83 / 88
81話 1日目 2
しおりを挟む
初めは気恥ずかしかった瑠魅との登校も学校が近づくに連れて薄れていった。
今までは何気なく見ていた世界が何故か明るく鮮やかに見えた。瑠魅と一緒に歩いて、他愛もない会話をしているだけなのに、俺の心は既に満たされているようだ。
「あ、おはよう、蓮くん。瑠魅ちゃんもおはよう」
「あぁ、おはよう」
「おはよう、那乃ちゃん」
学校が見えてきたタイミングで那乃と出会う。那乃には言わなければならないことがある。何度も言おうとして、その度に言えなかったことが……。
「二人が一緒に登校なんて珍しいね」
「まぁ、いつもは俺が遅いからな」
いついえば良いのか、そのタイミングがわからない。どうすれば、変な空気にしないで伝えられる……?そもそも今日は瑠魅に猶予を貰ってから初日。さすがに瑠魅を除け者には出来ないぞ。
だからと言って変に那乃を避ければ、その後の瑠魅と那乃の関係にも悪影響が出るかもしれない。
「…なぁ、那乃」
「っ!な、なに………!?」
「明日、昼休みに屋上来れるか?」
「え、ど、どういう……」
「それはその時に言うよ。来れたら来てくれ」
耳打ちするように声を沈めて那乃に要件だけを伝えた。
明日、少しの間、瑠魅を放置することになるけど瑠魅ならある程度の事情は汲んでくれると思う。今日は無理でも、明日なら……このグチャグチャになった関係性をどうにかできるかもしれない。
「瑠魅、那乃。今日は三人でお昼食べないか?」
「私は良いよ。那乃ちゃんは?」
「あ、うん。わたしももちろん良いよ!」
家に帰ったら瑠魅には言っておかないとな。その分、明日は今日以上に盛り上げないと。
~~~~
授業を聞く必要もなく、ひたすら瑠魅と何をしたいかを考えていたら、いつの間にか迎えていた昼休み。
俺と那乃は瑠魅の席に集まって周りの机を二つ拝借する。
いざご飯を食べようと弁当を開けると、校内放送で瑠魅が呼ばれた。瑠魅は若干焦った様子で筆記用具を持って行ってしまった。たぶん、この前の小テストの追試だろう。
「……蓮くんと瑠魅ちゃんのお弁当、ほとんど同じなんだね……」
「え……?あ、まぁ……色々あるしな」
そう指摘され、瑠魅の弁当の中身を見てみると、具材の大きさに違いはあれど、内容としては同じだった。
ラブコメの弁当イベントと言えば食材の交換とかがセオリーだと思うけど、俺らの場合はそうじゃないようだ。けど、これはこれで良い。やはりお揃いと言うのは何かこう、グッと来るものがある。
「にしても、那乃はいつも手作りで作ってるんだろ?凄いな」
「そうかな?慣れると意外と楽だよ」
「俺も早起き、頑張ってみようかな」
今日はたまたま起きられたけれど、明日以降も瑠魅と登校するなら早起きは欠かせない。出来れば、瑠魅と一緒に朝食作り……なんてな。
「蓮くん、なんだか楽しそうだね」
「そうか?俺にはよく分からないけど」
そこから俺と那乃は雑談をしながらご飯を食べ進める。瑠魅が戻ってきたのは、昼休みが終わる十分前だった。
「お疲れ様。どうだった?」
「手応えはあったけど、ちょっと不安なところもあるから、微妙かな」
「瑠魅なら大丈夫だろ。瑠魅の微妙は八十点台だろうしな」
「そうだよ。わたしでも七十三取れたんだもん!」
ずっと、こんな風に居られれば、きっと楽しいんだろうな。残りの期間もこんな景色が見られるようにするためにも、明日は絶対にミスできない。
「ああ!蓮くんまで何で笑うの!」
「ハハッ、悪い悪い」
今までは何気なく見ていた世界が何故か明るく鮮やかに見えた。瑠魅と一緒に歩いて、他愛もない会話をしているだけなのに、俺の心は既に満たされているようだ。
「あ、おはよう、蓮くん。瑠魅ちゃんもおはよう」
