46 / 92
2章 奇妙な事件
20話 死線 (回想) 1
しおりを挟む
~リベルト視点~
「リベルト……まさかまた私の前に立ちはだかるとはな。何度やろうとも結果は変わらんと言うのに」
「確かにそうかもしれない。だが、我とてこの数日、何もしてこなかった訳では無い」
目の前に立っただけでも分かる。ヤツは規格外だ。我とリガル、エイトが組んでもまず勝てないだろう。だが、こちらにも規格外が居る。
「リガル、お前はミリフィア様を全力で死守しろ。エイトは我に続け!」
「あ、うん」
「また子守りか……しゃーねぇな」
エイトから離れようとしないあの赤い翼の生えたトカゲ……確か、リューテイと言われていたな。ルレインに勝つには彼の力が必要不可欠だ。
「龍帝、君なら彼に勝てる?」
『誰にものを言ってるんです?あの程度に負けるはずがないです』
「なら、任せても良い?」
『残念ながら。キョーガ様からの命はあくまであなたの安全を確保することと戦闘の補助のみです』
「た、頼むよ」
『これはあくまで復讐ですから』
「二人とも、話すのは後にしてくれ。これ以上は我一人じゃ無理だ」
だが……そうだな。これはあくまで復讐。我がこの手で奴を殺さねば。
「君が私に勝つことは不可能だ。今の一撃で確信した」
奴は隠身術の時からデカかった体が更にデカくなっている。たったの数日で更に一回り程度もデカくなったということだ。
我の体術ではまず勝機はない。この体格差ではもとより無理だろうが。そうなるともう奴の土俵である血操術の勝負……これしかないだろう。
「キサマの土俵で戦ってやる……『血が占める大地』」
体内の血液がゴッソリ無くなる感覚がある。やはり広範囲の術となると厳しいか。
「エイト。君は離れるか、奴の隙を付いて攻撃してくれ。リューテイも頼む」
「あ、はい、分かりました。僕たちも移動するよ、龍帝」
『はぁ……まぁ補助ぐらいなら』
やはり彼もキョーガと同じ能力者なのか。到底普通の人間とは思えぬスピードだ。
「私にそれで勝負するのか?愚かな……『始祖の支配下』」
……っ!?いつの間にそんな技術まで覚えたんだ。今の我なら互角とは言わなくとも追いつくことは出来たと思っていた……。まだそれほどまでに遠いのか。
「場は整ったぞ?さぁ、先手はやろう」
「これで終止符を打つつもりだ……」
我の周囲に浮かぶこの血球……血が占める大地の規模が今の我が出せる最大威力。後先は考えない。奴よりも規模の小さい我が小出しに術を使うのは愚策……本気でやるぞ。
「『紅月』」
手のひらの中央一点に周囲にある全ての血球を集める。可能な限り体内からも集める。これが正真正銘、我の本気だ。いつも以上のコンディションだ。血が占める大地により我の術が活性化、強化されている。正真正銘……全力の一撃だ。
「我の本気……受け取れぇええ!!!!」
手のひらに集めた全てを奴にぶつける。極圧縮されて小さく光る、高速で奴へと飛んでいく血球。
「その誠意に免じてこちらも本気で相手してやる……『煌めく血飛沫』」
奴の周囲に浮いていた血球の約半数が小さな粒になり、たった一つの血球に向かい飛び出していく。
あれだけの力を込めた攻撃も、あれだけの力を振り絞った攻撃も、ぶつかればほんの一瞬で消える。
「我の負け……か」
奴の放った術のほとんどは相打ちだった。しかしそれでも残りわずか残っている。目標を失ったその小さなつぶは勢いそのままに我の方へと向かって来ている。
「させるかぁあ!!」
「「っ!!!!」」
我の目の前には赤い翼のあるトカゲが。奴の目の前にはエイトが居た。
「加速蹴り」
「っ!」
何があったかは分からない。我はただリューテイの背中で守られるだけだった。造作もなさそうに奴の術をサバいていくリューテイの大きさに我はもう笑みすらも浮かびそうだった。
