クズ勇者が伝説の英雄になるまで

パチ朗斗

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1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、気づく

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「私を殺すんじゃないの?この程度じゃ赤ちゃんも死なないよ」

「ウザってぇな」

  剣を構え直したフィールがリョーマを煽り、二人の間に不穏な空気が流れた。

「…………」

  リョーマは次の一撃で確実に仕留めるためにフィールの戦い方を鮮明に思い出す。その間もフィールから目を一切離さずに睨みつけ、警戒を怠らない。

 ……気のせいか?どこかで似たような戦い方をする奴と戦った気がする……。

 少なくとも宮廷騎士団ではない。アイツらはその場でできる最適解を常に導き出す奴らだ。ある程度の型はあるだろうが、基本は我流に近い奴らだった。

 それに比べて、こいつの戦い方は一定の規則性を感じる。

 けどまぁ、まだこいつの戦い方がこれだとは完全に決め付けられない。

「試してみるか」

 もしかしたらこの違和感というか、既視感の正体が分かるかもしれねぇしな。

  そのあとリョーマは、こちらを警戒するフィールに対して魔剣で遠距離から攻撃を仕掛ける。

 右肩、左太もも、右腕、左肩、右膝、左腕、右太もも、左膝。

「はぁ、はぁ……くっ」

「…………」

  リョーマは訝しげにフィールを見た。リョーマは何かに気づいたようだ。

 こいつは……何ともおかしな状況になったな。

  リョーマが右側に仕掛けた攻撃は全て防御し、左側の攻撃は全て受け流していた。

  その行動は、意識や最適解などからくるものでは無く、無意識の領域。言わば、癖だ。

 分かっていても決定打にならない。守備においては欠陥でしかないが、なぜか突破出来ない。

 俺は、この剣術を知ってる。だが、もっと荒々しく、力強く、単調だった。

 こいつよりも強く、脆い剣術だった。が、確かに似た……いや、ほとんど同じ戦い方と言っても良いだろう。

  リョーマは戦闘中にもかかわらず戦闘態勢をやめて無防備を晒した。

「スキあり」

「…………」

  そんなリョーマだが、まるで何も無いかのように、平然とフィールの剣を止めていた。

 どこで戦ったのか、が問題だな。体が何となく覚えてる程度だからな。

「………気が散っからどっか行け」

  リョーマは本気で剣を振るった。

「っ……!!」

  勢いよくフィールは後方に吹き飛んだ。吹き飛んだ先にある木々にぶつかりフィールは力無く俯いた。

 最近か?じゃなきゃ覚えてないだろうしな。最近強いやつと戦ったか………?

「マジで、かよ」

  片手で顔を覆った。その裏側には狂気じみた笑みが浮かばれていた。

  リョーマはただただ笑みを浮かべているだけだった。

「これがホントなら………最高に傑作じゃねぇかよ」

  リョーマはフィールの方を見た。そして、少しずつ近づいて行く。

  そして、フィールの目の前まで来ると、フィールを見下ろしながらしゃがみ込む。そして、顔が触れそうなほど自分の顔を近づけたリョーマ。

「お前、勇者だよな?」

「うっ……!!」

  フィールの長い髪を思い切り掴んだリョーマは先程同様に狂気のような笑みを浮かべていた。

「テメェ……俺と一度会ってるよな?としてよ」

 ずっと俺が弄んでいると思っていたが、違かったようだな。

 俺はアイツにずっと決定打を決められなかったんだ。

 最終的に勝つことは出来たが、もしかしたら運だったかもしれねぇ。

「お前はスゲェよ。まさか、俺を苦しめるほどの、になったんだからな」

  そんな事を言われてなお、フィールは口を開かずに痛みに耐えようとするばかり。

  だが、ここでリョーマの脳裏に疑問が湧いた。

 待てよ?別にこいつに決まった訳じゃないよな?

 そもそもこんなクソザコが魔族になっただけで俺が苦戦するだと?

「テメェ、弟子か師匠はいるのか?もしくは何かの流派に所属してたのか?」

「なんの、話しか、知らないけど……私に弟子も、師匠も……いない。流派だって……入れなかった」

  痛みに耐え、やっと口を開いたフィール。

「つまり、お前の剣技は本当にテメェだけなんだな?」

 あんな変な剣術を他の奴も使うとは考えられない。使うとしたら、そいつは相当イカれた野郎だろうな。

「そうか。じゃあテメェはもう用済みだ。死ね」

  だが、もう少しのところでまた魔剣はリョーマの手から姿を消した。

「チッ。またかよ」

  横に振り向くとファニが息を絶え絶えにしながらこちらに手をかざしていた。

『ギリギリ、間に合いました』

 クソッ。あれだけ注意していたのにまたしくった。

  リョーマはフィールに剣を振り下ろす時、フィールを殺すことを考えてしまった。

  ずっと頭の片隅にファニを閉じ込める魔法の維持を意識していた。

  だが、フィールを殺せることに気持ちが昂り、魔法の維持が疎かになった。

  その一瞬に気が付いたファニはすかさず持てる力を振り絞り、魔法を破壊し、魔剣を消滅させた。

「やっぱテメェが先だな。テメェがいると同じことをずっと繰り返すことになりそうだ」

  リョーマは立ち上がるとファニに向けて中に浮かぶ無数の魔剣の剣先を向けた。

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