「あぁ、おはよう」
「おはよう、那乃ちゃん」
学校が見えてきたタイミングで那乃と出会う。那乃には言わなければならないことがある。何度も言おうとして、その度に言えなかったことが……。
「二人が一緒に登校なんて珍しいね」
「まぁ、いつもは俺が遅いからな」
いついえば良いのか、そのタイミングがわからない。どうすれば、変な空気にしないで伝えられる……?そもそも今日は瑠魅に猶予を貰ってから初日。さすがに瑠魅を除け者には出来ないぞ。
だからと言って変に那乃を避ければ、その後の瑠魅と那乃の関係にも悪影響が出るかもしれない。
「…なぁ、那乃」
「っ!な、なに………!?」
「明日、昼休みに屋上来れるか?」
「え、ど、どういう……」
「それはその時に言うよ。来れたら来てくれ」
耳打ちするように声を沈めて那乃に要件だけを伝えた。
明日、少しの間、瑠魅を放置することになるけど瑠魅ならある程度の事情は汲んでくれると思う。今日は無理でも、明日なら……このグチャグチャになった関係性をどうにかできるかもしれない。
「瑠魅、那乃。今日は三人でお昼食べないか?」
「私は良いよ。那乃ちゃんは?」
「あ、うん。わたしももちろん良いよ!」
家に帰ったら瑠魅には言っておかないとな。その分、明日は今日以上に盛り上げないと。
~~~~
授業を聞く必要もなく、ひたすら瑠魅と何をしたいかを考えていたら、いつの間にか迎えていた昼休み。
俺と那乃は瑠魅の席に集まって周りの机を二つ拝借する。
いざご飯を食べようと弁当を開けると、校内放送で瑠魅が呼ばれた。瑠魅は若干焦った様子で筆記用具を持って行ってしまった。たぶん、この前の小テストの追試だろう。
「……蓮くんと瑠魅ちゃんのお弁当、ほとんど同じなんだね……」
「え……?あ、まぁ……色々あるしな」
そう指摘され、瑠魅の弁当の中身を見てみると、具材の大きさに違いはあれど、内容としては同じだった。
ラブコメの弁当イベントと言えば食材の交換とかがセオリーだと思うけど、俺らの場合はそうじゃないようだ。けど、これはこれで良い。やはりお揃いと言うのは何かこう、グッと来るものがある。
「にしても、那乃はいつも手作りで作ってるんだろ?凄いな」
「そうかな?慣れると意外と楽だよ」
「俺も早起き、頑張ってみようかな」
今日はたまたま起きられたけれど、明日以降も瑠魅と登校するなら早起きは欠かせない。出来れば、瑠魅と一緒に朝食作り……なんてな。
「蓮くん、なんだか楽しそうだね」
「そうか?俺にはよく分からないけど」
そこから俺と那乃は雑談をしながらご飯を食べ進める。瑠魅が戻ってきたのは、昼休みが終わる十分前だった。
「お疲れ様。どうだった?」
「手応えはあったけど、ちょっと不安なところもあるから、微妙かな」
「瑠魅なら大丈夫だろ。瑠魅の微妙は八十点台だろうしな」
「そうだよ。わたしでも七十三取れたんだもん!」
ずっと、こんな風に居られれば、きっと楽しいんだろうな。残りの期間もこんな景色が見られるようにするためにも、明日は絶対にミスできない。
「ああ!蓮くんまで何で笑うの!」
「ハハッ、悪い悪い」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
○と□~丸い課長と四角い私~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
佐々鳴海。
会社員。
職場の上司、蔵田課長とは犬猿の仲。
水と油。
まあ、そんな感じ。
けれどそんな私たちには秘密があるのです……。
******
6話完結。
毎日21時更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる