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異世界転生

パイ投げ

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 「グォォ!!」
 
 フェンリルが勝利の雄叫びをあげる。別に勝った訳ではないが。
 剣士2がやられた事で更に戦士たちの士気が落ちる。
 
 「あと6人か」
 
 首を回し周りの状況を確認しながら言う。残ってるのは剣士1、3。弓1、2。魔法使い1、2。
 
 魔法使い1、2と弓1、2は自分がどうすれば良いか分からず、戸惑っている。俺を攻撃するべきか、剣士1を支援するべきか。

 「チームプレイっていうのは指揮者がいなくなるとこうなるから嫌いなんだ」
 
 俺はそう、あいつらに訴えるように言う。しかし――
 
 「クソッ、どうすれば」
 
 「あなたは2人の魔法使いと協力してあの男を足止めしておいてください!! 僕は弓士2人と、フェンリルをどうにかします!!」
 
 今まで何もしてこなかった剣士3が急に指揮をとり始めた。
 
 「お、おお」
 
 その事に剣士1も動揺している。しかし剣士3はそんな事、気にせず指示を出す。
 
 「弓士のみなさんは僕のサポートをしてください!!」
 
 弓士はそれに頷きターゲットをフェンリルに絞る。片や剣士1は魔法使い1、2をつれて、俺攻撃体制をとる。
 
 「やるなあの剣士。俺より少し年上くらいか?」
 
 その切り替えの凄さに俺は思わず関心する。
 
 「おい、テメェ!! よくもやってくれたな!!」
 
 剣士1が俺に怒鳴り付ける。
 
 「テメェはこの俺がぶっ飛ばす!!」
 
 そう啖呵を切り、こっちに突っ込んでくる。
 
 「あの剣に直撃したら俺でも少し、やばそうだな。ただ――」

 剣士1は力の限りでその大きな両手剣を振りおろしてくる。俺はサラリとそれを避ける。
 
 「当たらなければどうと言うこ事はない」
 
 しかし剣士1の攻撃はこれで終わらない。
 
 「オラァァ!!」 
 
 その威勢の良い声と共に次なる攻撃がくる。
 
 「おっせぇなぁ」
 
 しかし俺はそれを当たり前の様に避ける。しかし、剣士1はそれを詠んでいた様に、次なる攻撃に出る。
 
 なるほど。俺のスピードを把握して大振りだと当たらないから、流れるような細かい動きに変えてきたな。しかも、それを悟られないように上手く誤魔化してる。
 
 客観的に見れば剣士1はただ剣をヤタラメッタラ大振りしている様に見えるが実際は違う。これはフェイクなのだ。
 
 男のその大振りに見える攻撃は俺の気を引き付けるための物であり、囮なのだ。その証拠に魔法使い1は剣士1と自分で俺を挟み撃ちにしている。そして魔法使い2が大きな魔法の準備をしている。
 
 「逃げ場をなくして……フェンリルと同じか」
 
 表面的な攻撃はすべてフェイクで本領は魔法使い2の強大な魔法。
 
 おそらくこれは剣士3の指示だろ。1発大きいのを当てれば十分だと。
 
 「し~かし、それは獣相手に通じても俺には通じな~い」
 
 「オラァァ!! じゃかし――」
 
 「ドッセィ!!!」
 
 「――グハァァ!!」

 男がよそ見をした俺を見て1発入れようと踏み込んできた。俺は今回の転生で貰った能力を試すべく、手にあるものを生成した。それは――
 
 「まるで野球ボールのように飛んでいったな」
 
 男は俺の攻撃をモロに喰らい場外に吹き飛んだ。吹き飛び方があまりにも真っ直ぐで野球ボールのようだったからつい口に出てしまった。
 
 「クソイッテェ……てかウメェなこれ!!」
  
 ――パイだ。
 
 剣士1は顔についたパイを食っている。つまり俺はパイ投げをしたのだ(ただ単に顔に押し付けただけ)。
 
 男は場外に出されて不満そうな顔をしているが、一心不乱に顔についてるパイを食べている。余程気に入った様だ。
 
 因みに今つくったパイの魔力消費量は少し多い。パイを作るには多くの魔力を使った。
 
 そんな状態に実況者は言葉を無くしたのだった。
 
 「さてお前らだ」
 
 剣士1が一瞬でやられた事に動揺している魔法使い1、2を俺は弓士から奪い取った弓を使い、普通に倒した。
 
 武器に魔力を込めれば、込めるほどその威力は絶大になる。俺は弓にある程度の魔力を溜め、魔法使い1、2の足元に放ったのだ。そうすることで、魔法使い1、2はその衝撃で場外に吹き飛ばされる。
 
 まあ、地面に落ちるのだから痛くないわけではないだろうけど矢を人体に喰らうよりはましだろう。
 
 「残り2分ってところか?」 
 
 相手は残り3人。余裕だ。
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