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第六章「同類」 ー中央都市編ー
第百八話「動揺」
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「テオ!!」
会議室の扉が
勢いよく開かれる。
その部屋にいた四人が一斉に音がした方を向き、
リリーを視界に納めた。
「どうした?」
一番奥の席に座っていたテオが彼女へ
そう声をかける。
長机に座っている
他の黒髪の男、茶髪の男、銀髪の女は
黙って二人が話すことに耳を傾けていた。
「え、エマが居なくなった」
まさに顔面蒼白といった様子で
駆けこんできた彼女のその言葉を聞いた途端、
「・・・・・」
彼の顔が歪んだ。
「・・・・話は後にしていいか」
「・・・・・別に構いませんよ」
銀髪のエルフが言った通りに、
テオは席を立ち、
リリーと共に部屋を出る。
二人の乱雑な足音が
廊下に響き、
同時にリリーの声からは
明確な焦りが聞こえて取れた。
「ど、どうしよう」
「いつからだ?」
「私たちが起きたら」
「何で気づかなかった?」
「わ、わかんない・・・
気を抜きすぎてたかも・・・」
サラが意識的に探知をする能力が高いが、
リリーは無意識的な察知能力に長けている。
よーいドンで初めて
より広く正確にできるのはサラだが、
瞬間的に人の気配や敵意を察するのは
リリーが得意とするところのはず、
その彼女が全くもって気づかなった。
「・・・・・・気を抜いてたで
アンタが気づかないことがあんのか?」
「ご、ごめん
わかんない」
例え眠っていたとしても
果たしてそんなことがあるのかと
思いたくなるが、
「ルーカスはどうしてる?」
「空から探してる
けど、近くにはいないみたい」
「わかった・・・・ちょっと待ってろ」
テオも
そういう時のために
用意はしていた。
目を閉じ、消える。
(アイツの服の中に
確か入れてたはず)
サラに渡していた
転移を可能にする場所指定機
それさえ
仕込んでおけば
彼ならそこまで行ける。
お得意の転移だ。
だが、
「は?」
彼は消えた瞬間、
煙が現れた。
彼がいた場所の少し後ろに
廊下に突如として
現れた煙、
その中から
黒い外套が見えてしまった。
「・・・・何が起きた
・・・・・何の魔法だ?」
転移が出来ていない。
煙の中からよろけるようにして
出て来た彼には何をされたのか全くもって理解が出来なかった。
「私も知らない
見たことない」
二人の顔に冷たい汗が流れ落ちる。
しかし、
「・・・・・だが、なんとなくの位置はつかめてる」
「ど、どこ?」
テオが転移をしようと試みた時点で
大体の場所は把握できている。
「中央都市方面
もしくは中央都市の中にいる」
そう彼が言った瞬間、
「今から」
リリーからその言葉が漏れ、
踵を返して、走り始めた。
「言うと思ったが
待て」
テオはその前へ転移し、
リリーの前に手を突き出す。
「待て」
「何で」
リリーは
食い気味に
かぶせてきた。
もう今にも跳びだして
行きそうな剣幕だ。
「一人で突っ込んで
死なれたら困る」
「ルーカスも連れてく」
「それも困るから待て」
「・・・・・」
無言の圧力
言葉よりも先に体が動いていきそうだが
「待ってくれ」
どうにか
テオが止めている。
「取り返さないと」
「いいから待て」
「・・・・・・」
「準備がいるだろ
それに人手も
中央都市で何が起きたかは伝えたはずだ」
「戻って待っててくれ
いいな」
いい具合に
なだめられた。
リリーも少し不満だが
大人しくてしてくれそうだった。
そう思った時
二人の意識の外から
一人の男が話しかけて来た。
「何だ、丁度いいじゃないですか?」
茶髪の大男、
ギャンブラーズのリーダー
ジブだ。
銀と黒がベースの服を着た
槍を持つ190cm越えの男が
いつの間にか
窓枠に腰掛け、
二人の会話に口を挟んできた。
「部屋で待っててくれないか?
