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1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、揉める

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  黒竜の背中に乗り、四天王と言われた魔族のところへと向かうリョーマ。

『君……弱いね。なんだか、想像以上に弱い。こうして対峙してわかったよ』

『ものすごい圧ですね……』

 これはやばいな。想像以上に強い。こうして対峙しているからわかる。

『勇者……では無いようだけど、なぜ聖剣を扱えているの?』

「答える義理はねぇよ、特にお前みたいなゴミにはな」

 本当はフィールが戦うのがベストだか……。あの腑抜けじゃ気絶して終わりだ。

  この時のリョーマはこれまでに感じたことの無いほど緊張をしていた。

  背水の陣となったリョーマは、かえって冷静だ。

『はぁ……なんか興醒めだよ。さっさと終わらせよ』

  肩をあからさまに竦め、手のひらをリョーマたちの方へと向けた。

『遺言とかある?まぁ、伝える気は無いけどさ』

「冥土の土産に教えてやるぜ。俺はテメェみてぇなザコにどうこうできる人間じゃねぇんだよ!」

 空中戦ではこちらが不利すぎる。

  リョーマを聖剣を構え、魔族を睨みつけた。

『じゃあ冥土の土産に名前、教えてあげるよ。四天王リギルさ。四天王に殺されること、光栄に思いな!』

  リギルと名乗る魔族の手のひらから魔法が放たれた。

「その程度か?」

  リョーマはリギルから放たれた魔法を聖剣で真っ二つにした。

『へぇ。まさか魔法を切るなんてね。前言撤回だよ。君、強いね』

「はっ!さっきから言っているだろ」

  この時黒竜は気付いていた。リョーマの異変を。

『リョーマ様。無理は良くないと……』

「うっせぇ!黙れ!テメェは俺の足場になってりゃ良いんだよ!」

  呼吸は乱れ、汗をかき、体を少しふらつかせながら魔族を睨みつけているリョーマ。

  この姿を見た魔族は気色の悪い笑みを浮かべた。

『本当に興味深いよ。あぁ……君のような人間が居るなんてね。もっと早く君の存在を知りたかった』

「何が言いたいんだ?」

『君は僕が何もしなくてもいつか死ぬ。今の君の状況をよく知ってるからね』

  リョーマは既に用済みとなったのか、背を向けた。

「どこに行きやがる!」

『だってさ、君はもう動くのすらもままならない状況だよ?街を破壊してから君をこの手に掛けることにしたんだよ』 

 魔族……。これは想像以上に面倒な存在だな。

「何してんだ?あいつを止めるぞ」

『もう……良いんですよ』

「何言ってやがる!このままじゃ街のヤツらが死ぬぞ!良いのか!」

『いいです!』

「なっ!」

 こいつ、何を考えやがる。こいつも四天王に恐れんのか。

 こいつも自分勝手で保身に走る、カスだったのか。

 いや、違うな。これじゃあまるで俺の知ってるこいつはそんな奴じゃないみたいだな。

 こいつらは……人間も竜族もゴミだ。ゴミしか居ないこの世界を正すたため俺がいる!

「もう良い。俺一人であいつを殺す。テメェはどっか行ってろ。二度と姿を見せるな」

『嫌です!』

「ザコの分際で喚くな!時間が惜しい!さっさと消えろ!殺すぞ!」

『絶対に降ろしません!』

「俺はテメェの許可なんかなくても降りられんだぞ!」 

『自分に……自分にリョーマ様を守らせてください!』

「…………テメェ、急になんだ?気でも触れたのか?」

『自分は人間がどうなろうとも知りません。だから!そんな有象無象のために自分のリョーマ様を死なせたくありません!』

「俺とお前なんてそんな大層な関係じゃねぇ。一緒に過した時間なんて、一日ぐらいだ」

 人間は信用出来ない。自分以外は信用しない。頼らない、絶対に。

 俺は誓ったんだ。俺の命の恩人に……師匠にな!

「テメェは最低のクズだ!一人の命よりも大勢の命を優先しろ!」

『クズはどっちですか!ムカついたらすぐ暴力を振るおうとするし、口は悪いし、みんなを見下してるし!』

「はぁあ!?事実だろ!俺をイラつかせたなら万死に値する。俺は崇高でそこら辺に居るゴミ共のような奴らとは格が違う。俺がどうしようが、それを許すしかねぇんだ!」

  忍耐の限界に達したリョーマは、黒竜の背中を思い切り蹴りは飛ばし、空へと飛び出した。

『何をしてるんですか!』

「あいつの魔法が完成する前に殺す!」

 空中を歩く魔法なんかねぇ。あったとしても使えねぇが。

 だが、一撃で決めなければならない。なんとか一撃だけなら届く!

 この高さから落ちれば即死だ。だが、必ずあいつも道連れにしてやる。
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