「彼は……エイトは奴に勝てるだろうか?」
『そのために我がいて、リベルトも居るんです。さぁ、立って。奴に復讐するんですよね?』
「そう、だな」
と言っても、もう我には何も無い。補助という補助すらも………。
『……瑛翔様ッ!』
「ん?」
リューテイが巻き起こした風にやられ、一瞬視線を下げた、下げてしまった。
「またお前か」
「龍、帝……!!」
『全く……いつも死にそうになって……自分は大丈夫なんで早く逃げてください』
リューテイは間一髪で防いだようだが、それでもかなりまずいぞ。奴の支配下で血を流すのは、奴に力を与えるも同義。
「我しかいない」
奴を止めれるのは……彼らを助けられるのは我しかいない。動けッ、無関係な彼らにただ任せるほど我は……無恥じゃない。
「絞り出せ……『飛翔する血爆球』」
これだけ体内を傷つけてももう血すらも吐けず、胃液が逆流するだけか。もう生きてるのがやっと程度。
「龍帝!」
『あなたは自分が守りますよ』
ギリギリ間に合った。多分、エイトたちも無事だろう。あとは……まぁ、知っていた。無理だとはな。我にしては馬鹿なことをしたな。無理だと分かっていながらやるなんて……普段ならまずやらないな。
「チッ……今ので血が蒸発したか」
「助かりました、リベルトさん」
「申し訳ないが……もう我は……」
ここまでか……。もはや立っているのも厳しい状態だ。
今はまだ死ぬ時じゃない。ミリフィア様とリガルの安全を確保できるまでは……何ができるかは分からんが、残りの血はまだ使わないでおこう。
『仕方がないですね……今回は………っ!!!』
その瞬間、隣から強風が吹いてくる。それはまるで猛スピードのトラックが隣を通った時のような………。
「全く……油断とは愚かだ」
『これは……まず、い……すね』
エイトの目の前に奴が居る。だが、リューテイがそれを庇って………リューテイがやられた。
「リベルト……まさかまた私の前に立ちはだかるとはな。何度やろうとも結果は変わらんと言うのに」
「確かにそうかもしれない。だが、我とてこの数日、何もしてこなかった訳では無い」
目の前に立っただけでも分かる。ヤツは規格外だ。我とリガル、エイトが組んでもまず勝てないだろう。だが、こちらにも規格外が居る。
「リガル、お前はミリフィア様を全力で死守しろ。エイトは我に続け!」
「あ、うん」
「また子守りか……しゃーねぇな」
エイトから離れようとしないあの赤い翼の生えたトカゲ……確か、リューテイと言われていたな。ルレインに勝つには彼の力が必要不可欠だ。
「龍帝、君なら彼に勝てる?」
『誰にものを言ってるんです?あの程度に負けるはずがないです』
「なら、任せても良い?」
『残念ながら。キョーガ様からの命はあくまであなたの安全を確保することと戦闘の補助のみです』
「た、頼むよ」
『これはあくまで復讐ですから』
「二人とも、話すのは後にしてくれ。これ以上は我一人じゃ無理だ」
だが……そうだな。これはあくまで復讐。我がこの手で奴を殺さねば。
「君が私に勝つことは不可能だ。今の一撃で確信した」
奴は隠身術の時からデカかった体が更にデカくなっている。たったの数日で更に一回り程度もデカくなったということだ。
我の体術ではまず勝機はない。この体格差ではもとより無理だろうが。そうなるともう奴の土俵である血操術の勝負……これしかないだろう。
「キサマの土俵で戦ってやる……『血が占める大地』」
体内の血液がゴッソリ無くなる感覚がある。やはり広範囲の術となると厳しいか。
「エイト。君は離れるか、奴の隙を付いて攻撃してくれ。リューテイも頼む」
「あ、はい、分かりました。僕たちも移動するよ、龍帝」
『はぁ……まぁ補助ぐらいなら』
やはり彼もキョーガと同じ能力者なのか。到底普通の人間とは思えぬスピードだ。
