45 / 80
2章 奇妙な事件
19話 決戦 3
しおりを挟む
「アハッ!君はこんなもんじゃないだろ、なぁ、キョーガ!」
既に戦闘が始まって十分が経とうとしている。二人の間で行われていた攻防は他を一切寄せ付けないほどの速度と鋭さで繰り広げられていた。
一進一退を続ける京雅とズザク。二人の間で行われる戦闘は更に鋭く更に速くなっていく。
「平和ボケしてなくて良かったよ!もしかしたら一撃で殺しちゃうかもって思ってたんだ!」
段々と激化する戦闘の中、ズザクは恍惚とした様子で笑っていた。この戦闘をずっと続けるかのように、ことごとく急所を狙わず、その戦闘の様子はまるで赤子と遊んでいるようにすら見える。
京雅はひたすらにズザクの攻撃を受け流していた。四方八方からの攻撃をサバき切ると京雅は後方に飛んでズザクとの距離をとった。
「どうしたのさ、キョーガ!焦らさずに早く見せてくれよ、無形魔術師と呼ばれる所以をさ!」
ズザクは振りかぶりながら京雅に急接近する。
「はぁ……『止まれ』」
後ろに大きく振りかぶった腕を振り下ろすと同時に周囲に強大な圧がのしかかろうとした。
だが、京雅のたった一言『止まれ』。この一言ズザクの体はピクリとも動かずに前傾姿勢のまま固まってしまう。ズザクが行使しようとした魔術は跡形もなく消え、周囲のものを押し潰さんとする圧も共に無くなった。
「くは、くははははははッ!!これがッ、これが目に見えぬ魔術、無形魔術師の力かッ!前に戦った時はただの魔術で負けてしまったが、ついにこの力を味わえるとは!」
「黙れ。お前のような外道ともう一度顔を合わせること自体、反吐が出そうなんだよ」
「まだあの事を根に持っているのかい?でも、彼女は君には勿体なかったよ?君の恋人、かなり良い女だったからね。最後の最後まで……君のあんな顔を見───アグァッ?!」
「それ以上………なんにも話すんじゃねぇ……腐れ外道が」
時間が経つにつれ、京雅のズザクの首を握る手に力が篭っていく。
ズザクの首を掴み始めてか十秒程度が経とうとした時、突如辺りが静かになった。京雅の背後で行われていた戦闘に決着が着いたようだ。
「………何の用だ?」
「離してもらおう、彼は私の計画に必要不可欠なんだ」
京雅の背後に立っていたのは、ルレインだった。所々怪我をしてはいるものの、至って元気そうだ。
「はぁ………使えねぇヤツらだ」
京雅はズザクの首を掴んだいた手を離すと、乱雑に投げ捨てた。
さすがのズザクも苦しそうにしながら地面に倒れたまま起き上がろうとはしなかった。
「リベルトたちは?」
「死なない程度に遊んでやった」
「そうか……だが、俺はお前とじゃれ合う気は無い」
「っ………!!」
それはたった一瞬だった。だが、京雅を前にしたルレインは恐ろしく感じるほど、時間がゆっくりと経つような感覚を覚えていた。
京雅の腕がゆっくりと動く。それに注視していたルレインは急に胸元辺りに妙な感覚を覚えた。まるで体の真ん中を丸くくり抜かれたかのような爽快感があった。そんな違和感を覚えつつも京雅を見やると目の前にいる京雅の体が透けていっていた。
「ノロマが」
その言葉を皮切りにルレインの体から力が抜け、血の気が引いていく。体の大部分を一瞬にしてくり抜かれたのだ。
ルレインは何もしなくともあと十秒と持たずに息絶えるだろう。
その様子を静かに見下ろしている京雅の目はとても冷めていた。冷徹な眼差しがルレインの体に注がれる。
「やはり君は強いよね。前のように人質を取らないと」
「止めろ、それ以上は無駄な足掻きだ」
「君の連れ………大事だよね?」
「はぁ………」
ズザクは地面に倒れている瑛翔を視界内に捉えると、ニヒリと笑みを浮かべた。
「君はもう動けないはずだ。君が動けば彼は死ぬ。ボクの意思ひとつで彼を生かすも殺すも決まる」
「………………」
「君にはもう一度、あの辛さを味わってもらうよ!そして、また見せてくれよ、君のあの悲痛に満ちた顔をッ!」
「もう…………黙れよ」
「ッ………!!」
ズザクの四肢は一瞬で分断された。攻撃の動作どころか、痛みすらも感じぬスピードだ。
ズザクは何も出来ずに胴と頭を残してその場に転がる。
「なんッだ、今のはッ!?」
「ずっと後悔してた。あの時の俺は弱かったから、何も守れなかった、何も残らなかった。恋人を目の前で殺され、唯一の親友を自分の手に掛けた。今度は唯一の理解者をも見殺しにするところだった。これも全部、俺が弱いせいだ」
京雅は瑛翔の方に近付くと、そっと頬に触れる。その手から淡い緑の光を放ち、たちまち瑛翔の全身の怪我を癒した。
「光栄に思え。キサマは絶対に殺さない。死にたいと思い続けながら静かに生き続けろ」
そういうと、京雅の隣に楕円形の空間が現れる。その空間は黒とも白とも、赤とも青とも言えぬ色をしていた。現存する言葉で言い表せぬその空間を横目で見やった後、京雅はゆっくりとズザクの方へと歩みを進めた。
「その選択、必ず後悔するよ」
「言ってろ。俺はこんなにテメェが弱いとは思わなかったぞ」
「ふふっ、だろうね」
終始笑み浮かべたままズザクは京雅の開けた亜空間へと放り込まれた。
「クソが………やっぱりアイツが絡んでるわけか」
既に戦闘が始まって十分が経とうとしている。二人の間で行われていた攻防は他を一切寄せ付けないほどの速度と鋭さで繰り広げられていた。
一進一退を続ける京雅とズザク。二人の間で行われる戦闘は更に鋭く更に速くなっていく。
「平和ボケしてなくて良かったよ!もしかしたら一撃で殺しちゃうかもって思ってたんだ!」
