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10.蛇足 02(レイモンド視点)
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「帝国の太陽ジークフリート・アードラー皇帝陛下の御成りにございます」
その場にいた誰もが頭を下げる。
「面を上げよ」
涼しげな声が皇帝陛下御本人から発せられたものだと気づき、更に緊張が増した。
「帝国の太陽ジークフリート・アードラー皇帝陛下におかれましては、御機嫌麗しく存じ上げます」
「あぁ、堅苦しい挨拶は抜きにしよう。シーニュ国王。今日は婚約式に先んじて、我が花嫁を連れて来てくれたのだろう」
婚約式は半年後に、婚姻式は一年後に予定されている。大体その一年の間に王女の妃としての教育と結婚の支度を終える予定なのだ。御二人の為に国中がその日の為に着々と準備を進めている。俺も巡回騎士団の文官として警備計画や増員に伴う予算配分など、普段とは違う仕事に頭を悩ませている真っ只中であった。
「はい。オデット、ヴェールを上げなさい」
そうしてオデット王女殿下は父王に言われた通り、ヴェールにしていた薄布を取り払ったのだった。その顔を見た瞬間、ここがアードラー帝国の重鎮が集まっていることを忘れて叫んでいた。
「オディール・ダック侯爵令嬢!?」
零れんばかりの大きな瞳、すっと通った鼻筋にぽってりとした薄紅色の唇が絶妙な配置にある美しい顔は、一度見たら忘れることは無い。俺の初恋の女性であるシルヴィア嬢の妹であり、彼女を苦しめる悪女であった。
「な、なんだ貴様は!!我が娘、オデットを愚弄する気か!?」
「い、いいえ!しかし、この方はどう見てもシュライク王国の貴族だと思うのです」
アルフォンス国王は俺を睨みつけて叱責してきたのだが、オデット王女と呼ばれた女性はどう見てもオディールにしか見えず、俺は困惑した。シュライク王国にいるはずのオディールが、どうしてシーニュ王国の王女になんてなっているのだ?シルヴィア嬢を追い込むような真似をするオディールのことは好きではない。けれども絶世の美女である彼女の顔を間違えることなど有り得ない。
「アルフォンス国王。この者はシュライク王国大公家の次男のレイモンド・スワロウという言うのだ」
宰相閣下どころか皇帝陛下に俺の名前を知られているなんて、いよいよ芝居めいて来たような気がする。
「レイモンドよ。そなたは、どうして我が花嫁をオディールという女性だと言うのだ?」
そうか。その問いに答えさせる為に、皇帝陛下は俺をこの場に呼んだのだ。この場にいる全ての人間が俺を見ている。何を言うのが正解なのか。間違えてしまえば、その場で首が飛んでしまうのではないかと言う不安を抱えながら、俺は口を開いた。
「シュライク王国の社交界でダック姉妹のことを知らぬ者はおりません」
「ほう。何故だ?」
「比類無き美貌を持つ妹に地味で暗い姉と」
侯爵令嬢に対して酷い誹謗中傷だと思う。けれども『地味で暗い姉』と評されるシルヴィア嬢を守るべき両親さえ、一緒になって馬鹿にする始末。俺がもっと早く生まれていれば、キャメロンとの婚約が決まる前に俺が求婚して、領地に連れて行ってしまうことも出来たかもしれないのに。
「それほど美しいのであれば、確かに記憶に残るだろうな」
「瓜二つどころか、本人以外の何者にも見えません」
てっきりキャメロンを篭絡して、シュライク王国の王妃に収まると思っていた女が、どうしてアードラーの皇帝の花嫁として現れるのか、意味が分からない。既にシーニュの国王夫妻は俺の発言に血の気が引いて真っ白になっているというのに、オディールは顔色さえ変えず、にこにこと微笑んでいるのだから、一種異様な光景でもあった。
