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番外 雪の日

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 雪が積もる寒い日。
 王家の子供用の勉強部屋でいつものように授業を受ける。
 歴史の勉強中だったが集中が途切れ、不意に窓を見る。一つ年下の甥が雪だるまを作っているのが見えた。12歳にもなって雪だるま?子供か?
 この部屋から見えるという事は、王族用の庭か。

 くだらない。

 あのゴミ親子のせいで我が国の関税自主権は、3年前の不作の年に麦との交換に消えた。
 あの無邪気でのんきな馬鹿は分かっているのだろうか。

 やっと歴史の授業も、外国語の授業も終わり文具を片付ける。少し疲れたな。

 また窓を見る。
嘘だろう。甥っ子の馬鹿は、まだ雪遊び中だった。風邪引くぞ。

「あの子ずっと遊んでる」
ぽつりとこぼす。
先生が、鼻で笑う。
「勉強もせず何やってるんでしょう?王女殿下は、ご立派ですよ。私の教え子の中でも特に優秀です」
褒めてくれた先生に微笑む。

 あの無邪気な馬鹿は、自分が望まれない子供だと知っているのだろうか。いや、馬鹿の父親である兄もまた望まれない子供だったと知っているのだろうか?

 父が15の年、興が乗って女を犯して出来た子供が兄だったと知っているのだろうか…そんな分際で公爵令嬢と婚約破棄なんてどの口が言えたのだろうか…

 二代続けて婢の血が流れる王子。王子なんて名ばかり。王宮の侍従すら自分の方が上だと思っている。そして、汚らわしいと放置されている。
 すこしは世話されているのかな。どうして勉強しないんだ。そもそも文具も教科書もなく、教師もいないのでは?女官は?侍従は?あの母親は役に立たないんだ。誰か!

 先生と別れ自室へ戻る。女官が暖めておいてくれたのだろう、既に暖かい室内に詰めていた息を吐き出す。ここは安全で暖かい…王宮の悪意も届かない。


 

 寒い一日だった。夜も冷る。
 父の部屋で夕食後の時間を過ごす。毎日の日課。
 私は、父と暖炉の前で寛ぐ。何の毛皮か白いラグに二人で寝転ぶ。
 
 母は亡くなった。私が10歳の年だった。
 痩せた女性だった。美しいけれど、はかなげな女性。王女の生まれなのに…その疑問が周辺国の歴史や後宮の情勢を調べるきっかけだった。

 お父様は、私に優しい。甘くはないけれど。毎晩一緒に過ごし、政治や経済の話をおとぎ話のかわりに聞く。大好きなお父様。
 お父様と一緒なら寒くない。怖いことも何もない。安心。

 あの無邪気な馬鹿は、今頃一人だろう。母親は、育児放棄。父親は、新しい女。この三人の監視を辞めることは出来ない。お風呂に入ったのかな。お湯を大人に用意してもらえたかな。

 お父様は、兄も甥も視界に入れない。言葉をかけることもない。頭を撫でた事すらないはずだ。名付けもしていないと言うのは本当ですか…

 お父様…ほんの少しの関心を彼らに与えてくださったら…
事態は大きく異なったのではありませんか。

 王の顔色をうかがい彼らは放置されて育ったのですよ…

 大好きなお父様。わたくしだけが大好きなお父様。




 あいつ明日も雪遊びかな。温かいホットチョコでも分けてやろうかな?

 ………明日も雪かな
 
 
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