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1章 超能力者の存在
12話 約束
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四時間のオリエンテーションが終わり、ついに昼休みになる。
勉強から解放されて、教室内は一瞬にしてザワつく。だが京雅だけは一人沈黙を突き通していた。
背負いバッグから弁当を取り出すとチラリと瑛翔の方を見やる。すると丁度ムクっと起きた瑛翔と目が合う。
瑛翔はニコッと笑ってみせるが、京雅はそれを無視して教室から出て行った。
京雅たちが通っている高校には、屋上へ行く階段はあるものの鍵が掛かっており、基本的に屋上の使用は出来ない。
しかし、京雅にとって鍵とはあるようでないものだ。一言、開けと言えば簡単にドアは開いてしまうのだから。
そして案の定、京雅が屋上へ続く階段を登り終わり、鍵の付いたドアを前にした時、真っ先に動いたのは口元だった。
「『開け』」
その一言でドアは耳障りな音を立てながらゆっくりと外側へと開いていく。
完全に開かなかったドアを京雅がそっと押して屋上へと出る。
今日は天気も良く、絶好の屋上日和?だ。
京雅は適当な場所に腰を下ろして片手に持っていた弁当を広げる。
「これ、入って良いのかな?」
ドアの方から声がして、京雅はスっと顔を上げた。そこにはキョロキョロと周りを見渡しながらオドオドした様子でゆっくりとこちらに向かってくる瑛翔の姿があった。
「瑛翔は勝司って男を知ってるか?」
京雅は瑛翔が床に座るのを待ちきれず口を開いた。
その質問に瑛翔は悩む素振りをしながらゆっくりと床に座る。
「どうかな……相澤 正志って人なら知ってるけど……京雅君の求めてる人じゃないかも……でも、急になんで?」
「………」
京雅は瑛翔に言うべきか悩んでいた。
今の一言で瑛翔のことを疑っていたのだ。もしかしたら、あの男とグルの可能性もあるからだ。瑛翔の知ってる人物が昨日京雅があった人物という確証はないが、不安要素があるので、どうも戸惑ってしまうようだ。
少しの間考えた結果、京雅は瑛翔に昨日のことを話すことに決めた。
「実は昨日超能力者にあってな」
「ゴホッゴホッ!ちょ、超能力者だって!?」
予想だにしない言葉に水筒を口から離して咳き込んだ。慌てて京雅の方を見やる瑛翔のその様子を見た京雅は、瑛翔が白であると確信した。
「どうやら、ソイツはお前を狙ってるようだ」
「え?どういうこと?」
水を飲もうとした瑛翔の動きがピタッと止まる。そして、目だけを京雅に向けた。
「ソイツは、俺を見てえいとと言った。そして超スピードとも言っていた。その二つの条件を満たすのはお前しかいないだろ?」
「……………」
瑛翔はその場で思考が停止し、固まっていた。
「気を付けろよ。相手は集団の可能性が大きい」
瑛翔の方へ視線を向けることなく、弁当を食べ進める。瑛翔はその間も水筒を持ったまま動かずにいた。だが、少しずつ顔は青ざめていっているのが分かる。
「い、命を狙われてるってこと?」
壊れかけのロボットのようにギギギィと音が出そうな粗い動きで京雅の方を向くように顔を動かしていく。
「そうだな。最悪死ぬかもな」
既に弁当の半分を食べ終わった京雅は淡々と述べた。
「僕に修行を──」
「なんで?」
瑛翔が両手を顔の前で合わせて何かを頼もうとした。だが、その要件を遮るように言葉を被せて疑問を投げかけた。
瑛翔はまさか遮られると思っていなかったのか、唖然としていた。
「ぼ、僕が死んじゃうかもしれないんだよ?!」
「それがどうした?」
ウンザリしたような面倒臭そうな顔を浮かべながら慌てている瑛翔の方を見る。
「……………」
冷淡な目を向けられ、瑛翔は静かになる。視線も下がり、持っていた箸を弁当の上に置く。
