男爵令嬢と結婚するから婚約破棄?二代続けてふざけるな!この低脳がっ!!

三条桜子

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12 自決準備

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 自決に緩む頬を慌てて引締める。

 「続いて、王権の委譲について。私の自決が明日として、今日中に王権を隣国に渡したい。植民地について、月、あの国は何と?」

 「はい。植民地についての言及はございません。王権の委譲も要求されてはおりません。」

 おかしい…そんな筈はない。

 「然し、王を処刑するのだ。次の王の指名なりして隣国の傀儡の王を立てるか、手っ取り早く王権の委譲を求める筈だが…」

 「何か考えがあるのでしょう」
一番年配の白髪の大臣が口を開く。

 「殿下は自決の準備もおありでしょう?この辺で退室なさっては?」
気障な美中年が、女慣れした手つきで私の手を取る。

 なんだお前ら?明日死ぬから追い払うのか。

 ちぇ。

 楽になろうと思った罰か。この先の事は、死ぬ私に関係ないのだ…

 美中年にエスコートされ部屋を出る。そうだ挨拶しよう。最後だ。

 ドアの前で振り返り全員をゆっくり眺める。そして王族として、この場で一番高い身分の者として別れを告げる。

「皆、今まで有難う。この国を頼む。さらば」

 鷹揚に微笑み退室する。




 自分の部屋に戻った。

 先代の王より預かった王権を示す、王冠と錫杖を机に並べる。

 クローゼットをごそごそしていると、女官長がやってきて、侍女にさせろとしかられる。明日死ぬんだホットイテクレ。無いな。

 「殿下?何をお探しですか」

 「マントだ」
 
 机の王冠達を指差しならが素っ気なく答える。

 なぜか薔薇色に頬を染めた女官長が「わたくしめにお任せを」とうきうきとマントを取りに行く。

 あんにゃろーゼッタイ分かってない。エカテリーナ様にあげるのだ。随分遅くなったが慰謝料だ。

 子供の頃、幼げで無邪気だった私は、子供用のマントをはためかせ『この国を幸せにするの』『王位就任演説するー』と大口を叩いていた。

 マントごっこに女官長を付き合わせていたっけ…まだ世界が光り輝いていた頃。頑張れば何でも出来ると信じていた頃。汚い物を目に映すずっと前…

 エカテリーナ様に手紙をしたためる。王冠・錫杖。宜しければマントも差し上げる旨を書き綴る。やたら短い文章になってしまった。どうしたものか…

 開き直って大臣宛・重臣宛とどんどん書く。短い文章だサクサク進む。

 女官長や女性陣には、形見分けに髪飾りやブローチを。月には、文具と懐中時計がいいだろうか。

 妙なテンションになり楽しくなり始める。良し。書けるだけ沢山書こう。

 
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