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2章 奇妙な事件
26話 これからの方針
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「「「「…………」」」」
「えっと……これはどう言う状況なの?」
瑛翔が風呂から上がると、リビングには京雅の他にもリベルト、リガル、ミリフィアが居た。
「上がったか。瑛翔も混ざるか?」
リビングにあるテーブルの上で繰り広げられているのは一度の判断で自身の勝敗を揺るがす一進一退の心理戦……ババ抜きだった。
「くそっ!また三番かよ!」
「リガル、お前は全部表情に出るから負けるんだ」
「リベルトとか京雅はいつも仏教面だからだろ!なんでピクリとも表情が変わんねぇんだよ!」
そこには殺伐とした雰囲気は一切なかった。まるで昔からずっと連れ添った友人との会話のようで、瑛翔はその光景に酷く惹かれ、ものすごい疎外感を感じられずにはいられなかった。
「ぼ、僕はもうちょっと寝てるよ」
「瑛翔も一緒にどうだ?一緒にリベルトを最下位にしてやろうぜ!」
「リガル、貴様が我に勝つだと?」
「ミリフィア様を抜いて最下位にさせてやる!」
「なんです?私をバカにしてるんですか!」
目の前で和気あいあいと美男美女が楽しげに会話を繰り広げている。そんな状況で、いつの間にか瑛翔の視線は京雅に向いていた。
「ん?どうした?早く座れよ」
穏やかな笑みを浮かべた京雅に促されるまま、瑛翔は京雅の隣に座った。
「なんでみんなでトランプやってるの?」
「トランプで俺が勝ったら死ななくても良いって言うから勝負してたんだ」
それは瑛翔が風呂に入ったあとの事だ。
急にリベルトがリビングに来てトランプ片手にトランプ勝負を仕掛けてきたのだ。
「それで、どうだったの?」
「二人でババ抜きは面白くないだろ?だから二対二の勝負をしてたんだ。リガルと俺、リベルトとミリフィアでな。まぁ、ミリフィアとリガルが弱すぎて勝負にならなかったが」
トランプを配りながら京雅はそんなこと言った。
「さて、じゃあ本気の勝負と行こう。これで俺か瑛翔が勝ったら死ななくて良い、それで良いよな?」
「あぁ。逆に我らの誰か……我が勝ったら死んでもらうぞ」
「なんで言い直すんだよ!俺かミリフィア様が一番取るかもだろ!」
「天と地がひっくり返ってもそんな事にはならん」
「んじゃ、始めるぞ」
~~~~
「残念だったな、リベルト」
「クッ………さすがだな」
トランプ勝負は見事京雅の勝利だった。初めは一番カードが多く残っていたが、その分カードの揃いも良く、リベルトとの心理戦に勝ち、見事一番抜けできていた。
ちなみに、二位はリベルト、三位は瑛翔、四位はリガル、五位はミリフィアとなっていた。
「それで、お前らはこれからどうするんだ?」
トランプを片付けながら京雅は目の前にいるリベルトに話しかけた。
「我らの国に戻るさ。復興しなければならぬしな」
「そうか。気をつけろよ」
「あぁ。と言っても我は残るがな」
「は?」
「え?」
「リベルトさん?」
「何言ってんだよ?」
リベルトの思わぬ発言に皆困惑していた。
「貴様らが他の人間に言わないとは限らぬ。故の判断だ」
「つまり、監視すると?」
「あぁ。貴様らの学校については少々調べさせてもらった。故に問題は無い」
「まさか、学校まで来る気か?」
「無論だ。もちろん学生として侵入する。なに、我はこう見えてもヴァンパイアの中では若い方だ」
京雅は何かを言おうとして口を閉ざす。トランプを片手に立ち上がり、自室へと向かう。その場に居たもの全てが京雅の次の発言を待っていた。
ドアの前まで来た京雅は瑛翔達の方へ視線を向け、ついに口を開く。
「他の二人はどうする。俺は別にどうこう言うつもりは無い。ただ知りたいだけだ」
「俺は…………」
「俺としては母国に帰った方が良いと思うぞ。復興もだが、一度に転校生が沢山来るとかえって怪しまれる。色々と詮索されてボロが出たら監視も何も無いからな」
少しの沈黙の後、リガルは俯いていた頭を上げて口を開いた。
「俺は………戻る。俺は力仕事をやってる方が性に合うし、国王が……恩人が残した国だからな。復興ぐらいしないと」
「そうか」
そして、その場の視線はある人物、ミリフィアへと向く。
その視線を感じたミリフィアは不思議そうな顔をしながら、さも当然と言うようにあっけらかんとした様子で言葉を紡いだ。
「私は残りますよ。民のこともありますし、本来なら戻るべきなのでしょうが、私たちの存在を知られる、と言うのも充分に危険ですから」
「そうか。なら、せめて自分たちのせいでバレないようにするんだな」
それだけを言い残し、京雅は部屋に入っていった。
「では、これでこれからの方針は決まった。これからは瑛翔、と呼ばせてもらう。我のことは帯刀でも静也でもどちらでも良い」
「あ、うん。ちなみにその名前って?」
「この世界に生きるための仮名だ。気にするな」
「うん、わかったよ……帯刀君」
~~~~~~~~~~~~~~
これにて、二章完結とさせていただきます。三章からは日常回が基本になると思います。あと、恋愛要素等を入れる予定です。
ちなみに、ミリフィアさんの名前はまだ思いつかないので、次回以降に出そうかなと思います。
次の話は本編と登場人物紹介の二話投稿の予定です。新しい登場人物も含めて書いておきます。
拙い部分も多々ありますがこれからも、この作品共々よろしくお願いします!