「皇帝陛下」
鈴を転がすように愛らしい声。シュライクでは、この時点で彼女に魅了された者達の感嘆の声が聞こえてきたかもしれないが、アードラーの御歴々には通用しないようだった。
「大陸を統べるアードラー帝国の皇帝の隣に並ぶ者として、私は不足しているでしょうか?」
何と不遜な発言だろうか。
皇帝陛下は皇帝の権威だけを頼りに政をしているわけではない。日々、新しい知識を学び、臣下と共に降りかかる問題を解決する為に尽力していらっしゃる。そうして驕ることなく民衆の模範となるべく過度な贅沢はせず、帝国の繁栄を願っていると言われている。皇太子時代は戦争が起これば、自らも戦場に立つことさえ厭わなかったとか。それほど高潔な陛下に対し、何も成していない小娘が自らを不足かと問うことさえ思い上がりも甚だしい。
横目で他の大臣達を見れば、オディールが彼らの怒りを買ってしまったことは容易に分かった。この状況で自分が花嫁――延いては、皇后になれると本気で思っているのだろうか。
「ところで、オデット王女は生まれて間もなく誘拐されたそうだな」
陛下はオディールの問いかけに答えることなく、アルフォンス国王に問い掛けた。これまで美しいオディールの言葉を無下にする者などいなかったせいか、陛下のすげない態度を彼女が不愉快に感じているのが分かった。
「は、はい。美しいオデットを一目で気に入った産婆が、自らの手で育てたいと誘拐を試みたのです。懸命な捜索により、オデットは私達の下に戻って来てくれたのです」
王族の誘拐事件なんて内々の機密事項であろうに、陛下がどうして御存じなのだろうか。しかし、その疑問を問う者は無く、代わりに大蔵大臣と内務大臣が嘲るような声で言ったのだ。
「生まれたばかりの赤ん坊など、どれも皺くちゃで美しいも何も無いのではないか?まぁ、独特の可愛さはあるがな」
「もしかしたらシーニュの国民は生まれた時から宝石のように美しいのかもしれませんよ」
「なるほど。美に掛ける情熱だけは素晴らしいシーニュなら、有り得る話だな」
彼らに釣られるようにして、他の者達もクスクスと笑い合う。アルフォンス国王は怒りに顔を赤らめているが、大蔵大臣が言うように、生まれたばかりの赤子が美しいからと言って誘拐をしたという話自体が、そもそもおかしいのだ。王族が誘拐されるということは国で最も厳しい警備の目を潜り抜けるということ。美しいからと言って連れ出すと言う理由も馬鹿げているとは思わないのだろうか。
「その件について、新しい証言があるのだ」
「新しい証言、ですか?」
「産婆を切り捨てたという騎士が、どさくさに紛れて誘拐事件の実行犯を殺すように首謀者から言われていたと証言しているのだ」
すると見知らぬ男が引き立てられて来た。男は国王夫妻の隣に跪かされ、髪を掴まれて無理やり顔を上げさせられる。小ざっぱりとした格好をしていたが目つきは卑しく、囚人かと思うような荒んだ顔をしていた。国王夫妻は男に見覚えがあったのか、ハッとしたような顔をしてお互いに目を見合わせている。
「この男の雇い主は、シーニュ王国の側室だ。自分が産んだ第一王女だけが優遇されるように第二王女を誘拐し、入れ替えたのだそうだ」
「ヴィヴィアンヌが……?」
「馬鹿げた計画であるが、ヴィヴィアンヌとやらの目論見通り、そなたらはオデットを冷遇し、第一王女だけを可愛がったようだな」
皇帝の花嫁になる娘を冷遇したとなれば、いくら皇后の母国といえど不利な立場に立たせるだろう。それが分かったのか、国王夫妻はブルブルと震えている。皇帝陛下が徐々に転がる男に近づき、見下ろして言った。恐ろしく冷たい顔だった。
「私とオデット王女との婚約は国家機密であったはず。どこで聞きつけたのかは知らないが、この男はご丁寧にオデット王女がシーニュの王族でないことを進言して来たのだよ。尊き皇族に迎えるには相応しい娘ではないと、なッ!!」