「い、良いの?僕が死んでも……?昨日、手伝ってくれるって言ったのは嘘なの?」
何かに縋るように絞り出した弱々しい声。
「一つ聞くぞ。……テメェは俺の味方か?」
弁当を床に置いて真剣な眼差しを向けながら瑛翔を見た。自分に向けられたその瞳に瑛翔はたじろぐ。
言葉がつまり、なかなか声が出ないでいる瑛翔に京雅は更に言葉をかける。
「テメェがもし、何があっても絶対に俺を裏切らない、見捨てない、逆らわないと言うのであれば、昨日の言葉通り手伝おう」
少しの間沈黙が流れた。その間も京雅は瑛翔から視線を外すことなく真っ直ぐに見ていた。
「………分かんないよ、そんなの」
視線を下に向けたまま瑛翔はそう呟く。京雅はその返答が来るのが分かっていたのか、全く表情を変えずにまた口を開いた。
「んじゃ、無理だな。そんな生半端な覚悟で戦おうなんて思うな。そんなんじゃただ死にに行くだけだ」
京雅は床に置いた弁当を拾い上げ、再び食事を始めた。
「僕、決めたよ。僕は君に──」
「はぁ、鈍感な野郎だな」
意を決して力強く言葉を発した……が、その言葉も京雅の呆れたような表情とため息に掻き消される。
「ハッキリ言わねぇと分かんねぇか?テメェはな、足手まといにしかなんねぇんだよ。なのに、何ひとりでカッコつけてんだよ?見てるこっちが鳥肌立つぞ」
「っ…………」
目を見てハッキリとそう告げられた。
「金輪際、俺と関わるな。超能力も一切使うな。変な奴らに名前を聞かれても絶対に瑛翔と答えるな。分かったならサッサと教室に戻れ」
「………ごめん。わかったよ」
無理をした笑みを浮かべて弁当を片付ける。
その姿が友達の黎と重なり、京雅は顔を歪めた。
京雅は去っていく背中を見て口を開こうとするも、キツく結び、黙って瑛翔がドアから出るのを眺めていた。
「はぁ……こんなことするなんて柄じゃねぇのに」
京雅は弁当を完食して弁当を片付けると、腕を頭の下に敷いて枕のようにしてから体を仰向けにして床に寝そべる。
「言えねぇよなぁ……お前に死んで欲しくない、なんてよ」
勉強から解放されて、教室内は一瞬にしてザワつく。だが京雅だけは一人沈黙を突き通していた。
背負いバッグから弁当を取り出すとチラリと瑛翔の方を見やる。すると丁度ムクっと起きた瑛翔と目が合う。
瑛翔はニコッと笑ってみせるが、京雅はそれを無視して教室から出て行った。
京雅たちが通っている高校には、屋上へ行く階段はあるものの鍵が掛かっており、基本的に屋上の使用は出来ない。
しかし、京雅にとって鍵とはあるようでないものだ。一言、開けと言えば簡単にドアは開いてしまうのだから。
そして案の定、京雅が屋上へ続く階段を登り終わり、鍵の付いたドアを前にした時、真っ先に動いたのは口元だった。
「『開け』」
その一言でドアは耳障りな音を立てながらゆっくりと外側へと開いていく。
完全に開かなかったドアを京雅がそっと押して屋上へと出る。
今日は天気も良く、絶好の屋上日和?だ。
京雅は適当な場所に腰を下ろして片手に持っていた弁当を広げる。
「これ、入って良いのかな?」
ドアの方から声がして、京雅はスっと顔を上げた。そこにはキョロキョロと周りを見渡しながらオドオドした様子でゆっくりとこちらに向かってくる瑛翔の姿があった。
「瑛翔は勝司って男を知ってるか?」
京雅は瑛翔が床に座るのを待ちきれず口を開いた。
その質問に瑛翔は悩む素振りをしながらゆっくりと床に座る。
「どうかな……相澤 正志って人なら知ってるけど……京雅君の求めてる人じゃないかも……でも、急になんで?」
「………」
京雅は瑛翔に言うべきか悩んでいた。
今の一言で瑛翔のことを疑っていたのだ。もしかしたら、あの男とグルの可能性もあるからだ。瑛翔の知ってる人物が昨日京雅があった人物という確証はないが、不安要素があるので、どうも戸惑ってしまうようだ。
