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1章 クズ勇者の目標!?
クズ勇者、旅立つ
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「うっ……」
部屋の窓から心地の良い風ソッと吹いてきた。その風でなびいたカーテンが、先程まで遮断していた太陽の光を部屋の中に通しリョーマの顔に当たる。
リョーマは短くうねるとゆっくりと目を開けた。
リョーマの視界に入ったのは先程までの平原では無い、慣れぬ場所だった。
「ここが……死後の世界なのか?」
想像よりも普通だな。もっと神々しいものだと思っていたが。
リョーマが目を覚ました場所は清潔感溢れる場所で、白を基調とした部屋だった。
「ん……?」
リョーマは自身の腹部辺りに違和感を覚えた。何かが乗っているような感覚があったのだ。
「……どうなってやがる?俺は確かに死んだはず……死なないはずがない……」
そこにはリョーマのお腹に頭を乗せ、すやすやと寝ているファニが居た。
怪我人の腹を枕にしやがって……これだから常識のない低脳は嫌いなんだ。
そんな思いとは裏腹に、リョーマの手は自然とファニの頭を撫でていた。
リョーマの顔が浮かべる顔は優しさそのものだった。
「こいつ……気付いてたのか?」
俺は完璧に隠したはず……。他の低脳では気付くことすら出来ないはずだが……?
だが、こいつが気付かなければ、俺が今生きている証明が出来ない。
あの状態で意識を手放したのだ。死なないわけない。
あの時の俺の体は、魔力回路がグチャグチャになってた。全身の感覚もおかしくて、感覚が無くなって来ていた。
魔力回路をイジらなければあの場で俺は確実に死んでいた。
「………まさか、ザコドラごときに助けられるとはな」
ファニの頭を優しく撫でながら、そんな事を呟くリョーマ。
「この感じなら、俺はもう動けるはずだ……」
リョーマはファニを起こさぬようにソッと寝ていたベッドから降りた。
問題は無さそうだ。力も入る。まだ万全の状態とは言い難いが、前よりもは幾分もマシだ。
リョーマは畳まれていた自分の服を取り着替えた。
「軽装しすぎたな。もう少し防御面も考慮して装備しないとな」
まぁ、勇者用のあの装備は重すぎるけどな。あの重装備で動きやすいなんて、意味がわからねぇ。
「剣がねぇか」
まっ、拳があるか。
自分の拳を眺めながら、そんな事を思いながらニヒリと笑った。
人が来ると面倒だ。サッサとこの部屋から出るか。
リョーマはこの部屋の出入口と思わしきドアの方に向かった。
「………待てよ。こっちの方が人目に付かないか……?」
何を思ったのか、リョーマは踵を返し、窓の方へ向かった。
人があまり居ないな……。太陽の位置を考えるに、早朝か?
「これ以上、ゴミ共に情が移る訳にはいかねぇからな」
ファニを見ながら吐き捨てるように、それだけを言い、窓から飛び降りた。
~~十分後~~
<フィール視点>
もう五日も寝たままなんて……リョーマには怒られるかもだけど、心配だな。
まさか、リョーマの声が聞きたいなんて思うなんて、なんだかおかしい。
そんな事を一人で考えながらフィールはリョーマのいる病室へと向かった。
まさか、こんな大きい病院で看病してもらえるんなんて、ついてるのかな?
『フィールさん!大変です!』
「ど、どうしたの?そんなに慌てて?」
前から物凄い勢いでファニが走ってきた。何があればこれ程慌てられるのだろうか。
『実はリョーマ様が!』
ファニは息絶え絶えながらも、リョーマが病室から抜け出したことをフィールに話した。
「え、えぇえ!?」
ファニから事情を聞いたフィールは驚きを隠せなかった。
昨日まで音沙汰なかった人が急に居なくなった?それも服をしっかり着て?
まさか、逃げる機会を伺っていたの?でも、なんで?