「えっと……これはどう言う状況なの?」
瑛翔が風呂から上がると、リビングには京雅の他にもリベルト、リガル、ミリフィアが居た。
「上がったか。瑛翔も混ざるか?」
リビングにあるテーブルの上で繰り広げられているのは一度の判断で自身の勝敗を揺るがす一進一退の心理戦……ババ抜きだった。
「くそっ!また三番かよ!」
「リガル、お前は全部表情に出るから負けるんだ」
「リベルトとか京雅はいつも仏教面だからだろ!なんでピクリとも表情が変わんねぇんだよ!」
そこには殺伐とした雰囲気は一切なかった。まるで昔からずっと連れ添った友人との会話のようで、瑛翔はその光景に酷く惹かれ、ものすごい疎外感を感じられずにはいられなかった。
「ぼ、僕はもうちょっと寝てるよ」
「瑛翔も一緒にどうだ?一緒にリベルトを最下位にしてやろうぜ!」
「リガル、貴様が我に勝つだと?」
「ミリフィア様を抜いて最下位にさせてやる!」
「なんです?私をバカにしてるんですか!」
目の前で和気あいあいと美男美女が楽しげに会話を繰り広げている。そんな状況で、いつの間にか瑛翔の視線は京雅に向いていた。
「ん?どうした?早く座れよ」
穏やかな笑みを浮かべた京雅に促されるまま、瑛翔は京雅の隣に座った。
「なんでみんなでトランプやってるの?」
「トランプで俺が勝ったら死ななくても良いって言うから勝負してたんだ」
それは瑛翔が風呂に入ったあとの事だ。
急にリベルトがリビングに来てトランプ片手にトランプ勝負を仕掛けてきたのだ。
「それで、どうだったの?」
「二人でババ抜きは面白くないだろ?だから二対二の勝負をしてたんだ。リガルと俺、リベルトとミリフィアでな。まぁ、ミリフィアとリガルが弱すぎて勝負にならなかったが」
トランプを配りながら京雅はそんなこと言った。
「さて、じゃあ本気の勝負と行こう。これで俺か瑛翔が勝ったら死ななくて良い、それで良いよな?」
「あぁ。逆に我らの誰か……我が勝ったら死んでもらうぞ」
「なんで言い直すんだよ!俺かミリフィア様が一番取るかもだろ!」
「天と地がひっくり返ってもそんな事にはならん」
「んじゃ、始めるぞ」
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「残念だったな、リベルト」
「クッ………さすがだな」
トランプ勝負は見事京雅の勝利だった。初めは一番カードが多く残っていたが、その分カードの揃いも良く、リベルトとの心理戦に勝ち、見事一番抜けできていた。
ちなみに、二位はリベルト、三位は瑛翔、四位はリガル、五位はミリフィアとなっていた。
「それで、お前らはこれからどうするんだ?」
トランプを片付けながら京雅は目の前にいるリベルトに話しかけた。
「我らの国に戻るさ。復興しなければならぬしな」
「そうか。気をつけろよ」
「あぁ。と言っても我は残るがな」
「は?」
「え?」
「リベルトさん?」
「何言ってんだよ?」
リベルトの思わぬ発言に皆困惑していた。
「貴様らが他の人間に言わないとは限らぬ。故の判断だ」
「つまり、監視すると?」
「あぁ。貴様らの学校については少々調べさせてもらった。故に問題は無い」
「まさか、学校まで来る気か?」
「無論だ。もちろん学生として侵入する。なに、我はこう見えてもヴァンパイアの中では若い方だ」
京雅は何かを言おうとして口を閉ざす。トランプを片手に立ち上がり、自室へと向かう。その場に居たもの全てが京雅の次の発言を待っていた。
ドアの前まで来た京雅は瑛翔達の方へ視線を向け、ついに口を開く。
「他の二人はどうする。俺は別にどうこう言うつもりは無い。ただ知りたいだけだ」
「俺は…………」
「俺としては母国に帰った方が良いと思うぞ。復興もだが、一度に転校生が沢山来るとかえって怪しまれる。色々と詮索されてボロが出たら監視も何も無いからな」
少しの沈黙の後、リガルは俯いていた頭を上げて口を開いた。
「俺は………戻る。俺は力仕事をやってる方が性に合うし、国王が……恩人が残した国だからな。復興ぐらいしないと」
「そうか」
そして、その場の視線はある人物、ミリフィアへと向く。
その視線を感じたミリフィアは不思議そうな顔をしながら、さも当然と言うようにあっけらかんとした様子で言葉を紡いだ。
「私は残りますよ。民のこともありますし、本来なら戻るべきなのでしょうが、私たちの存在を知られる、と言うのも充分に危険ですから」
「そうか。なら、せめて自分たちのせいでバレないようにするんだな」
それだけを言い残し、京雅は部屋に入っていった。
「では、これでこれからの方針は決まった。これからは瑛翔、と呼ばせてもらう。我のことは帯刀でも静也でもどちらでも良い」
「あ、うん。ちなみにその名前って?」
「この世界に生きるための仮名だ。気にするな」
「うん、わかったよ……帯刀君」
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これにて、二章完結とさせていただきます。三章からは日常回が基本になると思います。あと、恋愛要素等を入れる予定です。
ちなみに、ミリフィアさんの名前はまだ思いつかないので、次回以降に出そうかなと思います。
次の話は本編と登場人物紹介の二話投稿の予定です。新しい登場人物も含めて書いておきます。
拙い部分も多々ありますがこれからも、この作品共々よろしくお願いします!
応援ありがとうございます!
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