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4章 衝突する勢力
13話 衝突 1
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「………んん」
小さな呻き声と共に京雅は目を覚ました。
不機嫌そうな顔で周りを見渡すと、遠くから順に蒋、リベルト、英翔と並び全員気持ちよさそうに寝ている。
その光景を見て京雅は無意識に笑っていた。
ぼぉっと何も考えずにその光景を眺めること数分。意識が覚醒し始めて、京雅はゆっくりと立ち上がった。
その場で大きく伸びをして、京雅はゆっくりとした足取りでその寝室を出た。
部屋を出ると下から微かに音が聞こえる。
一瞬だけ立ち止まるも、特に気にも止めていない様子で階段を降り始めた。
階段を降りきると、不意に京雅の鼻を美味しそうな匂いがくすぐる。
リビングに入ると、そこにはエプロン姿でキッチンに立つミリフィアが居た。ドアの開ける音に反応してミリフィアはドアの方に振り返った。
「あ、おはようございます。朝、早いんですね」
「まぁな。朝飯作ってるのか?」
「はい。もうちょっと掛かると思いますが」
京雅は意外だ、と言う言葉を寸止めのところで飲み込んだ。厳密にはそうせざるを得なかった。ミリフィアの調理をする背中を見て京雅はほんの一瞬だけ、シリアの面影を………異世界に居た頃の恋人の面影をミリフィアの後ろ姿に重ねたからだ。
「どうかしましたか?」
「………いや。少し考え事をしていただけだ」
「そうですか?じゃあ、ご飯先に食べてましょう。皆さんを起こすのも悪いですし」
「……あぁ、そうだな」
サンドイッチの乗った大皿をテーブルの上に置き、ミリフィアは定位置に座る。京雅も普段座る場所であるミリフィアの前に座った。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
様々な具材のサンドイッチがある中、京雅はたまごサンドを手に取った。
「……美味いな」
「本当ですか?そう言ってもらえると嬉しいです」
そう言って はにかむ姿に京雅は再び恋人の姿を重ねていた。
「………」
「………」
そこからは普段の二人にしては珍しくいっこうに話す様子がなかった。京雅は何かを考え込んでいる様子で、ミリフィアは何故かモジモジとして顔を微かに赤らめながら時折京雅の方へと視線を向けていた。
「………なぁ、姫岡」
「っ……!?な、なんですかっ!?」
急に声を掛けられたミリフィアは、体を大きくビクつかせながら返事をした。だが、京雅はその様子に一切触れずに本題を口にする。
「……………こっちは楽しいか?」
「えっ……はい。分からないところもありますが、とっても楽しいです」
「…………なら良かった。ご馳走様。美味かったよ」
京雅はそれだけ言ってリビングを出ようとドアに手をかける。それと同時に後ろからミリフィアの引き止める声が京雅の耳に入った。
「あ、あの……!」
「どうした?」
声をかけたは良いものの、何を言おうとしたのか考えてすらなかったミリフィアはそこで慌てて何かを言おうとして、「えっと」や「あの」と言う言葉を連呼している。
「はぁ……落ち着け。ゆっくりで良いから」
そう言って京雅は再び自分の定位置に座った。
「え、えぇとですねぇ………そ、そうです。おかしいと思うんですよ!」
「何がだ?」
更に顔を赤く染めたミリフィアは勢いよく脈絡もない事を口にし、京雅は無表情ながらも疑問を呈した。
「えぇと……ほら、皆さんは名前なのに私だけ苗字じゃないですか?私、その、一応……いとこ?じゃないですか?やはり名前呼びの方が自然じゃないかなぁっと」
若干早口でそう言い切ったミリフィアの顔はやはり赤かった。
京雅は考える素振りをした後にミリフィアの顔を見つめる。
「………そうかもな。じゃあこれからは愛衣と呼ぶことにする」
「ッ……!?!?」
その一言でミリフィアの顔は更に真っ赤に染まる。
魂が抜け落ちたかのように放心状態になったミリフィアを、京雅は微笑を浮かべながら眺めていた。
「っ……………じゃ、じゃあ私……お皿を片付けないといけませんので!」
ミリフィアは皿を持つと勢い良く立ち上がる。
「っ………キャッ!」
「あっ……!」
急いだせいでテーブルの足にミリフィアの足が掛かり、そのまま床へ転びそうになる。
京雅は咄嗟にテーブルの上に上がって、無意識のうちにミリフィアの手を掴んでいた。
パリン、と皿の割れる音が部屋中に響き渡る。しかし、誰一人としてその音に反応する者はいなかった。
「………」
「………」
京雅がミリフィアを自分の方へ引き寄せたため、二人は今密着に近い状態で見つめ合っていた。