そうして陛下は男の腹を蹴り上げた。体が宙に浮き上がるほどの威力で、無様に床に転がった男はゲボゲボと苦しげに呻いていた。男を抑えつけていた騎士達は咄嗟に離れて事なきを得たようだったが、その表情に動揺は無く、こういうことに慣れているのかとさえ考えてしまう。
「大方、自分の娘よりも上の立場になることを良しとしなかった側室の入れ知恵だろうな」
どこかで聞いた話だ。王子であるキャメロンの婚約者となったことで、シルヴィアへの待遇も悪くなったと噂で聞いている。普通は家族が王族に認められたことを喜ぶべきだというのに。
「おのれ、ヴィヴィアンヌめッ――!!」
「だから言ったのです。卑しい身分の娘を側室に召し上げるなんて――」
何も知らなかったからと言って、実子を無下に扱い、側室の美しい娘を可愛がっていた己の面の皮の厚さを顧みることも無い国王夫妻の何と滑稽なことか。自分達を見つめる目が白けたものになっていることに気づきもしない。
「早々に国許に戻り、この件を片付けると良い」
先程まで血の通わぬ鉄面皮だったというのに、打って変わって晴れやかに笑っている皇帝陛下。
「はい!御助言有難うございます!!」
「この御恩は一生忘れません」
国王夫妻は挨拶もそこそこに退出して行った。普通はこんな退出の仕方が許されるとは思わないが、陛下は何も言わない。オディールだけがポツンと残されていたが、やはり彼女の自信に満ちた表情が崩れることは無い。もしかしたら自分の美貌なら陛下を篭絡出来ると考えたのかもしれない、と思うと同じの国の人間として本当に嫌になる。
「オデット王女。貴女には部屋を用意している。そこで休むように」
「有難く存じ上げます」
オディールは礼をして見せたが、粗が目立つ野暮ったいもので見るに堪えないものだった。先程は一斉に礼をした為に目にすることは出来なかったが、改めて偽者の王女であったことが証明されたようなものだ。あれほど持て囃されていたというのに、シルヴィアの礼の方がずっとずっと気品に溢れて美しかったと改めて思うのだった。
その場にいた誰もが頭を下げる。
「面を上げよ」
涼しげな声が皇帝陛下御本人から発せられたものだと気づき、更に緊張が増した。
「帝国の太陽ジークフリート・アードラー皇帝陛下におかれましては、御機嫌麗しく存じ上げます」
「あぁ、堅苦しい挨拶は抜きにしよう。シーニュ国王。今日は婚約式に先んじて、我が花嫁を連れて来てくれたのだろう」
婚約式は半年後に、婚姻式は一年後に予定されている。大体その一年の間に王女の妃としての教育と結婚の支度を終える予定なのだ。御二人の為に国中がその日の為に着々と準備を進めている。俺も巡回騎士団の文官として警備計画や増員に伴う予算配分など、普段とは違う仕事に頭を悩ませている真っ只中であった。
「はい。オデット、ヴェールを上げなさい」
そうしてオデット王女殿下は父王に言われた通り、ヴェールにしていた薄布を取り払ったのだった。その顔を見た瞬間、ここがアードラー帝国の重鎮が集まっていることを忘れて叫んでいた。
「オディール・ダック侯爵令嬢!?」
零れんばかりの大きな瞳、すっと通った鼻筋にぽってりとした薄紅色の唇が絶妙な配置にある美しい顔は、一度見たら忘れることは無い。俺の初恋の女性であるシルヴィア嬢の妹であり、彼女を苦しめる悪女であった。
「な、なんだ貴様は!!我が娘、オデットを愚弄する気か!?」
「い、いいえ!しかし、この方はどう見てもシュライク王国の貴族だと思うのです」
