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1章 超能力者の存在
16話 呆気ない
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蒋から登校しないと電話を受けた翌日。昨日言われた通り蒋は来なく、 黎もなぜか登校して来ていなかった。
京雅はその事について別段深く考えることなく、別のことに思考を巡らせていた。
その事とはもちろん瑛翔についてである。昨日四人目の超能力者と間接的に接触した京雅は険しい顔をしながら自分の席で一人居た。
「十中八九、超能力者の組織がある。そこには一般人も……無闇矢鱈に殺すのは気が引けるな……」
京雅はため息をつきながら外を眺めた。
真っ青な空を眺めて黄昏ていると、不意に前方から大きめの音がする。
「はぁい、おはよう。じゃあ、早速ホームルーム始めるぞ。起立」
どうやら先生が来たようだ。ダルそうな雰囲気を漂わせて、やる気の感じない無気力な声で促されるまま京雅たちは起立した。
その後挨拶等を軽く済ませて先生はすぐに教室を出ていった。
「今日から授業か……まさかあの二人バックれたわけじゃねぇよな?」
椅子を傾けて前後に揺らしながら、今日休みの二人の事を考えていた。
ブブゥ。
机に掛けていたバッグからスマホのバイブ音がした。
京雅は教室に先生が居ないか確認してからスマホを出す。
「誰からのメールだよ……」
スマホを起動させてメールアプリを開くと、意外な人物からのメールだった。
「えっ、蒋?なんだよ、この内容は……」
メールの送信者は今日休んでいる蒋からだった。メールの内容は簡潔に"助けて"というものだった。
京雅はその内容を見て戸惑いを隠せずにいた。
「…………」
京雅は"分かった"とだけ入れてスマホの電源を落とすと、乱雑にバッグへとしまう。
そして、かけてあったバッグを勢いよく背負うと、走って教室を出ていく。
「クソッ!まさか蒋が狙われるとはな。もしかしたら黎もッ!」
京雅は周囲に誰も居ないことを確認すると、廊下にある窓に足をかけて飛び降りる。
京雅が居たのは二階だ。高さ的には死ぬほどではないがかなり危険な高さだ。
だが、京雅は一切の躊躇無く飛び降りていった。
どこかを痛めることなく無事に着地すると、校門目掛けて走り出した。
「やはり来るか」
「っ………!!」
校門を出たと同時に隣から声がした。その声は聞き慣れなたもので、今朝聞いたものだ。
「……鶴壁、先生」
校門にもたれ掛かるようにして立っていた人物は、京雅のクラスの担任である鶴壁 和樹だった。
「勝司さんの言う通りだったわけだ」
「なんで、先生がその名前を……」
京雅はゆっくりと鶴壁と距離を取っていく。
もたれ掛かるのをやめて少しずつ離れていく京雅の方を真っ直ぐと見つめてくる鶴壁。
「私がここで君の足止めを頼まれてるんだ」
「あなたも……いや、アンタも超能力者ってわけか」
「そうさ」
鶴壁のその一言で、京雅の纏っていた雰囲気がガラリと変わる。
先程までオドオドしていた人物から強烈な殺気が放たれた。
鶴壁は京雅のオドオドしていた様子を見て余裕の雰囲気を出していた。だが、自分に向けられる殺気を感じた瞬間、鶴壁の顔は恐怖で染め上げられていた。
「じゃあ、殺してもいいって訳だ」
狂気すらも感じる京雅の笑みを見た鶴壁は力無く地面に座り込む。
「雑魚がしゃしゃり出てきやがって『探査・蒋』」
脳内にこの街全体の地図が浮かび上がる。京雅はその地図を見ながら苛立ちを感じた。
その苛立ちが表に出ていたのか、鶴壁が「ヒィィッ!」と情けない声を出しながら尻もちをついている体制から、目にも止まらぬ速さで体を翻すと四つん這いになりその場から逃げようとしていた。
「さすがに蒋の家を破壊する訳にはいかねぇよな」
蒋は自分の家にいた。だが、その周囲にはいくつも生命反応があり、その中には勝司のものもあった。
「黎の事も心配だ。急がねぇと」
京雅が走り出そうとした時、何かが京雅の足を掴んでいた。
「………何の用だ、腰抜け」
「私にも……役目があるんだよ」
自分の役割を思い出した鶴壁は京雅の方へ戻って来ていた。しかし、自分の意思で戻って来たとは思えぬほど体は微かに震えていて、目尻に涙を浮かべながら必死に京雅の足を両手で掴んでいるのだ。
だが、その様子を見て京雅は違和感を覚える。なぜかその必死な様子が演技に見えてならなかった。
「アンタ、何者だ?」
「君には関係ないさ………」
「はぁ………『放せ』」
「っ……!」
京雅の一言で、あんなに力強くしがみつき、京雅の足を放さないようにと必死になっていた鶴壁の手はあっさりと放れた。
鶴壁は自分で放しておいて、何をしたのか自分でも理解できないで放心状態になっていた。
地べたに這いつくばった格好のままポカンと間抜け面を晒していた鶴壁に京雅は目もくれず、目的地へと走り出して行った。
京雅は蒋の家へ向かいながら、鶴壁に感じたあの違和感はただの杞憂だったと、割り切って蒋を助けるためのシミュレーションを何度も脳内で行っていた。
「できるだけ、周囲に被害を出さずに鎮圧する……」
~~~~~~~~~~~~~~
今更ですが、1話から読み直してみて、蒋が京雅を呼ぶ時のあだ名が京君からキョーガに変わっていました………。4話目では京君であり、それ以降はキョーガとなっていると思います。
どうやら龍帝と混合してしまったようです……大変申し訳ございません!
