クズ勇者が伝説の英雄になるまで

パチ朗斗

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1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、四天王と戦う 1

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「うらぁああ!!!」

『!!!!!』

  リギルが振り返った時には既に目と鼻の先にリョーマがいた。

「落ちろぉ!」

  そして、リョーマはリギルの横を通ると同時に無理矢理体を捻り、聖剣の持ち方を逆手に持ち替えたのだ。

  逆手で持った聖剣で魔族の背中目掛け勢いよく振り、魔族の羽へと突き刺した。

『あがっ!』

  リョーマの体が落下していく。聖剣が刺さった羽はそれに応じて、破れていく。

「テメェも羽無しじゃ生きられねぇだろうな!」

『これは、かなりやばいね。でも、魔法が使えるからさ』

  リョーマは落ちながら、リギルに向けて薄ら笑みを浮かべていた。

『なっ!魔法が使えない!?』

 やっぱ、この剣は最高だな。魔族特攻の剣。なかなか良い品物だ。

「聖剣にはなぁ、魔族にしか効かないが、魔力阻害ができる剣なんだよ」

『くっ……小癪な』

「四天王だかなんだか知らねぇが、道連れだな」

 死の救済を人間のクズ共に出来ないのが残念だが、あんなクズ共の顔をもう見なくて済むと考えれば、それはそれで良い。

  リョーマは瞼を閉じて、重力に身を任せた。

『残念だね。確かに相当痛手を負うけれど、四天王はこの程度じゃ死なないよ』

「…………虚勢ってわけじゃねぇみてぇだな」

 はぁ……本当にやってらんねぇよ。あの腑抜け勇者じゃこいつは殺せない。それにファニは弱すぎる。つまり、その街は確実に壊滅おち

 なんのために俺は頑張ったんだかな。この世界の人間は貧弱で脆い。なのに口だけは達者。見てるだけでムカつく。腸が煮えくり返りそうだ。そんなゴミ共のために……情けねぇな。

「人間……滅んでくれねぇかな」

 かなりの時間、落ちた気がする。そろそろ地面だな。

 万全の状態でも、落下死はどうしようもない。

 本当にこれでまでだ。

  下は地面。もう少しズレていたら要塞にぶつかっていた。

  地面まで残りわずかのところで、魔族に掛かっていた魔力阻害が消えた。

『じゃあな、(魔式魔術·無重力空間)』

  魔式魔術は魔族の……それも上位の魔族のみが使える魔法。その魔法が強大な力を秘めている。

  そして、この魔法はリギルを中心として半径五メートルほどの球体で周囲を囲う。

  その空間は重力を完全に遮断した空間。

  その球体に入ったまま地面へ向かう。そのままリギルはなんの犠牲もなく、地面に足を着けた。

『残念だっ………!!!』

  余裕の笑みを浮かべ、リョーマが居るであろう後ろへ視線をやると、リョーマともう一人居た。その人物は羽を生やしており、リョーマを抱えて宙に浮いている。

「何の真似だ?」

  両肩を掴まれて地面に落ちずに済んだ。

  そして、リョーマは力無くその人物に聞いた。すると、その人物は明るく答えた。

『リョーマ様を守りたいからです』

  人間の姿のまま、背中に小さめのを生やした人物……黒竜ファブニだった。

「要らねぇよ、そんなの」

『良かったです。本当に』

『あぁあ。身も心も醜怪な上に、役立たずとは、君も救いようがないドラゴンだね』

  その言葉でファニの纏う雰囲気が変わった。

  だが、それも一瞬。その次の瞬間には先程まで浮かべられていた笑みはなく、ただ涙が零れていた。それでもファニは無理矢理に作った笑顔でリョーマを見る。

『リョーマ様。自分は……』

「とりあえず降ろせ。身動きが取れん」

『あっ……すみません』

  急いでリョーマを降ろしたファニは、暗い表情だった。

 はぁ……。俺はそういうの分からねぇんだよな。

 こいつがブサイクなのかキレイなのかすら分からねぇ。

 だから、そんな目で見んな。でも、さっき助けてもらったしな。

 ………何思ってんだ?俺は死のうが別に良かった。こいつが勝手に助けたんだ。

 俺が変に恩義を感じる必要は無い。

 なんなら、俺を助けたことに誇りを持つべきだ。

「正直俺はテメェが醜怪かどうかすら知らねぇ。けどな……テメェの存在自体はただのゴミだ」

『…………』

  リョーマから視線を外し、下を向いたファニ。

「だがよ。ゴミ未満の存在が、ゴミを貶すことには感心しねぇな。身の程を知らねぇみてぇだから、教えてやるよ」

  片手で持った聖剣の先をリギルに向け、挑発的な目で睨み付けた。

『はぁ……まぁ、どうせすぐ終わるし付き合ってあげるよ、この茶番にね』

 羽が使えないからと魔族は別に弱くならない。

 ただ、羽が使えないだけだ。

 こんなことになるなら、心臓を刺していた方が良いよな。

 確実性の問題で止めたが、後悔してきたな。

「さぁ、闘り合おうかやりあおうか、羽無しゴミ虫さんよ」
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