アルフォンス国王は俺を睨みつけて叱責してきたのだが、オデット王女と呼ばれた女性はどう見てもオディールにしか見えず、俺は困惑した。シュライク王国にいるはずのオディールが、どうしてシーニュ王国の王女になんてなっているのだ?シルヴィア嬢を追い込むような真似をするオディールのことは好きではない。けれども絶世の美女である彼女の顔を間違えることなど有り得ない。
「アルフォンス国王。この者はシュライク王国大公家の次男のレイモンド・スワロウという言うのだ」
宰相閣下どころか皇帝陛下に俺の名前を知られているなんて、いよいよ芝居めいて来たような気がする。
「レイモンドよ。そなたは、どうして我が花嫁をオディールという女性だと言うのだ?」
そうか。その問いに答えさせる為に、皇帝陛下は俺をこの場に呼んだのだ。この場にいる全ての人間が俺を見ている。何を言うのが正解なのか。間違えてしまえば、その場で首が飛んでしまうのではないかと言う不安を抱えながら、俺は口を開いた。
「シュライク王国の社交界でダック姉妹のことを知らぬ者はおりません」
「ほう。何故だ?」
「比類無き美貌を持つ妹に地味で暗い姉と」
侯爵令嬢に対して酷い誹謗中傷だと思う。けれども『地味で暗い姉』と評されるシルヴィア嬢を守るべき両親さえ、一緒になって馬鹿にする始末。俺がもっと早く生まれていれば、キャメロンとの婚約が決まる前に俺が求婚して、領地に連れて行ってしまうことも出来たかもしれないのに。
「それほど美しいのであれば、確かに記憶に残るだろうな」
「瓜二つどころか、本人以外の何者にも見えません」
てっきりキャメロンを篭絡して、シュライク王国の王妃に収まると思っていた女が、どうしてアードラーの皇帝の花嫁として現れるのか、意味が分からない。既にシーニュの国王夫妻は俺の発言に血の気が引いて真っ白になっているというのに、オディールは顔色さえ変えず、にこにこと微笑んでいるのだから、一種異様な光景でもあった。
「皇帝陛下」
鈴を転がすように愛らしい声。シュライクでは、この時点で彼女に魅了された者達の感嘆の声が聞こえてきたかもしれないが、アードラーの御歴々には通用しないようだった。
「大陸を統べるアードラー帝国の皇帝の隣に並ぶ者として、私は不足しているでしょうか?」
何と不遜な発言だろうか。
皇帝陛下は皇帝の権威だけを頼りに政をしているわけではない。日々、新しい知識を学び、臣下と共に降りかかる問題を解決する為に尽力していらっしゃる。そうして驕ることなく民衆の模範となるべく過度な贅沢はせず、帝国の繁栄を願っていると言われている。皇太子時代は戦争が起これば、自らも戦場に立つことさえ厭わなかったとか。それほど高潔な陛下に対し、何も成していない小娘が自らを不足かと問うことさえ思い上がりも甚だしい。
横目で他の大臣達を見れば、オディールが彼らの怒りを買ってしまったことは容易に分かった。この状況で自分が花嫁――延いては、皇后になれると本気で思っているのだろうか。
「ところで、オデット王女は生まれて間もなく誘拐されたそうだな」
陛下はオディールの問いかけに答えることなく、アルフォンス国王に問い掛けた。これまで美しいオディールの言葉を無下にする者などいなかったせいか、陛下のすげない態度を彼女が不愉快に感じているのが分かった。
「は、はい。美しいオデットを一目で気に入った産婆が、自らの手で育てたいと誘拐を試みたのです。懸命な捜索により、オデットは私達の下に戻って来てくれたのです」
王族の誘拐事件なんて内々の機密事項であろうに、陛下がどうして御存じなのだろうか。しかし、その疑問を問う者は無く、代わりに大蔵大臣と内務大臣が嘲るような声で言ったのだ。
「生まれたばかりの赤ん坊など、どれも皺くちゃで美しいも何も無いのではないか?まぁ、独特の可愛さはあるがな」
「もしかしたらシーニュの国民は生まれた時から宝石のように美しいのかもしれませんよ」