そのため今後、蒋が京雅を呼ぶ時には京君からキョーガに変更します。
誤字脱字、質問や感想等あれば気軽にコメントお願いします。
京雅はその事について別段深く考えることなく、別のことに思考を巡らせていた。
その事とはもちろん瑛翔についてである。昨日四人目の超能力者と間接的に接触した京雅は険しい顔をしながら自分の席で一人居た。
「十中八九、超能力者の組織がある。そこには一般人も……無闇矢鱈に殺すのは気が引けるな……」
京雅はため息をつきながら外を眺めた。
真っ青な空を眺めて黄昏ていると、不意に前方から大きめの音がする。
「はぁい、おはよう。じゃあ、早速ホームルーム始めるぞ。起立」
どうやら先生が来たようだ。ダルそうな雰囲気を漂わせて、やる気の感じない無気力な声で促されるまま京雅たちは起立した。
その後挨拶等を軽く済ませて先生はすぐに教室を出ていった。
「今日から授業か……まさかあの二人バックれたわけじゃねぇよな?」
椅子を傾けて前後に揺らしながら、今日休みの二人の事を考えていた。
ブブゥ。
机に掛けていたバッグからスマホのバイブ音がした。
京雅は教室に先生が居ないか確認してからスマホを出す。
「誰からのメールだよ……」
スマホを起動させてメールアプリを開くと、意外な人物からのメールだった。
「えっ、蒋?なんだよ、この内容は……」
メールの送信者は今日休んでいる蒋からだった。メールの内容は簡潔に"助けて"というものだった。
京雅はその内容を見て戸惑いを隠せずにいた。
「…………」
京雅は"分かった"とだけ入れてスマホの電源を落とすと、乱雑にバッグへとしまう。
そして、かけてあったバッグを勢いよく背負うと、走って教室を出ていく。
「クソッ!まさか蒋が狙われるとはな。もしかしたら黎もッ!」
京雅は周囲に誰も居ないことを確認すると、廊下にある窓に足をかけて飛び降りる。
京雅が居たのは二階だ。高さ的には死ぬほどではないがかなり危険な高さだ。
だが、京雅は一切の躊躇無く飛び降りていった。
どこかを痛めることなく無事に着地すると、校門目掛けて走り出した。
「やはり来るか」
「っ………!!」
校門を出たと同時に隣から声がした。その声は聞き慣れなたもので、今朝聞いたものだ。
「……鶴壁、先生」
校門にもたれ掛かるようにして立っていた人物は、京雅のクラスの担任である鶴壁 和樹だった。
「勝司さんの言う通りだったわけだ」
「なんで、先生がその名前を……」
京雅はゆっくりと鶴壁と距離を取っていく。
もたれ掛かるのをやめて少しずつ離れていく京雅の方を真っ直ぐと見つめてくる鶴壁。
「私がここで君の足止めを頼まれてるんだ」
「あなたも……いや、アンタも超能力者ってわけか」
「そうさ」
鶴壁のその一言で、京雅の纏っていた雰囲気がガラリと変わる。
先程までオドオドしていた人物から強烈な殺気が放たれた。
鶴壁は京雅のオドオドしていた様子を見て余裕の雰囲気を出していた。だが、自分に向けられる殺気を感じた瞬間、鶴壁の顔は恐怖で染め上げられていた。
「じゃあ、殺してもいいって訳だ」
狂気すらも感じる京雅の笑みを見た鶴壁は力無く地面に座り込む。
「雑魚がしゃしゃり出てきやがって『探査・蒋』」
脳内にこの街全体の地図が浮かび上がる。京雅はその地図を見ながら苛立ちを感じた。
その苛立ちが表に出ていたのか、鶴壁が「ヒィィッ!」と情けない声を出しながら尻もちをついている体制から、目にも止まらぬ速さで体を翻すと四つん這いになりその場から逃げようとしていた。
「さすがに蒋の家を破壊する訳にはいかねぇよな」
蒋は自分の家にいた。だが、その周囲にはいくつも生命反応があり、その中には勝司のものもあった。
「黎の事も心配だ。急がねぇと」
京雅が走り出そうとした時、何かが京雅の足を掴んでいた。
「………何の用だ、腰抜け」
「私にも……役目があるんだよ」
自分の役割を思い出した鶴壁は京雅の方へ戻って来ていた。しかし、自分の意思で戻って来たとは思えぬほど体は微かに震えていて、目尻に涙を浮かべながら必死に京雅の足を両手で掴んでいるのだ。
だが、その様子を見て京雅は違和感を覚える。なぜかその必死な様子が演技に見えてならなかった。
「アンタ、何者だ?」
「君には関係ないさ………」
「はぁ………『放せ』」
「っ……!」
京雅の一言で、あんなに力強くしがみつき、京雅の足を放さないようにと必死になっていた鶴壁の手はあっさりと放れた。
鶴壁は自分で放しておいて、何をしたのか自分でも理解できないで放心状態になっていた。
地べたに這いつくばった格好のままポカンと間抜け面を晒していた鶴壁に京雅は目もくれず、目的地へと走り出して行った。
京雅は蒋の家へ向かいながら、鶴壁に感じたあの違和感はただの杞憂だったと、割り切って蒋を助けるためのシミュレーションを何度も脳内で行っていた。
「できるだけ、周囲に被害を出さずに鎮圧する……」
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今更ですが、1話から読み直してみて、蒋が京雅を呼ぶ時のあだ名が京君からキョーガに変わっていました………。4話目では京君であり、それ以降はキョーガとなっていると思います。
どうやら龍帝と混合してしまったようです……大変申し訳ございません!
そのため今後、蒋が京雅を呼ぶ時には京君からキョーガに変更します。
誤字脱字、質問や感想等あれば気軽にコメントお願いします。
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