少しの間考えた結果、京雅は瑛翔に昨日のことを話すことに決めた。
「実は昨日超能力者にあってな」
「ゴホッゴホッ!ちょ、超能力者だって!?」
予想だにしない言葉に水筒を口から離して咳き込んだ。慌てて京雅の方を見やる瑛翔のその様子を見た京雅は、瑛翔が白であると確信した。
「どうやら、ソイツはお前を狙ってるようだ」
「え?どういうこと?」
水を飲もうとした瑛翔の動きがピタッと止まる。そして、目だけを京雅に向けた。
「ソイツは、俺を見てえいとと言った。そして超スピードとも言っていた。その二つの条件を満たすのはお前しかいないだろ?」
「……………」
瑛翔はその場で思考が停止し、固まっていた。
「気を付けろよ。相手は集団の可能性が大きい」
瑛翔の方へ視線を向けることなく、弁当を食べ進める。瑛翔はその間も水筒を持ったまま動かずにいた。だが、少しずつ顔は青ざめていっているのが分かる。
「い、命を狙われてるってこと?」
壊れかけのロボットのようにギギギィと音が出そうな粗い動きで京雅の方を向くように顔を動かしていく。
「そうだな。最悪死ぬかもな」
既に弁当の半分を食べ終わった京雅は淡々と述べた。
「僕に修行を──」
「なんで?」
瑛翔が両手を顔の前で合わせて何かを頼もうとした。だが、その要件を遮るように言葉を被せて疑問を投げかけた。
瑛翔はまさか遮られると思っていなかったのか、唖然としていた。
「ぼ、僕が死んじゃうかもしれないんだよ?!」
「それがどうした?」
ウンザリしたような面倒臭そうな顔を浮かべながら慌てている瑛翔の方を見る。
「……………」
冷淡な目を向けられ、瑛翔は静かになる。視線も下がり、持っていた箸を弁当の上に置く。
「い、良いの?僕が死んでも……?昨日、手伝ってくれるって言ったのは嘘なの?」
何かに縋るように絞り出した弱々しい声。
「一つ聞くぞ。……テメェは俺の味方か?」
弁当を床に置いて真剣な眼差しを向けながら瑛翔を見た。自分に向けられたその瞳に瑛翔はたじろぐ。
言葉がつまり、なかなか声が出ないでいる瑛翔に京雅は更に言葉をかける。
「テメェがもし、何があっても絶対に俺を裏切らない、見捨てない、逆らわないと言うのであれば、昨日の言葉通り手伝おう」
少しの間沈黙が流れた。その間も京雅は瑛翔から視線を外すことなく真っ直ぐに見ていた。
「………分かんないよ、そんなの」
視線を下に向けたまま瑛翔はそう呟く。京雅はその返答が来るのが分かっていたのか、全く表情を変えずにまた口を開いた。
「んじゃ、無理だな。そんな生半端な覚悟で戦おうなんて思うな。そんなんじゃただ死にに行くだけだ」
京雅は床に置いた弁当を拾い上げ、再び食事を始めた。
「僕、決めたよ。僕は君に──」
「はぁ、鈍感な野郎だな」
意を決して力強く言葉を発した……が、その言葉も京雅の呆れたような表情とため息に掻き消される。
「ハッキリ言わねぇと分かんねぇか?テメェはな、足手まといにしかなんねぇんだよ。なのに、何ひとりでカッコつけてんだよ?見てるこっちが鳥肌立つぞ」
「っ…………」
目を見てハッキリとそう告げられた。
「金輪際、俺と関わるな。超能力も一切使うな。変な奴らに名前を聞かれても絶対に瑛翔と答えるな。分かったならサッサと教室に戻れ」
「………ごめん。わかったよ」
無理をした笑みを浮かべて弁当を片付ける。
その姿が友達の黎と重なり、京雅は顔を歪めた。
京雅は去っていく背中を見て口を開こうとするも、キツく結び、黙って瑛翔がドアから出るのを眺めていた。
「はぁ……こんなことするなんて柄じゃねぇのに」
京雅は弁当を完食して弁当を片付けると、腕を頭の下に敷いて枕のようにしてから体を仰向けにして床に寝そべる。
「言えねぇよなぁ……お前に死んで欲しくない、なんてよ」
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