「なるほど。美に掛ける情熱だけは素晴らしいシーニュなら、有り得る話だな」
彼らに釣られるようにして、他の者達もクスクスと笑い合う。アルフォンス国王は怒りに顔を赤らめているが、大蔵大臣が言うように、生まれたばかりの赤子が美しいからと言って誘拐をしたという話自体が、そもそもおかしいのだ。王族が誘拐されるということは国で最も厳しい警備の目を潜り抜けるということ。美しいからと言って連れ出すと言う理由も馬鹿げているとは思わないのだろうか。
「その件について、新しい証言があるのだ」
「新しい証言、ですか?」
「産婆を切り捨てたという騎士が、どさくさに紛れて誘拐事件の実行犯を殺すように首謀者から言われていたと証言しているのだ」
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「この男の雇い主は、シーニュ王国の側室だ。自分が産んだ第一王女だけが優遇されるように第二王女を誘拐し、入れ替えたのだそうだ」
「ヴィヴィアンヌが……?」
「馬鹿げた計画であるが、ヴィヴィアンヌとやらの目論見通り、そなたらはオデットを冷遇し、第一王女だけを可愛がったようだな」
皇帝の花嫁になる娘を冷遇したとなれば、いくら皇后の母国といえど不利な立場に立たせるだろう。それが分かったのか、国王夫妻はブルブルと震えている。皇帝陛下が徐々に転がる男に近づき、見下ろして言った。恐ろしく冷たい顔だった。
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そうして陛下は男の腹を蹴り上げた。体が宙に浮き上がるほどの威力で、無様に床に転がった男はゲボゲボと苦しげに呻いていた。男を抑えつけていた騎士達は咄嗟に離れて事なきを得たようだったが、その表情に動揺は無く、こういうことに慣れているのかとさえ考えてしまう。
「大方、自分の娘よりも上の立場になることを良しとしなかった側室の入れ知恵だろうな」
どこかで聞いた話だ。王子であるキャメロンの婚約者となったことで、シルヴィアへの待遇も悪くなったと噂で聞いている。普通は家族が王族に認められたことを喜ぶべきだというのに。
「おのれ、ヴィヴィアンヌめッ――!!」
「だから言ったのです。卑しい身分の娘を側室に召し上げるなんて――」
何も知らなかったからと言って、実子を無下に扱い、側室の美しい娘を可愛がっていた己の面の皮の厚さを顧みることも無い国王夫妻の何と滑稽なことか。自分達を見つめる目が白けたものになっていることに気づきもしない。
「早々に国許に戻り、この件を片付けると良い」
先程まで血の通わぬ鉄面皮だったというのに、打って変わって晴れやかに笑っている皇帝陛下。
「はい!御助言有難うございます!!」
「この御恩は一生忘れません」
国王夫妻は挨拶もそこそこに退出して行った。普通はこんな退出の仕方が許されるとは思わないが、陛下は何も言わない。オディールだけがポツンと残されていたが、やはり彼女の自信に満ちた表情が崩れることは無い。もしかしたら自分の美貌なら陛下を篭絡出来ると考えたのかもしれない、と思うと同じの国の人間として本当に嫌になる。
「オデット王女。貴女には部屋を用意している。そこで休むように」
「有難く存じ上げます」
オディールは礼をして見せたが、粗が目立つ野暮ったいもので見るに堪えないものだった。先程は一斉に礼をした為に目にすることは出来なかったが、改めて偽者の王女であったことが証明されたようなものだ。あれほど持て囃されていたというのに、シルヴィアの礼の方がずっとずっと気品に溢れて美しかったと改めて思うのだった。
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