京雅の目にはもうミリフィアしか映っておらず、それはミリフィアも同じだった。周囲の景色はぼやけ、目の前の人物をいっそう輝かせた。
「…………」
「…………」
無意識にミリフィアは背伸びをしていた。それに反応するように京雅も顔を下げる。
二人の顔が徐々に迫り、ミリフィアはついに瞳を瞑った。
ピンポーン。
あと僅かで唇が重なるというところでタイミング良くインターホンの音が家中に鳴り響いた。
「っ………!!」
「っ………!!」
その音で二人は正気に戻り、気まずそうに顔を背ける。
「その……すまん。咄嗟に手を掴んだら、あぁなってしまった」
「い、いえッ!それよりも誰か来たようですし私、行きますね」
「任せた。俺は皿を片付けとく」
二人は頬を微かに赤く染めながら各々動き始める。
京雅は床に散らばった皿の破片を魔法を使い瞬時に片付けた。
「京雅さん。鶴壁先生が呼んでます」
「…………どういうことだ?」
「ボランティア活動、やるんですか?」
「ボランティア?」
リビングに顔を覗かせたミリフィアの言葉に京雅は訝しげな顔を浮かべながらも玄関に向かう。
玄関に顔を出すとそこには、焦りや疲労と言った感情を露骨に醸し出す鶴壁の姿があった。
「すみません、休日にも関わらず……しかし、どうしても話しておかなければいけないものでしてね」
「なんで俺がここに居るって分かったんだ?」
「お母さんから聞いたんです。すみませんが、京雅君を連れて行っても良いですか?」
「………はい。でも、今度京雅さんがボランティア活動を行う時は私も誘っていただけますか?」
「もちろんです。その時は声を掛けさせていただきますね」
二人の間でどんどん会話が進み、いつの間にか連行される羽目になった京雅。
「じゃあ、行きましょう。先に外に行っていますよ」
そう言って外に出た鶴壁。その姿を見送ると、京雅は無言で靴を履いて玄関のドアに手を掛けた。
「………行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
~~~~~~~~~~~~~~
お久しぶりです!投稿しようと思い続け気づいたら約1ヶ月も投稿していなかった……大変申し訳ございません!
今年中にはこの章を終わらせたいと思っていますので、これからは少しずつ前までのように週に1度は投稿できるようにしたいなと思っております!
最近は寒くなってきましたのでお身体にはお気をつけてください!
拙い部分多々あると思いますがこれからも作品共々よろしくお願いします!
小さな呻き声と共に京雅は目を覚ました。
不機嫌そうな顔で周りを見渡すと、遠くから順に蒋、リベルト、英翔と並び全員気持ちよさそうに寝ている。
その光景を見て京雅は無意識に笑っていた。
ぼぉっと何も考えずにその光景を眺めること数分。意識が覚醒し始めて、京雅はゆっくりと立ち上がった。
その場で大きく伸びをして、京雅はゆっくりとした足取りでその寝室を出た。
部屋を出ると下から微かに音が聞こえる。
一瞬だけ立ち止まるも、特に気にも止めていない様子で階段を降り始めた。
階段を降りきると、不意に京雅の鼻を美味しそうな匂いがくすぐる。
リビングに入ると、そこにはエプロン姿でキッチンに立つミリフィアが居た。ドアの開ける音に反応してミリフィアはドアの方に振り返った。
「あ、おはようございます。朝、早いんですね」
「まぁな。朝飯作ってるのか?」
「はい。もうちょっと掛かると思いますが」
京雅は意外だ、と言う言葉を寸止めのところで飲み込んだ。厳密にはそうせざるを得なかった。ミリフィアの調理をする背中を見て京雅はほんの一瞬だけ、シリアの面影を………異世界に居た頃の恋人の面影をミリフィアの後ろ姿に重ねたからだ。
「どうかしましたか?」
「………いや。少し考え事をしていただけだ」
「そうですか?じゃあ、ご飯先に食べてましょう。皆さんを起こすのも悪いですし」
「……あぁ、そうだな」
サンドイッチの乗った大皿をテーブルの上に置き、ミリフィアは定位置に座る。京雅も普段座る場所であるミリフィアの前に座った。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
様々な具材のサンドイッチがある中、京雅はたまごサンドを手に取った。
「……美味いな」
「本当ですか?そう言ってもらえると嬉しいです」
そう言って はにかむ姿に京雅は再び恋人の姿を重ねていた。
「………」
「………」
そこからは普段の二人にしては珍しくいっこうに話す様子がなかった。京雅は何かを考え込んでいる様子で、ミリフィアは何故かモジモジとして顔を微かに赤らめながら時折京雅の方へと視線を向けていた。
「………なぁ、姫岡」
