~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

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異世界転生

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 どうやらタナトスは戦いが終わった後のボロボロな俺を見て責任を感じたらしい。フェンリルに出した指示は舞台にいる人を全員舞台から落とせだった。本当はそこに大怪我をさせない程度に。と付く筈だったのだが……人が多いから大丈夫だろうと思い、その指示は今回出さなかったそうだ。その結果、俺は肋骨を折り、足をボロボロしたという訳だ。まあ、指示だけじゃなく俺の判断ミスでもあるが。
 あのラストアタックを俺は受け止めるのではなく、受け流すべきだった。フェンリルを両腕で受け止めた直後にフェンリルの突進の力に逆らわないで、後方に倒れる形をとり投げ飛ばすべきだった。そうしたら……運が良ければの話だけれども、フェンリルは自分の突進の勢いを殺せず場外に突っ込んだかもしれない。ただ、その可能性は限りなく低い。周りは氷で覆われていて向こうのホームグラウンド。そう考えると、投げ飛ばしてもまた氷を踏み台にして突っ込んできたかもしれない。
 
 「そういえば、賞金の300万はどうなったんだ?」
 
 もっとも大切だった事をすっかり忘れていた。
 
 「ああ、それか? それならちゃんとお姉さんが預かってるから心配しなくていいぞ」
 
 「あ、それはどうも」
 
 良かった。気絶したせいで賞金なしとかになったら、これはもう殴り込みに行くところだった。
 
 因みに今タナトスはソファーで寝転がっている。それは客人に見せる姿ではないが、俺がいても特に問題ないという意を表す行動なので俺的にはそんなに気にしない。
 
 それにここはタナトスの部屋だから彼女がどうしてようが自由だ。そこに俺が割り込む余地などない。
 
 「……そういえばタナトスって何者なんだ? 貴族のお嬢様か、なんかか?」
 
 この広すぎる部屋を見て自然と口から疑問が漏れた。
 
 「ん?  いやぁ、私は貴族じゃないよ。ただの冒険者だよ。冒・険・者」
 
 はへ~。冒険者がここまで豪華な暮らしが出来るとは……流石、天災を使い魔にするだけの事はある。……ところでモンスターてどうやって使い魔にするんだ。
 
 俺は勝手に使い魔にするモンスターを殺さず倒して、自分の実力を認めさせ、契約されるのだろうと思ってたけど……実際の所はどうなのだろう。なんかインスタントに召喚魔法でもあるのかし?
 
 「冒険者か……」
 
 その単語を俺の口から漏れるとタナトスがそれに食いついた。
 
 「興味あるか!?  今、お姉さんと一緒のギルドに登録すればお姉さんがパーティー組んでやるぞ!」
 
 ソファーから飛び起き、タナトスはこっちに迫ってきながら言う。その時、彼女の目がこれ以上なく輝いてる事に俺はすぐに気づいた。
 
 ……それは入れっていってるんですか? ……ていうか髪の色と性格が真反対な気がする。
 
 青色はクールな意を表すと考えてる。青髪、青目の彼女は黙ってればそれが合うのだが……口を開くと青が消え、赤色一色変化する。
 
 「お姉さんこう見えても強いんだぞ。足でまといの1人や2人は問題ない!」
 
 ガッツポーズをしながら言うが地味に傷つく言葉だった。
 
 足でまといって……。
  
 「どうだ!? どうだ!?」 
 
 そう迫ってくるお姉さんの顔を見ながら俺は考える。
 
 俺が1人でいたいのは、弱い奴がいると足を引っ張られるから。……そう考えると自分より強ければ問題ない。冒険者になるという利点は、普通に考えて金のため。楽して大金が稼げるのに越したことはない。それともう1つ。鈍り過ぎたこの体を全盛期に戻すため。
 といっても体が鈍った訳ではない。正確に言えば、鈍ったのは魔力だ。この日本人の体を戦闘に使うには、筋力強化が必須だ。筋力強化は常に魔力を消費し続ける。魔力がもう殆ど残ってないこの体じゃあ、全盛期の半分も戦えない。
 
 俺のこの時の気分は、元運動部が久しぶりに運動して自分の体力のなさに絶望するのとよく似ている。体力と魔力は似たような物なので、瓜二つと言ってもおかしくない。
 
 ちなみ、体内の魔力はどんな状態で転生してもそのまま受け継がれる。それが異世界だろうが、現代社会だろうが。それは、天使の気遣いか、何かだろう。
 
 「……まあ、いいや。そこまで言われたら、ならない訳にはいかねぇな」 
 
 実際は全然違う理由だが、口実としてはそれでいいだろう。それともこれは口実とは言わないだろうか?
  勧められたから入った。……うん、言わないな。

 「よっしゃ!! じゃあ決まりだ!! 怪我を治したらギルドに行こう!!」
 
 タナトスはガッツポーズをとり、そんな風にはしゃいだのであった。
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