異世界英雄の学園生活~英雄に休息なんてありません~

パチ朗斗

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2章 奇妙な事件

20話  死線 (回想) 1

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 ~リベルト視点~

「リベルト……まさかまた私の前に立ちはだかるとはな。何度やろうとも結果は変わらんと言うのに」

「確かにそうかもしれない。だが、我とてこの数日、何もしてこなかった訳では無い」

  目の前に立っただけでも分かる。ヤツは規格外だ。我とリガル、エイトが組んでもまず勝てないだろう。だが、こちらにも規格外が居る。

「リガル、お前はミリフィア様を全力で死守しろ。エイトは我に続け!」

「あ、うん」

「また子守りか……しゃーねぇな」

  エイトから離れようとしないあの赤い翼の生えたトカゲ……確か、リューテイと言われていたな。ルレインに勝つには彼の力が必要不可欠だ。

「龍帝、君なら彼に勝てる?」

『誰にものを言ってるんです?あの程度に負けるはずがないです』

「なら、任せても良い?」

『残念ながら。キョーガ様からの命はあくまですることとのみです』

「た、頼むよ」

『これはあくまで復讐ですから』

「二人とも、話すのは後にしてくれ。これ以上は我一人じゃ無理だ」

  だが……そうだな。これはあくまで復讐。我がこの手で奴を殺さねば。

「君が私に勝つことは不可能だ。今の一撃で確信した」

  奴は隠身術の時からデカかった体が更にデカくなっている。たったの数日で更に一回り程度もデカくなったということだ。

  我の体術ではまず勝機はない。この体格差ではもとより無理だろうが。そうなるともう奴の土俵である血操術の勝負……これしかないだろう。

「キサマの土俵で戦ってやる……『血が占める大地ブラッド・ゾーン』」

  体内の血液エネルギーがゴッソリ無くなる感覚がある。やはり広範囲の術となると厳しいか。

「エイト。君は離れるか、奴の隙を付いて攻撃してくれ。リューテイも頼む」

「あ、はい、分かりました。僕たちも移動するよ、龍帝」

『はぁ……まぁ補助ぐらいなら』

  やはり彼もキョーガと同じ能力者なのか。到底普通の人間とは思えぬスピードだ。

「私にそれで勝負するのか?愚かな……『始祖の支配下レイ・ルール』」

  ……っ!?いつの間にそんな技術まで覚えたんだ。今の我なら互角とは言わなくとも追いつくことは出来たと思っていた……。まだそれほどまでに遠いのか。

「場は整ったぞ?さぁ、先手はやろう」

「これで終止符を打つつもりだ……」

  我の周囲に浮かぶこの血球……血が占める大地ブラッド・ゾーンの規模が今の我が出せる最大威力。後先は考えない。奴よりも規模の小さい我が小出しに術を使うのは愚策……本気でやるぞ。

「『紅月ラヴァ・スラスト』」

  手のひらの中央一点に周囲にある全ての血球を集める。可能な限り体内からも集める。これが正真正銘、我の本気だ。いつも以上のコンディションだ。血が占める大地ブラッド・ゾーンにより我の術が活性化、強化されている。正真正銘……全力の一撃だ。

「我の本気……受け取れぇええ!!!!」

  手のひらに集めた全てを奴にぶつける。極圧縮されて小さく光る、高速で奴へと飛んでいく血球。

「その誠意に免じてこちらも本気で相手してやる……『煌めく血飛沫ブラッド・スプレット・レイ』」

  奴の周囲に浮いていた血球の約半数が小さな粒になり、たった一つの血球に向かい飛び出していく。

  あれだけの力を込めた攻撃も、あれだけの力を振り絞った攻撃も、ぶつかればほんの一瞬で消える。

「我の負け……か」

  奴の放った術のほとんどは相打ちだった。しかしそれでも残りわずか残っている。目標を失ったその小さなつぶは勢いそのままに我の方へと向かって来ている。

「させるかぁあ!!」

「「っ!!!!」」

  我の目の前には赤い翼のあるトカゲが。奴の目の前にはエイトが居た。

「加速蹴り」

「っ!」

  何があったかは分からない。我はただリューテイの背中で守られるだけだった。造作もなさそうに奴の術をサバいていくリューテイの大きさに我はもう笑みすらも浮かびそうだった。

「彼は……エイトは奴に勝てるだろうか?」

『そのために我がいて、リベルトも居るんです。さぁ、立って。奴に復讐するんですよね?』

「そう、だな」

    と言っても、もう我には何も無い。補助という補助すらも………。

『……瑛翔様ッ!』

「ん?」

  リューテイが巻き起こした風にやられ、一瞬視線を下げた、下げてしまった。

「またお前か」

「龍、帝……!!」

『全く……いつも死にそうになって……自分は大丈夫なんで早く逃げてください』

  リューテイは間一髪で防いだようだが、それでもかなりまずいぞ。奴の支配下で血を流すのは、奴に力を与えるも同義。

「我しかいない」

  奴を止めれるのは……彼らを助けられるのは我しかいない。動けッ、無関係な彼らにただ任せるほど我は……無恥じゃない。

「絞り出せ……『飛翔する血爆球バーニング・ブラッド』」

  これだけ体内を傷つけてももう血すらも吐けず、胃液が逆流するだけか。もう生きてるのがやっと程度。

「龍帝!」

『あなたは自分が守りますよ』

  ギリギリ間に合った。多分、エイトたちも無事だろう。あとは……まぁ、知っていた。無理だとはな。我にしては馬鹿なことをしたな。無理だと分かっていながらやるなんて……普段ならまずやらないな。

「チッ……今ので血が蒸発したか」

「助かりました、リベルトさん」

「申し訳ないが……もう我は……」

  ここまでか……。もはや立っているのも厳しい状態だ。

  今はまだ死ぬ時じゃない。ミリフィア様とリガルの安全を確保できるまでは……何ができるかは分からんが、残りの血はまだ使わないでおこう。

『仕方がないですね……今回は………っ!!!』

  その瞬間、隣から強風が吹いてくる。それはまるで猛スピードのトラックが隣を通った時のような………。

「全く……油断とは愚かだ」

『これは……まず、い……すね』

  エイトの目の前に奴が居る。だが、リューテイがそれを庇って………リューテイがやられた。
    
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