「っ……!?な、なんですかっ!?」
急に声を掛けられたミリフィアは、体を大きくビクつかせながら返事をした。だが、京雅はその様子に一切触れずに本題を口にする。
「……………こっちは楽しいか?」
「えっ……はい。分からないところもありますが、とっても楽しいです」
「…………なら良かった。ご馳走様。美味かったよ」
京雅はそれだけ言ってリビングを出ようとドアに手をかける。それと同時に後ろからミリフィアの引き止める声が京雅の耳に入った。
「あ、あの……!」
「どうした?」
声をかけたは良いものの、何を言おうとしたのか考えてすらなかったミリフィアはそこで慌てて何かを言おうとして、「えっと」や「あの」と言う言葉を連呼している。
「はぁ……落ち着け。ゆっくりで良いから」
そう言って京雅は再び自分の定位置に座った。
「え、えぇとですねぇ………そ、そうです。おかしいと思うんですよ!」
「何がだ?」
更に顔を赤く染めたミリフィアは勢いよく脈絡もない事を口にし、京雅は無表情ながらも疑問を呈した。
「えぇと……ほら、皆さんは名前なのに私だけ苗字じゃないですか?私、その、一応……いとこ?じゃないですか?やはり名前呼びの方が自然じゃないかなぁっと」
若干早口でそう言い切ったミリフィアの顔はやはり赤かった。
京雅は考える素振りをした後にミリフィアの顔を見つめる。
「………そうかもな。じゃあこれからは愛衣と呼ぶことにする」
「ッ……!?!?」
その一言でミリフィアの顔は更に真っ赤に染まる。
魂が抜け落ちたかのように放心状態になったミリフィアを、京雅は微笑を浮かべながら眺めていた。
「っ……………じゃ、じゃあ私……お皿を片付けないといけませんので!」
ミリフィアは皿を持つと勢い良く立ち上がる。
「っ………キャッ!」
「あっ……!」
急いだせいでテーブルの足にミリフィアの足が掛かり、そのまま床へ転びそうになる。
京雅は咄嗟にテーブルの上に上がって、無意識のうちにミリフィアの手を掴んでいた。
パリン、と皿の割れる音が部屋中に響き渡る。しかし、誰一人としてその音に反応する者はいなかった。
「………」
「………」
京雅がミリフィアを自分の方へ引き寄せたため、二人は今密着に近い状態で見つめ合っていた。
京雅の目にはもうミリフィアしか映っておらず、それはミリフィアも同じだった。周囲の景色はぼやけ、目の前の人物をいっそう輝かせた。
「…………」
「…………」
無意識にミリフィアは背伸びをしていた。それに反応するように京雅も顔を下げる。
二人の顔が徐々に迫り、ミリフィアはついに瞳を瞑った。
ピンポーン。
あと僅かで唇が重なるというところでタイミング良くインターホンの音が家中に鳴り響いた。
「っ………!!」
「っ………!!」
その音で二人は正気に戻り、気まずそうに顔を背ける。
「その……すまん。咄嗟に手を掴んだら、あぁなってしまった」
「い、いえッ!それよりも誰か来たようですし私、行きますね」
「任せた。俺は皿を片付けとく」
二人は頬を微かに赤く染めながら各々動き始める。
京雅は床に散らばった皿の破片を魔法を使い瞬時に片付けた。
「京雅さん。鶴壁先生が呼んでます」
「…………どういうことだ?」
「ボランティア活動、やるんですか?」
「ボランティア?」
リビングに顔を覗かせたミリフィアの言葉に京雅は訝しげな顔を浮かべながらも玄関に向かう。
玄関に顔を出すとそこには、焦りや疲労と言った感情を露骨に醸し出す鶴壁の姿があった。
「すみません、休日にも関わらず……しかし、どうしても話しておかなければいけないものでしてね」
「なんで俺がここに居るって分かったんだ?」
「お母さんから聞いたんです。すみませんが、京雅君を連れて行っても良いですか?」
「………はい。でも、今度京雅さんがボランティア活動を行う時は私も誘っていただけますか?」
「もちろんです。その時は声を掛けさせていただきますね」
二人の間でどんどん会話が進み、いつの間にか連行される羽目になった京雅。
「じゃあ、行きましょう。先に外に行っていますよ」
そう言って外に出た鶴壁。その姿を見送ると、京雅は無言で靴を履いて玄関のドアに手を掛けた。
「………行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
~~~~~~~~~~~~~~
お久しぶりです!投稿しようと思い続け気づいたら約1ヶ月も投稿していなかった……大変申し訳ございません!
今年中にはこの章を終わらせたいと思っていますので、これからは少しずつ前までのように週に1度は投稿できるようにしたいなと思っております!
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