段々と激化する戦闘の中、ズザクは恍惚とした様子で笑っていた。この戦闘をずっと続けるかのように、ことごとく急所を狙わず、その戦闘の様子はまるで赤子と遊んでいるようにすら見える。
京雅はひたすらにズザクの攻撃を受け流していた。四方八方からの攻撃をサバき切ると京雅は後方に飛んでズザクとの距離をとった。
「どうしたのさ、キョーガ!焦らさずに早く見せてくれよ、無形魔術師と呼ばれる所以をさ!」
ズザクは振りかぶりながら京雅に急接近する。
「はぁ……『止まれ』」
後ろに大きく振りかぶった腕を振り下ろすと同時に周囲に強大な圧がのしかかろうとした。
だが、京雅のたった一言『止まれ』。この一言ズザクの体はピクリとも動かずに前傾姿勢のまま固まってしまう。ズザクが行使しようとした魔術は跡形もなく消え、周囲のものを押し潰さんとする圧も共に無くなった。
「くは、くははははははッ!!これがッ、これが目に見えぬ魔術、無形魔術師の力かッ!前に戦った時はただの魔術で負けてしまったが、ついにこの力を味わえるとは!」
「黙れ。お前のような外道ともう一度顔を合わせること自体、反吐が出そうなんだよ」
「まだあの事を根に持っているのかい?でも、彼女は君には勿体なかったよ?君の恋人、かなり良い女だったからね。最後の最後まで……君のあんな顔を見───アグァッ?!」
「それ以上………なんにも話すんじゃねぇ……腐れ外道が」
時間が経つにつれ、京雅のズザクの首を握る手に力が篭っていく。
ズザクの首を掴み始めてか十秒程度が経とうとした時、突如辺りが静かになった。京雅の背後で行われていた戦闘に決着が着いたようだ。
「………何の用だ?」
「離してもらおう、彼は私の計画に必要不可欠なんだ」
京雅の背後に立っていたのは、ルレインだった。所々怪我をしてはいるものの、至って元気そうだ。
「はぁ………使えねぇヤツらだ」
京雅はズザクの首を掴んだいた手を離すと、乱雑に投げ捨てた。
さすがのズザクも苦しそうにしながら地面に倒れたまま起き上がろうとはしなかった。
「リベルトたちは?」
「死なない程度に遊んでやった」
「そうか……だが、俺はお前とじゃれ合う気は無い」
「っ………!!」
それはたった一瞬だった。だが、京雅を前にしたルレインは恐ろしく感じるほど、時間がゆっくりと経つような感覚を覚えていた。
京雅の腕がゆっくりと動く。それに注視していたルレインは急に胸元辺りに妙な感覚を覚えた。まるで体の真ん中を丸くくり抜かれたかのような爽快感があった。そんな違和感を覚えつつも京雅を見やると目の前にいる京雅の体が透けていっていた。
「ノロマが」
その言葉を皮切りにルレインの体から力が抜け、血の気が引いていく。体の大部分を一瞬にしてくり抜かれたのだ。
ルレインは何もしなくともあと十秒と持たずに息絶えるだろう。
その様子を静かに見下ろしている京雅の目はとても冷めていた。冷徹な眼差しがルレインの体に注がれる。
「やはり君は強いよね。前のように人質を取らないと」
「止めろ、それ以上は無駄な足掻きだ」
「君の連れ………大事だよね?」
「はぁ………」
ズザクは地面に倒れている瑛翔を視界内に捉えると、ニヒリと笑みを浮かべた。
「君はもう動けないはずだ。君が動けば彼は死ぬ。ボクの意思ひとつで彼を生かすも殺すも決まる」
「………………」
「君にはもう一度、あの辛さを味わってもらうよ!そして、また見せてくれよ、君のあの悲痛に満ちた顔をッ!」
「もう…………黙れよ」
「ッ………!!」
ズザクの四肢は一瞬で分断された。攻撃の動作どころか、痛みすらも感じぬスピードだ。
ズザクは何も出来ずに胴と頭を残してその場に転がる。
「なんッだ、今のはッ!?」
「ずっと後悔してた。あの時の俺は弱かったから、何も守れなかった、何も残らなかった。恋人を目の前で殺され、唯一の親友を自分の手に掛けた。今度は唯一の理解者をも見殺しにするところだった。これも全部、俺が弱いせいだ」
京雅は瑛翔の方に近付くと、そっと頬に触れる。その手から淡い緑の光を放ち、たちまち瑛翔の全身の怪我を癒した。
「光栄に思え。キサマは絶対に殺さない。死にたいと思い続けながら静かに生き続けろ」
そういうと、京雅の隣に楕円形の空間が現れる。その空間は黒とも白とも、赤とも青とも言えぬ色をしていた。現存する言葉で言い表せぬその空間を横目で見やった後、京雅はゆっくりとズザクの方へと歩みを進めた。
「その選択、必ず後悔するよ」
「言ってろ。俺はこんなにテメェが弱いとは思わなかったぞ」
「ふふっ、だろうね」
終始笑み浮かべたままズザクは京雅の開けた亜空間へと放り込まれた。
「クソが………やっぱりアイツが絡んでるわけか」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
世界⇔異世界 THERE AND BACK!!
西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。
友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。
しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。
「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」
これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。
週一、不定期投稿していきます。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる