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1章 クズ勇者の目標!?
クズ勇者、合流する
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「が、ガントが一撃で……」
クソッ!僕が弱いから……また何も守れないのか。
「くそっ!」
あの素早さ。僕の目では到底追えない。
……直感……直感だけを信じろ。
「はぁああ!!」
何とか防げた……。もしかしたら、時間を稼ぐぐらいなら……。
カインの剣から手応えが消えた。次の瞬間、カインの視界の端で何かが動いた。
「………え?し、シル?」
そ、そんな……なんでシルが倒れてるんだ!?
視界の片隅で血を流しながらシルが倒れていた。
どうすれば、シルを、みんなを救えるんだ……。
僕がこいつの相手をするしかないのか?悩むな、やるしかない!
さっきだって攻撃を受けられた。大丈夫だ!
「ここは僕に任せてください。時間を稼ぎます!」
「しかし……」
「お願いします!」
「分かった。任っ……ゴフッ」
「な、なんで……さっきまであそこに居たのに……」
ダメだ。完全に弄ばれている。
剣を握る手が震える。体に力が入らない。
「少しは強くなったと思ったのに、なんでまた壁にぶつかるんだよ!」
やっと、やっと大切な人を守れるようになったと思ったのに!僕はもう何も失いたくない!
ガントさんにシル、冒険者の皆さんに街のみんな。僕に、僕にこの大切なみんな守らせてくれないのか!
「………捉えた」
『…………』
「………クソ。強すぎるんだよ」
辛うじて接近したカインだったが、反応した亜魔人は持っていた剣で対応してきた。
そのまま吹き飛ばされたカインは木にぶつかった。
「カハッ」
肺の空気が全部抜ける。呼吸が出来ない。
強い衝撃を受けたせいか、意識が朦朧とする……。
あぁ……もうダメなんだ。僕はまた、大切な人を守れないで、終わるんだ。
ごめん、シル。ごめん、ハナ……。僕はもう頑張れそうにない。
今意識を手放せば楽になれるよね?
百人以上居た冒険者は瞬く間に三分の一が減り、ガントの姿を見たほとんどの冒険者は絶望していた。
これは戦闘なんかでは無い。ただの一方的な蹂躙に過ぎなかった。
誰もが、希望を捨てた時、カインには希望が指した。
『……カインくん』
どこから聞こえたのかすら定かでは無いその声。
しかし、その声を聞いたカインは徐々に意識を戻して行った。
「ハナ……ハナなのか?」
あの時、守ることが出来なかった、唯一の友達。僕の好きだった人。
『頑張って……』
「………僕は君に救われてばかりだね」
剣を握れ。呼吸を整えろ。もう二度と大切なものは失わないと誓った。
自分の命よりも守るべきものが今、ある!
今やらなければ守れないものが!
「はぁ、はぁ……僕が相手だ、亜魔人」
立っているのもやっとのカイン。誰が見ても、もう戦えるような姿じゃなかった。
「来いよ。オレがお前の相手だ!」
しかし、カインの行動を嘲笑うかのように、その声は届くことはなく、一人また一人と冒険者が倒れていった。
「なんで、なんでだよ!オレはもう用済みってか!なら、オレを無視できねぇようにしてやる!」
ズタボロの姿でもなお、カインは走った。亜魔人に一矢報いるために。
だが、体は言うことを利かず、意志とは関係なく地面へと転がった。
目の前で人が倒されるのを黙って見てろと言うのか。
僕には無理なのか?守ることすらさせてもらえず、ただただ傍観してろと?
その時、カインの体の奥から一気に力が湧き上がる。
怒りを動力とする、諸刃の剣。
「僕は許さない。こんな弱い僕を!」
今なら追える。亜魔人の動きが!長期戦は無理だ。
亜魔人の背中に出せる力の全てを込めた一太刀を浴びせた。
『……!!!』
意識外からのダメージは意識内からのダメージよりも遥かに大きいものとなる。
更に亜魔人は強いが故にダメージを受ける機会が少ない。
痛みに対する耐性が少ない亜魔人は、自分を傷付けたカインに絶対的な殺意を持った。
「全身が痛い……でも、やらなきゃ!」
剣を構え直した時には視界から亜魔人は消えていた。
「どこに……!!」
後ろか!今の体勢じゃ受けられない。
『………!!』
「背中がお留守だぜ、亜魔人さんよぉ」
「が、ガントさん!?」
「Bランク、舐めんなよ?」
ガントさんが生きてた。これならばいけるかもしれない。
ガントが生きていたという事実だけで全体の士気が自然と上がっていた。
「いける!」
みんな、Cランク相当の熟練者ばかりだ。流石にこの数を相手にするのは辛いだろう。
「おぉ、亜魔人か。こりゃあ楽しみだ」
「「「「!!!」」」」
「さて、鬱憤晴らしといきますか」
黒色のロングローブを羽織り、顔はフードによって隠されていた。
「下がれ!死ぬぞ!」
「あ”ぁ?Fランク予定の冒険者見習い、舐めんじゃねぇぞ?」
クソッ!僕が弱いから……また何も守れないのか。
「くそっ!」
あの素早さ。僕の目では到底追えない。
……直感……直感だけを信じろ。
「はぁああ!!」
何とか防げた……。もしかしたら、時間を稼ぐぐらいなら……。
カインの剣から手応えが消えた。次の瞬間、カインの視界の端で何かが動いた。
「………え?し、シル?」
そ、そんな……なんでシルが倒れてるんだ!?
