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第二章
第42話 原点回帰
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用意した車に乗った美夏たちを見送ってから二日が経ったが――未だにゾンビもどきを治療する取っ掛かりすら掴めないでいた。
エチレンジアミン四酢酸もヒドロキソコバラミンも効果はなく、その他諸々の薬も効果なし。物は試しにとAB型の血液を打ち込んでみたが、一時的に動かなくなっただけで数時間足らずで再び元のゾンビもどきへと戻った。
「ウイルス自体が未知……心臓は止まっているが、血流はある。体を動かしているのは脳からの電気信号……つまり、血を巡らせているのはウイルス自身? ゾンビもどきに起きた変化は伝染するから、殺さずに脅威を取り除くにはウイルスそのものではなく体を動かす脳をどうにかするべきか? だが、ウイルスをどうにかしなければ根本の解決には――」
「一人で喋ってて飽きないか?」
「声に出したほうが考えが纏まるんだよ。いつから居たんだ? 大鳳」
「十分前くらいだ。燐佳から色々と話を聞いたが、糸口も掴めていないらしいな」
「まぁ、そんなところだ。何かあるか? 今はどんな案でも有り難い」
覗き込んでいた顕微鏡から大鳳に目をやれば、考えるように俯いていた。
「案? っても俺、学ねぇんだよな……もどきを観察していてわかったのは、その行動くらいだ。当てもなく歩き回って、たまに立ち止まる。周囲を見回して、鳥の飛ぶ音なんかには反応するが目を向けるだけで追うことはしない。……なら、薬か何かで目を見えなくしたり耳を聞こえなくするのはどうだ?」
「視覚と聴覚を奪う、か。可能ではあるが、目と耳を失った後に他の感覚器官が進化しないとは限らない。……いや、それなら目と耳以外の感覚も同時に失わせればいいのか? だが、それだとゾンビもどきを人間に戻せたとしても感覚を失ったままだ。あちらを立てればこちらが立たず、か」
「零士、これはなんだ?」
呼ばれて視線を向ければ、そこにはビニールのカバーで隔離したシャーレが置いてあった。
「それはAB型の血液にゾンビもどきの血液を混ぜたものだ。ウイルスが活性化したから経過観察に置いておいたんだ。そこの顕微鏡で覗いてみろ」
「覗いたところで俺に何かわかるとは思えないが――うっわ、こんな高倍率の初めて見た……ウイルスってのはどれだ?」
「いるだろ。手足の生えたゾウリムシみたいなのが」
「……いや、見当たらないな」
「見せてみろ」
場所を交替して顕微鏡を覗き込めば――確かにウイルスが見当たらない。どういうことだ? 二日前には間違いなくウイルス同士が争っていたはずだが、その影も形も無い。血液自体は酸化して黒くなっているが、他の薬を混ぜた血液サンプルにはウイルスが残っているから、やはり血液同士を混ぜたことが原因と考えるべきだろう。
「何かに気が付いたって顔だな」
「ああ、原点回帰だ。お前が来なかったら気付かなかった。ありがとう」
「まぁ、俺にはなんのことだかわかんねぇけど。仕事に戻る。そっちもあんま無理するなよ」
思い付いたことの準備をしながら後ろ手を上げれば扉の閉まる音がした。
感染しているAB型の血液を遠心分離機に掛ける。血清を作るときのやり方だが、上手くすればこれでウイルスが分離できる。
その間に、過剰投与で殺した二体を補うためゾンビもどきを捕獲しに行くとしよう。
白衣を脱いで装備を整え、無線を手に取った。
「カナリア。今どこだ?」
「――東門の警備してるよ~」
「大鳳。まだ下にいるよな? 東門の外にゾンビもどきはいるか?」
「――一時間前に確認した時は五体だな。近場に三体、離れたところに二体だ」
「わかった」
久しい肉体労働だ。鈍ってはいないだろうが、寝不足と頭脳労働のせいで体は怠い。まぁ、ゾンビもどきを前にすれば覚醒するだろうが。
「零く~ん!」
抱き付いてきたカナリアの頭を避けて施設を囲む壁に視線を向ければ、この数日で内側にも壁を造り終えたようだ。
「一日振りの再会はこれくらいにして、ゾンビもどきの捕獲だ」
「りょ~かい」
門の開閉は内側からしか出来ないが、少人数で動く場合は作ってある足場を利用して塀を越える。
ゾンビもどきの行動は変わった。人間を見付けた場合、数的優位に立っていれば迷わずに襲い掛かってくるが、人間が多いときは様子を窺い、連携を取るような仕草を見せる。ゾンビもどきが多い時でも最初に飛び込んだ数体が殺されれば、同様に様子を窺い連携を取る。
厄介な知恵を身に付けたものだが、三対二程度なら問題ない。
音の出る銃は無し。捕獲を前提にするなら鋸刀やナイフより、ハンマーを使う。
「三体。どっちを――」
一体と二体に分かれているゾンビもどきの受け持ちを決めようとすれば、訊くよりも先にカナリアは駆け出していった。
仕方が無い。残された一体は俺がやるか。
動きを止める方法は簡単――両脚の膝を打ち砕くだけ!
