野心家オメガの独立戦争

大福

文字の大きさ
上 下
3 / 27

3.近くて遠い ★

しおりを挟む

広々とした寝台の上、二人きりの世界が広がっていた

「キスしてもいいか?」
「大丈夫です。いらしてください」

ジュードの声に緊張感がある。
体は抱かしてくれても、心まで開いてくれないだろう。アレクサンダー諦念する。

ジュードがゆっくりと瞳を閉じると、アレクサンダーの唇が優しく重なり、懇願するように舌が慎重に差し入れられた。噛まれた首が疼き、同時に胎の中が熱を帯びて蠢く。

「あ……ん。」

自分の声だとは信じられない甘い声がジュードの口から漏れる。

久しぶりの行為に、恥ずかしさと欲望が交錯し、アレクサンダーに縋りつきたくなる気持ちを必死に堪えていた。

敵国の貴族のαに抱かれる日が来るとは思わなかった。

「触って痛くないか?」
優しい声がジュードを包む。公務員のジュードとは対照的に、国の防衛戦で戦っていたアレクサンダーの体力は雲泥の差だった。

「行為は二年ぶりですが……もっと、奥にください。」

必死に顔を背けながらねだるジュードの姿にの、ぎこちなさにアレクサンダーは納得がいった。紅潮する顔が可愛らしくてたまらない。アレクサンダーの理性が崩れそうになる。


胸の先端を口に含み、腰を深く差し入れると、ジュードの長い足が限界まで広げられる。それでもアレクサンダーは自制し、激しく動かないよう努めた。本能のまま、抱き潰したくなかったからだ。


「アッ…いや……やぁ」
「ダメだ、はなさい。側にいてくれ」
アレクサンダーが囁く。その言葉に、自分だけの番だともう離れたくない気持ちが深まった。ジュードの白い肌を丁寧に暴き、その全てを快感の波で包み込む。ジュードの中で強くなる局部が敏感なところに当たり、目の前に星がちらつく。


「…あっ…いっちゃう」
「見せて」

アレクサンダーは力強くジュードを騎乗位にさせ、飴色の髪が扇情的に蒸気した肌に張り付いた。

「見ないでください」
「無理……ジュードは綺麗だ」

アレクサンダーはジュードの深い所へと繋がろうとする。細い腰が跳ね上がり、白い顎がひるがえる。
アレクサンダーが腰を打ちつける度に、ジュードの体が震えた。

「俺だけの番」

アレクサンダーは、強い欲望に抗わず彼はジュードの奥深くに白濁を放った。

「満足できましたか?」
ジュードの声は穏やかだがひんやりと冷たい。

「まだ足りない。ごめん。手加減できない」
アレクサンダーは苦笑いを浮かべながらジュードの艶やかに笑う姿を見つめる。

「加減なんていりません」
ジュードの翠玉のような瞳に浮かぶのはアレクサンダーの姿だ。

その美しい瞳に自分の欲望が映り込む。
そして、ジュードの表情にαに対しての何かしらの強がりを感じた。

そう、笑顔にかくされた警戒心。

うなじを噛んで肉体を重ねてもお互いを理解するには、遠い。
このΩに正しい愛を与えたかった。
彼は今までどのくらいの他人に何をされて来たのだろう。
この番を誰にも触らせてたくない。
アレクサンダーは理性がαとして正しく蕩ける。もう言い訳などせず、何度も何度もジュードを貫いた。その度にジュードの体は強烈な快感に震え、絶頂の波に溺れていく。
その姿にアレクサンダーは心から愛おしさを覚えた。
「やっちまった……」
意識を失ったジュードを見てアレクサンダーは愕然とした。やり過ぎたと後悔したが、後の祭りだ。


気を失ったジュードの姿を見つめるアレクサンダーは、心の中で強く誓った。
ジュードの心を大切にしたい。
『αに支配されるものか』
ジュードの強い意志をアレクサンダーも感じ取っていた。


「命の半分をモナークに使ったから、俺の命は短い。でも、そんな俺を選んでくれたジュードに感謝してる。だから、俺ができることは何でもしたい。」

彼は震える手で、優しくジュードの薄紅の唇に自分の唇を重ねた。その接触は短くとも甘く、二人の心が一瞬にして繋がるような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】エルフの喫茶店は、今日も客が一人しか来ない

チョロケロ
BL
退屈だったエルフのフォルンは暇つぶしに喫茶店を開くことにした。暇つぶしなので全てが適当だったのだが、なぜか一人だけ常連客がついた。こんな店によく金払えるなと不思議に思っていたのだが、どうやらお目当てはコーヒーではなくフォルンだったらしい。おもしれーと思ったフォルンは、常連客を揶揄いまくるのであった。 【ヒョロメガネ×エルフ】 ムーンライトノベルズさんでも投稿しています。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・毎日更新。投稿時間を朝と夜にします。どうぞ最後までよろしくお願いします。 ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・第12回BL大賞にエントリーしました。攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

出来損ないΩの猫獣人、スパダリαの愛に溺れる

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
旧題:オメガの猫獣人 「後1年、か……」 レオンの口から漏れたのは大きなため息だった。手の中には家族から送られてきた一通の手紙。家族とはもう8年近く顔を合わせていない。決して仲が悪いとかではない。むしろレオンは両親や兄弟を大事にしており、部屋にはいくつもの家族写真を置いているほど。けれど村の風習によって強制的に村を出された村人は『とあること』を成し遂げるか期限を過ぎるまでは村の敷地に足を踏み入れてはならないのである。

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

王子様のご帰還です

小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。 平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。 そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。 何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!? 異世界転移 王子×王子・・・? こちらは個人サイトからの再録になります。 十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。

処理中です...