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新たなる道
最期まで
しおりを挟むクズニールを投げる事で完璧に死角を作った。そして俺はどっかのアニメで出てくるアホ主人公みたいに、声を張り上げて攻撃しない。忍者の様に忍び足で相手を確実に仕留める。
俺は亡くなった右手の代わりに氷の手を瞬時に生成する。そしてそれに続く様に無属性魔法でジャマダハルを作る。
ジャマダハルと言うのは突きに特化した武器で古代北インドの刀剣であり、殴る様に使う武器だ。
生成中、刀身がニールの胴体を貫通する様に長さを調整した。
「ニール!」
ミュセルは素早く剣を鞘に戻しそう叫びながらクズニールをキャッチする。そしてそれと同時に――
ザクンッ!! と音が響く
よし!!
手応えを感じ心の中でついガッツポーズをとる。
ジャマハルの刀身はクズニールの腹を貫通し、そしてミュセルの腹にも届く。
クズニールはこれでほぼ確実に殺した。あとはこの剣聖だ。
「ニール!! ニール!!」
その事に気づいたミュセルは必死にクズの名を呼ぶ。
ふんっ、バカが。こいつはもう――
死んだ。そう言おうとした時だった。
「なっ!!」
クズニールが俺の手首を凄まじい力で握っていた。それは今までの戦闘ではありえない程の力だった。
「ミュセ……ル……」
おい、おい冗談じゃねぇ! この力はなんだ!
火事場の馬鹿力。もしかしたらこれを言うのかもしれない。
「ニール!!」
ミュセルが感激の声を漏らす。その声と共に目からはポロポロと涙が流れ出ている。
「ゴメンな……ゴフッ!」
クズニールの口から大量の血が出る。
そうだ! そのまま早く死んじまえ!
「沢山……沢山、迷惑を掛けて」
クソッ! ざけんじゃねぇ!!
死にかけのはずのクズニールの腕の力は一行に弱まらない。むしろその逆で強くなっている。
「こんな、ろくでないで、ゴメンな……」
「ううん、いいだよ。私は大丈夫だから」
ヤバイ、ヤバイ!! こいつ一ヶ所に残りの魔力集めてやがる!
今すぐにでも氷の腕を溶かして逃げたい。しかし、もしそれをすれば、どういう訳か体に激痛が走る。その痛みは、全盛期の俺ですら耐えられなくて失神した程だ。だからそれは絶対に出来ない。
「ガゼルにも……リンにも、サイにもゴフッ……悪いことをした。僕は……最低な主人だ……」
「そんな事、ないよ。ちゃんと、皆の名前覚えてるじゃん」
クソッ! なんてウゼー茶番だ!あああ、 不味い、不味い、不味い!
一ヶ所に集まってる魔力はどう考えても死にかけの人間の魔力量ではない。
「ニール、今後ろのゴミを取り除いて助けてあげるからね」
ミュセルが優しく言うが―――
「君が手を汚す必用はない」
返ってきたのは否定の言葉だった。ミュセルはその反応に目を見開く。
「それ! ちょっ! どういう――」
その言葉を遮ってニールは魔法を唱える。
「ブ……ロー」
それは弱々しくまさしく瀕死の状態の者の声だった。
「キャァ!」
風邪魔法。ミュセルはニールの風魔法で他の学生の元へ飛ばされる。飛んできたミュセルを1人の学生がキャッチする。その時ミュセルの腹からは血が漏れ出ていた。そしてクズニールは―――
「残念だけど、僕も君もここまでだね」
「ざけんじゃねぇ!! 俺は死なねぇぞ!!」
「そうかい……じゃあ、幸運を」
ニールが凝縮した魔力をいっきに膨張させる。その膨張させた魔力の場所は俺の手首を掴んでる左手だった。
ミュセル達が逃げた直後だった。ニールの腕が爆発する。その爆発は規模が小さく威力が絶大な、まるで気が治ったニールの気持ちを表していた。俺だけを殺すため。ミュセルや他の生徒、木や動物を巻き込まないため。
そんな思いが込められてた自爆だった。
「ニィィィィルゥゥゥゥ!!!」
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