カナリアのほうを見れば腱を斬られたゾンビもどき二体が倒れていた。
「どうやって運ぶの?」
「引き摺る」
動かないゾンビもどきの脚を持ち、大刀を持っているカナリアは一体を、俺は二体を引き摺りながら門の前まで戻った。
塀を越え門を開き、警戒しながらゾンビもどきを引き摺り込んで再び門を閉めた。危なげなく、機械的にサンプルの回収を終えた。慣れているといえ、さすがに命懸けだから数分の集中でも疲労が大きい。
運んだゾンビもどきを縛って研究室の裏口から放り込み、カナリアは警備へと戻っていった。
血液の分離が終わるまでまだ少し時間が掛かるし、仮眠を取るより思考を回そう。
「燐佳、コーヒーあるか?」
「ん? ああ、お疲れのようだね」
病棟に入って真っ直ぐ椅子に腰を下ろせば、休憩中らしい燐佳がビーカーに淹れたコーヒーを差し出してきた。
それを一口飲んで一息吐けば、端のベッドで点滴を受ける柳木さんが目に入った。
「……まだ目を覚まさないか?」
「そうだね。一命は取り留めたがあの出血量だ。まぁ、数値も安定してきたし数日以内には目を覚ますだろう」
柳木さんが戦力になるのは心強いが、俺たちが施設に辿り着いた日以降にゾンビもどきが襲ってきた回数はゼロだ。もちろん戦いが無いに越したことは無いが、無いなら無いで不穏だな。
「少し新しい考えが欲しいんだが、いいか?」
「そういうことなら私よりも適任がいるだろう」
言いながら無線のチャンネルを切り替えると、ブツリッと繋がった。
「――なんですか?」
「影山か。確かに若い奴のほうが発想が柔軟かもしれないな。影山、話を聞くだけ聞いといてくれ」
「――わかりました」
「まぁ、大した話ではないんだが……未だに違和感がある。ゾンビもどきの体に起きた変化――目が順応して太陽の下を歩けるようになった過程は理に適っている。聴覚についても同様に。だが、そこからの変化の速度は異常だった。知恵が付くってのはどういうことだ?」
問い掛ければ、無線は沈黙しているが燐佳は唸るように首を捻った。
「ん~……知恵を付けた理由が疑問なのかい? それとも速度が?」
「知恵はいずれ付けただろうから、速度のほうだな。順を追って、と言うとおかしな言い方だが、急速的な変化だったのは間違いない」
「つまり、何かしらの外的要因があるかも、と?」
「だが、ゾンビもどきを成長させる理由なんかないだろ」
「病院で会ったという斑鳩とかいう医者は? ゾンビもどきを利用しようとしていたんだろう?」
「斑鳩の場合は前提がイカレていたからなぁ……だとしても成長させるのがプラスだったとは思えない。むしろ知恵を付けないほうが扱い易かったはずだからな」
「まぁ、そもそも人類が滅亡しているのに軍事的利用を考えるのは無意味か。しかし、その理屈だとゾンビもどきが自らの意思で知恵を付けたってことにならないかい?」
「その可能性もゼロじゃないが、だとしてもやはり速度が異常だ。知る限り、変化は徐々に緩やかに起きるはずが、その予兆も無かった」
見落としていたと言われればそれまでだが、今となっては確認することも出来ない。