フィールは混乱してきていた。理解が出来なかったのだ、リョーマの行動に対して。
「ど、どうしよう、ファニちゃん!」
『ど、どうしましょう!?』
二人はその場でアタフタとしていた。
だが、時間が経つにつれ二人の思考は少しずつ冷静になって行った。
「お、落ち着こう、ファニちゃん」
『そ、そうですね。深呼吸をしましょ』
深呼吸を十回程度行い、ほぼ完全に冷静になった二人。今起きていることへの理解も追いついて来ていた。
「ファニちゃんはどうしたい?」
突然の問いに少し動揺を見せたファニだが、何かを決断したかのように、真っ直ぐとフィールの目を見つめた。
『自分は、リョーマ様を助けると誓いました。なんと言われようともリョーマ様に会いに行きます』
揺るぎない、固い意思がそこにはあった。その目を、意志を全身で感じたフィールは優しく微笑んだ。
「私もだよ。一緒にリョーマを探しに行こ」
『はい!』
部屋の窓から心地の良い風ソッと吹いてきた。その風でなびいたカーテンが、先程まで遮断していた太陽の光を部屋の中に通しリョーマの顔に当たる。
リョーマは短くうねるとゆっくりと目を開けた。
リョーマの視界に入ったのは先程までの平原では無い、慣れぬ場所だった。
「ここが……死後の世界なのか?」
想像よりも普通だな。もっと神々しいものだと思っていたが。
リョーマが目を覚ました場所は清潔感溢れる場所で、白を基調とした部屋だった。
「ん……?」
リョーマは自身の腹部辺りに違和感を覚えた。何かが乗っているような感覚があったのだ。
「……どうなってやがる?俺は確かに死んだはず……死なないはずがない……」
そこにはリョーマのお腹に頭を乗せ、すやすやと寝ているファニが居た。
怪我人の腹を枕にしやがって……これだから常識のない低脳は嫌いなんだ。
そんな思いとは裏腹に、リョーマの手は自然とファニの頭を撫でていた。
リョーマの顔が浮かべる顔は優しさそのものだった。
「こいつ……気付いてたのか?」
俺は完璧に隠したはず……。他の低脳では気付くことすら出来ないはずだが……?
だが、こいつが気付かなければ、俺が今生きている証明が出来ない。
あの状態で意識を手放したのだ。死なないわけない。
あの時の俺の体は、魔力回路がグチャグチャになってた。全身の感覚もおかしくて、感覚が無くなって来ていた。
魔力回路をイジらなければあの場で俺は確実に死んでいた。
「………まさか、ザコドラごときに助けられるとはな」
ファニの頭を優しく撫でながら、そんな事を呟くリョーマ。
「この感じなら、俺はもう動けるはずだ……」
リョーマはファニを起こさぬようにソッと寝ていたベッドから降りた。
問題は無さそうだ。力も入る。まだ万全の状態とは言い難いが、前よりもは幾分もマシだ。
リョーマは畳まれていた自分の服を取り着替えた。
「軽装しすぎたな。もう少し防御面も考慮して装備しないとな」
まぁ、勇者用のあの装備は重すぎるけどな。あの重装備で動きやすいなんて、意味がわからねぇ。
「剣がねぇか」
まっ、拳があるか。
自分の拳を眺めながら、そんな事を思いながらニヒリと笑った。
人が来ると面倒だ。サッサとこの部屋から出るか。
リョーマはこの部屋の出入口と思わしきドアの方に向かった。
「………待てよ。こっちの方が人目に付かないか……?」
何を思ったのか、リョーマは踵を返し、窓の方へ向かった。
人があまり居ないな……。太陽の位置を考えるに、早朝か?
「これ以上、ゴミ共に情が移る訳にはいかねぇからな」
ファニを見ながら吐き捨てるように、それだけを言い、窓から飛び降りた。
~~十分後~~
<フィール視点>
もう五日も寝たままなんて……リョーマには怒られるかもだけど、心配だな。
まさか、リョーマの声が聞きたいなんて思うなんて、なんだかおかしい。
そんな事を一人で考えながらフィールはリョーマのいる病室へと向かった。
まさか、こんな大きい病院で看病してもらえるんなんて、ついてるのかな?
『フィールさん!大変です!』
「ど、どうしたの?そんなに慌てて?」
前から物凄い勢いでファニが走ってきた。何があればこれ程慌てられるのだろうか。
『実はリョーマ様が!』
ファニは息絶え絶えながらも、リョーマが病室から抜け出したことをフィールに話した。
「え、えぇえ!?」
ファニから事情を聞いたフィールは驚きを隠せなかった。
昨日まで音沙汰なかった人が急に居なくなった?それも服をしっかり着て?
まさか、逃げる機会を伺っていたの?でも、なんで?
フィールは混乱してきていた。理解が出来なかったのだ、リョーマの行動に対して。
「ど、どうしよう、ファニちゃん!」
『ど、どうしましょう!?』
二人はその場でアタフタとしていた。
だが、時間が経つにつれ二人の思考は少しずつ冷静になって行った。
「お、落ち着こう、ファニちゃん」
『そ、そうですね。深呼吸をしましょ』
深呼吸を十回程度行い、ほぼ完全に冷静になった二人。今起きていることへの理解も追いついて来ていた。
「ファニちゃんはどうしたい?」
突然の問いに少し動揺を見せたファニだが、何かを決断したかのように、真っ直ぐとフィールの目を見つめた。
『自分は、リョーマ様を助けると誓いました。なんと言われようともリョーマ様に会いに行きます』
揺るぎない、固い意思がそこにはあった。その目を、意志を全身で感じたフィールは優しく微笑んだ。
「私もだよ。一緒にリョーマを探しに行こ」
『はい!』
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