視界の片隅で血を流しながらシルが倒れていた。
どうすれば、シルを、みんなを救えるんだ……。
僕がこいつの相手をするしかないのか?悩むな、やるしかない!
さっきだって攻撃を受けられた。大丈夫だ!
「ここは僕に任せてください。時間を稼ぎます!」
「しかし……」
「お願いします!」
「分かった。任っ……ゴフッ」
「な、なんで……さっきまであそこに居たのに……」
ダメだ。完全に弄ばれている。
剣を握る手が震える。体に力が入らない。
「少しは強くなったと思ったのに、なんでまた壁にぶつかるんだよ!」
やっと、やっと大切な人を守れるようになったと思ったのに!僕はもう何も失いたくない!
ガントさんにシル、冒険者の皆さんに街のみんな。僕に、僕にこの大切なみんな守らせてくれないのか!
「………捉えた」
『…………』
「………クソ。強すぎるんだよ」
辛うじて接近したカインだったが、反応した亜魔人は持っていた剣で対応してきた。
そのまま吹き飛ばされたカインは木にぶつかった。
「カハッ」
肺の空気が全部抜ける。呼吸が出来ない。
強い衝撃を受けたせいか、意識が朦朧とする……。
あぁ……もうダメなんだ。僕はまた、大切な人を守れないで、終わるんだ。
ごめん、シル。ごめん、ハナ……。僕はもう頑張れそうにない。
今意識を手放せば楽になれるよね?
百人以上居た冒険者は瞬く間に三分の一が減り、ガントの姿を見たほとんどの冒険者は絶望していた。
これは戦闘なんかでは無い。ただの一方的な蹂躙に過ぎなかった。
誰もが、希望を捨てた時、カインには希望が指した。
『……カインくん』
どこから聞こえたのかすら定かでは無いその声。
しかし、その声を聞いたカインは徐々に意識を戻して行った。
「ハナ……ハナなのか?」
あの時、守ることが出来なかった、唯一の友達。僕の好きだった人。
『頑張って……』
「………僕は君に救われてばかりだね」
剣を握れ。呼吸を整えろ。もう二度と大切なものは失わないと誓った。
自分の命よりも守るべきものが今、ある!
今やらなければ守れないものが!
「はぁ、はぁ……僕が相手だ、亜魔人」
立っているのもやっとのカイン。誰が見ても、もう戦えるような姿じゃなかった。
「来いよ。オレがお前の相手だ!」
しかし、カインの行動を嘲笑うかのように、その声は届くことはなく、一人また一人と冒険者が倒れていった。
「なんで、なんでだよ!オレはもう用済みってか!なら、オレを無視できねぇようにしてやる!」
ズタボロの姿でもなお、カインは走った。亜魔人に一矢報いるために。
だが、体は言うことを利かず、意志とは関係なく地面へと転がった。
目の前で人が倒されるのを黙って見てろと言うのか。
僕には無理なのか?守ることすらさせてもらえず、ただただ傍観してろと?
その時、カインの体の奥から一気に力が湧き上がる。
怒りを動力とする、諸刃の剣。
「僕は許さない。こんな弱い僕を!」
今なら追える。亜魔人の動きが!長期戦は無理だ。
亜魔人の背中に出せる力の全てを込めた一太刀を浴びせた。
『……!!!』
意識外からのダメージは意識内からのダメージよりも遥かに大きいものとなる。
更に亜魔人は強いが故にダメージを受ける機会が少ない。
痛みに対する耐性が少ない亜魔人は、自分を傷付けたカインに絶対的な殺意を持った。
「全身が痛い……でも、やらなきゃ!」
剣を構え直した時には視界から亜魔人は消えていた。
「どこに……!!」
後ろか!今の体勢じゃ受けられない。
『………!!』
「背中がお留守だぜ、亜魔人さんよぉ」
「が、ガントさん!?」
「Bランク、舐めんなよ?」
ガントさんが生きてた。これならばいけるかもしれない。
ガントが生きていたという事実だけで全体の士気が自然と上がっていた。
「いける!」
みんな、Cランク相当の熟練者ばかりだ。流石にこの数を相手にするのは辛いだろう。
「おぉ、亜魔人か。こりゃあ楽しみだ」
「「「「!!!」」」」
「さて、鬱憤晴らしといきますか」
黒色のロングローブを羽織り、顔はフードによって隠されていた。
「下がれ!死ぬぞ!」
「あ”ぁ?Fランク予定の冒険者見習い、舐めんじゃねぇぞ?」
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