「――例えばですが、パソコンでいうところのメインサーバがあるんじゃないですか? 親機と言い換えてもいいですが、仮にそういうゾンビもどきがいれば一体の変化が他の個体にも伝わる、とか」
「なるほど。無い話じゃないが、その場合もいくつかの疑問があるよな? そいつがいつから存在し、何がしたいのか。そいつだけが知性を持ち合わせているのならその知性が伝染しない理由は? 考え出せば切りがないが……変異種のように伝染しない例もあるな」
しかし、そう思うと色々と納得がいく気もする。少なくともゾンビもどきが聴覚を手に入れた後、なんらかの変異が起きて親となるゾンビもどき――特異種とでも呼べる奴が誕生したと考えるべきか?
「私自身はあまりゾンビもどきと接していないが、疑問よりも合点がいった感じかな?」
「ああ。もちろん検証も必要だし、実際に存在を確認しない限りは言及しないが前提として考えておくのはありだ。コーヒーご馳走になった。影山も仕事があるのに付き合ってくれて助かった。じゃあ、俺も仕事に戻る」
「はいはい。お粗末様」
ビーカーのコーヒーを飲み干して研究室に戻れば、遠心分離機が停まっていた。
分離した血液の上澄み――つまり、血清を注射器で吸い取り、縛ってあるゾンビもどきの一体に注入し、ストップウォッチをスタートさせた。
本来であれば、この血清もまずは採取した血液サンプルで実験するべきだが、今更そこに時間を掛ける意味も無い。
さぁ、実験を続けよう。人体実験では無い。ただの実験を。
エチレンジアミン四酢酸もヒドロキソコバラミンも効果はなく、その他諸々の薬も効果なし。物は試しにとAB型の血液を打ち込んでみたが、一時的に動かなくなっただけで数時間足らずで再び元のゾンビもどきへと戻った。
「ウイルス自体が未知……心臓は止まっているが、血流はある。体を動かしているのは脳からの電気信号……つまり、血を巡らせているのはウイルス自身? ゾンビもどきに起きた変化は伝染するから、殺さずに脅威を取り除くにはウイルスそのものではなく体を動かす脳をどうにかするべきか? だが、ウイルスをどうにかしなければ根本の解決には――」
「一人で喋ってて飽きないか?」
「声に出したほうが考えが纏まるんだよ。いつから居たんだ? 大鳳」
「十分前くらいだ。燐佳から色々と話を聞いたが、糸口も掴めていないらしいな」
「まぁ、そんなところだ。何かあるか? 今はどんな案でも有り難い」
覗き込んでいた顕微鏡から大鳳に目をやれば、考えるように俯いていた。
「案? っても俺、学ねぇんだよな……もどきを観察していてわかったのは、その行動くらいだ。当てもなく歩き回って、たまに立ち止まる。周囲を見回して、鳥の飛ぶ音なんかには反応するが目を向けるだけで追うことはしない。……なら、薬か何かで目を見えなくしたり耳を聞こえなくするのはどうだ?」
「視覚と聴覚を奪う、か。可能ではあるが、目と耳を失った後に他の感覚器官が進化しないとは限らない。……いや、それなら目と耳以外の感覚も同時に失わせればいいのか? だが、それだとゾンビもどきを人間に戻せたとしても感覚を失ったままだ。あちらを立てればこちらが立たず、か」
