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2章 奇妙な事件

7話 難航 

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「おい、起きろ」

「んん………なんだい?」

  時刻は深夜の一時。ほとんどの家は光を落として寝静まってる時間だ。

  その中で京雅きょうがは、スッキリした顔をしながら隣のベッドで寝ている瑛翔えいとを揺さぶる。

  瑛翔はたった一言で意識が覚醒したようで、目を擦りながらうっすらと目を開ける。

「なんで京雅が居るの?」

「夢ん中に記憶でも置いてきたか?サッサと準備しろ」

  目が覚めている事を確認した京雅はそう言って部屋を出ていった。

「そうだ……ヴァンパイア」

  千鳥足のように覚束無い足取りでフラフラとしながらドアを開ける。

「うっ……」

  ドアを開けた先には深夜とは思えぬほど眩しかった。

  そのため瑛翔は堪らず顔を顰めて唸る。

「飯だ。食っとけ」

「お腹すいてないんだけど……」

「腹が減っては戦ができぬって言うだろ?少しでも腹に入れておけ。食べやすいように小分けしたんだからよ」

  そう言うと、大皿に乗っている正方形状に切られた小さなサンドウィッチを一つ手に取る京雅。

「それを京雅が?」

「まぁな。さすがに母さんにやらせるのは気が引けるからな」

  そう言って手に持っていたサンドウィッチを口に放り込むとまた一つサンドウィッチを手に取る。

「何ずっと立ってんだ?早く座って食べろよ」

「あ、うん。ご馳走になります」

  その後席に着いた瑛翔とサンドウィッチを食べ進めて、ものの五分程度で食事は終わった。

「びっくりしたよ。まさか料理もできるんだね」

「いや、料理って言う程でも無いだろ?パンを切って適当な具材を挟んでるだけだ」

  皿を洗いながら京雅は瑛翔とそんな会話をした。

「準備できたか?」

「うん」

  学校指定のジャージを着た瑛翔は軽く準備運動をしながら短く返事をした。

「じゃあ、サクッと捕まえてやろうぜ」

  うっすらと笑みを浮かべた京雅は玄関へと向かう。それに倣い瑛翔も玄関を目指して京雅の後ろに付いていく。

  玄関をくぐるとその先は街灯と月の光以外の光源のない真っ暗闇だった。

「当てはあるのかい?まさか、この中で当てもなく彷徨う……なんてバカはしないよね?」

「あぁ。ただ、俺の探知に引っ掛かった奴を虱潰しらみつぶし当たっていくだけだ」

「え、えぇ……」

  そう言うと京雅はその場で目を閉じてボヤく。

「『探知·ヴァンパイア』」

  京雅は異世界で出会ったヴァンパイアの反応を元にこの街全体を対象として探知していく。

「…………おかしいな。無反応だ」

  京雅の脳内に広がる街の地図の中には何の反応を示していなかった。

「もしかしたらこの街にはもう居ないんじゃないかな?」

  京雅の独り言のような小さな声に反応をするように瑛翔も京雅に聞こえるかどうかぐらいの小さな声でボヤく。

「そうなるとかなりの時間を必要とする。その上捕まえるともなると更に……」

「違う方法で探してみようよ」

「違う方法?」

  瑛翔のその一言に京雅は不思議そうな顔をしながら振り向いた。

「そう……たとえばさ」

  そう前置きをした瑛翔はスゥと息を吸う。

「半人半魔……人間とヴァンパイアのハーフ、とかさ?」
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