。

 このままではいかんと父自慢の薔薇の離宮へ引っ越す事に決めた。

 父の部屋に婢に産ませた兄が住む…本来生まれの低さ故に即位出来ぬ人。何処までも隣国は、嫌がらせをしてくる…シツコイ。蛇女!

 無意識に父の部屋へ行こうとする自分に愕然とした事もあった。


 
 薔薇の離宮へ引越し、数ヶ月。
少し落ち着いた。

 気晴らしに剣の先生を尋ねる。今は、騎士団で管理職をしている彼。予め、約束していたからか沢山の騎士が稽古をしていた。フフフ。壮観。先生なりに慰めてくれている。
 上手い騎士に目が行く。いいなー。腕の力があればあんな無茶な剣の角度から攻撃出来るのか~。
 そのうち全体にも目が行く。
 先生に挨拶した後は、私も稽古に参加させて貰える事になった。
 ニヤリ。

 ガッチガチに騎士団の魔法師が身体強化をかけてくれる。怪我させないよう彼も必死だ。怪我くらい気にしないよ?治癒かけてくれるんでしょー?

 先生の弟子と肩慣らしをする。彼は互いが10歳から週2回、私の稽古の相手役を勤める。気心も実力も知れた仲だ。体が温まればお互い容赦ない。
 遠慮の欠片もなく剣を振るい合う。彼の喉仏を真っすぐに狙い突く。剣を弾かれ、私の剣が飛んだ。武器がなくなり先手必勝と素早く彼の腹に拳を繰り出す。当たった。
 然し接近戦の欠点、彼の拳を腹に受ける。お互いに腹に一撃かぁ。やれやれと剣を拾う。
 お互いにニヤリと笑い合い再び剣を構える。身体強化で痛くない。
 それまで遠巻きにされていたが程々の実力を認められ騎士が集まる。次の手合わせも買って出てくれる。よーし!遊ぶぞー。

 その中に一際目を引く男がいた。

 大輪の薔薇。彼を初めて見た感想だった。

 一目で気に入った。でも一目惚れとは少し違う。正に気に入ったのだ…
 騎士道の理想像の様な姿。騎士は、薔薇に例えられる。なんて理想的と思った。名を尋ねるとアーサーと名乗った。とても綺麗な構え。いい人かも…
 私の薔薇を見つけた。


 お父様の薔薇の咲き誇る離宮。ご自慢の薔薇は、庭師の努力できっと来年も綺麗に咲き誇る。
 私も自分の薔薇を見つけた。父の死後ちょうど一年経った頃。なんて綺麗…


 
 



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 王女様、愛だの恋だのでは有りません。
 ただただ気に入ったので薔薇を手折った次第です。王族の放漫さ。


 
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