クズ勇者が伝説の英雄になるまで

パチ朗斗

文字の大きさ
上 下
19 / 66
1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、四天王と対峙する

しおりを挟む
  森を抜けた先は見晴らしの良い草原だった。

「ファニちゃん」

『はい?』

「あれね……もしかしたら入れないかもしれないんだよね……街の中にさ」

『えっ?』

 街に入れないだと?どういうことだ?

 ……なるほどな。でも、こいつは強さも姿も平均的な人間だ。……もしかして、弱すぎるとかえって魔族だと勘違いされるのか?

「なるほどな。それはどうしようもないな」

『何を考えてるかは分かりませんが、それだけは絶対に違います』

  リョーマたちの視界には活気溢れる街が見えている。その景色を遮るものは一切見えない。街の様子は要塞に近いが、活気溢れるため、どちからかと言えば王都に近い。

  こんな状況で、特別侵入を拒むものなど見えない。

  ファニはなぜこの街に入れないのか、この景色を見て理解することが出来ず、リョーマの方を横目で見つめる。

「チッ……この街は魔王城から一番近ぇんだよ。つまり、常に危機に晒されてる、ってわけ」

『えぇと、つまり?』

「皆まで言わないと分からねぇのか?ようは見えない障壁が存在してんだよ」

『それは、人間以外を拒む障壁ということですか?』

「たぶんな」

「へぇ。常識を知らなそうなリョーマでもそのぐらいは知ってるんだ?」

  そう言ってニヤニヤとしながら、リョーマの顔を見てきたのはフィールだ。

  これを無言でやり過ごすなど、リョーマはしない。

  ファニを挟むようにして歩いてリョーマとフィールだが、リョーマは若干、身を乗り出すようにしてフィールに近付く。

  そして、リョーマはフィールを睨みつけたまま、一言吐き捨てる。

「舐めてんじゃねぇぞ?俺はいつでもテメェに死の救済を下せんだぞ?」

「ハハッ、いやぁ……参ったね」

  リョーマがフィールを睨みながら、草原をかなり歩いて来ると、いつの間にか三人は街に着きそうなところまで来ていた。

「ほらぁ……大きな街でしょ?私の顔じゃなくて、街を見た方が良いよ?」

  少し顔を赤らめながら視線が下がったままボソッとリョーマに告げた。

うぶな人ですねぇ……まぁそう言うところが魅力なのでしょうけど』

  ファニはそんな独り言漏らすと、不意にフィールを見て気づいたことがあった。

 (銀色の髪の毛ってあまり見ませんね……いや、案外普通なのでしょうか……?)

  ファニの予想通り、この世界では金や銀、紫や青の毛色など普通なのだ。

  どちらかと言えば珍しいのはファニのような黒髪だ。だが、長年黒龍とした生きてきたファニにとっては、人間として見るもの全てが新鮮だった。

 (改めて見ると、元の容姿の良さも相まっており、幻想的でキレイな人です。でも、中身は残念ですが……)

  騒がしくも楽しく街へと向かっていた三人。しかし、ここで問題が起きた。

『ふぇッ……!?』

  急に黒竜が後ろに倒れたのだ。まるで、壁にでもぶつかったかのようだ。

「あぁ?なに転んでんだ?俺の貴重な時間を無駄にすんな。早く来い」

「うぅん……それは無理かも」

『なんでです?』

 俺的にはテメェも消えていいんだぜ、フィールさんよ。

 あの時間は良いものだっだが、所詮はクズクズだ。俺は他人を信じないし、心を開くなんてもっての外なんだよ。

 まぁ……多少は楽しめたかな。

「黒竜、入りたいか?」

『入りたいです!どうすれば良いんですか?』

「………やっぱ今のなし。今の俺じゃ無理だ」

 ははっ……。これは相当厳しいな。あと何日間、俺の体が持つかすら分からねぇ。

  リョーマは自分の体の中の変化について考え込むとほぼ同時に空から呑気な声が聞こえてくる。

『あぁあ。つまんなぁいなぁ』

「「『!!!!』」」

  フィール、リョーマ、ファニはその声を聞いて空を見上げた。

  そこには、漆黒を纏い、背に翼を持つ魔族が居た。

「………これだから低能なゴミは嫌いだ」

「ははっ……私の見間違いじゃないよね?」

『はい……あれは絶対に……』

 俺には分からねぇが、二人にはなんだか、分かるのか。

「『魔王軍四天王………!!』」

############### 

()このカッコは主観、主にリョーマ以外の心の声を表したものです。

誤字脱字、その他の疑問点などがありましたら、コメントなどよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日陰の下で笑う透明なへレニウム

たまかKindle
ファンタジー
 ※縦書きで読んで頂ければ幸いでございます。  花は、何処に生えるのか。  美しく逞しく咲こうとする花もコンクリートの上では咲けない。  花弁を開け、咲こうとも見えぬ場所では何も確認などできない。  都会からは、遥彼方にある自然に囲まれた島に一人、花を愛でる青年がいた。  ただ呑気にそして陽気にその島で暮らす彼。ただのんびりとうたた寝を謳歌する事が好きな彼が不慮の事故によりある世界に入り込んでしまう。  そこは、今まで暮らしてきた世界とはまるで違う世界‥‥異世界に勇者として召喚されてしまった。  淡々と訳のわからぬまま話が進むも何も上手くいかず。そしてあろう事か殺されたかけてしまう。そんな中ある一人の男に助けてもらい猶予を与えられた。  猶予はたったの10日。その短時間で勇者としての証明をしなければいけなくなった彼は、鍛錬に励むが‥‥‥‥   彼は我慢する。そして嘘を吐く。慣れたフリをしてまた作る。    見えぬ様、見せぬ様、抗おうとも。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...