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新たなる道
仲間
しおりを挟む迷宮1日目。俺たちはさらっと20階層まで下りた。20階層にはボス部屋があり、その奥に休憩ルームがある。しかし今の予定では20階層のボスをさらっと倒し、続く様に30階層のボスを倒してその先にある休憩ルームまで行く事になってる。これは言って良いのかよく分からないけど、俺個人で行けば今日だけで軽く50階層に行ける。
なんと言ったって俺は魔王を倒した男。迷宮ごときに足止めなんて喰らわない。
「ねぇ~え ショウタァ ~ 早く行きましょう~」
彼女でもない女が猫だね声を出す。その言い方に顔を赤くしている翔太を彼女であるリンが睨んでいる。
翔太は3人の女子に囲まれて、ハームを築いている。まあ、見る限り築いた本人が1番困っているが。……ん? 3人? 4人じゃなくて?
俺は首を動かして周りを見る。
「どうしたの堀内君」
ふと横から声が聞こえてくる。
「あ、そこにいたの」
声の元に首を動かすと俺は納得した。
「何がです?」
しかし、彼女は逆に何も分からないらしい。
「いや、アカツキさんはどこにいるのかな~? って思ったら真横にいたって話」
リーデルト・アカツキ。学校いちの美女と言われてる人。そして凄いのそこだけじゃない。強さもまた凄まじい。たぶん、全校生徒の中では俺の次に強い。アカツキは魔法剣士で、翔太と一緒だ。
翔太も魔法剣士。ただ、途中からその役所になったから熟練度はまだまだ。いくらチート能力でもそれを極めた者には勝てない。
「そうですか。それは御手数を掛けてすいません」
……全然、掛けてないんだけど。まいっか。
「……アカツキさんはあの中に混ざらないんですか?」
翔太と3人の女子の方を見て言う。
「私はああいうの別にいいです。ここのパーティーにしたのは、1番効率良く、下の階層にいけるからで、翔太さんが目的ではありませんし」
それは以外だ。そういうのを考えて班を決めるとは。
「堀内君はやっぱり翔太さんがいるから、この班にしたんですか?」
「それだけ聞くとホモ発言だな」
「それは不快な思いをさせてすいません」
「……俺にはあいつしかすがる相手がいないんだよ」
その言葉に思わぬ発言が返ってきた。
「私には翔太さんが、堀内君にすがっている様にしか見えませんけどね」
その言葉に少し驚いた。
「それはどういう意味?」
お互い無表情で翔太たちを見ながら横に並んで話し続ける。
「……迷宮のトラップ全て堀内君が解除していたじゃないですか」
俺がここまでしてきた事をアカツキはさらりと言うのだった。
「いつから気づいてたんだ?」
しかし、俺はその位では動揺しない。言葉遣いをノーマルに直す。バレてしまったら変にあれするのも、相手に迷惑だから。
「最初からです。トラップは5階層から出てきます。私たちは迷宮の自習が始まってからずっと1番最下層にいます。誰よりも早く迷宮を攻略しているのに、トラップに引っ掛かった事がない。というより、トラップが発動した現場に居合わせてない」
アカツキはとんとんと説明する。
それは全て正解だった。フリートラップ。俺が数回前の転生で手にいれた能力。
このフリートラップは魔力を空間に飛ばす事によって罠を発見する事が出来る。また、魔力を自由に使ってその罠を解除する事も出来る。そして好きな位置に罠を仕掛ける事も出来る。
これはここだけ聞くと結構良い能力なのだが、デメリットとして即死トラップの発見、解除が出来ない。そして作る事も出来ない。また、何分のいちかの確率でトラップの解除に失敗する。失敗した場合、そのトラップの効果が直接自分の体に掛かる。そして最後に、この全ての行いには多量の魔力が必要とされる。
つまりこの能力は何しても魔力の消費量がパナイのだ。
「それに、私には魔力を感知する能力があります。あなたはずっと半径100メートル以内に自分の魔力を張り巡らせている」
これは、これは。凄いな。
素直に関心してしまう。ただそのぶん間違ってる所もある。
「……なあ、劇で1番大切な役ってなんだか分かるか?」
俺のその唐突な質問にアカツキは首を傾げながら言う。
