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1章 超能力者の存在

10話 危機

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「あぁ、クソッ」

  瑛翔えいとと別れて京雅きょうがは帰路に着いていた。

  瑛翔の一言で呼び起こされた、京雅が二度と思い出したくなかった記憶の数々が脳裏に甦っていた。

 何度頭を振って振り払おうとしてもなかなか記憶から無くならない。

  そのもどかしさに京雅は顔を歪めていた。

「やぁ。君が君かな?」

「っ……!!」

  反射的に声のした方に視線を向ける。するとそこにはサングラスを掛け、ちょび髭を生やした男が居た。

  男は電柱にもたれかかり腕を組んでおり、妙な圧力を放ちながら急に京雅に話しかけて来た。

「テメェは誰だ?」

  京雅は咄嗟に臨戦態勢に入るものの、内心とても焦っていた。

  たとえ考えに耽っていたからといっても、こんな危険そうな人物の存在すら感知できなかったからだ。

「オレが誰だろうと関係ないだろ?」

「…………超能力者か」

  京雅はその男を力強く睨みつける。
 
  男は京雅のその様子にうっすらと笑みを浮かべながら両手を小さく挙げる。

「参ったな。かなり警戒されてるようだ」

「さっさと答えろ。テメェは超能力者か」

  ユルい空気を纏うその男につられること無く、京雅は強い口調で応えた。

「っ………!ッぁぶな!」

「ふむ。情報通りの能力だな」

  京雅の頬にかすり傷ができており、ほのかに血も出ていた。

  京雅の背後の壁にはナイフが刺さっており、間一髪首を横に傾けて回避していた。

とは、かなり汎用性も高いようだな。Bクラス……いや、ギリAはいけるか?」

  ナイフを避けた京雅を見てその男は何やら考え事をし始めた。

  京雅は密かに手のひらに魔力を集めていた。異世界と地球では空気中にある魔力の量が違うので、魔法を構築するのに手間取っている様子だ。

「能力を確認できたし、今日のところはここら辺で帰ろうかな」

  男は京雅を嘲笑うような顔を向けて、軽快なジャンプでイッキに二階建ての家の屋根まで登っていた。

「せっかくだ。予想以上の結果を出した君には自己紹介しておくよ」

  男はジャケットの内ポケットから紙を取り出して人差し指と中指に挟むと、勢いよく京雅の方へ飛ばした。

  飛ばされた紙は、有り得ない事に京雅の足元のコンクリートに刺さる。

「オレは勝司しょうじ思考鈍化デュレイと他物硬化の二重超能力者ダブルホルダーだ」

「だぶる、ほるだー………」

「もっと詳しく知りたければ、その紙に書いてある番号に電話するんだな」

  男はそう言うと、その場でジャンプをし、屋根に着地する前に一瞬で姿を消した。
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