「零士、これはなんだ?」
呼ばれて視線を向ければ、そこにはビニールのカバーで隔離したシャーレが置いてあった。
「それはAB型の血液にゾンビもどきの血液を混ぜたものだ。ウイルスが活性化したから経過観察に置いておいたんだ。そこの顕微鏡で覗いてみろ」
「覗いたところで俺に何かわかるとは思えないが――うっわ、こんな高倍率の初めて見た……ウイルスってのはどれだ?」
「いるだろ。手足の生えたゾウリムシみたいなのが」
「……いや、見当たらないな」
「見せてみろ」
場所を交替して顕微鏡を覗き込めば――確かにウイルスが見当たらない。どういうことだ? 二日前には間違いなくウイルス同士が争っていたはずだが、その影も形も無い。血液自体は酸化して黒くなっているが、他の薬を混ぜた血液サンプルにはウイルスが残っているから、やはり血液同士を混ぜたことが原因と考えるべきだろう。
「何かに気が付いたって顔だな」
「ああ、原点回帰だ。お前が来なかったら気付かなかった。ありがとう」
「まぁ、俺にはなんのことだかわかんねぇけど。仕事に戻る。そっちもあんま無理するなよ」
思い付いたことの準備をしながら後ろ手を上げれば扉の閉まる音がした。
感染しているAB型の血液を遠心分離機に掛ける。血清を作るときのやり方だが、上手くすればこれでウイルスが分離できる。
その間に、過剰投与で殺した二体を補うためゾンビもどきを捕獲しに行くとしよう。
白衣を脱いで装備を整え、無線を手に取った。
「カナリア。今どこだ?」
「――東門の警備してるよ~」
「大鳳。まだ下にいるよな? 東門の外にゾンビもどきはいるか?」
「――一時間前に確認した時は五体だな。近場に三体、離れたところに二体だ」
「わかった」
久しい肉体労働だ。鈍ってはいないだろうが、寝不足と頭脳労働のせいで体は怠い。まぁ、ゾンビもどきを前にすれば覚醒するだろうが。
「零く~ん!」
抱き付いてきたカナリアの頭を避けて施設を囲む壁に視線を向ければ、この数日で内側にも壁を造り終えたようだ。
「一日振りの再会はこれくらいにして、ゾンビもどきの捕獲だ」
「りょ~かい」
門の開閉は内側からしか出来ないが、少人数で動く場合は作ってある足場を利用して塀を越える。
ゾンビもどきの行動は変わった。人間を見付けた場合、数的優位に立っていれば迷わずに襲い掛かってくるが、人間が多いときは様子を窺い、連携を取るような仕草を見せる。ゾンビもどきが多い時でも最初に飛び込んだ数体が殺されれば、同様に様子を窺い連携を取る。
厄介な知恵を身に付けたものだが、三対二程度なら問題ない。
音の出る銃は無し。捕獲を前提にするなら鋸刀やナイフより、ハンマーを使う。
「三体。どっちを――」
一体と二体に分かれているゾンビもどきの受け持ちを決めようとすれば、訊くよりも先にカナリアは駆け出していった。
仕方が無い。残された一体は俺がやるか。
動きを止める方法は簡単――両脚の膝を打ち砕くだけ!
