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異世界転生

待ちわびた時

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 「作戦通り」
 
 場外に吹き飛ばされた弓士1、2を見て俺は頬を緩める。
 
 「なっ!! 」
 
 剣士3はその出来事に驚きを隠せない。
 
 「最初からこれを狙って……」
 
 剣士3の言うとおりだ。俺は最初からこれを狙っていた。
 最初に射った2本の矢は魔法使いと一直線上に なるように仕向けたもので、攻撃ではなく誘導が目的な物。
 
 「ご名答。最初からお前に攻撃を当てるつもりなんてなかった」
 
 「じゃああの言葉は……」 
 
 剣士3が言いたいの、「 どちらかを防げば、どちらかの腕が消えるぞ?」だろう。
 
 「そう、たんなる気づかれないための挑発」
 
 「…………僕は君にまんまと踊らされたのか」
 
 場外に吹き飛ばされている弓士1、2を見ながら悔いる様に言う。
 
 因みに俺は弓士には直接攻撃を当ててない。もし当ててたら、おそらく体のいずれかの部位が消えてるだろう。矢はちゃんと弓士の足元付近に当たったから、その衝撃で吹き飛ばされただけなのだ。
 
 「まあ、いいじゃねか。これから踊ろうぜ」
 
 この残り少ない時間で舞台に残ってるのはフェンリル、剣士3、そして俺。
 
 ここで願った様に実況者の声が耳に届いた。
 
 「残り1分のなか、果たして彼らは生き残れるのでしょうかぁぁ!?」
 
 残り時間を知りたかった俺には丁度良い実況だ。しかし剣士3はそれを悪魔の死の宣告をされた様な顔で聞いていた。
 
 「おい、どうした?」
 
 その顔に俺は思わずそいつを案じた。
 
 「君はこの闘技場初回かい?」
 
 額から大量の汗を出しながら剣士3が聞く。俺はそれに「ああ」と短く答えた。
 
 「そうかい。なら知らないんだね」
 
 切羽詰まった表情で男は続けて言った。
 
 「残り50秒を切ると、向こうがこっちを本気で潰しに来るんだ」
 
 あれまー。それは初耳だ。それが本当に本気なら俺も生き残れるから微妙なところだ。
 フェンリルの方へ首を動かすと、何やら準備をしている様子だった。爪を出し、牙を剥く。ネコの様に毛を逆立ちさせている。

……お前、犬科だろ。
 
 ここで更なる実況者の声が届いた。そして観客もそれに合わせて声を出す。
 
 「5!」
 
 それは――
 
 「4!」
 
 恐ろしく―― 
 
 「3!」
 
 おぞましい――
 
 「2!」
 
 地獄の――
 
 「1!」 
 
 時間の――
 
 「0!」
 
 ――始まりだった。
 
 
 フェンリルが視界から消える。
 
 「消えた!」
 
 自分ですら目に終えない速さに俺の口からは驚愕の意が漏れた。
 
 「来るよ!!」 
 
 剣士3が叫ぶ。それは目に見えない事を予告する言葉だった。
 
 「うし――」
 
 剣士3の言葉はそこで途切れる。そして言葉の続きの代わりをするように、その数秒後、何かが壁に激突する音が響いた。
 
 
 「は、はえぇ……」
 
 剣士3が殺られた(死んでません)事に気づいたのはその数秒後だった。
 
 「天災ってだけはあるな」
 
 俺は額から汗が流れ落ちる。冷や汗だ。
 
 急にパキパキパキィンと周りから凍る音が響く。それは一瞬の出来事だった。舞台の殆どが凍っり、氷の山が俺を囲んでいる。それの作りはコマ遊びをする場に良く似ている。中心にコマが集まるように、クレーターの様になっているのだ。
 
 「ワォォォン」
 
 そしてその山の頂上でフェンリルが遠吠えをする。俺にはそれが勝利宣言に聞こえた。
 
 「こっからが本番……あと30秒程度持ちこたえれば俺の勝ち……」
 
 果たして俺は天災相手に30秒持ち堪えられるのだろうか?
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