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3章 それぞれの特訓
4話 大変な一日 2
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「学校はどうだ?」
「楽しいですよ。名前は忘れてしまいましたが、ある男の子から遊びの誘いも受けちゃいました」
「そうか。何はともあれ、馴染めたようで何よりだ」
京雅は視線を手元の教科書に向けたまま時々ブツブツと何かを言ったり、急に高笑いのようなものをしながらミリフィアと職員室へと向かっていた。
「それで、何か話したいことがあるんじゃないのか?」
階段に差し掛かったところで京雅は視線を少し上げて隣を歩くミリフィアの方を見た。
その一言でミリフィアは妖艶な表情を浮かべてクスりと笑みを零した。
「そうですね。やはり京雅さんは欺けなさそうです」
「御託は良い。俺は早く問題を聞かなきゃならないんだ」
階段の踊り場で数歩先を歩いていたミリフィアがその場で京雅の方へと体を向けた。
「私、あなたのこと、信用してませんから。私にした事、リベルトさん達にした事、それらを顧みれば当然です」
「そうだな。俺も少々手荒だったな。それで、それだけか?」
「えぇ。と言っても、友達は友達ですから」
終始穏やかな雰囲気のままミリフィアはそう言いきった。
京雅はいつもの仏教面だがどこか安心したような顔をしていた。
「では、私は戻りますね。おトイレにも行きたいので」
「あぁ」
そう言ってミリフィアは元気よく階段を駆け上がった。
「あっ……!」
「っ……!」
京雅が歩き出すと同時に背後からミリフィアの声が微かだが聞こえた。京雅は急いで背後に視線をやると、階段を踏み外したのか、背中から落ちるミリフィアの姿があった。
「ったく」
京雅は床とミリフィアの間に体を滑り込ませ、キレイにミリフィアをお姫様抱っこでキャッチした。
「はぁ……大丈夫か?」
「え……あ、あははは……。すみません、さっそく助けていただいて」
「怪我は?」
「えっ?」
「怪我は無いのか?痛い所とかないか?」
「えっと……特にはないと、思います」
「そうか」
京雅はそこまで言い終えるとゆっくりとミリフィアを床へと下ろす。ミリフィアを下ろすと、床に投げ捨てた教科書類を拾いながら再び口を開いた。
「さっき気を付けろと言ったばかりのはずだ」
「次は気を付けます」
「あぁ。頼むぞ」
教科書類を拾い終えた京雅は立ち上がってミリフィアの前まで歩いて来て、無言でミリフィアを見つめた。
「あ、え……と。あの、なんです?」
その少しの沈黙のあと、それに耐えきれず、赤面をしたミリフィアは視線を京雅から外し、小さな声でそうつぶやく。
「心配だからお前が階段を上がり切るまで待ってるんだ」
「………親でもそんな過保護にはなれませんよ」
ミリフィアはにこやかな笑みを浮かべると軽快な足取りで階段を登りきった。
階段を登りきると、体を京雅の方へと向けた。
「ほら、私は大丈夫ですから、もう行ってください」
「そうか。気を付けろよ」
そう言って京雅は階段を降りていった。
だが、そのあともミリフィアはその場に佇んで先程まで京雅が居た場所を見つめていた。
「反則ですよ……。ですが、少しだけなら、信頼しても……良いです」
「楽しいですよ。名前は忘れてしまいましたが、ある男の子から遊びの誘いも受けちゃいました」
「そうか。何はともあれ、馴染めたようで何よりだ」
京雅は視線を手元の教科書に向けたまま時々ブツブツと何かを言ったり、急に高笑いのようなものをしながらミリフィアと職員室へと向かっていた。
「それで、何か話したいことがあるんじゃないのか?」
階段に差し掛かったところで京雅は視線を少し上げて隣を歩くミリフィアの方を見た。
その一言でミリフィアは妖艶な表情を浮かべてクスりと笑みを零した。
「そうですね。やはり京雅さんは欺けなさそうです」
「御託は良い。俺は早く問題を聞かなきゃならないんだ」
階段の踊り場で数歩先を歩いていたミリフィアがその場で京雅の方へと体を向けた。
「私、あなたのこと、信用してませんから。私にした事、リベルトさん達にした事、それらを顧みれば当然です」
「そうだな。俺も少々手荒だったな。それで、それだけか?」
「えぇ。と言っても、友達は友達ですから」
終始穏やかな雰囲気のままミリフィアはそう言いきった。
京雅はいつもの仏教面だがどこか安心したような顔をしていた。
「では、私は戻りますね。おトイレにも行きたいので」
「あぁ」
そう言ってミリフィアは元気よく階段を駆け上がった。
「あっ……!」
「っ……!」
京雅が歩き出すと同時に背後からミリフィアの声が微かだが聞こえた。京雅は急いで背後に視線をやると、階段を踏み外したのか、背中から落ちるミリフィアの姿があった。
「ったく」
京雅は床とミリフィアの間に体を滑り込ませ、キレイにミリフィアをお姫様抱っこでキャッチした。
「はぁ……大丈夫か?」
「え……あ、あははは……。すみません、さっそく助けていただいて」
「怪我は?」
「えっ?」
「怪我は無いのか?痛い所とかないか?」
「えっと……特にはないと、思います」
「そうか」
京雅はそこまで言い終えるとゆっくりとミリフィアを床へと下ろす。ミリフィアを下ろすと、床に投げ捨てた教科書類を拾いながら再び口を開いた。
「さっき気を付けろと言ったばかりのはずだ」
「次は気を付けます」
「あぁ。頼むぞ」
教科書類を拾い終えた京雅は立ち上がってミリフィアの前まで歩いて来て、無言でミリフィアを見つめた。
「あ、え……と。あの、なんです?」
その少しの沈黙のあと、それに耐えきれず、赤面をしたミリフィアは視線を京雅から外し、小さな声でそうつぶやく。
「心配だからお前が階段を上がり切るまで待ってるんだ」
「………親でもそんな過保護にはなれませんよ」
ミリフィアはにこやかな笑みを浮かべると軽快な足取りで階段を登りきった。
階段を登りきると、体を京雅の方へと向けた。
「ほら、私は大丈夫ですから、もう行ってください」
「そうか。気を付けろよ」
そう言って京雅は階段を降りていった。
だが、そのあともミリフィアはその場に佇んで先程まで京雅が居た場所を見つめていた。
「反則ですよ……。ですが、少しだけなら、信頼しても……良いです」
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