まだ話の途中だっただろ?」
ため息交じりにそう言うテオに、
「こっちは商売なんで
嗅覚には自信あるんですよ
こういう需要を嗅ぎつけるのは特に」
ジブは構わず
リリーの方を見て、
そう返した。
「初めまして・・かな?
死神リリーさん」
「その変なあだ名で呼ばないで」
「中央都市に用があると?」
「うん」
「奇遇ですね
実はこっちもあそこに行かなきゃいけない用事があるんですよ
ね?」
今度はテオの方に視線を移す。
「だから、それは話の途中だっただろ」
「ただ、ギャンブラーズと死神が乗り気なんですぜ?
総督さん、こんな夢の組み合わせ中々ない。
雑兵かき集めるよりよっぽどいいと思うんだけどなあ」
「・・・・はぁ・・・」
あまりに饒舌に喋るジブに対して
思わずテオから大きなため息が
漏れる。
「様子見して、
第一に攻め込まれでもしたらどうする気なんです?
今あそこにいて、カイジン止められる奴なんてほぼいないに等しい。
あんただって、あの距離転移するのはきついでしょ?」
そこへ更にジブは畳み掛けていく。
「・・・・・・・勝てる見込みは?」
「さあ、戦って探るしかない」
「・・・・・・・」
(一理ある・・・というか悩んではいた。
あっちに行かれたら大分面倒だ。)
「どうします?
このままならあの人勝手に行っちゃいそうですけど。」
そうやって二人が話していると、
リリーはテオの横を通り過ぎて
歩き出そうとしていた。
「おい」
「ごめん、お金とかそういうのはもういらないから」
思わず肩を掴み引き留めるも
意志は固そうだ。
そのまま振り払って
ずかずかと歩き出してしまう。
「聞いたことありますよ。
死神リリー、
死神の名の通り無愛想で、無表情。
何考えてるかも読めないが、
超が付くほどのお人よし。
あの傷だって、
疑わしきは罰せずを極限まで貫いたせいで
できた傷って話だ。
何が起きてんのかはあんまり聞けてなかったが
まあ、あの能力にしたら
報われない粛清騎士なんて仕事やってる狂人ですからね
目の前の誰かを見捨てて
大局を取れるような奴じゃない。
どうするんです?
見捨ててあの戦力失う気ですか?」
「・・・ったく、商売人ってのはこれだから・・・」
「ハンターに必要なのは
まず腕で、次が足元見ることです」
「はぁ・・・・待てリリー
行っては良い
だが」
また彼女の目の前へ転移し、
引き留める。
「ちょっと待ってくれ」
「・・・どのくらい?」
「コイツらとの話がおわるまで」
ジブたちを指し、
嫌そうに顔を歪めながらそう言う。
「俺らはもう話しましたよ?」
「・・・そっちに関してはもういい。
文句は言うなよ?」
「約束は守りますよ」
「だが、その上で話しとかないといけないことがある」
「ほお?」
「リリーは帰って待っててくれ
すぐにこいつらも連れていく
いいな」
「・・・・わかった。」
そう返事したリリーは廊下を駆け抜け、
城塞を出て、屋根を軽々と飛び移っていく。
「な、なにあれ」
兵士たちは
何かに化かされたように
目を丸くし、口をぼけっと開けることしかできない。
彼女が走り、跳び、
その向かう先には、
「・・・・いないな・・・ん?」
空中に漂うルーカスがいた。
そこに向かって
リリーが跳んでいく。
背中へ飛び移り、
「ただいま」
そう言った。
ルーカスの
あの黒く禍々しい背中を伝い、
リリーの激しい心臓の鼓動が響いてくる。
熱い体温、
間を置かずになり続ける
心臓の鼓動、
吐息、
すべて伝わってきた。
「・・・お帰り」
「助けに行けるって」
心なしか
声色が明るく
鼻息も荒い。
「・・・ああそう」
ルーカスの冷たい返事にも
「がんばろ」
口元を緩ませてそう答えるほど
いつもと雰囲気も何もかも違った。
「・・・・・・」
「あ、そうだ。
テオがギャンブラーズって人たちを連れて
ここに来るみたい。多分一緒に行くんだと思う。」
「そうか・・・・・なあ」
「何?」
だが、そんな彼女の明るい雰囲気を
ぶち壊すように
「獣人っていうのは
そういう距離が普通なのか?」
冷たい彼の声が
彼女へ投げつけられ、
「うん。
駄目?」
「駄目」
「・・・・・あ、うん。ごめん・・・・」
一瞬で声が縮こまってしまった。
「そ、そんなに嫌だった?」
彼女の気持ちが落ち込んでいくのと同じように
二人の高度も落ちていき、
地上へと降り立つ。
「離してくれ」
「う、うん」
急いで飛び降り、
彼が振り向いた。
そして、二人の目が合った。
今にも泣きだしそうな子供が
涙をこらえるような
そんな顔のリリー、
だが、彼女の涙も彼の顔を見て引っ込んでしまった。
(怯えてる?)
