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1章 超能力者の存在

11話 誘い

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  新たな超能力者と出会った次の日。

  京雅きょうがは今日も各授業でオリエンテーションを受けていた。

二重超能力者ダブルホルダー、か。……組織で動いてる可能性があるかもな。やっぱり俺らだけじゃねぇみてぇだ」

  京雅は机を人差し指で一定のリズムを刻みながら頬杖をつく。

「君。そんな態度で話を聞くのはどうなんだい?」

「えっ?俺、ですか?」

  考えることに集中しすぎるあまり、先生が近付いてくることにすら気づけなかった。

  先生が京雅に声を掛けたのは、露骨に他の事を考えてる姿を先生の見ている前でもしていたためだ。

「すみません。お腹が減ってしまって、弁当のことを考えてました」 

  その言葉で教室にどっと笑いが起きた。

  生徒の反応を見て先生もこれ以上咎める気が無くなったのか、去り際に軽く注意をすると教卓の方へ戻って行った。

「これからは気を付けないとな」

  京雅は姿勢を正して、先生の方を見た。既に京雅への興味を失ったのか、淡々と授業の説明をしている。
  ちなみに、この先生は浜枝はまえと言って、歴史を担当する男の先生だ。

「はぁ……考えがまとまらん。後でにするか」

  あの一件で先生の視線が気になりだして、雑念が多くなってきた。これ以上足掻いたところで考えがまとまらないと思った京雅は、仕方なく先生の話に耳を傾けることにした。

~~~~

「まさか、キョーガがあんなジョークを言えるなんてね」

  授業が終わり、京雅の机にはいつものメンバー……れいしょうが来ていた。

  蒋は京雅を茶化すようにして言うが、黎は少し深刻そうな顔をしていた。

  蒋の背中に隠れて、京雅から見にくい位置取りをしていた。

  さすがの京雅も黎の様子が気になり声を掛ける。

「どうしたんだ、黎?」

「…………いや、気にするな」

  無理をするかのような笑みを浮かべて黎は蒋の影から出てきた。

「まぁ、俺の事よりもさ。あと一時間で弁当だしもっと明るくなろうぜ!」

  無理矢理雰囲気を明るくする黎。蒋もそれに乗っかり二人で盛り上がる。

  京雅は後ろに振り向く。視線の先には机に伏せて寝たフリをする瑛翔えいとの姿があった。

「二人とも、悪ぃな。今日はアイツと昼飯食う予定なんだ」

「ん?あぁ、柳田やなぎた君だっけ?孤独って言うよりも孤高だよね」

  蒋が瑛翔の方を見てそんな解説じみたことを言う。

  それにつられて黎も口を開いた。

「そう、だな。他の人とはよな……まるでみたいだよ。それに、柳田に関しては外人系のイケメンだからか、なんか近寄り難いってクラスのみんなが言ってたな」

「そう?柳田君って話してみると話しやすいしすんごい優しいから、アイドルから過度なファンサ受ける感じになって、他の人に罪悪感すら覚えちゃうって聞いたけど?」

「それ、絶対女子の意見だろ」

「お、よくわかったね」

  そんな会話を横目に京雅は席を立った。

  ゆっくりと、瑛翔の机に向かっていく。

「おい、今良いか?」

  机の前まで来ると、淡白に言い放つ。  

  瑛翔はゆっくりと顔を上げて誰が話しかけてきたのかを確認する。

  そして、話しかけてきた人物が京雅だと分かると、穏やかな顔から一転して、顔の表情筋を解いてニコッとした。

「まさか君から話し掛けてくるとはね」

「昼休み、屋上まで来てくれ。もちろん、弁当を持ってな。んじゃあな」

  それだけを言って京雅は踵を返して自分の机に向かう。

「アイツぐらいはコッチに引き込まねぇとな」

  京雅は席に座る前にチラッと瑛翔の方へ視線を向ける。

  瑛翔は既に机に伏せており、また寝たフリをしていた。

「キョーガが自分から近寄るなんてね」

  席に着いた京雅に蒋はオーバーリアクションをしながら驚いてみせた。

  京雅はそれに触れることなく、時計を見た。

「ほら、時間だぞ」

「ホントだ。じゃね」

「………またな」

  二人とも京雅に促される形で席を離れる。

  黎が自分の席に向かおうとした時、京雅は黎の手首を捕まえてた。

「ん?どうかした?」

  できる限り明るい顔をして振り返る。その取り繕った笑顔はとても痛々しく見えた。

  だが、京雅はそんな様子の黎に対して一切顔色を変えずに、淡々と言う。

「辛かったり悩んでることがあれば気軽に言ってくれ。どんな事だとしても、俺が必ず解決してやるから」

  京雅の顔色は一切変わっていなかった。だが、黎を見つめるその瞳には心配の色が宿っていた。

  そんな目で見られて黎は一瞬顔を歪めるもすぐに笑顔で取り繕う。

「そん時は頼むよ」

  強引に京雅の手を振り払うと、サッサと早足で自分の席へ向かって行った。

  京雅は振り払われた手を見て少し悲しそうな目をする。

  だが、すぐに視線を上げて怪しむような目線を黎の背中に向けた。 
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