カナリアのほうを見れば腱を斬られたゾンビもどき二体が倒れていた。
「どうやって運ぶの?」
「引き摺る」
動かないゾンビもどきの脚を持ち、大刀を持っているカナリアは一体を、俺は二体を引き摺りながら門の前まで戻った。
塀を越え門を開き、警戒しながらゾンビもどきを引き摺り込んで再び門を閉めた。危なげなく、機械的にサンプルの回収を終えた。慣れているといえ、さすがに命懸けだから数分の集中でも疲労が大きい。
運んだゾンビもどきを縛って研究室の裏口から放り込み、カナリアは警備へと戻っていった。
血液の分離が終わるまでまだ少し時間が掛かるし、仮眠を取るより思考を回そう。
「燐佳、コーヒーあるか?」
「ん? ああ、お疲れのようだね」
病棟に入って真っ直ぐ椅子に腰を下ろせば、休憩中らしい燐佳がビーカーに淹れたコーヒーを差し出してきた。
それを一口飲んで一息吐けば、端のベッドで点滴を受ける柳木さんが目に入った。
「……まだ目を覚まさないか?」
「そうだね。一命は取り留めたがあの出血量だ。まぁ、数値も安定してきたし数日以内には目を覚ますだろう」
柳木さんが戦力になるのは心強いが、俺たちが施設に辿り着いた日以降にゾンビもどきが襲ってきた回数はゼロだ。もちろん戦いが無いに越したことは無いが、無いなら無いで不穏だな。
「少し新しい考えが欲しいんだが、いいか?」
「そういうことなら私よりも適任がいるだろう」
言いながら無線のチャンネルを切り替えると、ブツリッと繋がった。
「――なんですか?」
「影山か。確かに若い奴のほうが発想が柔軟かもしれないな。影山、話を聞くだけ聞いといてくれ」
「――わかりました」
「まぁ、大した話ではないんだが……未だに違和感がある。ゾンビもどきの体に起きた変化――目が順応して太陽の下を歩けるようになった過程は理に適っている。聴覚についても同様に。だが、そこからの変化の速度は異常だった。知恵が付くってのはどういうことだ?」
問い掛ければ、無線は沈黙しているが燐佳は唸るように首を捻った。
「ん~……知恵を付けた理由が疑問なのかい? それとも速度が?」
「知恵はいずれ付けただろうから、速度のほうだな。順を追って、と言うとおかしな言い方だが、急速的な変化だったのは間違いない」
「つまり、何かしらの外的要因があるかも、と?」
「だが、ゾンビもどきを成長させる理由なんかないだろ」
「病院で会ったという斑鳩とかいう医者は? ゾンビもどきを利用しようとしていたんだろう?」
「斑鳩の場合は前提がイカレていたからなぁ……だとしても成長させるのがプラスだったとは思えない。むしろ知恵を付けないほうが扱い易かったはずだからな」
「まぁ、そもそも人類が滅亡しているのに軍事的利用を考えるのは無意味か。しかし、その理屈だとゾンビもどきが自らの意思で知恵を付けたってことにならないかい?」
「その可能性もゼロじゃないが、だとしてもやはり速度が異常だ。知る限り、変化は徐々に緩やかに起きるはずが、その予兆も無かった」
見落としていたと言われればそれまでだが、今となっては確認することも出来ない。
「――例えばですが、パソコンでいうところのメインサーバがあるんじゃないですか? 親機と言い換えてもいいですが、仮にそういうゾンビもどきがいれば一体の変化が他の個体にも伝わる、とか」
「なるほど。無い話じゃないが、その場合もいくつかの疑問があるよな? そいつがいつから存在し、何がしたいのか。そいつだけが知性を持ち合わせているのならその知性が伝染しない理由は? 考え出せば切りがないが……変異種のように伝染しない例もあるな」
しかし、そう思うと色々と納得がいく気もする。少なくともゾンビもどきが聴覚を手に入れた後、なんらかの変異が起きて親となるゾンビもどき――特異種とでも呼べる奴が誕生したと考えるべきか?
「私自身はあまりゾンビもどきと接していないが、疑問よりも合点がいった感じかな?」
「ああ。もちろん検証も必要だし、実際に存在を確認しない限りは言及しないが前提として考えておくのはありだ。コーヒーご馳走になった。影山も仕事があるのに付き合ってくれて助かった。じゃあ、俺も仕事に戻る」
「はいはい。お粗末様」
ビーカーのコーヒーを飲み干して研究室に戻れば、遠心分離機が停まっていた。
分離した血液の上澄み――つまり、血清を注射器で吸い取り、縛ってあるゾンビもどきの一体に注入し、ストップウォッチをスタートさせた。
本来であれば、この血清もまずは採取した血液サンプルで実験するべきだが、今更そこに時間を掛ける意味も無い。
さぁ、実験を続けよう。人体実験では無い。ただの実験を。
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