口元が震えている。
その目は
冷たく突き放すような目ではなく、
明らかに困惑していた。
何をされたのか
わかっていないのか、
それとも受け止めきれなかったか
何かが欠けてしまった
彼にとって
リリーの抱擁は
耐えきれる重さではなかったようだ。
大の男が目を丸くして
自分より二回りも小さい女に怯えているのだ。
あらゆる暴力に怒り狂い
惨たらしく敵を倒してきたはずの
角の生えた化け物が
自分に抱き着いてきた
女に怯えている。
「・・・だい、じょうぶ?」
「・・・・・・・」
そう言われたルーカスは
はっとした様子で
思わず後ろを向いた。
「わ、悪い・・・」
「ごめん、何か怖かった?」
「忘れてくれ・・・・
さっきまでのやり取り全部」
「・・・・・・・・・」
口のうまい方ではない
リリーがそこで何かをするのは難しく、
(な、何か言ってあげないと・・・何か)
そう思えども
気まずい時間が流れるばかりで
「・・・誰か来たみたいだな」
いつの間にか約束の時間が来てしまった。
また城塞の壁から何人かが降り立ち、
二人の元へと近寄っている。
その方を二人は向いた。
会議室の扉が
勢いよく開かれる。
その部屋にいた四人が一斉に音がした方を向き、
リリーを視界に納めた。
「どうした?」
一番奥の席に座っていたテオが彼女へ
そう声をかける。
長机に座っている
他の黒髪の男、茶髪の男、銀髪の女は
黙って二人が話すことに耳を傾けていた。
「え、エマが居なくなった」
まさに顔面蒼白といった様子で
駆けこんできた彼女のその言葉を聞いた途端、
「・・・・・」
彼の顔が歪んだ。
「・・・・話は後にしていいか」
「・・・・・別に構いませんよ」
銀髪のエルフが言った通りに、
テオは席を立ち、
リリーと共に部屋を出る。
二人の乱雑な足音が
廊下に響き、
同時にリリーの声からは
明確な焦りが聞こえて取れた。
「ど、どうしよう」
「いつからだ?」
「私たちが起きたら」
「何で気づかなかった?」
「わ、わかんない・・・
気を抜きすぎてたかも・・・」
サラが意識的に探知をする能力が高いが、
リリーは無意識的な察知能力に長けている。
よーいドンで初めて
より広く正確にできるのはサラだが、
瞬間的に人の気配や敵意を察するのは
リリーが得意とするところのはず、
その彼女が全くもって気づかなった。
「・・・・・・気を抜いてたで
アンタが気づかないことがあんのか?」
「ご、ごめん
わかんない」
例え眠っていたとしても
果たしてそんなことがあるのかと
思いたくなるが、
「ルーカスはどうしてる?」
「空から探してる
けど、近くにはいないみたい」
「わかった・・・・ちょっと待ってろ」
テオも
そういう時のために
用意はしていた。
目を閉じ、消える。
(アイツの服の中に
確か入れてたはず)
サラに渡していた
転移を可能にする場所指定機
それさえ
仕込んでおけば
彼ならそこまで行ける。
お得意の転移だ。
だが、
「は?」
彼は消えた瞬間、
煙が現れた。
彼がいた場所の少し後ろに
廊下に突如として
現れた煙、
その中から
黒い外套が見えてしまった。
「・・・・何が起きた
・・・・・何の魔法だ?」
転移が出来ていない。
煙の中からよろけるようにして
出て来た彼には何をされたのか全くもって理解が出来なかった。
「私も知らない
見たことない」
二人の顔に冷たい汗が流れ落ちる。
しかし、
「・・・・・だが、なんとなくの位置はつかめてる」
「ど、どこ?」
テオが転移をしようと試みた時点で
大体の場所は把握できている。
「中央都市方面
もしくは中央都市の中にいる」
そう彼が言った瞬間、
「今から」
リリーからその言葉が漏れ、
踵を返して、走り始めた。
「言うと思ったが
待て」
テオはその前へ転移し、
リリーの前に手を突き出す。
「待て」
「何で」
リリーは
食い気味に
かぶせてきた。
もう今にも跳びだして
行きそうな剣幕だ。
「一人で突っ込んで
死なれたら困る」
「ルーカスも連れてく」
「それも困るから待て」
「・・・・・」
無言の圧力
言葉よりも先に体が動いていきそうだが
「待ってくれ」
どうにか
テオが止めている。
「取り返さないと」
「いいから待て」
「・・・・・・」
「準備がいるだろ
それに人手も
中央都市で何が起きたかは伝えたはずだ」
「戻って待っててくれ
いいな」
いい具合に
なだめられた。
リリーも少し不満だが
大人しくてしてくれそうだった。
そう思った時
二人の意識の外から
一人の男が話しかけて来た。
「何だ、丁度いいじゃないですか?」
茶髪の大男、
ギャンブラーズのリーダー
ジブだ。
銀と黒がベースの服を着た
槍を持つ190cm越えの男が
いつの間にか
窓枠に腰掛け、
二人の会話に口を挟んできた。
「部屋で待っててくれないか?
まだ話の途中だっただろ?」
ため息交じりにそう言うテオに、
「こっちは商売なんで
嗅覚には自信あるんですよ
こういう需要を嗅ぎつけるのは特に」
ジブは構わず
リリーの方を見て、
そう返した。
「初めまして・・かな?
死神リリーさん」
「その変なあだ名で呼ばないで」
「中央都市に用があると?」
「うん」
「奇遇ですね
実はこっちもあそこに行かなきゃいけない用事があるんですよ
ね?」
今度はテオの方に視線を移す。
「だから、それは話の途中だっただろ」
「ただ、ギャンブラーズと死神が乗り気なんですぜ?
総督さん、こんな夢の組み合わせ中々ない。
雑兵かき集めるよりよっぽどいいと思うんだけどなあ」
「・・・・はぁ・・・」
あまりに饒舌に喋るジブに対して
思わずテオから大きなため息が
漏れる。
「様子見して、
第一に攻め込まれでもしたらどうする気なんです?
今あそこにいて、カイジン止められる奴なんてほぼいないに等しい。
あんただって、あの距離転移するのはきついでしょ?」
そこへ更にジブは畳み掛けていく。
「・・・・・・・勝てる見込みは?」
「さあ、戦って探るしかない」
「・・・・・・・」
(一理ある・・・というか悩んではいた。
あっちに行かれたら大分面倒だ。)
「どうします?
このままならあの人勝手に行っちゃいそうですけど。」
そうやって二人が話していると、
リリーはテオの横を通り過ぎて
歩き出そうとしていた。
「おい」
「ごめん、お金とかそういうのはもういらないから」
思わず肩を掴み引き留めるも
意志は固そうだ。
そのまま振り払って
ずかずかと歩き出してしまう。
「聞いたことありますよ。
死神リリー、
死神の名の通り無愛想で、無表情。
何考えてるかも読めないが、
超が付くほどのお人よし。
あの傷だって、
疑わしきは罰せずを極限まで貫いたせいで
できた傷って話だ。
何が起きてんのかはあんまり聞けてなかったが
まあ、あの能力にしたら
報われない粛清騎士なんて仕事やってる狂人ですからね
目の前の誰かを見捨てて
大局を取れるような奴じゃない。
どうするんです?
