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2章 奇妙な事件
25話 ひと段落 2
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~瑛翔視点~
「…………ッ!」
今、何か悪い夢を……。
「京雅……?」
「ん?起きたか」
そんなに暑いわけじゃないのに、すごい汗をかいたな。全身が気持ち悪い。
「だいぶうなされてたが、もう大丈夫なのか?」
「う、うん……たぶんね。そう言えばリベルトさん達は無事なの?」
リベルトさん、リガルさん、ミリフィアさん、龍帝。みんな無事なんだろうか……。京雅が居たからきっと生きていると思う……でも、僕は誰一人として守ることが出来なかった。
「あぁ。全員無事だ。リベルトなんかさっき俺に死んでくれ、なんて言ってきたからな」
君は強いな。あんな出来事の後でもそんな笑みを浮かべられるなんて。
「京雅は……強いね」
「…………そうでも無いさ。今回の出来事は全て……俺の実力の無さと判断ミスで起きたことだからな」
なんだよ、それ。僕への嫌味か?情けなく倒れた僕への……。そんな意味を込めて言ったんじゃないだろ。なんでそんなこと思うんだよ。
京雅はただ僕だけのせいじゃないって、庇ってくれてるだけなのに。はぁ……参ったな。
「とりあえず、風呂行ってこいよ。まだ母さんは帰ってきてないし、先入ってろ」
「……京雅は良いね。余裕そうでさ。僕とは違うね」
違う。こんなこと、言いたいわけじゃ……。
「実力がない?判断ミス?じゃああの戦いでの僕は京雅にどう写ったのさ?」
「…………」
違う!違うんだよ、京雅。これは……こんなこと君に言いたいわけじゃない。ただの……ただの八つ当たりなんだ……。自分の情けなさを必死にどうにか忘れようと、違う何かで覆い被そうとしてるだけなんだ。
「全力でやり合って、本気で戦ったのに、相手からすればただのお遊びだと言われた僕の実力は?あの時、痛みから逃げて意識を手放した僕の判断はどうなのさ?ねぇ、答えてよ」
「…………」
違う……何もかも。そんなこと言っても何も解決しないじゃんか。僕は……僕は何がしたいんだよ。
「そうだな。ハッキリ言って瑛翔にはアイツと分かり合えるだけの実力も判断力もない」
「っ……!」
そっか。そうだよね。分かってたさ、そう言われることぐらい。京雅ならズバッと言う。でも、なんでだろ……。当たり前のこと言われただけなのに、僕自身でも認めた事実なのに、こんなに悔しくてたまらないんだ。
「俺の判断ミスが無ければ、瑛翔にあんなに辛い思いさせることも……シャウォも失わずにすんだ」
「……シャウォ?」
「あぁ。ずっと校長に見張りさせてたんだ。龍帝みたいなもんだよ」
「それってどういう……」
「…………折角なら聞いてもらおうかな、俺のミス」
京雅がそう言って椅子に座り直した。その顔は暗く、どうも明るい話じゃないのは容易に分かる。
「そもそも、この事件の発端はな───」
「………」
~~~~
「どうだ?俺の方が大概戦犯だろ?」
「………そう言う、ことだったんだ」
京雅の話をまとめると、つまりこういうことなのかな?
まず、ルレインは僕達の学校の校長先生に隠身という人の姿になれる力で潜伏。でも、ヴァンパイアは隠身をしても抜き出た容姿が目立つ。だから妖術のような力で校長先生の姿のように僕らに見せていた。京雅もそれのせいで気づかなかったようだし。
そして、あの防犯ブザーはルレインの力が込められていて、その防犯ブザーを持ってる人物の位置が分かるらしい。それで初めて京雅は気付いたようだ。でも、それを知ってわざと蒋に囮のようなことをさせたらしい。
ルレインはソレに見事引っ掛かって蒋を襲おうとした所を奇襲……のはずが、気づかれた。その理由がズザク……異世界のヴァンパイアの存在らしい。何でもルレインの監視をしていたシャウォに気付いて京雅の存在にも気付いたみたい。
「どうした?そんなに考え事して?」
「ん?あ、いや。まだ整理が付かなくてね」
「そうか。じゃあ整理がついたら風呂に入ると良い。気持ち悪いだろ?」
「そうだね」
何となく、京雅と話すのが気まずかった。それを察したように京雅は椅子から立ち上がった。
「何かあったら呼んでくれ」
「あ、うん……」
気、遣わせちゃったな。
「あれ……どこまで纏めたっけ……?」
確か……そうだ。それで、京雅の存在にズザクが気づいて、ズザクが先手を打ったらしい。それがあの変な異次元空間。
その後は僕の知ってるものと同じだった。
「京雅の……ミスか」
ズザクが居たという誤算、ルレインの実力を見誤った、転移の場所が大雑把になっていた、先にルレインを倒していれば……僕らを避難させて一人で戦っていれば……か。
京雅は凄いな。自分の非をちゃんと認めて、前に進もうとしている。僕とは違うな。自分の情けなさと向き合わずにいた僕とは。
「………お風呂入ろ」
~~~~~~~~~~~~~~
とりあえず、あと一話でこの章も完結できそうです……。ヴァンパイアの設定やストーリーで不可解な点などありましたらコメントください。
作者的には全部出した気がするんですけど、頭の中にあるだけで書いてない、という可能性もありますし……。
多分、これ以上あの戦闘やヴァンパイアについての言及はほとんどないと思います。
あと一話を今週中……というか明日には投稿できるようにする予定です。
拙い部分もありますが、是非最後まで読んでいただけると幸いです。これからもこの作品共々、よろしくお願いします!