「私にそれで勝負するのか?愚かな……『始祖の支配下』」
……っ!?いつの間にそんな技術まで覚えたんだ。今の我なら互角とは言わなくとも追いつくことは出来たと思っていた……。まだそれほどまでに遠いのか。
「場は整ったぞ?さぁ、先手はやろう」
「これで終止符を打つつもりだ……」
我の周囲に浮かぶこの血球……血が占める大地の規模が今の我が出せる最大威力。後先は考えない。奴よりも規模の小さい我が小出しに術を使うのは愚策……本気でやるぞ。
「『紅月』」
手のひらの中央一点に周囲にある全ての血球を集める。可能な限り体内からも集める。これが正真正銘、我の本気だ。いつも以上のコンディションだ。血が占める大地により我の術が活性化、強化されている。正真正銘……全力の一撃だ。
「我の本気……受け取れぇええ!!!!」
手のひらに集めた全てを奴にぶつける。極圧縮されて小さく光る、高速で奴へと飛んでいく血球。
「その誠意に免じてこちらも本気で相手してやる……『煌めく血飛沫』」
奴の周囲に浮いていた血球の約半数が小さな粒になり、たった一つの血球に向かい飛び出していく。
あれだけの力を込めた攻撃も、あれだけの力を振り絞った攻撃も、ぶつかればほんの一瞬で消える。
「我の負け……か」
奴の放った術のほとんどは相打ちだった。しかしそれでも残りわずか残っている。目標を失ったその小さなつぶは勢いそのままに我の方へと向かって来ている。
「させるかぁあ!!」
「「っ!!!!」」
我の目の前には赤い翼のあるトカゲが。奴の目の前にはエイトが居た。
「加速蹴り」
「っ!」
何があったかは分からない。我はただリューテイの背中で守られるだけだった。造作もなさそうに奴の術をサバいていくリューテイの大きさに我はもう笑みすらも浮かびそうだった。
「彼は……エイトは奴に勝てるだろうか?」
『そのために我がいて、リベルトも居るんです。さぁ、立って。奴に復讐するんですよね?』
「そう、だな」
と言っても、もう我には何も無い。補助という補助すらも………。
『……瑛翔様ッ!』
「ん?」
リューテイが巻き起こした風にやられ、一瞬視線を下げた、下げてしまった。
「またお前か」
「龍、帝……!!」
『全く……いつも死にそうになって……自分は大丈夫なんで早く逃げてください』
リューテイは間一髪で防いだようだが、それでもかなりまずいぞ。奴の支配下で血を流すのは、奴に力を与えるも同義。
「我しかいない」
奴を止めれるのは……彼らを助けられるのは我しかいない。動けッ、無関係な彼らにただ任せるほど我は……無恥じゃない。
「絞り出せ……『飛翔する血爆球』」
これだけ体内を傷つけてももう血すらも吐けず、胃液が逆流するだけか。もう生きてるのがやっと程度。
「龍帝!」
『あなたは自分が守りますよ』
ギリギリ間に合った。多分、エイトたちも無事だろう。あとは……まぁ、知っていた。無理だとはな。我にしては馬鹿なことをしたな。無理だと分かっていながらやるなんて……普段ならまずやらないな。
「チッ……今ので血が蒸発したか」
「助かりました、リベルトさん」
「申し訳ないが……もう我は……」
ここまでか……。もはや立っているのも厳しい状態だ。
今はまだ死ぬ時じゃない。ミリフィア様とリガルの安全を確保できるまでは……何ができるかは分からんが、残りの血はまだ使わないでおこう。
『仕方がないですね……今回は………っ!!!』
その瞬間、隣から強風が吹いてくる。それはまるで猛スピードのトラックが隣を通った時のような………。
「全く……油断とは愚かだ」
『これは……まず、い……すね』
エイトの目の前に奴が居る。だが、リューテイがそれを庇って………リューテイがやられた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる