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1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、魔王に挑む 2

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  地に降り注ぐ魔剣は容赦なく魔王たちを襲う。

  不思議なことにリョーマの周りには一本の魔剣も落ちては来なかった。

 ……全く、やってらんねぇな。

  魔族たちの頭上には分厚い結界が張られていた。

「まぁ、テメェらは身動き出来ねぇよな。無謀にもその結界から出たら、貧弱なお前らはすぐにお陀仏だもんな」

  リョーマは魔王の方に歩いていった。

  リョーマの居た場所にマグレで当たらなかったのではなく、元からリョーマには当たらなかったのだ。

  亜魔人の時同様、魔剣はリョーマを避けながら降り注ぎ続ける。

「どちらにしろ、無防備を晒してるのはテメェなんだよ、魔王」

『我を敵視する理由は分かる。だが、なぜこうも無差別に攻撃をする?殺したいのなら我だけを殺せ』

「リョーマ。なんでここまでするの?」

「黙れ。ゴミが気安く喋りかけてくんな。反吐が出る」

「!!!」

  フィールはその一言を聞いて悟った。

(今までのリョーマじゃない)

  フィールの感じ取ったものは半分以上当たりだった。

  だが、実際はフィールの知っているリョーマが普通のリョーマではなかった。つまり、本来は今のリョーマが普通のリョーマなのだ。

  魔族たちは悔しそうな顔を浮かべながら俯いている。

  四天王と言えど、今も尚勢いよく降り注ぐ魔剣をくらえばタダでは済まない。

  動きたくても動けない状態だ。

「フィール。テメェは勇者失格だ。私情に流されて勇者のやるべき事をやらねぇなんて」

  一瞬、顔に影を作り静かになったと思ったが、フィールはまだ折れていなかった。

「勇者のやるべき事って何?魔王を倒すこと?魔の手から人を救うこと?」

「バカか?俺がそんな事を思って勇者をやってると思うか?」

「平和になるなら、魔族と争わないで済むならそれが一番じゃないの?」

「はぁ……もう良いから黙れよ。俺は平和なんて望んでねぇ。俺はただ……救いをもたらすだけだ」

  ついにリョーマは魔王の目の前まで来た。

「この結界は魔王テメェのだよな?その体じゃ魔法の二重展開も直接攻撃も無理だろう。楽に無抵抗なままに死んでくれるよな?」

  リョーマは心の中で焦っていた。人間離れの魔力を保持するリョーマも、四天王や幹部を足止めするためには相当強力な魔剣を生成する必要がある。

  その上、多くの魔剣を長時間生成しなくてはならなく、魔力が枯渇しかけていた。

 あと持って二分程度。コイツを殺すための魔剣を生成するとなると、一分と持たないかもしれない。

 コイツは腐っても魔王だ。かなりの魔力を込めないとな。

  リョーマはソウゾウの魔剣を生成し、魔王の無防備な胸元に向けた。

  だが、リョーマ剣が魔王に刺さるギリギリで魔王のバランスが崩れ横に倒れようとしていた。

『あぐっ………!』

  魔王の体を支えていた魔族の一人が魔王の前に立ち、腹を刺されていた。

  魔王を殺すために相当の魔力を込められたその魔剣の攻撃力は相当なもので、身を挺して魔王を守った魔族は意識を一瞬にして失った。

 コイツは四天王ではないか。ここまで弱いはずはない。

 にしても、下等生物の分際で俺を邪魔するなんてな。もうそろそろ時間が無くなる。

『…………我を殺せ』

『ま、魔王様!それはなりません!リギル様にハンドまで命を……ここまで犠牲を出してやっと手に入れられる平和をみすみす逃すのですか!』

『我が居なくとも大丈夫だ。今は多くの命が助かる道に進むのみ』

『それが………魔王様の死なのですか?』

『そうだ』

「おい、魔王。テメェは一つ勘違いをしてるぞ」

  リョーマは魔剣を前に突き出しながら、そう言った。

『勘違い?それはどういう……』

「俺がいつテメェを殺すと言った?」

『っ……!!』

  魔王はその言葉を聞き、驚きと怒りが湧いてきた。

『そなた……貴様はここで死なねばならぬ』

  魔王は腕をふらつかせながら前に突き出した。

「はっ。やっとやる気になったか」

 あと持って三十秒程度か。その間に決着を付けなければ、他の魔族が一気に掛かってくる。

 さすがに四天王と幹部を同時に相手にするのは分が悪い。

 魔力が枯渇したあとの混戦。それだけは絶対に阻止しねぇとな。
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