「主役じゃないんですか?」
俺の質問の意を直ぐに察しそう質問を返してくる。
主役じゃないの?と確認系の疑問だ。
「脇役だよ。主役をかっこ良く見せるには脇役が必要だ。脇役は脇役だから主役の力なんて必要ない。主役が目立つから脇役は脇役でいられるんだ」
「しかし――」
その言葉を遮り、俺は続けて言う。
「班はチームだ。チームは仲間だ。仲間は助け合うのが当然だろ?」
「堀内君は彼の事を仲間だと思ってるのですか?」
その質問に俺は優しく答える。
「親友だよ」
最も親しい友。
「……その考え、少し改めた方がいいですよ」
アカツキは翔太の方へ歩いて行くのであった。
……そして言葉の1年後、アカツキは死んだ。正確には殺された。
迷宮79階層。そこで事件は起こった。
「なんでだよ!! なんで殺したんだよ!!」
涙を流しながら翔太の胸ぐらを掴み怒鳴る。
「あいつがっ! リーデルトがお前の物になる位なら!! そう思ったんだよ!!」
その言葉に俺は思わず翔太を頬を殴る。
「なんで! なんで! 言ってくれなかったんだよ!! お前が言ったら俺はこんな事しなかった! 俺はアカツキとは付き合わなかった!!」
横にアカツキの死体があるなか、俺たちは……
「なんで言ってくれなかったんだよ!! 俺たち親友だろう!!」
互いに始めて本音をぶつけあった。
「親友!? ざけんじゃねぇ!! テメェなんかただの班員だ!」
俺の言葉を翔太は躊躇なく否定する。
「お前は昔っからそうだった! 金魚の糞みてぇに俺に付きまとって!! ちょっとはこちの身にもなれよ! クソヤロー!!」
翔太は続ける。溜め込んでいた思いを全て吐き出す。
「今回だってそうだ!! 迷宮の新層見に行くのに、どうしてテメェがいるんだよ!! エリートって言ったら普通に考えて俺とリーデルトだけだろうが!! なんでそこに、3流のテメェが入ってくんだよ!!」
吐き出し続ける。
「力も、知識も何もねぇテメェがどうして! どうしてリーデルトの隣にいるんだよ!! 今日、お前さえいなければ、リーデルトは俺のもんになってたはずなのに!!!」
その言葉に俺は驚く。
「そ、それってどういう意味だ――」
ドカッ!!
翔太が俺の言葉を遮り頬に1発拳をいれながら言う。
「こういう事だよ!!」
強姦。彼はそう言ったのだ。
その言葉は俺を本気で怒らせた。
心の奥底から沸いてくる感情。それは俺の何かに火をつけた。
「そもそもテメェ!! 親友って言うくらいなら、電車の時どうして俺を見捨てて駅員を――!!」
翔太の顔面を掴み躊躇なく地面に叩きつける。
「グギャァ!!」
「……もう、お前との間に言葉はいらない」
怒鳴らないが、消して普通の者の言葉ではなかった。心の奥底に怒りを沈め、静かに怒る
翔太は直ぐに体制を建て直し、リーデルトを殺した剣をこちらに向ける。
「俺とやろうってんのか!? いいぜクソヤロー!! 親友の俺がお前を殺してやるよ!!」
嫌味の様に言うが、俺はそれを冷たく否定した。
「お前はもう親友でも友人でも、班員でもない」
手に魔力を送る。
「お前は敵だ!!」
言葉を吐いた直後に俺は踏み込む。
その踏み込みは音を置いていった。
たった、たった数メートルの間を移動しただけで凄まじい衝撃派が起こる。
「な――」
何も言わせなかった。顔に触れた瞬間に全身を凍らせ、その勢いのままそれを壁に叩きつける。氷は汚い結晶となって消えた。
「……あなたが正しかったよ。仲間なんて親友なんて解釈はおかしい」
自身の過ちを深く悔いる。
「一緒に還ろう」
亡骸を抱く。そして自分の魔力を1ヶ所に集める。
「来世でまた同じ世界だといいな」
魔力量はこの一帯を全て吹き飛ばす量だった。
「迷宮も今日で終わりだ」
まだ、少しだけ暖かい彼女の亡骸を強く強く抱き締める。心臓には刺された後があり、俺はそこを止血する様に強く抱き締めるのだった。
「今度、あったらゆっくり話をしよう。昔話を」
心臓に集めていた魔力を一気に膨張させるとき、彼女も俺を抱き締めた様な感じがしたのだった。
「ありがとう」
そう感謝した直後、迷宮は一瞬で跡形もなく消えた。
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