「…………ッ!」
今、何か悪い夢を……。
「京雅……?」
「ん?起きたか」
そんなに暑いわけじゃないのに、すごい汗をかいたな。全身が気持ち悪い。
「だいぶうなされてたが、もう大丈夫なのか?」
「う、うん……たぶんね。そう言えばリベルトさん達は無事なの?」
リベルトさん、リガルさん、ミリフィアさん、龍帝。みんな無事なんだろうか……。京雅が居たからきっと生きていると思う……でも、僕は誰一人として守ることが出来なかった。
「あぁ。全員無事だ。リベルトなんかさっき俺に死んでくれ、なんて言ってきたからな」
君は強いな。あんな出来事の後でもそんな笑みを浮かべられるなんて。
「京雅は……強いね」
「…………そうでも無いさ。今回の出来事は全て……俺の実力の無さと判断ミスで起きたことだからな」
なんだよ、それ。僕への嫌味か?情けなく倒れた僕への……。そんな意味を込めて言ったんじゃないだろ。なんでそんなこと思うんだよ。
京雅はただ僕だけのせいじゃないって、庇ってくれてるだけなのに。はぁ……参ったな。
「とりあえず、風呂行ってこいよ。まだ母さんは帰ってきてないし、先入ってろ」
「……京雅は良いね。余裕そうでさ。僕とは違うね」
違う。こんなこと、言いたいわけじゃ……。
「実力がない?判断ミス?じゃああの戦いでの僕は京雅にどう写ったのさ?」
「…………」
違う!違うんだよ、京雅。これは……こんなこと君に言いたいわけじゃない。ただの……ただの八つ当たりなんだ……。自分の情けなさを必死にどうにか忘れようと、違う何かで覆い被そうとしてるだけなんだ。
「全力でやり合って、本気で戦ったのに、相手からすればただのお遊びだと言われた僕の実力は?あの時、痛みから逃げて意識を手放した僕の判断はどうなのさ?ねぇ、答えてよ」
「…………」
違う……何もかも。そんなこと言っても何も解決しないじゃんか。僕は……僕は何がしたいんだよ。
「そうだな。ハッキリ言って瑛翔にはアイツと分かり合えるだけの実力も判断力もない」
「っ……!」
そっか。そうだよね。分かってたさ、そう言われることぐらい。京雅ならズバッと言う。でも、なんでだろ……。当たり前のこと言われただけなのに、僕自身でも認めた事実なのに、こんなに悔しくてたまらないんだ。
「俺の判断ミスが無ければ、瑛翔にあんなに辛い思いさせることも……シャウォも失わずにすんだ」
「……シャウォ?」
「あぁ。ずっと校長に見張りさせてたんだ。龍帝みたいなもんだよ」
「それってどういう……」
「…………折角なら聞いてもらおうかな、俺のミス」
京雅がそう言って椅子に座り直した。その顔は暗く、どうも明るい話じゃないのは容易に分かる。
「そもそも、この事件の発端はな───」
「………」
~~~~
「どうだ?俺の方が大概戦犯だろ?」
「………そう言う、ことだったんだ」
京雅の話をまとめると、つまりこういうことなのかな?
まず、ルレインは僕達の学校の校長先生に隠身という人の姿になれる力で潜伏。でも、ヴァンパイアは隠身をしても抜き出た容姿が目立つ。だから妖術のような力で校長先生の姿のように僕らに見せていた。京雅もそれのせいで気づかなかったようだし。
そして、あの防犯ブザーはルレインの力が込められていて、その防犯ブザーを持ってる人物の位置が分かるらしい。それで初めて京雅は気付いたようだ。でも、それを知ってわざと蒋に囮のようなことをさせたらしい。
ルレインはソレに見事引っ掛かって蒋を襲おうとした所を奇襲……のはずが、気づかれた。その理由がズザク……異世界のヴァンパイアの存在らしい。何でもルレインの監視をしていたシャウォに気付いて京雅の存在にも気付いたみたい。
「どうした?そんなに考え事して?」
「ん?あ、いや。まだ整理が付かなくてね」
「そうか。じゃあ整理がついたら風呂に入ると良い。気持ち悪いだろ?」
「そうだね」
何となく、京雅と話すのが気まずかった。それを察したように京雅は椅子から立ち上がった。
「何かあったら呼んでくれ」
「あ、うん……」
気、遣わせちゃったな。
「あれ……どこまで纏めたっけ……?」
確か……そうだ。それで、京雅の存在にズザクが気づいて、ズザクが先手を打ったらしい。それがあの変な異次元空間。
その後は僕の知ってるものと同じだった。
「京雅の……ミスか」
ズザクが居たという誤算、ルレインの実力を見誤った、転移の場所が大雑把になっていた、先にルレインを倒していれば……僕らを避難させて一人で戦っていれば……か。
京雅は凄いな。自分の非をちゃんと認めて、前に進もうとしている。僕とは違うな。自分の情けなさと向き合わずにいた僕とは。
「………お風呂入ろ」
~~~~~~~~~~~~~~
とりあえず、あと一話でこの章も完結できそうです……。ヴァンパイアの設定やストーリーで不可解な点などありましたらコメントください。
作者的には全部出した気がするんですけど、頭の中にあるだけで書いてない、という可能性もありますし……。
多分、これ以上あの戦闘やヴァンパイアについての言及はほとんどないと思います。
あと一話を今週中……というか明日には投稿できるようにする予定です。
拙い部分もありますが、是非最後まで読んでいただけると幸いです。これからもこの作品共々、よろしくお願いします!
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