見捨ててあの戦力失う気ですか?」
「・・・ったく、商売人ってのはこれだから・・・」
「ハンターに必要なのは
まず腕で、次が足元見ることです」
「はぁ・・・・待てリリー
行っては良い
だが」
また彼女の目の前へ転移し、
引き留める。
「ちょっと待ってくれ」
「・・・どのくらい?」
「コイツらとの話がおわるまで」
ジブたちを指し、
嫌そうに顔を歪めながらそう言う。
「俺らはもう話しましたよ?」
「・・・そっちに関してはもういい。
文句は言うなよ?」
「約束は守りますよ」
「だが、その上で話しとかないといけないことがある」
「ほお?」
「リリーは帰って待っててくれ
すぐにこいつらも連れていく
いいな」
「・・・・わかった。」
そう返事したリリーは廊下を駆け抜け、
城塞を出て、屋根を軽々と飛び移っていく。
「な、なにあれ」
兵士たちは
何かに化かされたように
目を丸くし、口をぼけっと開けることしかできない。
彼女が走り、跳び、
その向かう先には、
「・・・・いないな・・・ん?」
空中に漂うルーカスがいた。
そこに向かって
リリーが跳んでいく。
背中へ飛び移り、
「ただいま」
そう言った。
ルーカスの
あの黒く禍々しい背中を伝い、
リリーの激しい心臓の鼓動が響いてくる。
熱い体温、
間を置かずになり続ける
心臓の鼓動、
吐息、
すべて伝わってきた。
「・・・お帰り」
「助けに行けるって」
心なしか
声色が明るく
鼻息も荒い。
「・・・ああそう」
ルーカスの冷たい返事にも
「がんばろ」
口元を緩ませてそう答えるほど
いつもと雰囲気も何もかも違った。
「・・・・・・」
「あ、そうだ。
テオがギャンブラーズって人たちを連れて
ここに来るみたい。多分一緒に行くんだと思う。」
「そうか・・・・・なあ」
「何?」
だが、そんな彼女の明るい雰囲気を
ぶち壊すように
「獣人っていうのは
そういう距離が普通なのか?」
冷たい彼の声が
彼女へ投げつけられ、
「うん。
駄目?」
「駄目」
「・・・・・あ、うん。ごめん・・・・」
一瞬で声が縮こまってしまった。
「そ、そんなに嫌だった?」
彼女の気持ちが落ち込んでいくのと同じように
二人の高度も落ちていき、
地上へと降り立つ。
「離してくれ」
「う、うん」
急いで飛び降り、
彼が振り向いた。
そして、二人の目が合った。
今にも泣きだしそうな子供が
涙をこらえるような
そんな顔のリリー、
だが、彼女の涙も彼の顔を見て引っ込んでしまった。
(怯えてる?)
口元が震えている。
その目は
冷たく突き放すような目ではなく、
明らかに困惑していた。
何をされたのか
わかっていないのか、
それとも受け止めきれなかったか
何かが欠けてしまった
彼にとって
リリーの抱擁は
耐えきれる重さではなかったようだ。
大の男が目を丸くして
自分より二回りも小さい女に怯えているのだ。
あらゆる暴力に怒り狂い
惨たらしく敵を倒してきたはずの
角の生えた化け物が
自分に抱き着いてきた
女に怯えている。
「・・・だい、じょうぶ?」
「・・・・・・・」
そう言われたルーカスは
はっとした様子で
思わず後ろを向いた。
「わ、悪い・・・」
「ごめん、何か怖かった?」
「忘れてくれ・・・・
さっきまでのやり取り全部」
「・・・・・・・・・」
口のうまい方ではない
リリーがそこで何かをするのは難しく、
(な、何か言ってあげないと・・・何か)
そう思えども
気まずい時間が流れるばかりで
「・・・誰か来たみたいだな」
いつの間にか約束の時間が来てしまった。
また城塞の壁から何人かが降り立ち、
二人の元へと近寄っている。
その方を二人は向いた。
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